2015年12月20日

耐震性と防火性こそ、消費者が求めている最低限の条件  (下)



阪神淡路大震災以降、急速に注目を集めたのが 「剛構造」 か 「柔構造」 か、という議論。
日本における最初の超高層ビル・霞が関ビルの完成以来、高層建築では圧倒的に 「柔構造」 が優勢になってきている。 しかし、長周期地震動で、大阪では6メートルのヨコ揺れの危険性もあると、最近の新聞は伝えており、柔構造+制震技術が求められている模様。
超高層建築では軽量建設が主体になり、その大きなヨコ揺れを防ぐためにも、制震技術とか免震技術開発の花が一斉に開いた。
注目されたのは、この 「柔構造」 を大前提とした制震・免震の技術が、単に高層建築だけではなく低層の木造建築にも有効だと考えられ、阪神・淡路大震災以降に、三井ホームや一条工務店などが積極的にこの手法を採用しはじめた。
その結果、低層住宅においては日本は世界とは桁違いの制震技術の普及大国になった。 このことは、大変に喜ばしいことだと考えていた。
実は、故人になった兄が、東京でこの制震技術を採用した住宅を 市部で建築中で、「時折でいいから現場を視察して、問題点があったら教えてほしい」 と依頼されていた。
ちょうど、中越地震を視察した直後だったので、現場を見て確信はなかったが、何となく違和感を覚えたのは事実。

それは、川口町で聞いた ある主婦の体験報告による‥‥。
「ちょうど、食事をつくるために台所に立っていた時でした。 最初に、地下から突き上げるような衝撃がきて、15センチほど飛跳ねさせられたのです。 その後は激しいヨコ揺れが来たので、あわてて火を消して逃げました‥‥」
最初に、突上げるようなタテ揺れがあったのは事実。
それが15センチも飛跳ねるほどの大袈裟なものではなく、せいぜい数センチ程度だったのではなかったかと推測している。 しかし、仮に数センチだっだとしても、上下動が最初に来たので 主婦はびっくりして、大袈裟な表現になったのだと思う。
直下型地震では最初に上下動が来るとすると、「ヨコ揺れを大前提に開発された低層住宅の制震技術は、本当に機能してくれるのだろうか‥‥」 という率直な疑問。

私が川口町だけでなく、六日町や十日町という震度6強と言う町の倒壊現場で見てまわった。
ダブル配筋のコンクリートの高床には、どれを見ても亀裂らしい亀裂が1つも入ってなかった。
1階高だけの高床式鉄筋コンクリート造の 「剛構造」 は、やたらに地震に強かった。
弱かったのは、その 「剛」 なる鉄筋コンクリート造の高床の上に鎮座していた 「柔構造」 の木造部分。
そして、六日町や十日町の震度6強地域でも、外壁に構造用合板を使用していたスーパーウォールは、外観上はほとんど被害が見られなかった。
しかし、内部に入ると、石膏ボードに打たれていたクギがボード用クギではなく、しかも出隅の部分や窓回りには 幅が45〜90ミリという端材が、やたらに使われていた。
その端材が、ヨコ揺れでほとんどが剥がれ落ちて、散乱。
それだけではない。 合板や石膏ボードが木軸同様に柱芯から張出されていたので、ほとんどの開口部の4隅部のボードに亀裂が入っていた。
つまり、細い間柱を前提とした在来木軸工法では、石膏ボードがほとんど構造的な耐震効果がなかった。 間柱は、単なるクロスを張るためのボードの受材としてしか 工務店や大工さんに理解されていなかった。
このため、倒壊していないスーパーウォールでも、ビルダーによる補修工事は 予想を上回るものがあった。 そして、川口町では、内壁に入れた太いスジカイが、ことごとく面外挫屈を起こして 石膏ボードを吹き飛ばしていた。

