2014年09月05日

宇宙エレベーターで太陽発電宇宙基地が建設出来るのは2050年?


宇宙エレベーター協会編 「宇宙エレベーターの本」 (アスペクト 1600円+税)

エレベター.JPG

2010年の上半期面白本ベスト10で、石川憲二著「宇宙エレベーター」を取上げている。
しかし、あれから4年間たって、やっと宇宙エレベーターの建設予定地とかその構造体、必要建設費などかなり具体的な検討が進んできている。 しかし、肝心の真直ぐ上に伸びる10万kmにおよぶケーブルの製造技術は、未だに目鼻が立っていない。
アメリカでは20年以上も前から、「太陽光発電宇宙基地建設構想」 が打ち上げられていた。
地球の上に太陽光パネルを並べるのは、雨や曇りの日があるだけでなく、夜は一切発電してくれない。 パネルの効率が30%に上がったにしても、効率が悪すぎる。
したがって、砂漠や屋根に太陽光を敷設するのは許されるのだが、耕作地などにパネルを敷設するのは、「愚の骨頂」と言われてきた。 その愚の骨頂が、メガソーラーの名で日本で進行しているから情けない。

アメリカの宇宙太陽光発電ステーション基地構想の最大の弱点は、「パネルなどの必要資材を如何にして宇宙まで運ぶか」 にあると言われていた。 ロケットで運ぶとすると現時点では1回当り数10億円から100億円程度の打ち上げ費用がかかってしまう。 数10億円もするロケットの機体を使い捨てにするからだ。 しかも、必要資材を大量に運ぶことは出来ない。
仮に、宇宙太陽光発電基地建設のために1000回もロケットが打ち上げられたとする。 その打上げ費用だけで10兆円がかかってしまう。
また、原子力発電1基の能力は100万kWと言われている。 1基の建設費を仮に500億円として、200基を建設するとなるとこれまた10兆円。 国単位ではなく地球規模で考えると、最低そのような投資が必要になる。
これに対して、宇宙エレベーター協会から委託を受けて、大林組が設計した宇宙エレベーターの総建設費が10兆円。 
もちろん、宇宙エレベーター協会が構想した宇宙エレベーターの設置目標は、高度 36,000km の静止軌道に設置される一般消費者対象の 「無重力体験ツアー基地」 であり、57,000km に設置される 「火星連絡ゲート」 と、それに 96,000km に設置される木星や小惑星への玄関口になる 「太陽系資源探掘ゲート」。
それのおまけとして、静止軌道に 「宇宙太陽光発電衛星」 を設置することを考えているにすぎないように見える。

この著書で対談に応じている田原総一朗は、次のように述べている。
宇宙開発の動機は、冷戦だった。 アメリカが原爆を持ったのでソ連も持った。 ソ連が宇宙飛行に成功したのでアメリカが月旅行を強行せざるを得なかった。 どちらがより先へ進むかという競争が始まった。 しかし、この競争は1991年のソ連の崩壊によって終わり、宇宙開発戦争の目標がなくなった。 NASAの予算も縮小されてきている。
ところが、「環境」 という新しい目標が生じてきた。 最近は温暖化の影響で海水温度が上昇し、日本は台風や集中豪雨で大騒ぎしている。 それどころか、今世紀中に地球の気温が4.8℃も上がると言われている。 集中豪雨や土砂災害が今よりはるかにひどくなる。
2050年には世界のエネルギー使用量が今の2倍になると言われている。 今世紀末には3倍以上となり、地球環境はますます悪くなってゆく。
CO2の削減の有力な方法として原発と核融合が考えられていたが、福島原発で日本では新設が困難になってきている。 そこで、注目されてきているのが「宇宙太陽光発電」。 冷戦に変わって環境問題が人類を追いたてている。 
もはや、アメリカがどうしたとか、中国がどうだとか、ソ連がどうだとかと言っておれない。
人類の共通の目標として宇宙開発問題が提起されてきている。

