2014年04月25日

EUでは15年から義務化  日本では?  ファイスト博士報告 (下)


さて、ファイスト博士が定義したパッシブハウスは、EU委員会では高い評価を得ている。
そして、かなり多くの国々が2015年から新設住宅に関しては、パッシブハウスの基準を義務化しょうと準備している。 しかし、ヨーロッパの新設住宅戸数は限られている。
ファイスト博士は、「EU委員会は国連の委員のような強い権限を持っているが、各国に強要する権限は持っていない。 それぞれの国がパッシブハウスの基準を採用するかどうかは、各国の国会に委ねられている」 と言ったように、全員が足並みをそろえて 「ヨーイ・ドン」 と行くかどうかは 定かではない。

パッシブハウスは、寒冷地のドイツからスタートした。
夏期が乾期のドイツでは、室外のブラインドで直射日光さえ遮れば、夏期の住宅には冷房の必要性がない。 したがって、当初は暖房負荷だけを問題としていた。 
何度も書いたように、暖房費としては15kWh/u年以下であること。
したがって、6年前に研究所を訪問した時、「暖房だけというのはおかしい。 当然、冷房負荷も問題にすべきだ」 とシニダース博士に糾した。 そしたら次のような返答があった。
「南欧のイタリアやスペインでも、パッシブハウスを取り上げようという動きが、やっと出てきた。 そして、今と同じ質問が出てきている。 したがって、早晩 冷房に関する最低基準も決められるはず‥‥」 と。
その年の暮れに、森みわさんがパッシブハウス研究所を訪れると聞いたので、この点を確かめてもらった。 その結果、暖房負荷15kWh/uのほかに、冷房負荷15kWh/uも決定されたとの報告があった。 ただし、これは建物の器としての性能だという。
そして、森さんが鎌倉で計画しているプランニングでは、冷房負荷15kWh/u年、暖房負荷13kWh/u年、除湿負荷25kWh/u年で、PHPP (パッシブハウス・プランニング・パッケージというソフト) で計算し、研究所の正式認可を得たとのことだった。
つまり、寒冷地の暖房基準だけでは足りず、エリアが拡大するにしたがって冷房だけでなく除湿までもが追加されていった。

しかし、パッシブハウス研究所の言うのはどこまでも顕熱だけで、潜熱が含まれていないのではないかとか、加湿負荷が含まれていないという疑問。 さらには給湯に対する疑問などから、PHPPがこれらを完全にフォローしているのか、との疑義が 当時出されていた。
例えば、鎌倉のパッシブハウス。 除湿負荷25kWh/u年とPHPPで計算したとしても、個別クーラーが据え付けられているだけで、特別な除湿装置を装備しているわけではない。
つまり、暖房負荷、冷房負荷、除加湿負荷、給湯負荷と細かく計算しても、結局は120kWh/u年という一次エネルギーの使用量で拘束しているだけで、実質的な意味はそれほど持っていないのではないかという素朴な疑問。
本来は、PHPPによるシミュレーションと実際のデータを突き合わせて、実態にマッチするシステムに常に改善を加えてゆくのが理想。 高温多湿の夏と過乾燥の冬を持つ日本は、冬が雨期で夏が乾期のヨーロッパとでは気象条件が根本的に異なるのだから‥‥。 
R-2000住宅の時は、カナダの熱負荷計算システムをそのまま日本へ導入出来ないことを、カナダ側に理解してもらうのに一苦労した。 同じことがパッシブハウスにも言えるのかもしれない。

