2015年11月10日

スカイツリーには、こんなに面白い裏話もあったのですね。


根岸豊明著「誰も知らない東京スカイツリー」(ポプラ社 1400円+税)

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東京スカイツリーの観光性とか耐震性については、すでに3冊の本を読んでいたから、すべて分かったつもりでいた。
ところが、57年前には332.6メートルと その高さを世界に誇った東京タワー (1958年建設) だが、最近では230メートルを超す超高層ビルか10ヶ所ちかくも増えていて、16号線周辺が東京タワーからの受信限界になっているという。
とくにひどいのは、デジタル放送用のアンテナ。 300メートルにも満たない高さなので、200メートルを超える超高層ビルの谷間に埋もれて、東京タワーから離れると受信環境は極端に悪くなっているという。 当然、ミニ中継局が必要に。 ところか、デジタル放送のワンセグでは収益力が悪く、ミニ中継局の設立は、宙に浮いたまま‥‥。

もちろん東京タワー (日本電波塔社) も手をこまねいていた訳ではない。 1998年に現東京タワーの隣地に、高さ707メートルの新・東京タワーを建設する計画を打ち出した。 ところが、国交省からヨコヤリが入った。
東京タワーが出来た頃には、それほど航空需要も多くはなかった。 このため、現・東京タワーの建設時にはサシ止めが見逃されていた。 しかし、東京タワーが建っている港区は、航空管制区域内。 そんなところへ707メートルという超高層構造物を建てることは、「絶対に許せない」 というのが、国交省の言い分。
つまり、現・東京タワーの5〜10メートル程度の嵩上げ程度だと 役所も認めてくれるかもしれない。 しかし、100〜300メートルという大幅な嵩上げ工事は、絶対に認めて貰えないと言うのが関係者全員の判断。 しかし、嵩上げ案を自ら否定する必要はない。 最悪の場合は それで対応しなければならないかもしれないからだ。
東京タワー (日本電波塔社) は、メインの株主はサンケイグループで、テレビ朝日、TBSも株主として名を連ねている。 そうしたメンバーを含めた在京6社が、「今までの東京タワーでは地上デジタル放送はムリ。 何が何でも新・東京タワーが必要だ」 というので、1999年に 「タワー検討プロジェクト」 を発足させている。
それが2003年には 「タワー推進プロジェクト」 に名前を変え、候補予定地は名乗りを上げるように呼びかけていた。
このプロジェクトに加わった在京6社とは、NHKテレビ、テレビ朝日、日本テレビ、TBSテレビ、フジテレビ、テレビ東京の6社。

筆者はメディア戦略部長としてこのプロジェクトに初めて参加したのが 2004年6月というから、発足から5年近くの歳月が過ぎていた。
会議は新装なったテレビ朝日本社の役員室で行われた。 出席したのは、新タワー推進プロジェクトのリーダーであった斎田テレビ朝日専務のほか2人。 NHKテレビからは総合統括部長ほか2人。 日本テレビからは技術統括局次長と私。 TBSからはメディア推進部長ともう1人。 フジテレビからは経営企画部長と1人。 テレビ東京からはメディア開発局次長ともう1人の 計14人。
この日の主な議題は、すでに名乗りを上げている15の候補地の中から、最適地を如何にして絞って行くかと言うこと。 このため、6社から2人組の人選を行い、2社が1組になって15の候補地を分担して、事前の調査を終えていた。
日本テレビの例だと、「さいたま新都心」 を、テレビ東京と一緒に担当したし、「台東区」 はフジテレビと、そして 「新宿区」 はテレビ朝日と組んで調査を終えていた。
名のりを上げていた15とは、足立区は@舎人公園 A東六月 B入谷。 練馬区は@としまえん A光が丘公園 B練馬駅北口。 豊島区は@南池袋、Aサンシャイン60近くの造幣局を移転させ、跡地に新タワーを誘致するというもので、当時一番有力視されていた東池袋案。 新宿区は@新宿6丁目、A神宮外苑案。 台東区は@墨田公園と、A東武鉄道の押上案。 このほかに、さいたまの議会や議員が県や区と一緒になって誘致活動を続けていたさいたま新都心案、文京区の春日1丁目案と、港区芝公園の現・東京タワーの15案。
ただし、最初から基本ルールがあった。 それは、「テレビ局は候補地を募集するが、事業の運営主体は、誘致する側にお願いする」 というもの。 現在の東京タワーがそうなっているので、それを踏襲したまでのことだが、テレビ局が運営するとなると最小限の予算で、放送用アンテナだけに限られる。
折角、600メートルもの高い建物を建てるのだから、観光用と兼合わせて考えた方がよい。 しかし、テレビ局側にはそんな人材もいないし、ノウハウもない。 どこまでも 「店子」 に徹すると言うのがプロジェクトの最初からの約束ごと。