私は、この田原論に大賛成。 10兆円で宇宙エレベーターが出来るのであれば、1基と言わず4〜5基も設置して、宇宙太陽光発電の時代にすべきだと思う。 ところが、宇宙エレベーターの適地は、赤道上にたった3ヶ所しかないという‥‥。
そういった、宇宙エレベーターに関するいくつかの疑問を、大林組の設計と東海大佐藤講師の解説をもとに、眺めて見ることにしょう。

まずエレべーターということに対する誤解。
エレベーターというと、反対側に錘のついた、立ったまま乗り込む普通のエレベーターを私どもは想像してしまう。 そうではなくて、宇宙へ向かって真っすぐ走る“列車”だと考えた方が理解が早いという。 しかも、約15〜18帖ほどの個室になっているらしい。 客船の個室と考えた方が良いようだ。 ただ、この個室には窓がついていない。 
というのは、宇宙には寿命が尽きた人工衛生や、捨てられたロケットの破片などが一杯ある。 10cu以上のデブリと呼ばれる廃棄物の軌道は分かっているので、それを避けて運転されるが、衝突して出来た10cu以下のゴミの存在は分からない。 したがって、列車は小さなゴミが当っても被害が出ないように国際宇宙ステーション並の防護がなされ、小さな窓しかついていない。 風景は、カメラが写すものをテレビ画像で見るらしい。
この列車の速度は、少し前の新幹線と同じように時速200kmというところ。 したがって、36,000kmの静止軌道ステーションに着くまでには、途中に火星重力センター、月重力センター、低軌道衛星投入センターなどの停車駅があるので、8日間ぐらいかかる。 新幹線並の速度だから、車酔いなどの心配はない。 また、高度20,000kmまでは、重力は軽くなるが、飲物や食べ物はテーブルの上に置いても問題がないので、安心して旅をすることが出来る。
そして、無重力を体験するには片道8日間かかるというから、宇宙の旅は 暇との闘いということになる。 もし、96,000kmの太陽系資源探掘ゲートまでゆこうと考えると、片道で1ヶ月近い日時を覚悟しなければならない。

列車はレールの上を走る。
つまり、宇宙エレベーターにとってもっともポイントになるのがこのレールに匹敵するケーブルの敷設。 何しろ10万kmにも及ぶ長くて軽くて、しかも宇宙に存在する大小様々なゴミがぶつかっても損傷しないものでなければならない。 さらに重力と遠心力にも耐えねばならない。
そんな素材がこの世に存在するか?
1991年に、飯島澄夫博士により引張り強度が鋼鉄の20〜100倍もあるといわれるカーボンナノチューブの発見により、理論的に宇宙エレベーターのケーブルの可能性が得られた。
しかし今のところ、実際に作ることが可能なカーボンナノチューブの長さは数cmのものにすぎない。 10万kmの長さの太いケーブルがいつ頃までに製造出来るようになるかについては、誰も答えることが出来ない。
しかも、10万kmのものだと、ロケットで打上げるにしても最初は極細のものでしかあり得ない。 それをどんどん補強して太くしてゆく。 なにしろ、どれだけの重さのものを運べるかは、このケーブルの太さによるという。 したがって、どれだけのた太さが可能かについても、誰も答えられない。
そして、最初は低高度の貨物の運送から初めて、次第に静止軌道までの貨物輸送用として使われ、安全度が確かめられてから観光ツァー客を運ぶことになろう。

一方、列車そのものの開発だが、宇宙エレベーター協会が主催する技術競技会が2009年より毎年開かれている。 毎年開かれているのは日本だけだという。 第5回となる2013年には高度1100メートルの昇降に成功している。
しかし、これもまだまだ初歩段階で、本格的な技術開発というには程遠い。
大林組が設計した宇宙エレベーターは、赤道直下の海上に発車駅 (アース・ポート) が設けられている。 見学者用の宿泊施設などは陸上に設けられており、発車駅までの海上は円形の弾丸道路で結ばれている。
そして、36,000kmの静止軌道ステーションおよび宇宙太陽光発電衛星と、96,000kmの太陽系資源採掘ゲートなど、6ヶ所のゲートが用意されている。
これ等の全ての施設の建設費用が約10兆円で、完成するのは2050年と大林組は予想している。
果たして、この価格と予定年に完成するかどうか?
また、この宇宙エレベーターの開発主体や費用の分担などについても、一定の国や企業に偏ることがないように、Q&A式で答えてくれている。

