2013年04月24日

「換気」に関する最新動向から、近未来像を考える


熱交換換気とデシカに対する4項目の質問メールを頂きました。 
その4項目に正しい返答を用意するには、この20年間の世界と日本の換気に関する大まかな動きを説明しないかぎり納得して頂けないと感じました。
今までの記述と重複する内容がありますが、判断の一助にしていただければ幸甚。

今から20数年前、カナダ天然資源省のCANMETという研究機関のマーク・ラィリ氏に頼まれて、当時の建設省、通産省に働きかけて、日加R&Dワークショップの立ち上げに協力した。 
そして、都合7回に及ぶ日加の高気密高断熱技術会議・ワークショップに欠かさず参加してきた。
この会議で注目を集めたのは、 何と言ってもCANMET を中心とするカナダ側の室内空気質の研究。 日本の冷凍空調学会の研究に比べて、しっかりとした実測データに基づく発表には新鮮さと実用性が満ちていた。 
もちろん、日本側の発表にもハッとするものも多かった。 だが、テーマが研究者の独善によるものが多く、高気密・高断熱住宅の最前線で悪戦苦闘しているビルダーには直接役に立たない実用性に欠けるものが多かった。
これに対して、カナダの研究はR-2000住宅の普及と言う国家的な大テーマを抱えていただけに、正に実用的。 
そして、室内の空気質を安定的に保つには、台所・浴室・トイレを中心としたダーディゾーンからの24時間排気が不可欠という責任感の強い明確な結論を出していた。 いいですか。 日本のようにいい加減な文言ではなく、ダーディゾーンからの24時間連続排気を義務化していたのですよ !!
したがって、顕熱交換機による換気しかないと、北欧と同じ結論に…。

最初に立川に建てたR-2000住宅にはナショナルの全熱交を採用。
そこで帰って早々に、台所で匂いの発生実験をやってみた。 排気口に少し匂いを吹付けると、たちまち全館に匂いが移転。 改めて、 CANMET の言うように、台所からは最低 50m3/h の顕熱による24時間連続排気を行わない限り、どんなに力んでも綺麗な空気質が得られないことを納得させられた。 
そこで、ワークショップに参加していたダイキンの当時の技術部長にお願いして 顕熱交換機を開発してもらった。 ところが、日本から100人近い設備や住宅の開発担当者がワークショップに参加していたのに、大手住宅メーカーはダイキンの顕熱交を採用しなかった。 北海道や東北のビルダー仲間は カナダのVan-EE 社からの輸入品で凌いでいた…。

そして20年前にカナダで面識のあったキミ・伊藤氏とマトリック氏が、「匂いが移転しない」 という宣伝文句に飾られた Van-EE 社のロータリー式全熱交の売込みに来た。 早速、上石神井のモデルハウスの1階部分に採用し、匂いのテストを行ってみた。 その結果、謳い文句とは異なりあっという間に全館に匂いが移転。 これでは使い物にならないと、きっぱりと断った。
だが、キミ・伊藤氏はCANMET の方針を曲げ、スーパーEの仲間にこの全熱交を売込んだ模様。 住宅評論家・足立博氏の報告によると、経年変化したこの種の全熱交の家では異臭が気になったという…。

さらに、日本の全熱交の歴史をたどると、5年ほど前にスウェーデン製のアルミ・エレメントによるビル用のロータリー式全熱交がガデリウスから紹介された。 オリエンタルの社長と一緒に見に行き、アルミ製のエレメントに感動を覚えた。 だが、 Van-EE社のことがあったので、日本で実験をやって欲しい。 その結果を見てから考えますと返事した。 しかし、その後連絡がなかった。