こうした調査の結果報告のほかに、当日のもう1つの主議題は、有識者委員会の設置。
推進プロジェクトですべてを決めるのではなく、各界の専門家に集まって頂き、その耐震を中心とした防災性や環境対策面など多彩な細部検討を行った頂き、最良の場所を選定して頂く。 それには各界の専門家からなる有識者委員会の設置が不可欠。
2004年8月には,タワー推進プロジェクトとして、有力な候補地として以下の3案と、補助として現東京タワーを存続して使うという4案に絞っていた。
新規に選定された3案というのは、「台東区・押上」、「さいたま新都心」、「豊島区のサンシャイン60脇」。 つまり、この時点で他の11候補は葬り去られた。
そして、10月には、中村東工大名誉教授を委員長とする有識者委員会が発足している。
メンバーは、建築からは陣内法大教授、後藤早大教授、デザインからは平井長岡造形大教授、環境からは神田東大教授と中野芝浦工大講師、地震からは古村東大助教授、電気・電子工学からは都竹名城大教授、観光からは安島立大教授の計8人が選ばれている。
この有識者委員会は12月に第1回が開かれた。 委員会は3回、小委員会は2回、幹事会は16回にも及んだ。 そして、各候補地の事業性も考慮して、2005年の2月には委員会の採決で候補地を1つに絞った。 台東区・押上案が9名中6人が賛成し、新さいたま案は3人が賛成した。 その他は0人という結果。
この結果に基づき、3月には選考理由と提言をまとめた報告書を提出。

新さいたま案は、県の全面的な応援と、議員や消費者の支援も多かった。
しかし、ほとんどの世帯のアンテナの向きを変えねばならない。 マンションや個人宅では、新しい投資が必要になってくるところもある。 それよりも懸念されたのは、横浜以南での受信障害の発生の怖れ。 したがって、テレビ6局側では、最初から困難視していた向きもあるようだ。
そして、トップに選ばれた東武鉄道とテレビ6局はのタワーの仕様、経営、安全性、電波障害対策で話合われたが、スムーズに話が進まなかった。
その1つの原因は、親局を新タワーへ移すと、現中継局との間で起るであろう電波混信。
これに対する目途が、6局側でも掴み切れておらず、調査待ちの段階だった。
また、テレビ6局側のリーダーが、斎田テレビ朝日専務から、飯島フジテレビ取締役に変わっていたことも若干影響した。
そして、テレビ6局側は、長期的な利用を前提にした賃貸条件を出していた。 (それが、どの程度の額であったかは、最後まで読んでも不明のまま。 したがって、一方的にテレビ側を応援することは出来ない‥‥)
問題になったのは、難視聴対策費。 これまでも東武鉄道に押し付けられたのでは、とてもじゃないが採算が取れない というのが東武鉄道の担当者の考え。 そして、東武鉄道の事業計画表では、一時期のブームが去れば、この事業は赤字になるとソロバンを弾いていた。
テレビ6局側からすれば、もっぱらテレビ局側からカネを引出すことばかりを考えて、売上を増進させるという前向きの姿勢が 東武鉄道の担当者には一貫して見られない。
相互の不信感か強まり、一触即発。 つまり、2006年1月の時点では、「交渉決裂か」 というところまで追い込まれていたらしい。

そこで、動いたのは東武鉄道の新タワー事業の責任者である鉢木専務。
飯島フジテレビ取締役、土屋NHK部長。木村TBS次長と腹を割って話し、2月に入って根津東武鉄道社長の再提案が出された。 この再提案で、話は前進を見せた。
このあと、新さいたま側への断りの説明をどのようにするか、新会社の設立と暗雲、スカイツリーの2013年の開業と予想を超える訪問客など、いろんな話が続く。
その反面で大問題が発生していた。
「ほとんどの家庭で、障害は絶対に発生しない」 と太鼓判が捺されていたはずなのに、多くの家庭で予想外の、「ブースター障害」 が起きてしまった。
これは、東京タワーからの弱い電波を受けていた世帯は、これでは良く映らないためにブースターを使って鮮度を高めていた。 そのブースターが、スカイツリーからの強い電波をさらに強くするので、オーバーフロー現象を起こしたのだ。
思わぬ 「ブースター障害」 に見舞われ、テンヤワンヤの仕儀と相なった。