こうした現実を見て、「剛」 なるコンクリート基礎に乗っかっている木造は、宙づり状態に出来ない以上は、出来るかぎり 「剛」 にすべきだ、というのが私の結論。
この中越地震から学んだのか、その後三井ホームは制震のことは言わなくなった。 あれほど 「制震」 で売っていた一条工務店も、鳴りを潜めてしまった。
その理由が、奈辺にあったかは私には分からない。
ただ、一条工務店が、制震に変わって、i-cube とか i-smart などのツーバイフォーまがいのプレハブを大々的に売り出したことには、心から賛同。
しかし、内部の石膏ボード工事を見ると、当初はそこいらの在来木軸工法と変わらなかった。
出隅部と開口部回りに端材が使われていた。 今は解決されていると思うが、耐力壁でない石膏ボードのクギ打ち間隔は、外周部は200ミリピッチだったのには泣きたくなった。
また、公庫の標準仕様書を読み違えて壁先張りで優先させており、天井ボードが後張りになっている図を添付して、指摘してくれた消費者もあった。
さらに、床や野地合板の千鳥張りをやっていない現場とか、全熱交で浴室・トイレから熱回収もせず排気しているのに、Q値が高いのは納得出来ないという意見も散見された。
つまり、住宅性能を最前面に立てて商売したのは、日本の大手住宅メーカーでは i-cube や i-smart が最初。
それなのに、在来木軸・プレハブ手法にこだわりすぎて、ツーバイフォーの革新的な技術体系を学ぼうとする意慾が欠落していたのではないかとの指摘。
一条工務店は、すべて日本の認定機関の認定を得ている。
それなのに、私があえて 「一条工務店のツーバイフォー工法は、まがいものだ」 と指摘したのは、同社が憎いからではなく、三井ホームに変わるツーバイフォー工法の本当のエースになってほしいと願うから。 最近の三井ホームにはイノベーションが欠けているように見られる。 せめて、地方のツーバイフォー業者のパネル工法の欠点を補うために、金物工法へのアプローチで積極的なリードが欲しい、などの声が聞かれる‥‥。

さて、低層住宅で、耐震性と防火性と言う点で見るならば、抜群に優れているのが RC造 (鉄筋コンクリート造)。
しかし、RC 造は重く、施工価格は木造に比べて20%も高い。 それに何と言っても断熱性能があまりにも低すぎる。 ちなみに、主要建材の熱伝導率は以下。
◆モルタル               1.6W/mk
◆石膏ボード             0.22W
◆木材・合板          0.12〜0.16W
◆高性能グラスウール (32K)  0.036W
◆高性能硬質ウレタン       0.023W
モルタルの熱伝導率は、合板の1/10にすぎない。 私が推奨している 高性能硬質ウレタンに比べると、なんと1/70。
しかし、RC 造は気密性がよい。  一般的で雑な木軸工法に比べると 20倍近い気密性能を持っており、素人の消費者は木造よりもマンションの方が暖かいと勘違いしている。
このように、鉄筋コンクリート造には耐震性と防火性には魅力があるが、あまりにも問題点が多すぎるので欧米、とくにアメリカでは徹底的に木造の耐震性と防火性能を上げて、これを採用してRC造を極力減らそうと努力している。

私は、原則的にアメリカの動きに大賛成。
私が以前に勤めていた会社では、RC部の売上が30%近くを占めていたので、RC 造が木造に比べて何故原価が高くなるのかを それなりに理解しているつもり。 まず、何と言っても基礎工事が木造と比べ物にならないくらい頑丈。 重い荷重を支えるために、基礎の深さは2倍以上で、配筋数もやたらに増加。
2階建なのに、木造住宅では信じられないくらいの基礎工事。
最近のツーバイフォー協会の 「1時間耐火構造」 による幼稚園や大型の高齢者福祉施設を見ると、両面に9ミリの合板を張り、その上に21ミリ以上の強化石膏ボードが 両面ともに2枚張りになっている。 大変な 「剛構造」。
ここまでやっても、最近は型枠工の極端な不足で、建築価格が暴騰している RC造に比べると、 ツーバイフォーの価格が20%も安いという。 したがって、大型の有料老人ホームはツーバイフォー造に変わってきている。
それなのに、昨年の学校建築の実物大防火試験は、このような1時間耐火構造の原則を全く無視したものであった。 あの実験は、一体何だったのだろうか?

