昨日、1997年に建てたR-2000住宅のO邸にお邪魔してきた。
今年で、築 丸16年となる住宅。
ところが新築して2〜3年で、一家は金融関係に勤めている主人の転勤で ニューヨークへ引越しすることになった。
そこで、新築されたばかりのR-2000住宅を、近くの大学の先生に貸すことにして、慌てて日本を出発。 借り手はすごく満足してくれ、2年後に引越しする時に、「仲間の先生に貸してやってもらえないだろうか」 との連絡がOさんに入った。
Oさんは、そんなに転勤が長くなるとは考えておらず、お子さんの教育は日本で受けさせる考えだったので婉曲に断り、そのまま放置しておいた。
その間にハーティホームが営業活動を中止し、メンテナンスを専門に行うチームを立ち上げていたが、不在のOさんとの連絡がとれず、また工事を担当した原部長が病死したこともあって、連絡が途絶えたままに‥‥。
6年ぐらい前だったと思う。 ニューヨーク勤務のご主人が、引き続きカナダ・トロント勤務となり、奥さんと子供さんは帰国することになった。
その時、R-2000住宅の痛み具合をチェックしてほしいとのメールが入り、無垢の玄関ドアは油脂系でのメンテナンスが欠かせないことを説明し、空調換気システムではオリエンタル社とメンテ契約を締結するように勧めただけで、後は問題がなかった。
まさか、ご主人のカナダ生活が6年以上にもなり、連続9年間の北米駐在になるとは考えてもいなかった。 それ以前にも7年間ものアメリカ駐在の経験があり、都合16年にも及ぶ北米駐在記録は例をみない。 珍事に類する出来事だという。
なぜ、特別の人間だけが長期転勤させられるのか。 金融機関には優秀な人材が腐るほど居るのだから、多くの人に海外経験をさせた方が良いのではないか、と素人の私は考える。
ところが、邦人系の金融機関と言っても、北南米のメインの指導機関を含めても日本人の占める比率は10%程度。 業務のやり方もシステムも言葉も完全にグローバル化されている。
派閥とか出身金融機関、人種などは全く関係なく、皆の中に溶け込み、如何に仕事が出来るかどうかが問われている。 人材教育ということで、手足まといになられるようでは困る という考えがあるという。
グローバルな金融機関が生きて行くには、それが最低の約束ごと。 日本でタスキ掛け人事などに血道をあげているのは、仕事が出来ない集団だという証拠かもしれない。
ともかく最低条件として、築10年以内に総点検をするのが 住宅業界の常識。
それが16年間も、結果的に放置しておいたことになったのだから、ハーティホームのリフォーム担当者に引渡す前に、私が下調べ点検を行うことになったもの。
私が一番先にチェックするのは、室内の温湿度。
温度は23℃で、相対湿度は31%。
この相対湿度31%は少ない。 最低35%は欲しいところ。
しかし、透湿膜加湿器の生産をダイキンが中止したので、オリエンタル社が透湿膜加湿器と同じ大きさの全熱交を作らせ、安価で交換してくれている。 O邸も昨年交換したばかり。 しかし、透湿膜よりは加湿量が足りず、絶対湿度は5.4gというところ。 ただし、室温の設定が21℃だったら相対湿度は35%となり、ギリギリだが合格点となる。
それが証拠に、1階の玄関からLDKにかけては、メープルの無垢の床材は一つの隙間も開いていない。ピッシリと美しく敷かれている。 また、ドア枠のケーシングのトメの部分は一つも口をあけていない。 16年経っているのにクロスが剥がれているところもない。
風を全然感じさせないセントラル空調の快適さには、改めてホレボレとさせられた。
そして、レーザー光で1階床の温度を測定したら23℃。 1階の天井面が24℃。
Q値が1.4WのR-2000住宅の室内の上下の温度差は、16年たってもたった1℃。
ところが、吹き抜けになっている階段室の天井面の温度‥‥つまり2階の天井の温度は25℃。 これだと、5.4gの絶対湿度だと、相対湿度は29%と30%を切ってしまう。
つまり過乾燥状態。
このため、一階の回り縁やクロスは口を開けていないのたが、2階の天井部分と高い勾配天井の主寝室の回り縁とクロス部分には コーキングの必要性が認められた。
R-2000住宅は、ペアガラスのために相対湿度を40%以上に設定できない。 なぜなら、冬期はサッシ面に結露が生じるから。
したがって、ペアガラスで許される室内の相対湿度は、関東地域では33〜40%と考えて良いはず。 絶対湿度で言うならば20〜23℃での生活なら5〜7gまでの範囲。 8gを求めるには、トリプルサッシにする必要がある。
私が相対湿度や絶対湿度にこだわるのは、このO邸を見ても一目のように、相対湿度が33〜40%に収まっていてくれれば、ほとんど室内でのクレームが皆無になる。
住宅業者にとっても、住んでいる消費者にとっても、これほど有難いことはない。
だから、ダイキンのデシカに大きな期待をした。
デシカは、冬期もさることながら夏期がたまらない。 室温が29℃であっても、相対湿度が40%であれば、クーラーが不要で快適そのもの。
私は相対湿度が30%、室温32℃が最も快適に感じる。 これだと、高気密高断熱住宅の場合は、冷房費ゼロで十分に生活出来る。
しかし、女性の場合は 常に肌をスベスベ状態に保つには、相対湿度は40%が限度。 これだと室温は29℃がギリギリ。 30℃だと、暑がり屋の私はどうしても扇風機が欲しくなる。
ところが、ダイキンの家庭用デシカは セントラル空調換気を大前提に考えてくれていない。
130キロと重く、床置きのものは既存のR-2000住宅の透湿膜の代替品としては使えない。
もっと性能を絞り込んで、軽量で安いセントラル空調換気用のデシカを 是非とも開発してほしい。
これが、Oさんと私の結論。
そして、Oさんから、「R-2000住宅並みか、それ以上の性能住宅を求めている人が必ずいる。 私が貸していた先生の友人も、この家に呼ばれて、体験して初めてR-2000住宅の快適さを肌で感じた。 そして、そんな高性能の中古物件なら、多少価格が高くても買いたい考えている人が必ずいるはず。 政府や大手不動産業者に任せていたのでは、いつまでたっても日本の良い中古物件の適正価格での流通は期待できない。 何とかR-2000住宅以上の性能を求める人と、手放す人との共通の交流の場をネット上で構築出来ないものだろうか」 との提案があった。
私が現役だったら、いの一番に飛びつく。
そして、仲間のビルダーや全ての施主に話をかける。
だが、今は側面的な協力しか出来ない。
皆さん。 良い知恵やヒントがあったら、是非ともお聞かせ頂きたいとお願いします。
なお、築16年目のR-2000住宅の屋根、サイデング、サッシなどの外回りについては、目視した範囲ではサッシと気密性については異常が見られなかった。
しかし、10年点検をやっていなかったので、北面は何も問題はなかったが、強い陽が当たる東、南、西面のサイデングのコーキングや塗装、一部サイデングの割れなどに問題点が見られた。
屋根は、ハシゴがなかったので未点検。
あとはハーティの担当者に、本格的な点検をお願いすることにしました。