この著書の副題は、「選定・交渉・開業・放送開始‥‥10年間の全記録」。
この著書が面白かったのは、月々の賃貸料金以外の全ての記録が提示されていること。
私は、個人的にツーバィフォー工法とR-2000住宅に関して、中心的に関わってきた。 そのおかげで、木質構造の素晴らしさと高気密・高断熱住宅の有難味が身にしみて分かった。
しかし、この著書のように、全てを記録してきたわけではない。
ジャーナリスト出身だから、出来るだけ事実に忠実であるように書いてきたつもり。 だがこの本を読んで、私は 「記録不足」 だったことに気がついた。
正しい記録さえあれば、後世の人々は勇気をもって新しいことにチャレンジ出来る。
私は、「まだまだ記録を残すことに本気度が足りない」 と、深く反省させられた。


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2015年06月10日

医学界の最先端技術の報告書――29回医学総会記念出版物



井村裕夫編 「医と人間」 (岩波新書 800円+税)

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岩波新書には、時折裏切られる。 思想が前面に出すぎて、後味の悪い読後感しか残られないものを 時折見せられた。
しかしこの著は、iPS 細胞、ロボット治療、先制医療など医学の最前線技術に関する論文が6編、医療の現場からの報告書が5編から構成されている。 そして、ここに書かれた内容は、今年の春に神戸で公開展示され、大阪でフォーラムで発表されたもの。
もとより、医学に関する知識が私にはなく、11編の内容全部に触れるだけの蛮勇と専門的な知識を持合せていない。 しかしその中で、素人なりに面白く読んだ最前線の技術論文3編の、ほんの一部だけを取上げて紹介したい。 


●再生医療と創薬  山中伸弥 (京大 iPS 細胞研究所長)

iPS 細胞はほぼ無限に分裂して必要量まで増やすことが出来る点が良い点。 ガン細胞も増え出したらとまらない。 しかし、iPS 細胞は、分化させて心臓細胞とか綱膜細胞にすると増殖しなくなる。 未分化の細胞が残っていなければ、ガンになることは防げる。 だが、未分化細胞を完全に見つけ出し、100%なくするということは非常に難しい。
ほぼ完全に分化してしまった心臓、網膜、血小板、赤血球を移植する場合と、例えば脊髄損傷の場合は神経幹細胞という分化途中の細胞を移植する研究も進んでいる。 つまり、どの病気を治療するかによって、使う細胞の種類や戦略が異なってくる。
iPS 細胞を使って治せる病気やケガは限られている。 1種類、もしくは非常に少ない種類の細胞の移植でよい病気やケガに限られる。

今、一番研究が進んでいるのは、網膜の病気。 脊髄損傷も進んでいる。 心臓疾患には心筋の細胞を移植する。 パーキンソン病は、神経細胞の中のドーパミンを作っていた機能が不全になって起る病気。 したがって、iPS 細胞からドーパミンを作る神経細胞が作れないかと研究中。
このほか、糖尿病の研究も進んでいるし、ガンを攻撃する免疫細胞が出来ないかという画期的な研究も進んでいる。
そして、当初は患者の皮膚細胞から血液細胞をもらって、これを培養していた。 しかし、数ミリ四方でも皮膚を傷つけていた。 それが最近では通常の採血で良くなり、患者の負担を少なくすることが可能になってきた。
iPS 細胞研究所には、学生を含めて現在300人以上の研究員がいて、研究グループだけで約30もある。 当研究所の目標は4つ。
@つ目は、基礎技術の確立と特許の確保  Aつ目は、再生医療用 iPS 細胞のストックの構築  Bつ目は、前臨床試験から臨床試験へ  Cつ目は、患者さん由来の iPS 細胞を用いた治療薬の開発。