すべてのツーバイフォー建築が、1時間耐火を求められているのではない。
アメリカの現場で徹底していて驚かされるのは、内壁と天井面に12.5ミリ厚の石膏ボードの施工するとともに、ドライウォール工事を義務化していること。
今さらドライウォール工事の凄さを書くまでもなかろう。 アメリカの住宅の建築現場で受ける印象は、ドライウォール工事の前と後では 180度も変わってしまう。 
「アメリカの住宅の建築現場は、これほど垂直・水平がとれており、これほどまで綺麗であったのか?」 と、誰しもが感嘆の声を上げる。 それほどの威力を持っているのに、何故か日本では低い評価しか与えられていない?
12.5ミリの石膏ボードの耐火時間は約25分。 木は、直接炎を当てると250℃で燃えあがる。 しかし 炎を当てなくても450℃に焼けた石を当てると、発火してしまう。 したがって木造の防火を防ぐには、石膏ボードの裏面温度が450℃以下にすることが絶対条件。
何故、石膏ボードは耐火性を持っているのはか? 
それは石膏ボードの中に21%の結晶水が含まれているから。
この結晶水が火に当たると熱分解をして水になり、12.5ミリ厚の石膏ボードでは25分間、霧を発散し続けて裏面温度450℃以下に抑えてくれている。 同じ原理で、1時間耐火には片面21ミリの強化石膏ボードが2枚必要になってくるのが、2×4協会が得た特認仕様の内容。
しかし、大都市では25分以内に消防車が駆け付けてくれるし、たとえ 消防車の到着が遅れても、サッシが閉まっていると室内のカーテンや家具を焼いた時点で酸素不足になり、自然に鎮火してしまう。
私は2×4協会の火災実験をはじめとして、4件の実物大火災実験に立会ってきた。
その結論を先に書くと、4件とも部屋の中央に薪を山のように積み、灯油をかけてから火をつける。 するとメラメラと火は拡がり、カーテンを焼いてあっという間に部屋中に拡がる。 ドアが閉まっていないと家中が火の海になる。 しかし、気密性能が0.5〜0.9cu/u以下だと、次第に酸欠状態に陥って、自然に鎮火してしまう。
しかし、簡単に自然鎮火したのでは、わざわざ遠くから見学に集まった人には面白くない。
そこでサッシを空けて、新鮮な酸素を供給する。 すると、鎮火していた火は再び勢いを取り戻し、掃出窓のガラスを破いて、バルコニーから2階の部屋に延焼する。
そして、1時間余も燃え続けて、実物大火災実験は終わりとなる。

こんなデーターがある。
25年前の資料だか、アメリカと日本の火災の発生率と損害額を比較した数字。
なんと日本人は火災の発生に気を配っていているので、火災の発生回数は4.5回。
これに対して、アメリカ人はだらしがないというか、めったに全焼にならないことを知っているせいかどうかは知らないが、日本の約31倍もの火災発生率。 なんと138回に及んでいる。
この4.5回対138回という数字に呆れてしまった。 アメリカへ行ったら、何はさておいても火災の発生に最大の注意をすべきだと‥‥。
ところが、1件当たりの被害額をみると、日本はほとんど全焼になるせいか286万円に対して、アメリカは1/10以下のたった27万円。 これだと、致命的な被害とは言えない。
そして、アメリカの住宅を見て回った時に、この火災の発生率の大きさと、1戸当たりの被害額の少なさは、内装に必ず12.5ミリ以上の石膏ボードを使っているせいと、ドライウォール工事が徹底しているせいだと知らされた。
一番見事だったのは、開口部のない内壁に石膏ボードの上に 仕上げとして無垢の木製品を張っていたこと。 現わしの木材を使う時、下地に石膏ボードを張り、しかも外壁を避けて 開口部の少ない内壁を選んでいたケイガンには、感心させられた。
このデーター数値が、25年経った現在ではどのように変化しているかを、知りたいもの。 おそらく日米の差は、かなり縮まっているはずだと信じたいのだが‥‥。