さて、ヨーロッパ生まれのパッシブハウスは、アメリカ・カナダの北米や、日本をはじめとしたアジア各国へも紹介されてきている。 まず、北米や日本と言う先進国で、どれほどの普及を見せるか‥‥である。
北米では、一部の識者に取上げられ、話題になっているのは事実。 しかし、国民的な規模でどのような反響を見せるかだが、アメリカは NAHB (全米住宅業協会) が動かない限りは絶対にムリ。 現時点では NAHB などの動向資料が乏しすぎて、言及できる状態に至っていない。
しからば、北米はともかくとして、日本ではどのようになるか‥‥。
私は過去に、北米のツーバイフォー工法をオープンな形で日本へ導入した経験と、カナダ政府からR-2000住宅を日本へ導入する時に手伝いをした経験がある。 
その経験に照らし、今回のパッシブハウスの動きを客観的に比較して、推定して見た。

まず、ツーバイフォー工法。
北米へ行けば、嫌でも目に飛び込んでくるオープンな工法。
大工さんをはじめ各職人さんの生産性は驚くほど高く、しかも抜群の耐震性能と防火性能を持っている。 たしかに、途中ではぶっつけ仕事のようにも見える時もあるが、仕上がりは鏡のようにフラットで、細部にまで神経が行き届いていて魅力的。
しかも、価格が驚くほど安い。
耐久性もよく、消費者にとっては飛びつきたくなるほどカッコよい。 輸入住宅がもてはやされたのは、無理もなかった‥‥。
しかも、セントラル空調・換気をはじめとした最新の設備機器付き。
この性能にして、この価格。 
そして、建設省では住宅局長をはじめ関係課長や担当者はツーバイフォー工法のオープンな導入に大賛成。 告示の作業に積極的にとりかかってくれていた。
一方、住宅金融公庫は、理事をはじめ部長も担当技術者も双手を挙げて賛同。 建設省の告示に間に合うように、枠組み壁工法の標準仕様書作りが、スパン表作りとともに始まっていた。
カナダ大使館も精力的に動いてくれた。
三菱商事などの商社、三井不動産などの不動産業者、木場を中心とする木材業者、ホームビルダー協会を核とした新進気鋭の地場ビルダー、杉山英男氏をリーダーとする建築・木材関係の諸先生方も惜しまない支援。
中でも大きかったのは、三井不動産がツーバイフォー専業の三井ホームを設立し、同時にランバーの加工会社も同時に設立してくれたこと。 三井不動産が動いたことで、三菱地所、住友不動産、東急も積極的に動いてくれた。
住宅業界で、官学業がこれほど一体化して動いたことはなかった。
こうした怒涛のような動きを見て、私は木質構造の半分近くはツーバィフォーに変わるのではないかと錯覚したほど。 しかし、現実はそうはならなかった。
地方の材木屋と大工さんは動かなかった。 そして、40年近くたった昨年で、全住宅に占めるツーバイフォーの比率は12%で、全木造に占めるツーバイフォーの比率は22%程度にすぎない。
北海道では対木造比率では1/3を超え、とくに十勝地方では50%を上回っている。
しかし、中部以西では木軸が圧倒的なシェアを握っている。 
阪神淡路大震災で古い木軸は軒並み潰れて、1階で寝ていた多くの人々を圧死させた。
木軸工法は絶対的なピンチに陥った。 
その時、耐震性の高い金物工法が開発され、木軸が壊滅状態になるのを助けた。 
だが、この金物工法はクローズド工法で、互換性や共通の仕様書を持っていない。 
また、建て方以降の生産性が驚くほど低い。 したがって、価格的に安くならないという最大の欠点を持っている。
とは言え、ツーバイフォー工法進出の、防波堤として機能しているのは事実。 
つまり、いくら合理的なツーバイフォー・システムであっても、伝統的な古い手法に拘泥する職人と消費者が存在する限りは、上からの改革には限界があることを物語っている。