何度も言うが、宇宙太陽光発電に対する意識が低すぎるのが気がかり。 だが、宇宙エレベーターが抱える技術的問題点をはじめ、制度上の問題点など教えてくれており、一読に値する。

posted by uno2013 at 19:09| Comment(0) | 書評(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月05日

“脱原発派”が唱える 熱い自然エネルギー革命‥‥(下)


大下英治氏は、すでに孫正義氏に関する2冊の本を書いている。
このため、この著書でもソフトバンクのエネルギー政策についてかなりの紙数を使って触れている。 しかし、孫氏の考えはどこまでも買取価格を前提にしたもので、イノベーションには一切触れていないので片手落ちという感が否めない。

この著書でも、「メガソーラー」 というのは、まるで電力を生みだす魔法の杖のごとき扱いを受けている例が多いことを指摘している。 耕作放棄地に中国産の安いパネルを並べ、電力の制御のことも考えずに、電力会社に 「この電力を買え!」 と迫る業者が出てくると、あとで大変なことになる可能性が高い。 整備や管理体制がしっかりしていない事業者が逃げたりする場合の、パネルの撤去にかかる手間とカネのことを筆者は心配している。
また、先に開催された PVJapan 2014 でも、現時点での平均設備利用率は13%程度と低く、パネルの製造段階や取付段階で使われる電気の総使用量を考えると、決して省エネになっていないという意見さえ聞かれた‥‥。 
現在の技術程度では、実験室段階ですら最高の設備利用率は25%で、市販されているものの最高値は20%程度。 これでは、太陽光を利用すればするほど、国民の電気代負担率が増えるだけ。
決して褒められる内容とは言えない。
 
やはり、利用効率が30%以上の技術を開発することが先決。 これだと、今までの電気代と変わらない価格で電力会社や個人が設備を揃えることが出来る。 それこそが目的。
それ以外では、かつてNHKの 「サイエンスゼロ」 が取上げていた砂漠の砂を利用してパネルをつくり、世界中の砂漠で安価な太陽光発電を行い、これを世界を繋ぐ電磁波電線網を利用して一日中電力を供給するという案。 これは夢のようだが、なかなか説得力を持っていた。
あるいは、強力なリチウムイオン電池を開発して、砂漠で発電した電気を蓄電し、かつて石油を運んだタンカーで日本へ運ぶという案も検討に値しょう。 しかし、「人材を育てるホンダ、競わせるサムスン」 の著者・佐藤登氏によると、「電動工具など民生用のリチウムイオン電池では、日本は完全に韓国の後塵を拝するようになってきている」 と断言。 
「日本が進んでいるのは、電気自動車とか電池自動車という、技術面で世界に先行する自動車に絡んだリチウムイオン電池だけだ」 という。 
たしかに、トヨタの燃料電池自動車 (FCV) は本年度中に発売される予定だし、ニッサンや三菱自の電気自動車 (EV) は、来年度には発売される予定。 したがって、リチウムイオン電池の開発と、圧縮機の不要なスタンドの建設計画なども一気に進むものと考えられる。
この著書でも 「究極のエコカー・燃料電池車」 を取上げているが、記述内容が時間的に古いので、全面的に紹介出来ないのが残念。

