2015年05月25日

中国はアメリカを追越せず日本も健闘。BRICSの時代は終焉! (中)



【中国経済編】
山口  中国で長年ビジネスをやっていたが、これは 「やばい!」 と感じる事件が2010年から
 たて続けに起こり、撤退作戦を始めた。 それまでは、共産党の本部の言うことを金科玉条に
 していた地方が、本部の言う進出計画やカネのやり取りのルールより、例えば上海のルールの
 方が上だと言いはじめた。 おかしいと思って異業種の人に聞いたら、同じ経験をしている。
 一党独裁の国で、中央と地方のルールが違うと言われても対処方法がない。
 また、意見交換をしていた中国の学者はそれまで政府政策を批判することがなかった。 それ
 が急に 「今の政策はヤバイ」 と言い始めた。 そこで、大きな投資をしている企業に、「す
 ぐ撤退をはじめないと、間に合わなくなる」 と説得して撤退させた。
 2010年というのは、尖閣沖で中国漁船が海上保安庁の船に衝突事件を起こし、レアアースが問
 題化した時でもあり、シャドーバンキングなどの不良債権問題も浮上化してきて、経済政策の
 潮目がその時に変わった。
 この10年間上海に通っているが、上海でも空き部屋が目立ち始めている。 それでもバブルが
 弾けないのは、買った人が投げ売りしていないから。 今は我慢しているに限るという判断。
 それと、今まで買えなかった層が 「俺でも買える」 と思って動き出している。
吉崎  中国人の不動産取引の特徴は、借金をして買っていないということ。 だから塩漬にし
 ておける。 私も毎年上海に行っているが、2012年に双日が開いた講演会で、重慶市の幹部が
 是非発言させて欲しいと言って、「市では両江新区で巨大な開発をやっている。深センや浦東
 の投資に乗り遅れた会社は、是非投資してください」 と、パワーポイントを使っての素晴ら
 しいプレゼンティーション。
 しかし、その年は中国へ進出していた小売業や飲食店が破壊された。 そのため、「日中関係
 がこんな時に、投資しろと言われても出来ない」 という反論が日本企業から出された。
 そしたら、「われわれ重慶市が、命をかけて日本企業を守ります」 と断言した。 地方には中
 央では考えられない発想が確かにありますね。
 それと、日本から進出をためらわさせているのにPM2.5があります。 北京は盆地だから空気が
 淀むのは分かる。 しかし、上海は海のそば。 そこに3000万人もいるのに、誰も本気で怒らな
 い。 本当に不思議な国だ。
山ア  身の回りが急に汚れると拒絶反応が起こるが、除々だと案外慣れるのかも‥‥。
山口  僕らくらいの年代の人は、中学生時代まで本気で食うに困っていた。 今は食うには困
 らない。 したがってPM2.5には我慢している。 しかし5年先はどうなるかは分からない。
山ア  「中国企業は透明性で信用出来ない」 という意見が多い。 財務情報の開示は先進国で
 は当たり前。 ところが海外に上場している企業ですら、まともな監査済証明書付会計情報が
 ない。 アメリカの年金基金では一定割合は買わねばならないことになっているが中国の企業
 報は信用できないと、ボイコット運動も起こっている。 国内のバブル崩壊だけだと景気低迷
 だけで済むかも知れないが、グローバル化している企業の場合は、相当な混乱が起こるかもし
 れない。
 問題は、不動産バブルがどんな形で収束するか。 マンション価格は年収の20〜30倍。
山口  大都市の不動産は、手金で買われている。 その意味では姿が見えている。 ただし地方
 へゆけば行くほど、地方経済は借金で回っている。必ずしも不動産が手金で買われているとは
 言えない。
山ア  株価はハッキリ下がり始めた。 しかし地価は全国レベルで下がるところまでいってな
 い。 アメリカのサブプライム問題のように、ヨーロッパの銀行へ流れていないので、海外の
 金融機関への波及は心配しなくてもよい。 景気への影響だけ考えればよい。
吉崎  中国企業のすごいところも認める必要がある。 例えばIBMがレノボにパソコン事業を
 譲渡した時、今日のシンクパッドの隆盛を予測するものは誰もいなかった。 日本の稲盛和夫
 や鈴木敏文、宮内義彦クラスの人材が、中国には40〜50代でゴロゴロしていることを、知って
 おく必要がある。
山口  グローバルに展開している中国のトップ100社の社長で、英語が喋れないと言う会社は
 1社もない。 本音を言うと、日本の従業員と中国の経営者という組合せこそが、世界でピカ
 イチだと思う。 悔しいけれども‥‥。
 また、この発言には異論があると思うが、中国が名実ともに日本を抜いたら、もう日本のこと
 は眼中になく、アメリカのことしか考えない。ここで日本がズッコケなければ、あと10年あれ
 ば日中の立場は間違いなくひっくり返せる。 そうすれば、尖閣問題も自動的に解決する。