次はR-2000住宅。
これは、カナダの天然資源庁とカナダ金融公庫の技術者が中心になって、紀元2000年までにカナダで新設される全住宅の断熱性能をR-20以上にしようと考えたもの。 日本のU値で言うならば0.3〜0.35W以上にして、カナダの家庭で使われている燃費を1/4以下にしようという画期的な内容を持っていた。 
気密性能は、50パスカルで1.5回転 (C値でいうならば0.9cu/u) 。
そして完成時には、登録された第3者の 《認定検査員》 が全戸を検査し、消費者にその気密性能を保証する。 いかにも役人が考え出したクソ真面目なシステム。
そして、1.5回転という自主基準を決めた根拠は、強風時などの自然換気の影響を0.5回以内に収めることによって、風の有無に関係なく一定の換気量を確保するため。 当時の最高基準であったスウェーデンのフラットの2.0回転を上回る数値だった。 
カナダの天然資源庁は、カナダ国内でのR-2000需要を喚起するためにも、「このシステムを日本へ無料で提供したい」 と建設省に申し出てくれた。 
建設省は、木材資源の輸入のことも考えて、R-2000住宅の実施機関としてツーバイフォー建築協会を選定し、建設大臣の認可制度とした。
そうした動きの一方で、カナダ天然資源庁は 通産省と建設省に働きかけ、「日加 R&D ワークショップ」の開催を強力に推進した。 その結果、日本とカナダの学術経験者が一堂に会し、お互いの研究成果を発表しあうワークショップが、都合7回もカナダと日本で開催された。 
私が高気密・高断熱住宅の構造以外に、コンセントボックス回りやヒートブリッジによる結露問題、室内空気質および換気ムシステムのあるべき姿、あるいはホルムアルデヒド対策の具体策を学んだのは、このワークショップであった。
ここまでお膳立てが揃えられると、ツーバイフォー協会としては断る理由はない。 
三井ホーム、地所ホーム、東急ホームなどもイソイソと社員を研修会に派遣し、必須条件であった試作棟の建設に取組んた。 ところが、工事を外注している大手メーカーにとっては気密性能が大きなネックに‥‥。
試験棟はなんとか誤魔化せたが、施主立ち会いのもとに行った完成気密検査では、軒並みに性能が担保できずクレーム物件になり、重荷になってきた。
一方、自社施工を掲げていた地場ビルダーは、それまでの204の外壁はやめ、各社ともに206の外壁を選んだ。 そして、べバーバリア工事を完全に行うことで、容易に50パスカルで1.5回転の気密性能をクリアーした。 そして、それまでの 《なんでも屋》 的な性格をやめて、《R-2000住宅専門業者》 へ変身した。 
そうした専門化した地場ビルダーを中心に、年間500棟程度のR-2000住宅が、コンスタントに建てられていった。
面白くないのは大手。 ついに三井ホームはツーバイフォー協会の専務理事を巻き込んで、カナダ政府に対して一方的に契約の解除を申し出て、カナダ政府との蜜月関係を解消した。 
これは、大臣認定制度そのものが廃止されたことが動機であったが、三井ホームを中心とする動きを阻止出来なかった地場ビルダーの結束の弱さ、を物語るものでもあった。
だが、現時点でもR-2000住宅に匹敵する206住宅は、全国でコンスタントに500棟程度は提供されており、カナダ天然資源省の働きかけは 決してムダではなかったことが実証されている。
これ以外でも、日本では《新住協》を中心とする《Q-1.0運動》などがある。 
しかし、いづれも 民間主体の任意な小規模運動に過ぎず、政府や国家を動かすような拡がりと展望が得られていない。