これに付随して、家庭用燃料電池の 「エネファーム」 も取上げている。 ただし、電気は良いが同時に発生する熱を、これから中心になる老人などの小家庭では 本当に消化しきれるかどうかを心配している。
たしかに、われわれの意識の中には、原発を大前提とした時代の思考が残っている。 原発が主流の場合は、勝手に発電を停められないので、深夜電力とかゴールデン・ウィーク期間中の電力の消費が大問題であった。 このため、エコキュートの普及こそが最善の解決策だと信じられて政策の中心に据えられていた。 
こうした背景もあって、日本では太陽光だけがチヤホヤされ、ドイツの最先端住宅のように 太陽熱を大切にするという意識があまりにも欠けている‥‥。
オール電化住宅を盲信することも、改めなければならないだろう。
さらには、10年以上もまえから欧米で検討されていたように、宇宙空間で発電し、それを地上へ送るというイノベーションでないと、太陽光発電の単価的は 絶対に安くならないのでは‥‥。
太陽光の不当な買取制度の高さだけを金科玉条として、踊らせられている現状から少しは離れて、冷静に考える必要があろう。


次は風力発電。
この著書では、陸上の風力発電に対しては、北海道以外では否定的。 陸上で安定的な風力が期待できるのは東北以北。 騒音のことを考えると、北海道以外では難しい。 その北海道では送電線という大問題がある。
ということで、筆者が積極的に取上げているのは洋上風力発電。 
環境省は、2030年までに原発8基分に匹敵する803万kWにまで洋上風力発電を増やす計画。 2012年に、銚子沖3.1キロメートルに2400kWの洋上風力が完成しており、著者はそれを訪ねている。
そして、目玉になるのは《福島復興》のシンボルとて、経産省が2012年から計画している浮体式洋上発電。
丸紅、菱重工、新日鉄など10社と東大が共同で手掛けているもので、2012年に2000kWを計画し、2013年から2014年にかけて7000kW2基を追加して実証実験を行う。 その後は民間で100基程度の洋上風力発電を建設し、原発1基に匹敵するものにする計画。
この開発には想像出来なかった新技術が登場してきており、日本の成長戦略の1つになるのではないかと筆者は期待している。 しかし、洋上風力発電は陸上に比べてコストが2倍もかかるというデメリットがある。 このため、今年から20kW以上の陸上の買取価格22円+税に対して、36円+税という洋上風力発電の買取価格制度の新設を発表している。
ただし、ヨーロッパのように、海岸線から見えない位置に立地するように指導してほしい。


次はマグネシウム発電。
これは2012年に東北大の小濱教授グループが発明したもので、リチウムイオンに変わるものとして期待されているもの。
そもそも開発されたのは、時速500キロで走るエアロトレインの車体。 マグネシウムはアルミの60%の重みしかない。 難燃性マグネシウム研究のオーソリティである産総研の坂本氏の紹介を得て、時速200キロで新幹線の半分、リニアモーターカーの1/5という画期的な超低燃費性能を獲得している。
この時は、電池とは全く無関係。
「燃えにくいマグネシウム合金は、もしかしたら電池としての能力があるかもしれない」 と考えた教授は、マグネシウム合金を海水に浸して即席で電池をつくり、小型のファンを回してみた。 仕事が立て込んでいたのでそのまま3週間放ったらかしに‥‥。
仕事が一段落して、帰ってきた時に聞いてみた。
「いつまで回っていた」 と聞いたら、「まだ回っています」 との返事。
マグネシウムには発火、燃焼を抑えるためにカルシウムが添加されているからの成果だった。
発電したマグネシウムは酸化する。 しかし、1200度で熱すると酸素と触媒が反応して再びマグネシウムだけを取出すことが出来る。
このあと、多面的な実験を行い、砂漠の太陽熱を利用すればマグネシウム燃料電池をリサイクルできるということが分かってきた。 
マグネシウム電池の最大の魅力は、その蓄電能力がリチウムイオン電池の10倍もあるという点。
しかし、砂漠の太陽熱の技術は、コスト問題と絡んで簡単に開発できない。 小濱教授は、「5年以内に研究開発のメドをつけ、なんとか実用に向けてまい進したい」 という。
マグネシウム・太陽エネルギー循環構想が本格化すれば、真に持続可能な社会が、日本の技術によって開花することになるかもしれない。