さて、前置きが長くなりすぎた。
どれぐらいの耐震性を日本の低層住宅に求めたらよいか、という本題に戻ろう。
もし、貴方が直下型の震度7強の地震がきても、実質的な被害が皆無であり、以前と同じ気密性能を求めているとしたなら、まず耐力壁が7倍以上の剛なる木質構造体を選ぶべき。
具体的には、耐力壁が7倍以上の特認をとっている 「自然の住まい」 社の外壁本体の壁厚が17センチと厚い 「クロス・ラミネート・ティンバー」 か、外壁本体の壁厚が15.6センチと厚く、両面に9ミリのOSBを張り、0.023Wという高い熱伝導率で固い硬質ウレタンを、工場で充填しているA&M社の大型パネル etc. を選ぶべき。
そして、家具やテレビなどを、金物で完全に壁に固定して絶対に移動させないこと。 さらには、なるべく簡単にドアなどが開かない家具類を選別することも重要。
当然のことながら、内壁及び天井は、最低でも12.5ミリ厚以上の石膏ボードで全面的に覆い、ドライウォール工事をこれまた全面的に採用すること。 と同時に、類焼に強い不燃材を外装に採用し、ガラスは割れない配慮が必要で、燐家との距離を一定以上に空けること。
さらに言うなれば、土石流や津波の畏れのない地域とか、あるいは盛土をしていない固い地盤を選ぶとか、地盤改良工事を完全に行うことが絶対的条件。
大変厳しい要望だが、震度7強の直下型地震で、実質被害が気密性を含めて0であることを求めるのならば、建築基準法を守っているだけではラチかあかない。
もっと厳しい条件が必要になってくる。
果たして、こうした条件を満たすことが可能な人は、どれだけいるだろうか?

そこで、次善策が求められる。
住宅の大きさが30〜40坪程度で、やたらな我がままを言わないことで坪当り70万円台で上がる住宅。 つまり、総建築費が2200〜3000万円強の予算で済む住宅。
これで、Q値は0.9W以上で、震度7弱の直下型地震がきても倒壊することがなく、地震の後でも気密性能が1.0cu/uの線を守ることが、消費者としては必須条件。
ということは、プレハブメーカーなど施工部門を外注に依存している大手は、一条工務店を除いてすべて失格。  なぜなら、地震が来ない前に 大手の気密性能の実態は、よくて2.0cu/u程度というスカスカ状態。 つまり、マンションよりも性能が悪く、RC造よりも暖かくない住宅がゴロゴロしている。
それを黙認している国交省や大学教授。
それでいて、「エネルギーがゼロ住宅」 などを唱えているのだから、普通の神経の持ち主ではない。 片腹どころか両腹が痛くなってくる。 ともかく、気密性能をキチンと謳っていない大手は、絶対に相手にしてはならない。
そして、次に重要なことは、スジカイや火打ち材などにオンブしている業者を拒否すること。
耐震性は、厚い面材でないと絶対に得られない。 面材を否定する者は耐震性を語る資格がない。
このことは、中越地震でイヤというほど教えられた。 そして、石膏ボードの端材を使っている業者もシャットアウトすべき。 願わくば、ドライウォールの経験者を間接的でいいから知己に持っていることも、欠かせない条件の1つになってくる。
ついでに言うならば、確認申請上は耐力壁が足りていても、石膏ボードの外周のクギ間隔を10センチを守っていない業者も締め出したい。 普段から10センチピッチを守れない業者は、いざ耐力壁だと言われても、粗いクギピッチになってしまうことは、世界の建築業界の常識。
これは、それを容認している現在の日本の認定機関と、世間知らずの学者に対する抗議そのものなのだが、そうした機関が信用出来ない以上、民間の良識に期待するしかない。

そうした民間の良識が、消費者の願望を汲み上げてくれることを、心の底から期待している。


posted by uno2013 at 15:33| Comment(1) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年12月15日

耐震性と防火性こそ、消費者が求めている最低限の条件  (上)