【新興国経済編】
吉崎  新興経済編に移りたいと思います。 まずは韓国。
 ある韓国観測者が言っていたのだが、「韓国の悪い癖は、願望と未来予想を一緒にしてしまう
 点」。つまり 「日本は落ちぶれればいいという願望が、日本は落ちぶれた」 と信じてしまっ
 ている。 
 2015年は日韓基本条約締結50周年。 日本は無償で3億ドル、有償で2億ドル払って、韓国は対
 日請求権を放棄した。 それが、今になって5億ドルで手を打った現政権の父親が悪るかったと
 言う意見が巻き起こってきている。
山口  日本と違って韓国は5000億ドルの対外債務を持っている。 この5000億ドルは常に外資
 引揚のリスクを抱えているということ。 韓国の外貨準備高は3000億ドル。 それだけで、韓
 国ウォンを支えきれるほど金融市場は狭くはない。 日本と韓国で締結していた300億ドルの
 通貨スワップが2012年秋で終了している。
吉崎  インドのルピーは、2013年に安部首相が増額していたので、アメリカの量的緩和縮小時
 でもそんなに売られなかった。 日本は韓国に対して2.5兆円ぐらいの貿易黒字がある。 日韓
 スワップ協定を結んでおいた方が、お互いに得になる。
 問題は、韓国は全輸出の50%が、片手で足りる企業でなされている。 サムスンとヒュンダイ
 が逝ったら経済がぶっ飛ぶ。 この時代、いつなんどき製品やサービスが陳腐化してしまうか
 もわからない。 現にサムスンのスマホが、中国企業に追い立てられつつあると聞く。
山口  韓国の富裕層はそのリスクに気付いて、もう行動をおこしているかも知れない。 アジ
 アの通貨危機が叫ばれた1996〜7年頃、私の知り合いの韓国企業の金持ちが、韓国の超低金利
 のカネを借りて、低金利の日本の銀行へ預金をしてサヤを稼いでいた。 同じことが起こって
 いるかもしれない‥‥。
山ア  日本製品が、世界のマーケットで韓国製品に負けているのは、オーバースペックのせい
 だと言われている。
山口  日本が韓国に負けているのは、貧乏人のマーケット‥‥言うならば雑貨屋勝負で負けて
 いるだけで、金持ちマーケットでは絶対に負けてはいない。 韓国が得意としている雑貨マー
 ケットには、台湾、中国が雪崩込んでいるし、インドやアフリカ諸国も進出する可能性が…。
吉崎  韓国はアメリカから距離を置き、中国へスリ寄り始めている。 彼らはアメリカが衰退
 して中国が這いあがってゆく過程だと判断している。 願望と未来予想がゴチャゴチャ。
 それが、対日関係にも表れている。
山ア  韓国が期待している中国の成長率が落ちてきている。 あまりスリ寄ると、中国経済の
 変調をモロに受け、金融面での弱点が露呈するかもしれない。
山口  先進国で人口が増えているのはアメリカだけ。 若年層が増え、財力と技術も持ってい
 る。 ノーベル賞受賞も世界で一番多い。
 これに対して、中国は人口が減り、2015年からは労働人口の減少が叫ばれている。 その中国
 が、アメリカに追いつくのは100年間はかかる。 日本との関係も、今は中国が大きく見えるだ
 けで、私は時間がくれば日本との関係も変わってくると、深刻には考えていない。
吉崎  世界で一番似ているのは韓国と日本。 日本へ来る外国人でダントツに多いのが韓国。
 訪問目的は3つある。「ビジネス」「観光」と「親戚や友人を訪ねるため」。 来日韓国人の
 1/3くらいが、親戚や友人を訪ねるためだという。  したがって民間人レベルでは、日韓関係
 は非常に良くなっているのだと思う。


posted by uno2013 at 11:07| Comment(0) | 書評(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年05月20日