ともかく、日本の全熱交の先鞭社は、寡占時代の松下精工と三菱電機。
両社ともエレメントに和紙を使っていたので、トイレと浴室などの湿気のあるところの熱交換は 和紙が痛むので最初からお断り。
これに、風穴を空けたのがレンゴー。 
同社の技術を利用してローヤル電機が数年前から熊谷工場で全熱交を生産し、トステムのルートで全国的発売を…。 エレメントを和紙から変えたので、「トイレからの排気は可能ですが、浴室は遠慮してください」 との内容。

そして、1年余前にはレンゴーが「ガスバリア性透湿膜」によるエレメントを開発し、「浴室からも、トイレからの排気もOK」 という商品をフロンティア社が発売を開始。
このエレメントに注目したオリエンタルが、ダイキンの透湿膜加湿器と同じ形状のものをつくらせ、安価な価格でハーティホームの既存客に代替品として紹介してくれている。 透湿膜加湿器は水垢が詰まって使用不全に…。しかもダイキンが透湿膜加湿器の生産を中止して困っていた時だったので、まさに渡りに船。 
ガスバリア性透湿膜は、冬期には40%近い加湿能力があり、初期の除湿器がなんとか使えるので、築10数年過ぎのR-2000住宅でも除加湿機能が働いてくれている。 省エネ性は劣るが、除加湿面で見ればなかなかのもの…。

そして、ヨーロッパで熱回収換気の全面的な普及で第3種換気の需要がなくなり、ほぼ生産停止状態に…。 このため、日本の初期の換気システムとコンセプトの普及に多大な貢献を果たしてくれた札幌のディックス社が、昨年1月で営業を停止するというショッキングな発表があった。 時代が大きく変わったことを実感させる出来事だった。

この事件の以前からクローズアップされていたのが、一条工務店の仕様書発注で ダイキンが受託生産をしていた一条工務店の「ロスガード90」。 ダイキンでは「ベンティエール」と呼称している商品の評価。
一条工務店の開発担当者がダイキンへ申入れた条件は、以下のようなものだったと聞いている。
「夏の湿度が高い日本では、エンタルピ交換効率が大きくものを言う。 90%以上の高効率のものを開発してほしい。 と同時に、築8年以上の住宅でのダクトに径年変化による問題点がないことを実証してもらいたい。 それが可能であれば、価格が00万円であれば2年間で1万セットを発注する」。

この築8年以上のダクトの住宅を紹介して欲しいという要請がダイキンから入った。 そこで築9年のS邸を紹介し、SAダクト数ヶ所からホコリを採取して、公的機関に持ち込んで培養試験を行った。 その結果、有害なカビや細菌がゼロであることが立証された。
また、フィリピンのHRDのモデルハウスで行われたエンタルピの試験でも、見事に90%の交換効率に成功。 この結果を見て、それまではダクト工事に対して低評価しかしてこなかった一条工務店が、一転してダクトによるロスガード90の採用に踏み切った。
しかし、ツーバィフォーによるプレハブが主体の i-cube や i-smart では、200φの空調ダクトを配することが困難。 最大で100φが限度で、一般的には80φ。 つまり一条工務店は、換気だけにしか採用しなかった。

その話を聞いたので、SさんとS.Tさんにお願いして セントラル空調換気システムの今までの顕熱交に変えて ベンティエールでの採用をお願いした。
というのは、一条工務店の技術者だけでなく、空調関係のほとんどの技術者は、日本の多湿な夏問題にはエンタルピ交換効率が大きな比重を占めている。この解決こそが何よりも重要だ、と叫んでいたから…。
素人の私は、ダイキンの90%のエンタルピ交換効率は大きな意味を持っているはず。 夏期の冷房運転がかなり短くなり、除湿問題の解決に向けて一歩も二歩も前進してくれるだろう。それを実証実験で証明すべきと考えたから…。
ただし、一条工務店と違って、単なるセントラル換気では面白くない。200φのダクトを使ったセントラル空調換気システムとして採用する。 そして、どこまでも台所・浴室・トイレ・シューズルームなどのダーディゾーンから24時間連続排気を大前提にする……という条件で。