最近の私は、住宅性能面で 0.5cu/u以上の気密性能 (C値) と、1.0 W 以上の断熱・省エネ性能 (Q値) を求めている。
しかし、それ以上に求めているのは、耐震性能であり、防火性能。
ご案内のように、建築基準法で求めている耐震性能は、「震度5強の中規模地震ではほとんど損傷を生じることがなく、極めて稀にしか発生しない震度6弱以上で震度7までの地震には、傾くことはあっても倒壊することはないものにすべし」 というもの。
非常に常識的な判断だと考えられる方も多かろう。
最近は直下型の震度7という地震はほとんど聞かない。 しかし、阪神淡路と中越地震という直下型で震度7という地震が、10年余前に連続して起こった。
そして、「30年以内に東京で震度7の直下型地震が起こる可能性が非常に高くなってきている」 と言われている。
「東京の震度7の直下型地震に対処するにはどうしたらよいか」 という大きなテーマを抱えて、神戸と川口町の現場を訪れた。

さすがに神戸への視察者は多かった。 しかし、「大阪周辺へは大きな地震はやってこない」 という伝言に踊らされたのか、神戸の耐震性能の低さには呆れるほどのものだった。 無筋の基礎工事を多く見たし、柱や梁なども3寸と細いものが圧倒的で、ほとんどの住宅は最初の一揺れで通し柱が折れ、1階がぺシャンと潰れてしまっていた。
そして、1階で寝ていたお年寄りを中心に、7000人以上が圧死してしまった。
正直言って、あの地震の加害者は、木材関係者や建築業者。
ツーバイフォー工法は、ほんの一部の大手の住宅メーカーの住宅が潰れただけだった。 これに対して、在来木軸業者の住宅は、軒並みに潰れていた。
神戸の被害を見た多くの人は、「これで、在来木軸は完全に死んでしまった」 と考えた。
私には、「在来木軸の根本的な解決策」 が何一つ浮かんでこなかった。

神戸の場合は、「潰れて当然」 と言えるものだった。
これに対して、中越地震の時は、私は翌日には震度6強の六日町に入り、知人のトピアホームを中心に取材をしていた。 最初の頃は中越地震での倒壊数は400棟と言われていた。 そのうちに激震地は川口町だと分かり、倒壊戸数も3000棟に近いことが判明してきた。
トステムが、スーパーウォールの代理店・川口町の渡部建設の被害状況を調査するために調査団を派遣することになったと聞いた。 その調査団に同行して渡部建設を訪れられるようトステムに依頼した。 それ以外にも2度に亘り同社をを訪ねて取材を続けた。
渡部建設は町から依頼されて、全被害地域の基本調査を行っていた。 その調査で、同じ川口町でも被害がひどかった地域が4ヶ所あることを渡部社長は語ってくれた。 ご案内のように、震度6までは強と弱がある。 しかし震度7には強弱がない。 一率に震度7で統一。
ところが、渡部社長が案内してくれた烈震地の1つの武道窪では 17棟のうち16棟が潰れ、倒壊していなかったのはスーパーウォールの1棟だけ。 その1棟も、仏壇が部屋の中央まで動き、内壁の石膏ボードはほとんどやられ、外壁の構造用合板もかなりやられていた。 そして何よりも強調しなければならないのは、気密性が完全に失われていたこと。
「今までは、前の坂道を昇る自動車の音は全然気にならなかった。けれども、今はうるさくてやりきれない。 確かに倒壊しなかったことには感謝しているが、失われた気密性と騒音は、どうしてくれるのでしょうね‥‥」
建築基準法から言うと、倒壊しなかったのだから、建築業者が問われる理由は1つもない。