中国はアメリカを追い越せず日本も健闘。BRICs時代は終焉!(上)



山口正洋、山ア元、吉崎達彦 鼎談 「ヤバい日本経済」(東洋経済 1500円+税)

日本経済.JPG

この 「ヤバい」 を、この本を読むまでは 「危ない」 と読んでいた。 つまり 「危ない日本経済」 のことを書いた本だと考えていた。
ところが、「ヤバい」 というのは、最近の若者言葉でいうところの、「すごい」 と言う意味だと知らされた。 つまりこの著書は 日本経済の危弱さを嘆いている本ではなく、「日本経済のすごさ」 を再確認しているもの。 
しかも、テーマごとに、3氏がそれぞれに分けて執筆するのではなく、最初から最後まで3氏の鼎談形式。 つまり、いろんな見方や意見が延べられていて、納得させられた。
今まで読んだ金融・経済の本は、最初から最後まで特定の個人の考えや意見で終始しているものばかり。 私のような素人には、著者の考えを支持するか、反対するかの二者択一の選択を強いられてきた。
住宅とか省エネ関係だと、それなりに判断出来る。 
しかし、金融・経済となると、自信を持って 「これだ!」 と選択出来る人は、情報取得の面から限られているのではなかろうか。

それと、山口、山ア、吉崎の3氏とも、初めて接する人ばかり。 
著名人だと、部外者の私でも単行本か雑誌を読み、ある程度の予備知識がある。 しかし、不勉強な私には、残念ながら今まで接したことのない人ばかり。 この本を読むまでは、どんな経歴の持主かが分かっていなかった。
しかし、さすが東洋経済の編集部。
鼎談させるために呼んできた3氏とも総合商社、銀行、大学教授、経済界、コンサルタントなどを転職し続けてきたモサばかり。 広い視野を持つ第一線のプロのエコノミストで、情報の新鮮が高い。 自分の固定概念を浸食されるのを怖れているそこいらの 「定食の賄い」 とはちょっと味が違う。 それだけに、もう少し早く紹介すべきだった‥‥。
だが、それが分かったので、私は安心してこの本に没頭してゆけた。
この著は大きく、【日本経済編】、【アメリカ経済編】、【中国経済編】、【新興国経済編】、【マネー編】 に分けて議論している。 それぞれの編の中で、とくに面白く感じたほんの一部分を抽出して紹介したい。

【日本経済編】
吉崎 3本目の矢が飛ぶ気配のことばかり問題にされているが、1年経って見るとデフレ脱却の
 可能性が濃くなってきた。 私はアベノミックスに極めて懐疑的な見方をしていた‥‥。
山ア アベノミクスの本質は資産価格誘導策。 円安にして株価と地価を上げる。 資産価格が上
 がればフロー経済が活発になって物価も上がるという狙い。 一応、前向に評価して良いのか
 もしれない。
山口 北海道のニセコは、外人が多数やってきて家を買ったので土地価格が上った。たしかに、
 東京・丸の内周辺の地価は上っているけど、通勤1時間半以上の地域では上っていない。 地
 価が上がらないと庶民は景気回復感がない。 日本の国債を5億円以上買った人には、日本国籍
 をあげると言えば、中国からどっと金持ちが集まってきて、財政赤字も少子化問題も解決され
 るかもしれない。
吉崎 5億円も払える中国人は犯罪を起こさないし、洗練されていると思う。 しかし安倍政権
 では、中国人に不動産購入権と永住権は与えられないでしょう。 しかしいくら外国人を呼込
 んでも地方の地価まで上げられない。 中央公論の14年6月に掲載された元総務相・増田寛也氏
 の「消滅する市町村は523」 にもなるという記事が話題になっている。 この著書の秀逸な点
 は、若い女性に見離されたら自治体はやってゆけないことを抉り出したこと‥‥。
山口  私は岩手県に住んでいおり、たしかに若い女性の少ない自治体の衰退は驚くほど速い。
 教育、医療、上下水道という基礎的インフラが、あと5年も もたないという自治体が多く散見
 される。 しかし当該自治体や住民の間では、それほど切迫感が見られない。
吉崎 現実の日本で起こっていることは、雇用者数が570万人と今が史上最高水準。 その内容を
 見ると非正規労働者が増えて1/3になっていることと、増加分は4:1で女性が圧倒的に多い。
 その理由が分からなくて困るっていたら、自動車メーカーの調査部の友人が教えてくれた。
 男はどの世代も免許書の保有率はほぼ同一。 ところが高齢の女性は免許書もなく、働いていな
 い。 ところが若い世代は働いているし、免許証も持っている。 これが雇用水準が最高という
 数字に現れているのではないか、というのだ。
山ア 3.11以降、貿易収支は赤字になり 大問題だと騒いでいるが、達観して言えは、国際収支
 は黒字の場合もあれば赤字の場合もあると考えて、悲感する必要はない。
吉崎 日本はモノづくりの国だから、「貿易立国を放棄してはならない」 と言う意見がある。
 この点を自動車メーカーの友人に聞いたら、「金融業と一緒にしてもらっては困る。 3万点の
 部品を組立てるサプライチェーンを作るのに3年間はかかる。 円安で国内リターン傾向は出て
 はきているが、3年先にどうなっているか? 
 「国内でのモノづくりしんどい」 と言うのが本音らしい。