この中で、再生医療も大切だが、iPS にとっては創薬研究も非常に重要な分野。
再生医療の分野では、iPS が対象になる分野は限られるが、創薬となるとほとんどの分野が網羅できると考えられる。 しかし断っておきたいのは、iPS 細胞が直接病気を治してくれるということではない。 薬を開発する様々な段階で iPS 細胞が貢献するという形。 言ってみれば、「縁の下の力持ち」 的な役割。
通常、新薬の開発には十数年間の長い期間と、何億円という膨大な費用がかかると言われている。 しかも、それだけ時間とカネをかけても、成功確率は数万分の一だと言われている。
そして、例えば ALS (筋萎縮性側索硬化症) という全身の運動神経が機能しなくなり、身体を動かせなくなる病気がある。 
この場合に、ネズミを使ってこの病気の特徴を調べ、その上で薬を開発して再びネズミに注射して効果のほどを確かめる。 しかし、ALS という病気の場合は、ネズミに効果があっても、人に全く効果がない場合がある。 場合によっては単に効かないだけでなく、強烈な副作用がある場合もある。
そんな時に、iPS という人の細胞で研究が出来るようになってきたのである。
患者さんの血液を貰って、大量の iPS 細胞を作り出す。 それを ALS に感染させて、ALS の患者さんの体内で起きている神経細胞の様子を外で再現する。
そして、沢山の候補の薬の中から、絞り込んだスクリーニングが容易に行える。 さらに、ある程度の効果が期待できる薬が特定出来れば、副作用の有無や心臓や肝臓に対する毒性なども調べることが出来る。

一番問題になるのは、アルツハイマー病。 アルツハイマーは、絶対に一括りには出来ない。
患者さん個々によって 病気の原因が異なることが、iPS 細胞を使っての研究の結果で判ってきている。
しかし、あらかじめ iPS 細胞を使って、患者さんをクループ化して、分類化しておくことは大切なこと。 アルツハィマー病の患者を分類せずに、全体に効く薬を開発しょうとすると、とんでもない結果になってしまう。
副作用が少なく、効果があると考えられる患者さんだけにその薬を試すという形。 その人たちだけにでも効けば、十分だと考えるべき。
このように、iPS 細胞を使った創薬研究は、非常に有望。 残念ながらアメリカが圧倒的に早く進んでおり、日本は出遅れている。 再生医療には国の支援があるが、創薬にはない。 
しかし、間違いなくポテンシャルが大きいのは、再生医療ではなく創薬研究。 研究者だけでなく、広くそのことを判って欲しいと希求する。


●革新的ロボット医療を創る  山海嘉之 (築波大システム情報教授)

まず、障害を持った人の身体機能を補助・改善・拡張する目的で開発された HAL (ハル) について、簡単に説明することから始めたい。
この HAL というのは、ロボットと人を機能的に一体化させることに成功した、世界で最初の一体化ロボット。
この HAL には、人工知能で自分で判断して動く 「自律制御型」 の機能と、人間の意思で動く 「随意制御型」 の機能の両方が、最初から付加されている。 つまり、ロボットの制御と人の制御の両方が可能という珍しいロボット。
人が身体を動かすのは、脳から 「椅子からち立ち上って、こちらへ来なさい」 という命令が、脊髄を通って伝わってくる。 筋肉がその命令を受けて椅子から立ち上り、命令された位置へ移動する。 そして、動いている最中に、「立ち上った」 という感覚情報が脳に戻ってくる。 この神経の信号という循環が作用して、脳は適切に維持している。
しかし、脳・神経・筋肉に障害が発生すると、この循環が成立しなくなる。 動けないという事態が起こる。
生物には、基本的に備わっている電気的な信号 (これを正式には生体電位信号という) は、細胞内のイオンの濃度差によって起こるが、神経細胞や筋肉だけでなく、皮膚表面に電気的な信号として漏れてくる。
身体の運動機能に障害がある時は、皮膚表面に漏れてくる電気的な信号は極めて微弱だったり、マバラだったりする。
HAL はその微弱な信号を、独自に開発したセンサーで読み取り、適切に処理をすることでロボットを動かすことに成功。 

正常でない信号であっても、これを解析し、整え、補正することによって、人の意思を反映させ、実際の関節運動を HAL が実現させて、装着者を身体を動かしている。
HAL の中には、いろんなものが装填されている。
まず、電気的信号を計測するセンサー。 身体の重心のバランスを読み取るセンサー。解析・制御のためのコンピューターをはじめ、バッテリーやモーター。 関節角度を計測するセンサーなどのパワーユニット。 それに装着者の身体を支えるボディフレーム等々。
そして、運動機能障害者であっても、装着して身体を動かしたいと思えは、皮膚表面の微弱な電気的信号を読みとって解析し、補正しながらスムーズに動くよう支援をしてくれる。 このように自分の意思でロボットが動く制御システムを、「サイバニック随意制御」 という。
また、障害が重いとか、機能が低下した場合は、前記のサイバニック随意制御での制御は困難に。
その場合に、事前に用意しておいた人間の基礎運動パターンや動作のデーターベースで、装着者の周りの環境や姿勢によって正しく制御するシステムも組まれている。 これをはロボットに主体性を持たせた 「サイバニック自律制御」 という。 
つまり、人間とロボットが融合してして制御するハイブリッドという革新的な技術を備えているということ。