次は、藻類のバイオマス石油。
藻類のなかのユーグレナ (みどりむし) については、今まで2度に亘って紹介してきた。 食料として、あるいは飼料として有効なだけでなく、最近ではサプリメントや化粧品としてもその知名度を高めている。
その一方、バイオエネルギーとしても藻類の研究は、アメリカをはじめ全世界で研究が進められている。
筆者が紹介しているのは筑波大・渡邊信教授。
教授は石油成分をつくる藻はないかとさぐった結果、「ポトリオコッカス」 にたどりついた。
ポトリオコッカスはオイル含量は乾燥重量の75%も占める。 しかし、培養には時間がかかるのが大きな欠点。 このため、生産コストは1リットル当たり800円と、石油の50円どくらべると16倍もして勝負にならない。
そんな時、渡邊教授は「オーランチオキトリウム」を2009年に沖縄沖で発見している。
ポトリオコッカスに比べるとオイル生成量は1/3と少ないが、36倍の速さで増殖する。 単純計算ではポトリオコッカスの12倍。
オーランチオキトリウムは4時間で倍々に増え、コストは100円以下、場合によっては50円で上がるかもしれないとというデータが得られた。
2万ヘクタール (200平方キロメートル) あれば、日本の石油の総輸入量2億トンの生産が可能だという。 これは、千葉北東部から霞ヶ浦の面積に匹敵するという。 ちなみに日本の耕作放棄地は約40万ヘクタールで、その5%の面積がオーランチオキトリウムの養殖池として活用されるだけで、日本は石油自給自足国になれる勘定。 
やたらにメガソーラー用地として、耕作放棄地の転用を急ぐ必要はない。
先生は、有機排水を培養に再利用するとか、東北の被災地で活用することを考えている。
「ともかく2013年に仙台市に、藻類バイオマス技術開発実験室が開所されたので、5年かけて実証し、2020年までには間に合わせたい」 と言っている。 
日本が、石油の輸出国になることも、まんざら夢ではなさそう。

紙数が尽きた。 海洋温度差発電に関しては別の機会としたい。

posted by uno2013 at 12:58| Comment(0) | 書評(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月30日

著者は小泉元首相と共に確信的“脱原発派”だった‥‥(上)


大下英治著「自然エネルギー革命‥‥脱原発へのシナリオ」(潮出版社 1600円<消費税込>)

エネルギー革命.JPG

大下英治というと、大宅壮一のマスコミ塾の出身で「週刊文春」のトップ屋として鳴らし、政界や経済界、あるいは芸能界などの人物に焦点を当て 「小説 田中軍団」 に代表される三百数十冊に及ぶ著作がある。 
そのうち、経済畑を中心に、政治家、大学、経産省などをテーマにしたものを30数点を面白く読ませてもらった。 優秀なスタッフライターを抱えていて、取材は丁寧、なかなか読ませたが、思想的なバックボーンがなく、いま1つ物足りなさを感じさせられてきた。 
そして、最近はあまり新刊案内を見かけなかったので、どちらかと言うと過去の人になったのかな と感じていた。
たまたま図書館でこの著書を目にしたのだが、どうしても著者名と題名が一致しない。 あの人が 「自然エネルギー革命」 などという本を書くはずがないという先入観。 どうせオチャラカシで、読み物としては面白くても感動するところはないはずと考え、期待度はゼロ。
正直な話、今回はホンダで26年余、サムスンで8年余勤めあげ、フットプリントや電動工具など民生用リチウムイオン電池で先駆的な役割を演じた技術屋・佐藤登著 「人材を育てるホンダ ・ 競わせるサムスン」 が大変に面白く、住宅業界でも学ぶべき点が多かった。 したがって、この著をメインに取上げ、大下英治の著はどこまでも副次的に使う予定だった。
ところが、たいしたことはないと思って読み始めたこの著書が、自然エネルギー革命に関しては、今まで読んだどの学者先生の本よりも 説得力を持って迫ってきた。 つまり、小泉元首相と同じ“脱原発”の確信犯だった。