そこで、問題になったのがベンティエールのエレメントが何で出来ているかということと匂いの移転問題。
ダイキンのベンティエールのカタログを見ると、10層からなる新鮮空気と室内空気の交差によって熱と湿度の回収が行われていることがよく分かる。 しかし、エレメントは、「40μmの超薄膜の高密度エレメント」 としか書いてない。 企業秘密と言うことで詳細は教えてもらえなかった。
ただ、浴室とトイレからの排気は絶対にダメだとは言わなかったので、和紙ではないとの感触が得られた。
そして、匂いの移転を防ぐために、ダイキンエアテクノの指導によって全熱交に入る寸前のRAダクトに 光触媒機能を装備した。 これにより、臭いの移転問題などは一切起こっていない。 

さて、この全熱交の成果や如何に ?
S.T邸でのデータでは、冬期は加湿器を用いなくても相対湿度が40%前後を維持してくれ、浴室を含めた湿度回収効果が高いことを証明してくれた。 しかし、S邸ではお子さんが2人とも留学中。 このため帰省中の正月以外は内部発湿が少なく、全熱交による湿度回収だけではやや不足気味…。

問題は、夏のエンタルピ交換効率。
その効率に過大な期待を寄せていたので、両邸とも当初は除湿機能のない空調機を設置していた。
最初の夏を迎えたら、期待に反して両邸とも蒸し暑くて生活が出来ない。 
相対湿度を60%にするには、設定温度を25℃まで低くするしかなかった。 25℃という低温の設定温度は、高気密高断熱住宅では想定外の低性能。 快適さが著しく落ちるので、とてもじゃないが消費者に紹介出来る代物ではない。  
このため、両邸とも空調機をドライ除湿が可能な「アメニティビルトイン」 に交換せざるを得なかった。 この空調機の交換によって、冷房費は若干高くなったが、やっと26〜27℃での生活が可能に…。

両邸での実験で分かったことは、高温多湿な日本では 夏に全熱交で温湿度を交換すればするほど湿度が増加して 生活環境が著しく悪くなるという事実。 
多くの空調関係の技術者が盲信していた「エンタルピ交換効率を上げると夏は凌ぎやすくなる」 という仮説は、どこまでも思いちがいの夢想にすぎなかったことが判明…。  つまり、夏期は除湿をしない限り快適性の質は向上せず、「全熱交は 日本の夏には全く役に立たない」 というのが結論。

そして、冬期は浴室・トイレ・台所などの水回りのダーディゾーンから24時間排気で熱と湿気を回収しない場合は、これまた全熱交にする意義が半減することも判明。
一条工務店の i-smart の場合は、トイレ・浴室とも床暖房をしているので、カビの発生は防止出来ている。 
しかし、浴室に床暖房をしないベンティエールやデシカ、あるいはローヤル電機製品の場合では24時間排気運転をしなかったら、浴室にカビが生える確率は非常に高いはず。 浴室のドアを空けて室内側へ湿度が流れるようにしたところで、空気の24時間循環が保証されないから塩素系カビ取り剤のお出ましとなり、室内空気の悪化は避けられないはず。

そして、これはどこまでもオリエンタルの実績例にすぎないが、施主に対して 「必要であれば、後でいつでも光触媒機能を付加します。 だが、光触媒機能がなくてもトイレ・浴室から24時間排気をすると、今のところ匂いが気になるという施主はいません」 と、光触媒機能をオプションにしている例が急増中。
これは、まだ3年程度の経験値しか揃っていないが、いろんな測定データが揃うと意外な真実が浮かび上がってくるかもしれない。
非常に面白い実験だと思う。 
ただ、夏期の除湿はベンティエールでは出来ない。 そこで、デシカの登場となってくる…。