そして、ハイテクと呼ばれる技術は、アメリカを中心とした軍事技術をルーツに開発されてきたという歴史がある。 宇宙開発も、ミサイル開発も、インターネットも同様。
日本は、ハイテクの軍事技術を開発することが許されなかった。 
そのため、戦後は民生品の大量生産のためのハイテク化を進めてきた。 しかし、物造りは次第に人件費が安い後進国に移ってきている。 近隣諸国に生産拠点を移した日本は、どこにハイテク開発の場を求めればよいのか?
この疑問に対して、著者は医療分野と福祉分野こそ、最先端技術創出の場になるのではないかと断言している。 それを実証したのが東日本大震災。 放射能被曝の中で、如何にして社員の安全を守るかで、東電の現場責任者が飛び込んできた。
求められた性能は、放射線被爆の危険を最小限にして、冷却装置を備えた全身型の HAL。
このプロジェクトは、震災発生後にすぐスタートさせ、約4ヶ月後に試作品を納入している。
60キロのタングステン製のジャケットに冷却装置。 しかも、さまざな国の規制や国際安全規格をクリアーしなければならない。 それが4ヶ月という短期間に完成出来たのは、「医療用HAL」 の厳しい研究開発をやり抜いてきたという技術的な裏づけがあったから。
筆者が提起している問題は、大変大きな問題だと私は痛感。


●先制医療  井村裕夫 (先端医療振興財団理事長)

政治、紛争、人権などの大きな問題を取扱う国連が、過去に2回だけ高級者会議を開いて、健康問題を取上げたことがある。 1つは2001年でエイズが蔓延した時。 もう1つは2011年に心筋梗塞、糖尿病、ガン、肺気腫等の慢性疾患が途上国で増えて、途上国での死者の比率が80%も占めるようになった。 特にインドやアラブ諸国、北アフリカでは糖尿病が増え、同時に心筋梗塞がものすごい勢いで増加した。 
なんとかしなくてはならないというので、あの国連が高級者会議を開いた。
つまり、事態を見守っているだけではいけない。 先制攻撃して対処して行かなければ 解決しないという意識が、国連にも芽生えてきた。
そして今、先制医療の対象として注目されているのが、アルツハィマー病。
日本では認知症患者の約60%。アメリカでは80%がアルツハィマーだといわれている。
最近、アルツハイマー病症状の出る前に、すでに脳の中にアミロィドβというタンパク質が溜まっていることが分かっている。 病気になってからアミロィドβを減らしてもすでに脳の神経細胞は死んでいて効果がないと考えられている。 だから、まだ認知機能が正常な段階で診断し、早くから治療しないと有効ではないと言われている。
アメリカでは、全く症状のないアミロィドβが溜まり始めた人に対して、すでに薬の治療を始めている。 これが、典型的な先制医療。

アルツハイマーのように、発症前に診断して病気にならないようにするのがレベル1の先制医療。
これに対してレベル2というのが骨折。 寝たきりになって骨粗鬆症が起こってくる。 女性は生理が亡くなると、骨塩量が激減する。 その段階で、事前に食べ物を変えるとか、薬を飲むといった、いろんな対策を講じる必要がある。
動脈硬化は10歳台から始まる。
朝鮮戦争でアメリカの若者が多く死んだ。 解剖してから遺体をアメリカへ送ったのだが、すでに冠動脈に初期の硬化性病変がある人がいて、専門家は非常にショックを受けたことがある。
レベル1の先制医療で、脂質異常があれば治療をする。 血圧か高かったら、レベル2の段階前に抗疑固剤を飲んでもらうとかステントを入れるとか、いろんな治療方法がある。
現在では、CTとかMRIを撮れば、冠動脈病変がかなり分かる。 しかし全ての人を撮ることはできない。 予防医療は、現時点ではどこまでも個人的な問題。 社会的にどうコンセンサスを得てゆくかということが、高齢化を迎えた社会の大問題点。

それよりも、最近大問題になってきているのが、「お腹の中にいる時、すでに中年以降の病気がある程度決まっている」 という問題提起。
40歳台からのライフコース・ヘルスケアではなく、胎児の時から先制医療を考える時代が到達しているのかもしれない。


posted by uno2013 at 15:52| Comment(0) | 書評(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年05月30日