こうした背景からパッシブハウス・ジャパンを見ると、「我こそはドイツのパッシブハウス研究所が認定した唯一の日本の団体」 との声は聞こえてくるが、具体的な展望や将来像がはっきりしない。 つまり、ドイツ政府を通じて日本政府や建築業学界、あるいは環境団体へのアプローチは、現時点では見えない。
私は民間のエネルギーを高く評価する人間の一人。 だが、日本の消費者に安心してもらうには、役所や優遇策はうまく活用すべきだと考えます。(R-2000住宅には、一切優遇策がなかったが‥‥) 
それにしても、掲げている気密性能はあまりにも高すぎる。 マスターベーションをするのは勝手だが、この数値を日本の企業へ強要すれば、全員が腰を引いてしまう。
たしかに、夏期の壁体内結露を防止するためにインテロという特殊なべバーバリアを開発したモル・建築エコプロダック社の気密工事には感心させられた。
それは、室内側にインテロを隈なく施工し、特殊なテーピングで気密性を担保する。
その上に30ミリ程度の横胴縁を施工して、配管と配線とコンセントボックスなどのスペースを確保する。 配管と配線がべバーバリア層を貫通しないから高い気密性能が担保出来る。 
その胴縁に石膏ボードをスクリュークギで止める。 このように、外壁に直接スクリュークギが打たれていない石膏ボードは、耐力壁としてカウントすることは出来ない。
地震のないドイツでは、この内部胴縁方式で問題は一切ない。 
しかし、神戸と中越の直下型の震度7という烈震地を隈なく調査した私には、日本では建築基準法に定める1.5倍の耐震性ではダメで、基準法の最低2.0倍の耐震性が不可欠と考えている。 
それを確保していない住宅は、どんなに見せかけの断熱・気密性能が優れていても、基準法の2.0倍の耐震性が備わっていないと、震度7の直下型地震を受けるとアッという間に気密性を失ってスカスカになってしまう。 
そのような厳しい現実を、神戸と中越の現場で嫌というほど見せつけられた。
胴縁に石膏ボードを止める 「モル・建築の仕様」 の場合は、石膏ボード抜きで基準法の2.0倍以上の耐震性を持っていない限り、絶対に日本では採用出来ない代物。

このような諸条件を考えると、私の個人的な見解では 日本におけるドイツ・パッシブハウス研認定のパッシブハウスの将来性は、必ずしも明るいものではない。
日本での過去数年間の実績‥‥ドイツ・パッシブハウス研の正式認可を得た住宅実績は、14棟に過ぎない。
もちろん、現在は啓蒙の段階。 馴らし運転の時間帯。
だが、パッシブハウスというのは、R-2000住宅や、Q-1住宅よりもはるかに超高性能で割高な住宅。 それがパカパカ売れるとは、どんなに贔屓目に見ても考えられない。 
たしかに、一部の消費者は動き始めている。 
だが、R-2000住宅の時のように、これを専業とするビルダーが誕生してくる気配が 今のところ一向に感じられない。 日本では、パッシブハウス研の本家争いをしている以外のところが‥‥日本の消費者の支持を得て大きく伸びてくると言う気がする。

その代表例として挙げられるのが、一条工務店。
同社の i-cube や i-smart のことは、すでに何度も触れているので省略。 
Q値面では、ほとんど問題がない。 
だが、パッシブハウスに比べると気密性能に難点があり、換気システムでは失格とさえ言える。
したがって、どんなにリキんでもパッシブハウスとは呼べない。
しかし、平均8kWの太陽光発電を、同社の資金負担で搭載し、実質ゼロエネ住宅を すでに年間1万棟のペースで供給している。
世界で、同社に匹敵するゼロエネ企業の存在は皆無。
ドイツ・パッシブハウス研認定住宅は、日本では一条工務店の競合相手になれそうにない。 価格的にもパッシブハウスを遥かに上回る一条工務店が、これからも日本の消費者に多大な影響を及ぼし続けてゆくであろう。

それと、忘れてはならないのが札幌の無暖房研のグループに代表される地場ビルダー群。
札幌市のU値0.5W、C値0.5cu/uのトップランナー方式をクリアーした地場ビルダー。 
彼らは新しい顧客層を得たことによって、急速に古い考えを捨て、社内体制を変貌させてきている。 性能面でも価格面でも、一条工務店に対抗出来るものを十二分に備えている。
彼らが、札幌方式のトップランナー専業企業に、脱皮出来るかどうかは不明。
しかし、パッシブハウス・ジャパンに群がっているビルダーよりは、はるかに頼もしく感じるのは、私の感受性が退化しているせいだけではなさそう‥‥。 