ところが、家庭用デシカの販売で、ダイキンが製造物責任を回避するがために、やたらと腰が引けた弱腰姿勢が目立ち過ぎ…。
オリエンタルにしても私の仲間にしても、S邸での3年間の実績を基に、デシカ換気に関しては浴室からの24時間連続排気を大前提に計画を立てている。 浴室やトイレ、台所など水回りからの24時間排気を行うからカビが生えない。 カビが生えないから、塩素系の防カビ剤を使わなくて済み、室内空気質が担保出来る。
それなのに、塩素系のカビ止め剤によるエレメントの故障を怖れて、浴室からの24時間排気を拒否し、結局はカビを生やして、塩素系の防カビ剤を使わねばならない立場へ消費者を追い込み、結果として空気質を悪化させるというお粗末な喜悲劇を ダイキンは演出している。

「デシカのエレメントは塩素系の防カビ剤には弱い。 したがって、浴室の排気は絶対に停めることなく24時間排気を実行してください。 そうすれば、排水溝に若干赤カビなどが生えた例はあるが、問題になるような事態は起こっていません。 ただし、万が一カビが生えた場合には連絡をしてほしい。 丸1日デシカを止め、カビ掃除を手伝います。 ただし、お客さんの方で一方的に防カビ剤を使い、エレメントが故障した場合はどこまでも責任はお客様にあります。 メーカーも、ビルダーも、工事業者も一切の責任は負えません」 と高らかに宣言をすべき。 
デシカを選ぶ施主は、そこいらのチンピラヤクザのようなゴネドクの立場は絶対にとらない。 メーカーもビルダーも、もっと確信を持って全幅の信頼を施主に寄せるべき。

なお、浴室から24時間換気をすると、ダクト内にカビが生える怖れがあるのでは…との懸念が一部にあるのは事実。 この質問に対しては、「そんな大問題が未解決で残っておれば、今までのセントラル空調換気システムの代表的な施主である大学教授をはじめとして東芝、三菱電機、東電、鹿島建設、竹中工務店、清水建設に勤めている一流のエンジニア連が 黙っているわけがないではないですか…」 と答えることにしている。

セントラル空調換気も、デシカも、もっと大胆に消費者を信じるべきだと考えます。 
そして、消費者との信頼関係が完全に出来あがるには、納得出来る成功実績を積み上げるしかなく、かなりの時間がかかる大事業だと思います。


posted by uno2013 at 09:34| Comment(1) | 除加湿・空調・換気 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月20日

全館空調換気工事は、当初の段階では別途発注がお奨め !!


この12年来、北米を訪れていないので、北米の空調換気システムがどのように変化しているかについて語る資格がない。
それ以前の冬期の東海岸では、ホテルをはじめどこも乾燥していて、車や部屋のドアに触れるたびに ビリリとくる静電気とエアコンの騒音に悩まされた。
また、西海岸では夏期も冬期も、ホテル、モーテーターインと車のエアコンの騒音には頭が痛くなった。 そして、北米の夏はどこでも冷房をキンキンに冷やしている。
皮膚が鈍感なのか肉食のせいなのかは分からないが、彼および彼女達は、床から吹上げ、天井から降り注いでくる冷房にも平気。 音にも無頓着。 こんな鈍感国民とは、とても付き合えないと痛感した。
そして、バンフなどの高原のホテルで温水の輻射暖房に巡り会うと、真底からホッとしたことを覚えている。

つまり、セントラル空調換気といっても、北米の地下に据付けられているうるさくて超大型の低効率空調システムであってはならない。 
いや、その前に住宅そのものの断熱と気密性を高めねばならない。
その結果として、日本ではもっと小型で、静かで、効率が良くて、風が直接身体に当たらず、しかも除加湿能力を持ち、暖冷房とも輻射暖冷房に限りなく近いシステムを開発してゆかねばならない。 昔のGE製のセントラルシステムではダメ。
そのシステムをどのように開発し、どのように風量や温湿度を制御し、しかも風を感じない効率的な施工法をどう確立するか…。