中国はアメリカを追越せず日本も健闘。BRICsの時代は終焉! (下)



【新興国経済編】
次はロシア。
吉崎  2014年2月まて、ウクライナすぐ目と鼻先のソチでオリンピックが開催されていた。そ
 の機に準じてヨーロッパが策動してロシヤ寄りの大統領を追放した。 プーチンとしては、ソ
 チオリンピックが済むまで我慢していた。 それだけに、原油価格問題を含めて、ウクライナ
 問題の解決は長引きそう。 モルガン・スタンレーは、「もうBRICsの時代は完全に終わった」
と見ている。
山口  ロシアは新興国ではない。 BRICsの中にロシアが入っている自体がおかしい。 宇宙に
 ロケットを飛ばし、世界最先端の戦闘機を作り、軍事力と科学技術の高さでは先進国。
 ビジネス面でもインドネシア、マレーシア、ベトナムなどでは、「何じゃこれは!」という問
 題が日常茶飯に起こるが、ロシアは先進国で契約などで問題は一切ない。 文化的に見ても非
 常に高い。 ただ、経済が単純なので、後進国扱いされているのだと思う。
 ロシアと1980年代からビジネスを始めてみて気が付いたことは、ロシアは 「希少価値」 には
 敏感だが、本当の資本主義を経験していないので、「付加価値」 を知らない。 原油という希
 少価値は分かるが、「付加価値」 を付けてモノを売るという発想が余りにも欠けている。
山ア  アメリカでシェルガスが産出されたら、変わりに売れるモノをロシアは一つも持ってい
 ない。だから、経済力がトコトン落ちてしまう。
吉ア  2013年に初めて赤の広場へ行き、ショッピングモールへ入ってビックリした。 ロシア
 製品が一つもない。 全部外国製品。 最上階はサムスンとソニー。 どこの国もコーヒーとか地
 酒は作っている。 ところがコーヒーはスタバかイタリアン。 ウオッカメーカーのベスト5に
 もロシアの企業は入っていない。 舶来信仰が強いというより、ビジネスマインドがないのだ
 というしかない。
山口  中国人は、流行っているのを見ると、日本製品であろうが中国人の考えたものであろう が、すぐにパクりますよね。 ところが、ロシア人というのはパクらない。 その点では中国人
 より信用できるが、カネを稼ぐということが分かっていない。そして、パクったり真似をする
 のではなく、一気にマファイア経済に走ってしまう。 つまり、他人のモノを盗んでしまう。
 経済界の成功者は、国の資産を盗んだ人ばかり。
 それと、草の根運動でロシア人のホームステイをアレンジしているのだけれど、希望地は静岡
 以南。 だから、国後・択捉島に住む人に、日本国内の移住権を与えれば、ほとんどが暖かい
 地方に移住して、北方領土問題は簡単に解決すると思いますが‥‥。

次はインド。
山ア  一昔前は、インドというとITの技術者ばかりが騒がれた。 しかし、マイクロソフト社
 のCEOになったサトヤ・ナデラをはじめとして経営や経済界で活躍しているインド人が目立つ
 ようになってきた。
吉崎  その代表が、インド中央銀行のラグラム・ラジャン。 まだ50歳そこそこの著名な学者
 をシカゴ大から引抜いて総裁に据えた。 同氏はアメリカの金融バブルを予言し、グリーンス
 パンに金融規制強化を進言したことでも有名。 金融の量的緩和縮小の時、ルピーも売込まれた
 が、インドは0.25%しか上げなかった。 それでも、「ラジャンがやるのなら‥‥」 と相場は
 納得したという経緯がある。 
 では、インドは中国のように経済発展してゆくのか、と問われれば、たぶんそうはならないと
 思う。 インドが栄えるのではなく、インド人が栄えるのだと思う。 インドという国ではな
 く、インド人の時代がやってくる。
山ア  しかし、インド人の対日感情というのは大変によい。 中国や韓国に比べたら、格段の
 違いがある。
山口  アメリカやシンガポール、ロンドンにいるインド人とは取引を通じて信頼しているが、
 ではムンバイのインド人と取引しているかというと、実績がない。 確かにムンバイには地下
 鉄を始め橋など日本のODAで作られたモノが多く、4ヶ国語で日本の支援で完成したと書いてあ
 る。 中国とは比べものにならない親日派。
 たしかに、タダ財閥を始めものすごい大企業がある。 それらの企業がインドの発展に寄与す
 るかと言われれば、考えてしまう。 宗教やカーストの問題もあり、インドが1つの国としてま
 とまるには、あと100年近くかかる気がする。
吉崎  安全保障の専門家に言わせれば、太平洋とインド洋とは完全に繋がっている。したがっ
 て日本はオーストラリアとインドと結ぶのは至極当然のことらしい。