【アメリカ経済編】
山口 オバマ大統領はは経済政策で失敗していると言われるけれども、基本的に悪いことは1つ
 もないと言うのが私の見解。 株価がリーマンショック前の高値を抜けたのは、2011年の東日
 本大震災の前だった。 問題の失業率も回復してきており、一番厄介だったのは住宅関連モー
 ゲージバック証券。 塩漬けになっていた民間の住宅ローンが、量的緩和の資産買入れで 片付
 いてきている。
 それとシェルガス開発。ゴールドラッシュを生で見たことはないが、アメリカの電気料金が劇
 的に下がり始めている。
 どうしょうもなかった金融セクターが立ち直り始めたので、アメリカ経済は万全。
吉崎 たしかにアメリカで変わったと実感出来るのは、住宅着工の推移。 思い切り踏み込んで
 いたアクセルを 少し戻しただけ。それを勘違いして、「新興国へ流れているドルがアメリカ
 のマーケットへ戻される」 と心配している向きがあるが、早合点してはいけない。
山ア ただ、先進国では景気が悪くなるとこれまでは財政政策でやってきたのが、最近では資産
 マーケットに働きかける金融政策が中心になってきた。 このため、不景気の後にブームが来
 ると過剰なクレジットが発生し、バブルが起こる懸念が高い。 この繰り返しが避けられなく
 なってきている。
山口 確かにウォールストリートを見ると、「こいつら懲りない野郎だ」 と思ってしまう。
 リーマンショック前にはレバレッジが10倍どころか100倍という商品がゴロゴロしていた。 そ
 して大暴落した直後には、「信用力は1しかないのだから10倍とか20倍のレバレッジは止めよ
 う」ということになった。 だが、クレジットの膨帳によるバブルはウォールストリートの体
 質化してしまっていて、「懲りない野郎」 になっている。 
 それと、アメリカ人は個人的には同じ体質。ご存じのとおり、アメリカの住宅ローンは返済出
 来ない時は、現物の住宅を差しだせば借金がチャラになるノンリコース。
 それと住宅の評価額が1億円だったものが1億2000万円になると、追加で2000万円余分に借りら
 れるというメチャクチャなシステム。 逆に1億円の評価額が途中で8000万円になると、8000万
 円しか借りられず 消費を詰めるかしか方法がなくなってしまう。
山ア 次期大統領候補として民主党はヒラリー候補が有力視されており、共和党は 「ティーパー
 ティ」 の存在が問題になっているが‥‥。
吉崎 ヒラリー候補は唯一頭を下げねばならないのが、キャロライン・ケネディ駐日大使。
 共和党では、「ティーパーティ」 が余りにも党を突きあげたので、決別騒ぎが起こった。沈静
 化してくるだろうが‥‥。
山ア となると、アメリカを動かしているのは一体誰なのかが問題になる。 日本は間違いなく
 官僚組織だが‥‥。
吉崎 アメリカでは、世論を動かしているモノとして知られているのがシンクタンク。
 このシンクタンクは、原則として独立していて非営利で政策志向的。 これに対して70%はシ
 ンクタンクを真似て大手業者からカネを受け取って世論工作をする「アドボカシ―」。 これ
 は企業の代弁者に過ぎない。 そうした多国籍企業群が最近力を付けてきて、世論やワシント
 ンを動かしている。
 アメリカでは、産業ごとに 「2強+その他」 というシステムを巧みに構築している。 価格
 を2番手にあわせて、3番目以下を駆逐する多国籍企業システムがのさばっている。
山口 それにしても、ウォールストリートの凋落ぶりは目を覆うばかり。 かつては、「法律は
 いつでも作れるし、変えられる」と豪語し、日本の金融庁なんか相手にしていなかったモルガ
 ンやゴールドマンが FRBの傘下に入ってしまった。ウォールストリートの時代は完全に終わっ
 たのかもしれない。
 それと、アメリカのIT業界では、目まぐるしいほど主役が入れ替わっていますね。クーグルや
 アップルだって、いつまでも栄えておれるという保証がない。
吉崎 シェルガスでもう1つ注目すべきは、アメリカの化学会社が、自分達が損をするのを嫌っ
 て、シェルガスの輸出に猛反対している事実。 供給がダブついての低価格競争。 一部では
 生産停止も伝えられており、商社が安く輸入してくれるとの期待は、難しい話かも知れない。