もう1ヶ所、渡部社長が案内してくれた激震地は田麦山。 
約100棟ある住宅のうち、倒壊を免れたのはたったの10棟だけ。 倒壊率9割という凄さ。
つまり、震度7の川口町でも震度7弱と震度7強の地域があたことが歴然。
このことを、各大学をはじめ気象庁も調査をしているはずだが、学会の発表会でも各報道機関でも、なに1つ触れていなかった。
それに新潟の豪雪地で、プレハブ住宅が1棟も建てられていなかったので、各住宅メーカーもほとんど調査をやっていない。
豪雪地なので、ほとんどの住宅は高床式。 つまり、1階基礎と天井はダブル配筋をして、1階は車庫や物置として使用。 そして豪雪時は、2階から出入りする。
この田麦山の100棟をすべて見て回ったわけではない。 主に渡部建設が建てたスーパーウォールを中心の視察になったが、驚くことに倒壊した住宅のすべての高床は、ほぼ無傷で残っていた。 そして、スーパーウォールで目撃したのだが、なんとホールダウン金物の先のネジになっている部分で、ネジが千切れていた。
つまり、ダブル配筋のコンクリートの床は無傷だったが、それとホールダウン金物で結んでいた木構造部分がやられていた。 基礎を丈夫にしただけではダメだと立証してくれていた。
この大切なポイントを、建築学会をはじめほとんどが見逃していた。
もちろん、コンクリートの高床は無傷だったが、駐車しておいた車は壁に当たって大破していたり、1階床に立ちあげていたエコキュートが倒れて、使いものにならなくなっていた。

一方、こうした激震地以外の、いうなれば震度7強ではなく、震度7弱の町中のスーパーウォールの被害状況も数ヶ所見せていただいた。 こうした住宅は、外から見ていると全く被害がないように見えた。 しかし一歩中に入ると、ひどいものだった。
天井から下げていた電灯は暴れてあちこちに傷を付け、クーラーは脱落していた。 夜間電力を利用する蓄暖は、壊れてバラバラ。
それに、ほとんどの家は1ヶ月以上はたっているというのに、未だに片付けが終わっておらず、足の踏み場もないという住宅にもあった。
そして、豪雪地なので使われている柱は最小でも4寸角。 中には5寸角の柱も見受けた。
内部に使われているスジカイはその1/2から1/3。 つまり最低でも厚は40ミリから75ミリ厚。
そのスジカイが横からの力で圧縮され、面外へ挫屈していた。 このため、内壁に張られていた石膏ボードが、1枚残らず吹飛ばされていた。 全く想像も出来ない姿。 これを見て、スジカイ擁護論者の顔を見たくなった。 なんと言うのだろうか?
その川口町の中の倒壊率は、全体的には30%程度と言われていた。
多くの読者は、「また川口町の話か‥‥」 と眉を寄せていることと思う。 しかし、私以外に誰1人として川口町の実情を正しく伝えてくれていない。 折角の教訓が活かされていないと思うから、少し焦っているかもしれない。
初めての方で、もっと川口町の詳細を知りたい人は、2004年11月4週から2005年の1月4週にかけて、このブログ欄で9回に亘って掲載しているので、それを読んで頂きたい。

こうした神戸や川口町の実情を見て、私は在来木軸工法に対して、消費者視線から救いようがないと考えていた。 ところが、日本には知恵者がいるのですね。 タツミが中心になって通し柱が折れない 「金物工法」 を開発してくれたではないですか。 日本の在来木軸にがっかりさせられていた私も、この金物工法で救われたと感じた。
しかし、金物工法によって通し柱が折れる心配は皆無になったが、同時に古くて弱い木軸工法も息を吹き返してしまった。 消費者視点を無視して、再び大工さんや棟梁の勝手が通るようになってきた。 スジカイや火打ちが素晴らしいことのように伝えられ始めている。
そして、期待していた金物工法の普及率は、贔屓目にみて20%と聞く。 大手の住宅メーカーの全てが金物工法に変わったのに、未だにこの数値だという。
この最大の理由は、金物工法がツーバイフォーに比べても材積が20%近く余分にかかっている。
つまり価格が高いので、おいそれとは使えない。 耐震性や防火性、さらには省エネ性能でも劣るのに、古式の在来木軸の存在を許している。