次はインドネシア。
吉崎  インド以外の新興国で、「この国がポシャツたら困る」 というのがインドネシア。
山口  とくに商社はひどい目に遭います。 人口が2.5億人いますから、マーケットそのもの
 が大きい。
吉崎  たまに帰ってくる駐在員に聞くと、「為替がちょっと心配なのですよ」 といいながら
 「でも貯金するという習慣がないので、給料を全部使ってくれる。 マーケット的にはすごく
 いい」(笑い)
山ア  矢張り注意すべきは、国際収支ですか‥‥。
吉崎  国際収支は2〜3年前から赤字。 つまり、内需が強すぎて輸入がとめどもなく増える。
 だが、親日国で仕事がしやすい。 しかし、石油がもうすぐ枯れてしまうのです。
 30くらいの財閥があって、きちんとした経営者が輩出される国で、経営面では安心出来るの
 だけれども、98年の華僑の焼打ち事件があり、金持ちは全財産をもって海外へ逃亡した。
 そんなことは、もうないとは思いますが‥‥。

次はタイ。
吉崎  タイはそれほど問題にされていないが、国王が高齢なのが頭が痛い。 今は国王がいる
 からなんとかおさまっているが、後継者に問題が多く、タクシン問題がこれだけこじれるのは
 そのせいです。
 しかし、よく流血問題を起こしていますが、実際に行って見て現地の人の話を聞くと、それほ
 ど心配はしていない。 タイは東南アジアで自動車産業の集積が出来ている。 裾野も拡がりを
 見せている。 ほかに匹敵する国がないから、あのポジションはいいと思います。
 三菱自動車の人に聞いた話だと、パソコンなども全部いかれた。 その善後策をどうしてとっ
 たかというと、不足部品を壁に張出して、電話とFAXだけでやり取り。 そしたらベテランが
 「昔はこうしていた」 とチエを出してくれ、乗り切ることが出来たといっていた。 そうした
 集積がノウハウとして根付いている。

次はシンガポール。
山口  私はシンガポールにいたので、シンガポール人の気持ちがよく理解出来る。 彼らはこ
 とのほかインドネシアの状況に敏感。 インドネシアが崩れたら、シンガポールを始め東南ア
 ジア全体が足を取られると懸念している。
 ただ、インドネシアへは商社だけでなく、ほとんどの銀行が早くから出ている。 そして、日
 本では絶対にやっていないオートバイ・ローンを拡充している。 結構儲かるし、ローンの回
 収も堅いらしい。
吉崎  東南アジア通貨危機の時、日本の銀行もサッとひいたが、2008年以降に随分が戻した。
 そして、ヨーロッパ系の銀行の後を埋めた。 これが評価されている。
 一時期、山アさんがもと居た商社がシンガポールへ本社を移すというシミュレーションをやっ
 ていましたが‥‥。
山ア  それは知らなかった。 可能性はありますか。
山口  可能性はないと思います。 モルガン・スタンレー社さえ、本社をシンガポールへもっ
 てゆくというシュミレーションを何回となくやっています。 しかし、バックオフィスを移し
 ただけです。 シンガポール人は少ないし、基本的には中国人。 商社マンのように地道な営業
 とかトレーデングを10年以上やれる人材はシンガポールでは確保できない。 それで、各社と
 もギブアップした。
 あの国は、圧倒的に成長してすごくうまくいっているように見えるが、周りにはインドネシア
 マレーシア、中国などという強国がひしめき合い、常に危機感に押し潰されている。 水一つ
 にしても、マレーシアと協定を結んで買わないといけない。 自然はないし、ストレスの固ま
 りの中で生活して行かねばならない。 考えて見れば大変な国です。
吉崎  山口さんは、あそこで投資の仕事をされていたのでしたね。
山口  シンガポール政府投資公社。 基本的には役人。 しかし日本の役人と違って、シンガ
 ポールのことを本気で心配している。 自分が儲けそこなったらシンガポールが倒れてしまう
 という危機感。 日本の財務省の課長クラスで、そんな危機感と使命感を持っている者は一人
 もいない。 外資以上にシビアなのが、シンガポールの役人。