posted by uno2013 at 08:31| Comment(0) | 書評(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年02月20日

クローバル化とは途上国へのアウトソーシングとロボットソーシング



アル・ゴア著「アル・ゴア  未来を語る」(KADOKAWA 1800円+税) 

ゴア写真.JPG

半年前に、この著書が出版されたことは知っていた。
しかし、何しろ550頁にも及ぶ力作。 目次を見てもなかなか難しそうで、おいそれとは手にするわけにはゆかなかった。
著者は8年前に講演会の大好評を基に 「不都合な真実」 を書き、映画化された。 その映画に使われた鮮やかなカラー写真が、従来の白黒写真では得られないド迫力で、地球温暖化の危機を訴えていた。 2940円と高価だったが私も書店へ走り、2007年2月5日付のブログ欄で紹介している。
ご存じのように、ゴア氏は下院8年、上院12年の議員生活を送り、1993年に副大統領に選出されて8年間も要職にあった。 その副大統領が講演内容を映画化し、2007年にはアカデミー・ドキメンタリー賞を受賞するとともに、同年にはノーベル平和賞を受賞している。
「不都合な真実」 が必要以上に注目を浴び、ベストセラーになったのは、副大統領という肩書がモノを言った側面もあったと思う。 つまり、単なる学者の発言ではなく、副大統領の発言だから公約を実現してくれるだろうとの期待値があったからだと思う。
しかし、ノーベル賞をとった筆者は、この著では 「私は政治家という病気から回復中の身。
再発の可能性がほとんどないと言えるとまでに回復してきたところ‥‥」 と書いている。その言葉が、この著を敬遠させていたのは事実。

これは、政治家でも副大統領でもないゴアという一研究者が、気象危機から回避する目的だけでなく、グローバル化という新しい経済的課題に真正面から取組んだ、本格的な著書。 
氏はこれからの世界を動かす6つの要因をあげている。 
その6つとは、アース・インク (地球株式会社) であり、グローバル・マインドであり、力のバランス、増殖、生と死の再創造、それと崖っぷち だという。
こういった観念的な言葉を並べられても、さっぱり意味が分からない。 大変に読みづらいが、6章に亘って展開されている氏の言わんとすることを1つずつ理解して行くしかない。
すると、今まで霞んでいた大問題が、明確な輪郭を持って迫ってくる。 
正直言ってこれほど面白い本だとは知らなかった。
そして、著者の言わんとすることを正しく伝えようとすると、1章だけでも最低3回に分けて解説しなければならない。 それをやるだけの価値はあると思う。 だが、私のブログ欄を、2〜3ヶ月もゴア氏の著作の紹介だけに費やすことは出来ない。
第1章のアース・インクのほんの一部の要点だけを かいつまんで紹介したい。 
関心のある向きは是非とも本著を入手され、他の5章も楽しんでいただきたい。