金物工法は、柱と集成梁によるラーメン構造にその基本がある。
このため、3尺ごとに柱を建て、3尺ごとに集成梁を入れるという剛な形が基本となっている。
私は、ラーメン構造を決して否定していない。 木質構造としては、絶対必要な技術だと考えている。 しかし、やたらにラーメン構造に拘るのはいかがかと考える。
私が以前から提案しているのは、北海道の一部で広く採用されている金物工法とツーバイフォー工法とのドッキング。 すべてをそれに変えろと言っているのではない。 価格的に対応出来ない層に対して、そうした選択も大いにありうると強調しているだけ。
具体的には606の通し柱を2.5間〜3.0間に入れて行く。 その間に206で組んだパネルを入れてゆく。 内壁は204材のパネルでよい。
そして、肝心なことは、出隅部分に45ミリ強といった端材を絶対に使わないこと。 出隅から約500ミリのスタッドから3×8尺、ないしは3×9尺の合板と石膏ボードを張出す。 そうすると、開口部周りは合板や石膏ボードがコ型に抜かれることになる。 このため、耐震性能は飛躍的にアップして、開口部周辺から亀裂が入るということはほとんどなくなる。 もちろん欧米で流行っている4×8尺の合板、石膏ボードの横張りは大歓迎。
と同時に、通し柱を挟んでその部分だけを建築現場で合板を打ち付けるようにすれば、パネルとパネルが完全に一体化してしまう。 これは大変な魅力。
金物工法の欠点は、3尺ごとに柱を入れるから、間柱は20ミリ厚程度のものにならざるを得ない。 このため合板や石膏ボードのクギがあまり効かず、耐力壁の強度が落ちてしまう。 これを206材に替えることによって、パネルの強度が上がり、当時に省エネ力 (Q値) も大幅にアップすることが可能になる。



posted by uno2013 at 17:38| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年12月10日

木質構造の今後の住宅・非住宅への展開のポイント (5) CLT



CLT (クロス・ラミネーテッド・ティンバー) が最近やたらと注目されている。
昔人間の私は、「木質構造の PC 版のことですね‥‥」と言ったら、建築関係の若い人の全員が 「?」 と、黙り込んでしまった。
「つまり、木造のプレキャスト・コンクリートのことですね‥‥」 と糺したのたが、プレキャスト・コンクリート版のことを知らない人がいたのにはビックリ。
あわてて、ネットで 「PC版」 を開いてみた。
そしたら、出ているのはすべてネット関連の用語ばかり。 プレキャスト・コンクリートのことは1つも出てこない。
つまり、わざわざ 「プレキャスト・コンクリート」 と打ちこまない限り、今どき若い人は 「PC 版」 と言われても、ネット関係の用語しか頭に浮かんでこなくなっている。

いまから20年前は、PC版 (プレキャスト・コンクリート版) のことを知らない建築関係者は皆無だった。 公団住宅や公営住宅だけでなく、中高層のビルの外装にもほとんど PC 版を採用して、建てられていた。
たしかに、現場で合板の型枠を組むよりも、何回となく鋼板の型枠が使えるし、コンクリートの精度もはるかに高度なものが得られる。 したがって、防火を目的とした現場打ちの RC 造よりは、PC 造の方がはるかに公的住宅や中高層の建築には適していた。
ただし、PC 版には問題点があった。
と言えば、誰しも耐震性だろうと感じるはず。 ところが鉄筋は現場で溶接できるので、中層建築においては、CLT 建築ほど問題になることはなかった。
一番問題になったのは防水性。
シーリング材で防水工事を行う以外に、これはという名案が得られなかった。 これが PC 版の泣きどころ。