脱原発を叫ぶかどうかは、個人の自由。 
しかし、ほとんどの日本人は、「もう日本では原発の新設は考えられない。 いきなり脱原発を叫ぶより、現存の原発を安全なものに改良して、寿命が来た時点ですべてを廃炉にしてゆく。 その間に、原発に変わるエネルギーを、精力的に開発して行くべき‥‥。 いきなり全部の原発を廃炉にすると やたらに電気料金が高くなる。 現在でもkWh当りの家庭用電気料金は、米ドル換算でアジアの中では日本が一番高くて、0.2ドル。 次いでシンガポールの0.18ドル、上海・北京が0.12ドル、韓国に至っては日本の1/3以下の0.06ドル。 こういった諸事情を考えると、電気料金の値上げはあらゆる面で日本の国際競争力が弱め、弱体国家化に拍車をかけるようになる。 それでは困る」 と考えているのではなかろうか‥‥。

2050年までに、100%を自然エネルギーにするというシナリオが、環境エネ政策研の 「自然エネルギー白書2014のグラフ図集」(全48ページ) をダウンロードすると 39ページに掲載されている。
http://www.isep.or.jp/jsr2014

私の考えは既に述べてきたとおり。 
まず、「今までの原発関係者と地震学者の責任を明らかにし、最低60〜80ガルという直下型地震に耐えられるように原発を根本的に改造する。 そして、これからも10万年間以上は大きな地震がないと考えられるロシアの地層に、日本の技術力と資金で共同の原発の最終廃棄物貯蔵庫を建設すべき。 この完成には最低でも30年の時間がかかろう。 その努力を今から始めないと間に合わない」 というもの。
そして、この著書を読んで、長期的に有力なのは、@地熱発電、A洋上風力発電、B海洋温度差発電、Cマグネシウム発電‥‥が挙げられることを知った。 そして、発電そのものではないが、D水素燃料電池、E砂漠地帯で発電したのを大型蓄電池に蓄えて日本へ運ぶ、F新しい藻から石油を開発する‥‥など、眼からウロコのプロジェクトの存在を気付かせてくれた。

日本では、再生可能エネルギーというと、手っとり早い @太陽光、A陸上風力、B地熱、C小型の水力、Dバイオマス しか考えられていない。
資源エネルギー庁が決めた 平成26年度 (2014年度) の固定価格買取制度の買取価格と期間は以下の通り。
http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/kakaku.html

しかし、この固定買取価格制度は、ドイツで大騒動が起こったように、問題点が多い。 
日本も自然エネルギーと言うと手っとり早い太陽光を選ぶ。 そして太陽光による固定価格買取制度は、リスクが少なくて確実に利益が見込める。 このため、投機資本と不動産資本が乱入して、この制度を食い散らかしている。 このため、あっという間に家庭用電気代が値上がりして大きな騒動をドイツにもたらした。 
先に書いたように、日本の家庭用電気料金はアジアで一番高い。 その事実を無視して、ソフトバンクの孫社長は強制的に家庭用電気料金を上げるように画策した。 日本の家電の料金が、韓国とか中国並だったら決して反対はしない。 一番高い電気料金を払っている国民に、更なる負担を強要しょうとしている態度には、どんなに贔屓目に見ても納得出来ない。

上の資源エネルギー庁の買上価格をみて、気がつくのは10kW以上のメガソーラが異常に優遇されていること。 価格が32円+税で、期間は20年間。
これに対して、10kW以下の家庭用太陽光は37円だが+税がなく、期間は半分の10年間。
メガソーラーが32円+8%の税とすると34.56円。 32円+10%の税だと35.2円。 しかも期間が20年ということだと、住宅を建てる人はムリをしても延40坪以上の住宅にして、片流屋根で1.5寸勾配を選び、何としてでも10kW以上の太陽光を搭載したくなってくる。
景観とかデザインを無視させる方向に、資源エネ庁の政策が作用している。
役人は、自然エネルギーの成果を上げることが、求められている。 本命となる地熱発電とか海洋風力発電、バイオマス発電などは軌道にのるまでにどうしても調査などの準備期間が必要。 このため、いろんな矛盾を無視して、当面は太陽光を優遇して見た目の成績を上げることに注力せざるを得ない‥‥というのが現状だと思う。 せめて蓄電池とパッケージなっておれば良いのだが、太陽光発電の設備利用率はたったの13%。
これは非常に重い桎梏となって、消費者に襲いかかってくる。 ともかく経産省には、消費者視点がなさすぎる。