人類は、道具を使っての狩猟採取生活を20万年続けてきた。
小麦やコメの栽培という農業を開発しての定着生活が、それから8000年弱も続いた。
そして、アメリカでは産業革命以降の150年間に、90%も占めていた農業労働人口がたったの2%にまで激減した。 多くの人々が、農村から都市へと異動した。 
人々の意識と生活パターン変える大変革だったが、経済成長が発展して雇用を大きく増やし、平均所得を増大させ、貧困を減らして生活の質を歴史的に大改善した。
農業の機械化によって、農業の雇用が大幅に後退した。 生産性が大きく向上し、食糧価格は急落した。 だが、工場で生まれた新たな雇用が、農場で失われた雇用を大きく上回っただけではなく、収入も増えた。
中流階級が多く誕生してきて、社会の層が厚くなってきた。 
これを推進してきたのは、紛れもなく技術革新による生産性の向上だった。

しかし、私どもが学んできたこうした法則や考え方は‥‥人類がこれまで経験しなかっただけではなく、想像もしなかった速度と規模で進行しているアース・インク (地球株式会社) の時代には、通用しなくなってきている。
今までは、先進国のことだけを考えておれば良かった。 しかし、地球株式会社の時代には、ありとあらゆる国の労働者のことを考えざるを得ないと同時に、機械化という大問題も併せて考えねばならなくなってきている。
次の2つの大変化が、同時に起こっている。
1つは、先進工業国から、賃金の安い人口を多く抱える発展途上国や新興経済国への、仕事のアウトソーシング。
もう1つは、コンピューターやITによって向上が目覚ましい人工知識に代表される 仕事のロボットソーシング。

この2つのアウトソーシングが、グローバル経済化という名で、けたたましく進行している。
政治や政府の政策の世界では、「国家国民」 という概念が、今でも通用している。 しかし、経済面に関しては、もはや国家とか国民という概念は存在しない。 
雇用者は、簡単に自国の工場を閉鎖して低賃金国に工場を移すか、ロボット化で生産性を挙げるかの、2つの選択肢が出てきた。 しかし、職を失ったアメリカやヨーロッパ、日本の労働者から見れば、どちらも結果は同じで、失職には変わりがない。 
政策立案者は、生産性が向上しておれば、その結果を成功とみなす。 生産性の向上こそ、経済活動の終局の目的ととらえられてきた。 だが、アウトソーシングとロボットソーシング加速化で、先進国では雇用が停滞してきている。
賃金の低い国の労働者は、アウトソーシングで雇用の恩恵を受ける。 しかし、雇用者はアウトソーシングで得られたカネで、ロボットや自動化設備を導入できる。 そして、低賃金国でも雇用が次第に奪われてゆく。 中国の電子機器メーカーのファックスコン社は、今後の2年間で、100万台のロボットを新規に配備すると発表している。

そして、人工知能以上に大きな影響が与えられると考えられているのが3D印刷。
積層造形と呼ばれている製造プロセスは、三次元の極薄の層を重ねてゆくもの。 現在は比較的小さな製品に的を絞っているが、ロスアンゼルスのクラフティング社は、ドアと窓を別にして、わずか20時間で家が完成する巨大な3Dプリンターを完成させている。 
専門家は、「現在入手可能な3Dプリンターは1〜1000点までだが、数年以内に10万点をつくりだせるようになる」 と言っている。
そうした場合の、雇用の喪失のスピードを考えてもらいたい‥‥。

こうした結果、世界で貧富の差が拡大している。
アメリカでは、キャピタル・ゲイン所得の50%が、0.001%の超高額所得者の手に渡っている。
今やアメリカは、エジプトやチュニジアより貧富の格差が大きいのだ。
上位1%の年間所得は25年前までは12%だったが、今では倍増して25%になってきている。
富が偏在することで、消費が伸びない。 かつての中産階級の時代は消費の時代だった。 いずれにしても、世界の消費を引っ張ってきたのはアメリカやヨーロッパの消費者。 それが、アース・インクという地球株式会社によって、その基盤が失われようとしている。
また、アメリカの4半期ごとの成果で評価するという悪しき習慣も止めねばならない。
危機にある資本主義を、どうしたら持続可能なものにしてゆくか‥‥。

新たな雇用を生み出さねばならない。 アウトソーシングやロボットソーシングで職を失った所得は、公共財で埋め合わせねばならない。 しかし、アース・インクで利益を挙げたエリート層は、ことごとく、こうした動きを妨害してきた。
良いニュースは、インターネットはアウトソーシングとロボットソーシングを促進してきたが、同時にエリート層に支配されない新しい政治的影響力を構築してきていることだ。
次章以降では、この問題に焦点を当てたい。


posted by uno2013 at 12:49| Comment(0) | 書評(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。