CLT というのは、2.5センチ厚程度の無垢の木の板を、繊維方向を交互に交差させ、接着剤で合板のように接着して一体化する。
6〜7年前より日本へも紹介され、関係者の間ではその存在は深く知られていた。 たしかに面材としての強度はあるが、木そのものが熱橋になるので、高性能住宅での採用が躊躇されていた。
もっともオーストリアでは、約20年前から接着剤を使わずに木のダボで、乾燥した無垢の板を圧着して製造しているトーマ社 (THOMA) がある。 同社の日本総代理店「自然の住まい社」は、10年前より床・外壁とも17センチと厚い一体パネルを採用して、日本の認定機関から壁倍率の8倍程度の認定を得ている。
ただ 坪単価が100万円前後と高いために、年間せいぜい数棟程度しか受注していない。 だが土壁を塗るなどしてQ値を高め、性能的には日本一と言っても良いほどのすぐれた内容を持っている。
ともかく、接着するにしろ圧着するにしろ、厚みが合板のように7〜9ミリというものではない。
120〜170ミリもあるのだから、ともかく面材としての耐震性はやたらに強い。
ただしこれは、日本では低層住宅に限った話。
一方、地震のないヨーロッパや北米大陸の東海岸では、この CLT で7〜8階建の高層建築が認可されてきている。 だが、地震の多い日本では耐震面では面材としては問題ないにしても、接合部分の強度が大きな問題になってくる。

「木造は、どんなにリキンでも剛にはならない」 と日本では言われてきた。
つまり、「CLT がいくらリキンでも、鉄骨造か PC 造にオンブしないかぎり、小手先の金物では高層建築としては使えない」 というのが建築業界の常識。
しかし、日本の山にスギやヒノキを植えるために沢山の国家予算を使ってきた林野庁。 そのスギ材が適齢期を迎えているので、なんとしてでも消化しなければならない。
このため、なんとか国交省を巻き込んで、「国内材利用のロードマップ」 を造らせたまでは良かった。 しかし、国交省は今までの認可の関係からも、林野庁のために建築基準法の骨格までを変更させることは出来ない。
それで焦った林野庁は、経済産業省や文部省を巻き込んで、「地域再生」 という大義名分で、国交省の考えを変更させるべく秘策を練っているとも聞く。
私個人は、木造が住宅だけでなく、大型建築に普及してゆくことには諸手を挙げて大賛成。
現に老人養護施設などに、ツーバイフォーで何千坪と言う建築物が建てられている。
そして、肝心な防火性能は、厚い石膏ボードを2枚以上も使って、高齢者が安心出来る建築物を提供している。 つまり、ツーバイフォー協会が造った国際的な安全基準は完全に守っている。 それでいて、RC 造に比べて、施工価格が20%程度違うので、「木質構造大歓迎」 という空気が老人養護施設関係者の間には広がっている。
この姿勢こそ、役所が守らねばならない基本原則だと思う。

しかし、ごく最近木造校舎が、完全に全焼してしまうという、まったくみっともない実物大燃焼実験が行われた。
あの実験の記録映画を見た消費者は、自分の大切な子供を 火災から守れないような校舎へ、敢えて送り出そうと考えるだろうか‥‥。
私の個人的な感想としては、あのような惨めに全焼してしまう地スギを使った校舎へは、自分の子供や孫を、絶対に送り出したいとは考えない。 そんな、子供の命を軽視する学校には、そもそも受験をさせない。 これこそが、親の愛というものではなかろうか。
ということで、国産材を使った大型で、高層建築物に地スギやヒノキを無理矢理に採用することに対しては、賛成出来かねている。
つまり、地震国日本では、パネルの緊結金物の開発は大変な手間がかかり、防火性をもたせるための石膏ボードの厚さをどれだけにしたら1時間耐火とか2時間耐火性能が得られるのか?  
その性能実験こそ、最優先させるべきだろう。

林野庁は、今までの固定概念の延長線上でしか国産材の利用を考えているとしか考えられない。
つまり、CLT の普及こそが もっとも手っ取り早くて、最善だと考えている節が見え見え‥‥。
しかし、緊結金物に問題があって高層建築として使うには耐震性に難があり、防火性でも実験の裏づけがともなった結論が得られていない。 その CLT を、やみくもに後押しすることが本当に正しいのだろうか?
たしかに、地スギをツーバイフォー材として挽かせることには、国際価格と言う面と強度という面から問題点があることは十二分に理解している。
同じことで、地スギで作った CLT の強度も問題になってこよう。

「総論には賛成だが、今の林野庁の動きには賛同出来かねる」 というのが、私の取材した範囲内の結論だったように感じた。



posted by uno2013 at 09:50| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。