(なお、当日のセミナーではISEPの飯田所長の講演と、パネルディスカッションに参加した軽井沢の施主ケビン・マヤソン氏の話が面白かったが紙面の都合で割愛し、別の機会に譲ります)

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2014年04月20日

パッシブハウス研・ファイスト博士の5原則と暖房15kWh (上)


ご案内のように、6年前の2008年にバウマンさんの案内で、フランクフルトから20キロばかり南下したダルムシュタット市にあるパッシブハウス研究所を、数人の仲間と訪問した。
その時のレポートは、2008年の10月15日から12月25日まで、なんと15回に亘っている。 その中で、パッシブハウス研究所の報告は11月10日、15日、20日と3回にも‥‥。 
ただその時は、ファイスト博士が不在で、シニダース博士からレクチュアーを受けたので、ファイスト博士の本音を聞くことが出来なかった。 
したがって、待ちに待ったチャンスといえた。

ファイスト-1.JPG

ファイスト博士によると、そもそもパッシブハウスの研究が始まった動機は、今から30年近くも前に、「貧しい中国の寒冷地で暖房費が用意出来なくて大変な状態。なんとかならないか」 との相談を受けたアダムソン博士が、「暖房がなくてもなんとか生活出来る家づくり」 をテーマに掲げたのが発端。
単に後進国・中国だけではなくて、先進国のドイツでも、「高気密・高断熱で、サッシの性能を上げれば、ほとんど暖房費がなくても生活が可能なはず」 と気付いたファイスト博士は、1991年に南面3階建て、北面2階建の実証タウンハウスを建て、本格的な研究を開始した。 (写真などはブログ・今週の本音、2008年11月10日付を参照して頂きたい)
実証タウンハウスを持ったので、研究は順調に進んだ。 そして、得意満面な顔でアメリカのエモリー博士にそのタウンハウスを見せた。
そしたらエモリー博士から、「ファイストさん。貴方の考えは間違っている」 と言われた。
[エッ‥‥」 と博士はとまどった。 悪いことは何もやっていない。 エネルギーがなくても、何とか快適な生活が出来るように懸命の努力を続けているだけ。 文句をつけられる筋合いは一つもないはず。 
心の中で猛反撥をしていたら、エモリー博士から次のように言われた。
「貴方は、論文を書くための、科学的実証のためにこのタウンハウスを建てたのではないでしょう。 貴方がやらねばならないのは、パッシブハウスが量産化され、一定のマーケット・スケールを持つことではないですか。 パッシブハウスを机上の学問にとどめておくのではなく、パッシブハウスというマーケットを開拓することではないですか!」 と。
この言葉でファイスト博士は目が覚めた。
「そうだ。 コスト面までに首を突っ込んでゆくのんが、私の使命だ‥‥」 と。

ファイスト博士のパッシブハウスは、ゼロエネルギー住宅を目指すものではなかった。 
コスト面から考えて、15kWh/uの年間暖房費を覚悟していた。
ただし、冷暖房費・除加湿・換気・給湯・照明などすべての家電の年間1次エネルギーが量が120kWH/u以下で上がる‥‥という厳しい条件が付いていた。
1次エネルギーとは、発電段階でのエネルギー量。
これに、送電等によるロスが非常に大きいので、家庭での段階‥‥つまり2次エネルギーでは約44kWh/uで上げなければならない勘定になる。
仮に120u (36.3坪) の住宅の場合は、電気代に換算して年間5,280kWhで上げられないとパッシブハウスとは言えない。
原発事故以来、日本の電気代はうなぎ昇り。 
仮に1kWh当り32円とすると、年間電気代は 約169,000円。 月平均約14,000円の電気代で、暖冷房・除加湿・換気・給湯・照明などの家電費を賄わねばならない。
それが、達成出来るのがパッシブハウス。