最初にやったことは、今から24年前にダイキンと綿密な打合せの上で 立川に全館空調換気システムのR-2000住宅を完成させたこと。 
このモデルには、既存の各社の同時給排システムや、天井などの吹出口を集めて 実際の空気の流れなどをダイキンに検証してもらった。
その結果、同時給排システムは50センチ以内の空気をかき混ぜているだけで、空気を清浄化する効果はほとんどないことが判明。 
また、当時売られていた天井付きで空気を拡散させるという謳い文句の数種の吹出口は、いずれも滝のように空気を直下へ吹降ろしているだけということも分かった。
そして、廊下側の天井面から開口部へ向かって、弱い空気を水平に吹出させ、リターンする空気をアンダーカットしたドア下からダーディゾーンの排気へ繋げるのが、最も体感的に優れていることを確認した。 
プラスチックの噴煙で 空気の流れを目に見える形にしてくれたダイキンのおかげで、それまで空調学会で常識とされていた多くの間違えを覆すことが出来た。 
すべては、ここからスタートしている。

除加湿機能付きのセントラル空調換気システムを、世界に先駆けて開発してくれたのもダイキン。 しかし、当初採用された透湿膜の加湿器は、水道水に含まれている塩素の粒で電磁弁が閉まらなくなり、交換水が垂れ流しになるとか、防水盤が結露水で錆びるなどのクレームが多発した。
そこで、土日に東京支店の技術部長と課長に同行してもらい、全戸の実態を見てもらい、施主に有効なサジェスチョンをしていただいた。
こうした失敗の経験を活かして、水道水を使わないうるる・さららの除加湿機能が開発され、さらにその技術を一歩進めてデシカが開発されてきている。
モルモットとなった消費者やビルダーとしては、文句の2つや3つは言いたくなる。
だが、いかなる成功例も 失敗例の積上げの上でしか得られないのはまぎれもない事実…。

ともかく、日本でセントラル空調換気システムを本格的に採用している企業は、かつてのハーティホーム以外では、地所ホーム、三井ホーム、東急ホームといずれもツーバィフォーメーカーのみ。 地所ホーム以外はどこまでもオプション。 また、高気密高断熱をとくに謳ってはいない。
こうした事情のために、大多数の住宅メーカーおよび空調換気工事店、木軸の地場ビルダーなどがセントラル空調換気システムについての基本的な知識と経験が皆無。
これは地場ビルダーに限ったことではない。 
ダイキンの工事会社・ダイキンエアテクノの4つの支店で、同社が開発した 「エアカルテット PLUS」 の効能と消費者の好反応を、かつて話をしたことがある。 だが、それらの支店では誰一人としてエアカルテットの施工経験を持っていなかった。 実績があったのは東京エアテクノだけ。 その東京も、1年前に住宅事業部を解散させている。 
つまり、セントラル空調換気に関しては、日本ではメーカーが持っている実績が、一部を除いて余りにも少なすぎる。

それだけではない。
新しく発売されたデシカに関しては、その一般的な性能はきちんと説明してくれる。
だが、施工を体験したことがなく、実質的なクレームに対応した経験を持っている社員はごく限られている。 このため、ダイキンに任せておけば必ずしもすべて安心というわけにはゆかない。
S邸では、変わった担当者がシステムの管理を十分に理解していなかったために、3年間にわたって 「造作材のトメ部分が口を開くとか クロスの入隅部にクラックが入るというクレームがゼロ」 だった。 それなのに、昨年春には加湿不足でムクの天板が反るという取返しのつかないクレームを発生させてしまった。
このため施主の希望もあって、滋賀と堺から開発担当者3人と、東京支店から担当者1人の計4人に現場へ足を運んでもらい、延べ3時間半に亘って管理上のポイントをオリエンタルなどにレクチュアーしてもらった。