さて、前置きはこの程度にして、著作の内容紹介に移ろう。
最初に登場するのは地熱発電。
この本は9章から成り立っている。 有効ページ数から割りだせば1章に使えるのは25ページ程度。 ところが、地熱発電に20%のスペースを割いている。 しかし、それだけ紙数を使いながらも、地熱発電では目覚ましい成果が未だに上がっていない。 この事実こそ、自然エネルギーの難しさであり、私の筆者に対する信頼度が一気に増すことになった。
話は39年前の1975年。 ツーバイフォー工法がオープン化した翌年。 出光興産の天坊会長がサンディエゴのセミナーで、「世界の利用可能の地熱の25%が日本にある」 との話を聞いた。 第一次オイルショックの後だったので、この言葉が天坊会長を捉えた。 そしてつぶやいた。「日本には地熱に関する法律がない。 法律作りから始めねばならない大変な仕事だ」 と。
日本には、過去2回地熱ブームがあった。 第1次ブームは1966年で、松川 (岩手) や大岳 (大分) が続いた。 第2次ブームはオイルショックの後。 1990年代に9基、32万kWが開発された。
出光興産はいくら地熱を開発しても電気事業法で縛られ、九電が蒸気を買ってくれない限り事業化が出来ない。91年にやっと蒸気購入の合意が出来、95年に着手し、96年に2.5万kWが稼働開始している。
しかし、1980年代に原発の方向へ大きく舵が切られ、97年には原発保護のために地熱発電は新省エネの対象から外されてしまった。 日本には原発23.5基分に相当する地熱発電ののポテンシャルがあると言われている。 しかし、開発されたのは2348万kWの、たった2%の54kWに過ぎない。
それ以降は、放置されたままになっていた。

転機が訪れたのは2011年の原発事故。 2012年には調査費として180億円の予算が付けられた。
カネだけではなく、地熱発電の適地の80%は国立特別保護区にある。 このため、環境省は法律の改正に動いてくれた。 しかし、地熱発電を軌道に乗せるには、ともかく優良事例を出して、地域の人々に納得してもらうことが基本。 
その具体的な優良事例として期待されているのが福島県・磐梯朝日国立公園内の 「福島地熱プロジェクト」。 
名乗りを上げているメンバーは出光興産、石油資源開発、三菱マテリアル、三菱ガス化学、国際石油開発帝石、三井石油開発、住友商事、三菱商事、日本重化学工業、地熱開発の10社・グループで最強。 そして、日本最大となる出力27万kWの地熱発電所計画。
これだけのメンバーが揃い、政府の全面的な支援があれば、絶対に成功するはずだと私のような素人は考えてしまう。 しかし、開発予定地は福島市、郡山市、猪苗代町など6市町村にまたがっている。 その中には温泉業者や自然保護団体の関係者も居る。 温泉業者と地熱発電は各地でウィンウィンの関係にあるが、疑問を持つ人も多い。
環境省が試算した経済効果は、1000億円の投資で2000億円の波及効果と1.6万人の雇用創出効果があるという。 観光客の増大も期待される。 しかし、運転が始まれば、原発のような多くの雇用は期待できない。 これは太陽発電にしても同じで、地元の雇用は増えない。
調査井の掘削場所を選定し、採掘して事業計画の絞り込むまでに2〜4年。 それが済んでやっと蒸気生産井と熱水還元井の掘削が始まり、噴気試験などを行うまで7年。 その後に環境アセスメントを実施すればこれに4年間。 最低でも発電開始までには10年はかかるというプロジェクト。
太陽光発電のメガソーラの投機的な動きに比べると、あまりにもリスクの多い事業。 正直いって、これほど困難で、悲痛な事業だとは考えてもいなかった。

天坊会長の寝食を忘れた必死の努力を見て、孫社長はどのように感じているのだろうか?



posted by uno2013 at 07:03| Comment(0) | 書評(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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