これを達成するために、ファイスト博士は試行錯誤しながら、5大原則を確立していった。
まず第1は、断熱。
床、壁、天井のU値を0.15Wとした。
これは、それほど達成が難しい数値ではない。 
206の壁に熱伝導率0.035のアイシネン140ミリを充填させ、外断熱として0.035のロックウール100ミリを施工すれば得られる。
天井断熱としては、これまた0.035の性能のロックウール240ミリを206の天井根太に施工すれば、簡単に得られる。 
決して断熱材のお化けというほどでもなく、外断熱が落下するという懸念も少ない。
無暖房ということであれば、断熱厚が少なくとも30%は増加し、ドイツでは問題にならない耐震性が 日本では大問題になってこよう。 したがって、コスト面にハネ返ってくる。
床断熱は難しいが、原則として天井断熱に準ずれば良い。

そして、断熱材のこともさることながら、博士が重視したのは 「ヒート・ブリッジ」。
これが第2点としてあげている。
軽量鉄骨造では、スチールの柱や梁のヒート・ブリッジが大問題になる。 しかし、木質構造にあっては、木材そのもののヒート・ブリッジを問題視する考えは少数派にすぎなかった。
またサッシは、ガラス面よりも、枠の木やPVCからの熱の損失が大きな問題であった。
ドイツでは木のヒート・ブリッジにに対する認識は、博士の努力もあってかなり深まってきている。 しかし、日本ではツーバイフォー工法では手間暇を惜しんで、やたらに木材を使う 「材積過多」 の仕様が多くなっている。 そして、204の材積過多の手法が206や208の壁でも平気で用いられている。
ヒート・ブリッジという面からみるならば、由々しき問題。 これに対する自覚が足りない。

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第3点はサッシなどの開口部。
当時、ドイツで手に入ったのはLow-Eのペアガラスサッシ。 
どんなにリキんでも、U値は1.5〜1.7W程度であったろう。
ところが、ファイスト博士は、なんと最初から0.8Wのサッシを求めた。
当然、ガラスはトリプルで、そんなガラスを造っている工場は皆無。 当然トリプルガラスを収めるには枠の幅が大きくなり、枠の断熱性も一段と高くしなければならない。 
私などはこんな難問に遭遇すると、最初からギブアップしてしまう。 ところが、博士はその実現に邁進し、サンゴバンに手造りのトリプルガラスを作らせ、中小のサッシメーカーを口説き落して0.8Wの特注サッシを入手したと言うからすごい。
そして、ドイツをはじめヨーロッパでは、現在では0.8Wのトリプルサッシが、大変こなれた価格で誰もが入手出来るようになってきている。
日本でも、一部0.8Wのサッシが入手出来るようになってきている。 しかし、大きな開口部は入手が困難で、一般化していないために価格もリーズナブルというわけにはやゆかない。 
しかし、博士の引いた路線に従って、多くのメーカーがトリプルサッシに参入してきており、世界的に見ると最大の障害はなくなったと考えるべきであろう。
(写真はパッシブハウス研が描いた、世界各国の温度から必要とされるサッシの種類を示した図。しかし、ガラスのμ値だけでなく、遮熱性能が叫ばれるようになってきている)