アメリカのようなキンキンに冷えた風が もろに身体に当たる冷房で良いのだったら、壁掛けエアコンや天井埋込みタイプで十分。 量産されているので価格も安く、アフターも手慣れた地場の工事店で十分に対応出来る。
ことさら結露問題にまで気にしなくてもよい。
うるる・さららだったら、それなりの除加湿もやってくれる。
施主がそれで良いというのなら、わざわざカネをかけてデシカによるセントラル空調換気システムの採用を奨める必要性はない。

除加湿機能付きのセントラル空調換気の快適さは、実際にそれを体験した人でないと腹の底から理解できない。 
口でいくら 「毎日が、軽井沢か上高地のような、しゃきりとした涼しさ…」 と説明されても、体感しない限り消費者には納得できない。
と同様に、ビルダーにしても その快適さを実感しない限り、これを実現させるには大変な技術体系が必要だということが理解できない。
きちんとした湿度管理をすれば、人間以上に好環境を造作材や壁材に与えて クレームの発生がゼロになる。とくに厚いムク材を使う場合は、湿度管理こそビルダーの最大の義務であり責任であるということが実感される体験をしていない。 
気密性や断熱性、あるいは風量や風路を無視したり、管理技術を完全にマスターしない限り、消費者に対して半永久的な性能保証が絶対に不可能である……ということが分かっていない。

私のささやかな経験から言えることは、除加湿機能付き空調換気を消費者に保証するには、設計担当者の誰かがこのシステムを完全に理解するとともに、最適な構造設計が出来る能力が必要。 つまり構造的に問題なくダクトを配するテクニックの体得が不可欠。
この肝心なことが理解されていない。
つまり、今までの壁掛けエアコンや天井埋込みカセットタイプと同列の考えでしか、セントラル空調換気を捉えていない。
ダクトからの風量を完全にコントロールし、しかも最短のダクトの長さで、断熱・気密層の内側で、その性能を達成するという困難さが理解出来ていない。
たいしたノウハウがないように感じるが、アフターメンテナンス工事の容易さを含めた完成度の高さを維持するには、なかなかのノウハウが必要。
特にデシカの管理には、経験者が3時間半のレクチャーと質疑応答でやっと理解したほどで、残念ながら経験の乏しい私には 細部まで理解が出来なかった。

私が提案したいのは次のこと。
地場ビルダーとしては、デシカによるセントラル空調換気システムについても、他の工事同様に可能であれば性能保証をしたい。保証するには、当然のことながらある程度の粗利がないと保証出来るわけがない。
消費者にしても、赤字を出してまでビルダーに保証を求めることは出来ない。
つまり、地場ビルダーが完全に保証出来る能力が備わるまでは、デシカによる空調換気工事に関しては、別途発注とした方がベター。
例えば東京近辺だと、デシカの管理を含めて信頼出来るオリエンタルに、アフターメンテナンスを含めて最低10年間の別途契約を結ぶように施主に提案したい。
それ以外の地域では、ダイキンが全責任を負うという形を明記した上で 別途契約とした方が、消費者も安心出来るし、ビルダーも手離れが良くて安心。
再度強調するが、私は今までビタ一文のリベートも、両社から貰ったことがない。 どこまでも、消費者の立場で発言しているつもり…。

ハーティホーム時代には、最初の構造図に絡むダクト計画には責任を持って対処できたので、別途契約とはしなかった。 だがメンテ契約では、積極的に消費者とオリエンタルで個別契約を結ぶように提言した。 そのことで、多くの消費者から逆に安心感と信頼感を頂いた。 
空調換気は自動車と同様に機械もの。 消費者からクレームが入っても、ビルダーに出来ることは専門業者に電話をして内容を伝達するだけ。 よっぽど堪能にならない限り、口出しをすることは百害あっても一利なし…。
セントラル空調換気に関しては、やはりその道のプロとメンテ契約した方が、消費者にとってはメリットが大きいことがはっきりしている。

そうしたアフターメンテナンスを一任出来るプロを育てることこそが、ビルダーの仕事ではなかろうか…。


posted by uno2013 at 06:49| Comment(0) | 除加湿・空調・換気 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月15日