【マネー編】
なかでも、住宅ローンに限定して紹介します。
吉崎  私、柏市に住んでいるのですが、ちょっと郊外に足を延ばすと新興住宅がバンバン建っ
 ている。 超低金利が長期化して安い金利でローンが組める人が増えたのだ。 住宅産業にとっ
 て良い時代が続いているのだな、としみじみ思う。
山口  日本人の資産運用はすごく特殊。 8割くらいの人が巨額なローンで住宅を買っている。
 住宅と言う資産とそれに見合う負債を抱えこんでいる。 借金をして、住宅という名の巨額の
 ポジションをとっている‥‥。
山ア  しかも、最長35年の信用取引で。
山口  それだけ巨額なポジションをロングしているのに、さらにリスクをとって、他のアセッ
 トクラスを買いにゆく意味が、本当にあるのでしょうか。
 これからインフレになれば、住宅価格も上がるから、大多数はそれでインフレヘッジが出来て
 いる。 資産を全部現金で持っている人なら、「インフレなった時に備えて、株を持っていた方
 がいい」 というロジックが成立するが、アメリカで語られているようなロジックが成立する日
 本人はほとんどいない。 アメリカではノンリコースローンだから、ローンが払えなくなった時
 は、家を明け渡せばすべてが解決する。 しかし、日本では住宅を売り払って清算しても、不足
 分があれば借金となる。 巨額のローンを抱え、失業した時のリスクはとても大き過ぎる。
山ア  住宅ローン金利が2%という低利といっても、ローンを返済するということは、リスク
 ゼロで、2%で運用出来るということ。 だからローン残高がゼロになるまで返済することが最
 優先。 それまでは、別途リスクで資産を買うなどとは考えてはいけない。
吉ア  それでも、住宅を買いながら資産運用にも気を配るのが一人前の男でというイメージが
 浸透している。 これは、ひとえに金融業界の、巧みなPRによるのでしょうね。
山ア  金融業界側からすると、リスクを取るような商品でないと高い手数料はとれない。 けれ
 ども客もリスクをとってくれない。 そこで、何とか客を振り向かせる脅しのテクニックが「イ
 ンフレになった時に困りますよ」 という囁き。そうやって、「貯蓄から投資へ」 と煽っても
 株価下落で損をさせてきたというのが、この10数年来よく目撃した事実。 アベノミクスで少し
 息を吹き返しているかもしれないが、「貯金から投資へ」 ということで、幸せになった人は、
 ほんの一握りだけ。 後は全部、失敗談。
山ア  家賃を払続けるというのは、毎月それだけのフローが出ているということ。 家を買うと
 いうことは、毎月支払うべき家賃をまとめてストックにするということ。 個人のバランスシー
 トの反対側に多額のローンと言うリスクを抱えること。 ただし、買ったマンションなり戸建て
 住宅が耐震性や土砂災害、省エネ性という面で最長35年という価値を持っているかどかが問題
 で、その判断が求められています。
 ところが、持ち家派には、「自分が住むのだから、利回りとかリターンという概念は不要だ」
 と言う人がいる。その場合、「自分が店子である不動産に投資しているのだ」 と発想の転換
 が必要。 絶対に転勤のない田舎の役場勤の場合は別にして、転勤はつきもの。 また転勤がな
 くても家族構成の変化に持家では対処できない。 売却しようとしても地価が下がっていたり、
 仲介手数料もかかる。 買い手がつかない場合もある。 つまり、資産を不動産という形で固定
 すると流動性が失われてしまう。
 ただ、奥さんからしてみれば、住宅ローンには団体信用生命保険がついている。ダンナが途中
 で死亡して返済不可能になっても、資産は奥さんのものになるメリットがある。 そのメリット
 を感じているのが女。「 かみさんが喜ぶのだから、それに応えたい」 というのが男。 旦那の
 気持が冷めないうちに、家を買おうとしている家庭が多いと思う.
吉崎  不動産会社に勤める仲間がいっていたけど、即日完売した時は、「もっと高く売れたの
 に」 と反省ばかりしているそうだ。
山口  不動産屋は、自分達が欲しくないものしか売りません。 賃貸に回しても採算が取れる
 物件は、絶対に手放なさない。 これは長く持つよりも、早く処分した方が良いと思う物件しか
 売りに出さない人種です。


posted by uno2013 at 10:14| Comment(0) | 書評(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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