第4点は、気密性。 つまり、エアータイト。
私は、何故パッシブハウスが、50パスカル加減圧時で、0.6回転 (C値で言うならば0.3cu/u以上) という超気密性能を求めているかが、今もって不可解。 ご案内のように、R-2000住宅では50パスカルで1.5回転 (C値で言うならば0.9cu/u)。
この気密性でも、三井ホームや地所ホーム、東急ホームの大手はクリアー出来ず、撤収してしまった。 まして、スカスカの鉄骨プレハブや住林などは最初からお呼びではない。
それなのに、パッシブハウスが R-2000住宅の3.0倍近いシビアーな気密性能を求めている真の理由が理解出来ないでいる。
たしかに第3種換気だと、ショート・サーキットを起こさずに給排気を完全に行うためにはこの程度の気密性能が必要。 しかし、パッシハウスは第1種換気を大前提にしている。 私の認識では、50パスカルで0.7回 (C値で0.4〜0.5cu/u) で十分だと考えている。
この疑問を、直接ファイスト博士にぶつけるチャンスは、今回もなかった。
ただ、博士は 「暖房費を少なくするためには気密性が高いことに越したことはない」 というだけで、必ずしも科学的な根拠を示して説明してくれなかった。
(つまり、50パスカル時に0.6回転だと暖房費は○○kWh/uで、0.7回転だと○○kWh/u、さらに0.8回転だと○○kWh/uだと示し、したがって0.6回転を選んだ‥‥と説明してくれたわけではない。 したがって、パッシブハウスを盲信する人にとっては0.6回転という数値は、絶対的な数値としてのしかかっている。 一条工務店でもクリアー出来ない数値で、日本ではこの数値が足かせとなって、パッシブハウスの普及が大きく制約されると考えられる)
ただ、「構造躯体にカビを生やさないために気密性が重要」 と博士は付け加えた。 意外な発言にとまどったが、なるほどとうなずける面もあった。 それだけに、この防カビ対策という面でも科学的な根拠も示してほしかった。

最後は換気。 フレッシュ・エァーの重要性。
博士は、換気とか熱回収は単に省エネと言う面だけではなく、人々の健康を保持するという面でも重要だと説いた。 とくに台所、浴室、トイレ、作業室などダーディゾーンからの排気の必要性と、フレッシュ・エァーの重要性を強調した。
今回は、アースチューブには一切触れなかった。
アースチューブによ依らなくても、90%以上の熱回収が可能な換気システムがどしどし開発されてきたからであろう。
しかし、森みわさんの14作品のパッシブハウスがそうであるように、採用されているのは全て顕熱交換機。 そうでなくては、全ての排気を浴室・台所・トイレなどのダーディゾーンから行うことは不可能。 また、給気口と排気口は、きちんと分けて設置されている。
つまり一条工務店は、断熱というQ値面ではパッシブハウスの性能をクリ―している。 太陽光発電の設置で、ゼロエネルギーという面から考えると、パッシブハウスを上回っていると言っても過言ではない。 
しかし、気密性能はせいぜいC値が0.6〜0.8cu/uで、明らかに下回っている。 また、ダーティゾーンからの24時間排気もなく、給気口と排気口は隣あわせ。 
パッシブハウスとは似て非なるもの。
ここらあたりの適切な指摘が、講演者の誰からもなかったのが残念。





posted by uno2013 at 15:37| Comment(0) | 展示会・シンポジウム・講演 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月05日

今年の建築・建材展でトリプルサッシと目についたいくつか‥‥


昨日から7日まで、東京・国際展示場で恒例の 「建築・建材展」、「LED展」、「ジャパン・ショップ展」 など、日経新聞が関連する展示会が6つもまとめて開催されていたので、行ってきました。
しかし、6つの展示会を一挙に行うというのは、どこまでも日経新聞社のご都合によるもの。
どんなにリキんでも一日に歩ける範囲は、1万5000歩が限度。 
「建築・建材展」 を2時間かけて見て回り、せめてLED展を見ようと思ったが、疲れたし、LEDの会場は閑散としていて熱気が感じられない。 それに、セミナーも魅力のあるものが皆無。 ぐるりと一回りして、早々に引き揚げてきた。