セントラル空調換気の場合は、屋根断熱が基本


どこの空調メーカーと言うことではない。
各社のセントラル空調換気メーカーのダクト配置図をみると、ほとんどが窓際の真上までダクトを伸ばして、真下へ向かって吹き降ろしている。
窓際が一番暖冷房のネックになっているからだろう。 当然の配慮と考えた。
そして今から20年前に、この図に倣ってモデルハウスの窓際で、天井面から真下へ空気を吹き降ろしてみた。
ところが、暖房の場合はなんとか我慢が出来たが、冷房の場合は天井から滝のように冷気が落ちてくる。
3分間どころか1分間も我慢ができない。

これは、吹出し口の形状に問題があるのだろうと考え、何社かの10個ぐらいの撹拌吹出し口を選んで買って来て試験をしてみた。
そのほとんどの吹出し口の謳い文句に、「撹拌されて落下するので、真下に居ても快適である」 と書いてあった。 ところが、どの吹出し口も滝のように落下する状態には変わりがない。
そこでダイキンの東京支店の、当時の技術トップにお願いして、プラスチックの煙粉器を借りて、吹付けて空気の流れが本当に撹拌されているかどうかを確かめてみた。
その結果は、吹出し口のメーカーの口上書とは裏腹に、ほとんどの空気は真っ直ぐ、真下へ落ちていた。

この実態が瞼の裏に焼きついたので、特別の場合を除いては、天井面から真下に吹き出す方法は可能な限り採用を控えてきた。
そんな苦い経験を持っているので、今でも各空調メーカーがわざわざ窓際まで長くダクトを引っ張って行って、吹き降ろしている理由がどうしても理解出来ないでいる。
名だたる各メーカーともあろうものが、どうしてこんな園児にでも分かることに気付いていないのだろうか ?
これはどこまでも推定に過ぎないが、ビル用のセントラル空調換気システムを、そのまま実証実験もせずに、家庭用に当てはめているせいではなかろうか ?

ビルで、ペアガラスを採用しているのは、一部の寒冷地を除けばごくまれ。
防火や、盗難などのこともあって、厚い一枚ガラスが今でも主流。
そして、ガラス面が結露することを大前提に考えて、FIX窓の下部には結露水が流れる 目立たない小さな樋が用意されている。
今まで、ビルで一番熱損失の大きいのは間違いなくガラス。
したがって、ビルのセントラル空調の場合は、窓際で吹き降ろすことが最良のテクニックとして空調各社では暗黙の中で伝承されているのだろう。
幸い、ビルの天井高は3メートル近くもあって、吹き降ろされる空気も若干拡散され、滝のように感じることが少ないからなのだろうと推測する。
これは、どこまでも推測に過ぎないが…。

昨年秋に開かれた中小企業総合展で、これだったら間違いなく空気が撹拌されるであろうというエア・オプト社の「ウィンドウィル」 という吹出し口を発見した。(2012年10月20日付けの今週の本音欄を参照。 カテゴリ「シンポジゥム・講演・展示会」から入られたし)
同社のシステムは、壁掛けエアコンの冷気を拡散させるシステムに過ぎなかったが、その吹出し口は使えると思った。 吹出し口を裏側から撮った写真を見ていただくと、2重になったプロペラが風圧によって自動的に回転するようになっているのが分かる。 つまり、電気などのエネルギーを一切使わずに、プロペラの自動回転によって冷気を撹拌させようと言うのだ。
ただ、残念ながら展示会場ではどれほど空気が撹拌されているかを施設的に体験出来なかった。したがって、思ったほどの効果がないのかも知れないのだが、このエア・オプト社に匹敵する工夫が大手空調メーカーから提案されないのは寂しい。
と同時に、未だにセントラル空調換気システムを導入せず、もっぱら壁掛けエアコンの風で多くの女性を悩ませている住宅メーカーは、率先して同社の技術導入を図っていないのが、情けない限り。
最低の条件として、ウィンドウィルを採用すべき…。

いずれにしても、空調屋の技術者が簡単にダクトを窓際まで運んでいる常識のなさに、腹が立ってくる。 
たしかに、吊り天井で天井を下げ、天井裏に配管やダクトスペースのあるビルの場合は、窓際までダクトを運ぶことは簡単。
ところが、梁でダクトが遮られ、2階の床根太に直接天井ボードが張られている住宅、あるいは吊り天井で 天井裏空間があってもせいぜい15センチ以内の住宅にあっては、空調換気ダクトを窓際まで運ぶのは大変な作業になる。
このため、モデルハウスでありながら、25センチ角程度のダクトを収納の出っ張りが壁の上面を走っているというみっともないプランが現存している。
これは、住宅を知らない空調メーカーの技術屋さんの責任。
ところが、その重い責任を感じていない技術屋さんが多すぎのに呆れるというよりは、泣きたくなってしまう。
つまり、あまりにも住宅を知らなさすぎる。

1階の場合は、ダクト型が天井際を這うことでなんとか逃げられているが、ひどいのが2階の場合。
天井断熱なのに、2階の天井裏に空調機を上げ、しかもその上を断熱材や気密層で覆っていない。 断熱材からはみ出しても平気で天井裏にダクトを這わせている現場が、空調メーカーの関係技術屋さんの場合に多く散見される。
ある消費者が、同じ設定温度で1階と2階の吹出し温度を測定したら、1階と2階の温度差はなんと5℃もあった。
つまり、5℃のエネルギーが天井裏空間に放出されていた。
ダクトに巻かれている断熱厚はたった25ミリ。
これが、天井裏断熱層からはみ出していると、そこから熱が室外へ放出される。
いや、単に熱が放出されるだけではない。 某大手住宅メーカーの現場で10年前に発見されものによると、ダクトの外側に結露を起こして、断熱材が薄黒く変色していた。
ということは、おそらく断熱性能が皆無の状態になっていたと考えられる。

これは、欠陥住宅意外の何物でもない。
こうした欠陥住宅を生みだす元凶が、空調換気メーカーのダクト配置図そのものにあると断言してもよい。
消費者とビルダーは、目を醒まして、こうした欠陥商品を生んでいる空調換気メーカーを追求し、責任をもって改修工事を行わせて行かなければならない。
つまり、2階の天井裏にダクトを這わせるには、最低条件として屋根断熱とし、屋根面に気密層を設けるべき。
こんな初歩的なことすら、空調メーカーの末端の技術屋さんは知らない。
そして、今のままではセントラル空調換気システムが増えれば増えるほど、欠陥商品が増大することになる。
実に嘆かわしい現実が、現に存在している。

私は、ハーティホームの空調換気システムの全ての最終図面をチェックし、現場で問題がないかを確かめてきた。
単に、ダクトや気密・断熱に問題が無いだけでは許されない。
構造図をチェックして、まず構造的に問題が無いかを確かめ、その上で気密・断熱面での安全性をたしかめた上で、初めてダクト図にOKを出せる。
つまり、構造や気密・断熱が分からない空調機メーカーの技術屋の図面は、最初から欠陥が含まれていると考えるべき。

そして、空調メーカーの技術屋さんに依存しなくても、構造、気密・断熱に精通し、間違いなく最短のダクト設計が出来る技術屋さんを、ビルダーは自力で育成して行かねばならない。
空調メーカーにそうした教育と研修が行える指導者がいない以上、大変に難しい課題だけれど、これをビルダーが実践の中で育ててゆけない限り、東京以西のマーケットを新規に開拓することは出来ないと考えるべきだろう。

厳しいけど大変に楽しい仕事。

posted by uno2013 at 06:10| Comment(0) | 除加湿・空調・換気 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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