このところ、私の関心事はサッシと断熱と換気。
サッシは7社が出品していた。 オスモ&エーデル社が、ドイツのPVCサッシとお得意の電動外ブラインドを出展していた。 これが一番目についた。
メインとして展示されていたのは、U値が0.82Wのトリプルサッシ。
ドイツには、日本のアルミサッシの組立工場並の 「サッシセンター」 なるものが、PVCのバー材を買ってきて、2500万円も投資して4点同時圧着機を導入しさえすれば、誰でも簡単にサッシメーカーになれると聞いていた。 そして、この程度のメーカーが千数百社もあると吹聴されていた。 
しかし、これはU値が1.7W前後と低い時代の話。
ペアサッシではなく、Q値が1.0Wを上回るトリプルサッシの時代は、出来るだけPVCを薄くして空気の房数を多くし、熱伝導率を低くしない限り、施主の高度な要求に応えられない。
ガラスの性能に、PVCの枠がついて行けない。
この薄い房を多くするために、PVCの強度がどうしても落ちざるを得ない。 それを補うためにドイツでは下の写真のように鉄の金物での補強が常識になってきている。

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この金物を含めて4点同時圧着する技術は、2500万円の投資では出来ないらしい。
このため、ドイツでは弱小のサッシメーカーが次第に姿を消しつつあるという風に聞いている。 その真偽の程は定かではないが、ともかくパッシブハウスという荒波は、中小のサッシメーカーにものすごいイノベーションを求めているらしい。
そして、現物の展示はなかったが、室外側のサッシ枠をなくしてガラスの開口部面積を10%も上げた下記の「ノバイTOP90」 というU値0.78WのPVCサッシを売りだしている。

エーデル-2-1.JPG

それよりも面白いと思ったのは「ノバツインTOP90」 というブラインドを内蔵したサッシ。
プラインドを開けた時のU値は1.0Wで、閉めた時のU値は0.91Wという。
これは、東京以西では売れるはず。

エーデル-2-2.JPG

このほかに気密性能の良い超大型引き戸「ヘーべシーべ」 も開発していた。
ドイツのPVCサッシは、注目に値する。
ただし、設計価格は高かった。 これでは簡単には使えない。

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もう1社注目されたのが、「チャネル・オリジナル社」。
この会社は商社だが、ともかくトリプルサッシでは木製で数社、PVCではドイツの「UNILUX」性のU値0.7〜0.9Wのサッシを扱っている。

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中で面白かったのは、山ア屋木工所の信州ヒノキを使ったトリプルの「キュレーショナー」。
しかし、ガラスの性能値は高いが、信州ヒノキの断熱性が断面を見てもあまりにも低いので、
残念ながら競争力が低い。
チャネル・オリジナル社は品揃いでは大したものだが、これはという価格競争力を持った商品が少ない。
もっと絞り込みが必要。

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この外では、木製ドアメーカー・キムラの0.95Wのトリプルや、バルト3国から出展していたメーカー。 イギリス性のガーデナップ社などが目立った。 ナーダック社やマーヴィン社のペアサッシでは明らかに見劣りがする。

問題は国内メーカーの展示がなかったこと。 エクセル・シャノンやYKK、スタイルテックの3社が、どのような価格帯で、どの程度の強度のあるものを市場に出してくるかによって、今年は 「様変わり」 の匂いがするというのが私の見立て。
それにしても、実需を持っていないので、1人で取材するには限界がある。
やはり、最低で2〜3で回らないと肝心なことが聞けないし、見逃しも多い。
秋の「ホームショー」には国産メーカーも出そろうだろう。
それが、ポイントになるかも知れない。

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ハイドロ-2.JPG

サッシ以外では、TOTOを中心とした光触媒の「ハイドロテクト」 が面白かった。
マジックで書いたイタズラ書きが瞬時に消える様子や、1.8ppmあったNOXの濃度が数分間にゼロになる実験は、人を惹き付けた。

トリプルシェード.JPG

バイオマーブル.JPG

冷風機-1.JPG

このほか、ソーラーハウス協のU値1.47Wのトリプルハニカムシェードや、日本デコラックスの木目の「バイオマーブルカウンター」やサンコー社の「エコ冷風機」は、改良の余地が多いが目にとまった。

posted by uno2013 at 07:34| Comment(0) | 展示会・シンポジウム・講演 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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