太陽熱利用システムというと、私どもの頭に深く刻み込まれているのが、「太陽熱を利用した給湯システム」。
不凍液を循環させる床暖房や各種のパネル暖房システムも、基本的には同一システム。
この給湯システムにも大きく分けて2つのシステムがあると 道科学大・鈴木名誉教授が指摘。
1つは、矢崎総業に代表される45万円台の 「平板型集熱器」。
もう1つが寺田鉄工所に代表される80万円台余の 「真空型集熱器」。
ところが、今回 NEDO が 「技術開発」 をしようと助成事業を計画したのは、給湯システムだけではなく、暖房システムを含めて、「年間給湯・暖房費を半分にしょう」 というもの。 冷房費や除加湿費用までを含めて半減するというのなら難しいが、暖房費+給湯費たけを半減するというのは、それほど難しいことではないはず。
給湯システム関係だと、大まかな技術開発は終わっている。 また、給湯を用いた床暖房やパネルヒ―テングの暖房システムも、とっくの昔にヨーロッパなどで開発済み。
したがって私は、冷房がほとんど不要な北海道などでは、ヨーロッパの給湯暖房・給湯システムでことが足りると短絡的に考えていた。
ところが、暖房システムでは給湯以外のシステムを求めているらしい?
今回のメインテーマーは、私の印象では太陽熱を直接用いた 「給湯以外の暖房の技術開発にポイントが置かれている」 と考えてもよいようだ !?
もちろんコスト面では、実用性に耐え得るものの開発を目指しているが、必ずしも 「経済性」 に重点が置かれたものではなさそう。 そうなれば、話が180度違ってくる。
この技術開発の共同研究機関として九州大・尾崎研究室が選ばれ、設計時のシミュレーションによるエネルギー予測解析を指導したり、完成後の実測値の測定・集計を2年間に亘って行うことになっているらしい。 つまり、全国の実証棟の刻々の観測データーは、インターネット経由で九州大に送られ、そこでまとめられる。
それらのデーターの分析結果は NEDO から発表される。
途中で 中間発表が NEDO からあるかも知れないが、いくら尾崎研究室と親しくても、また個人的に尾崎先生を熟知していても、いくら突いても結論は話してもらえそうにない。
雪の多い札幌では、太陽集熱パネルは屋根に置くのではなく、写真のとおり1、2階とも庇の部分に60度の角度で取付けられる。
「札幌の場合は60度ではなく、もう少し急角度の方が冬期の積雪を避けれたかもしれない」 とは、鏡原社長の述懐談。
そして、見たとおり平板型集熱パネル。
このパネルの提供を国内メーカーに求めたが、「札幌や旭川だと性能が保証出来ない」 と軒並み尻込みしたという。 そこで、選ばれたのはスウェーデン製のパネルとか‥‥。 何となく淋しくなってくる話。
したがって、一番知りたい集熱パネルの価格と性能については、まだ発表出来る段階には至っていないらしい。
もちろん性能は、設置の緯度、方位や角度、集熱パネルの仕様、熱媒循環量などで変わるので、一概には言えないが‥‥。
そして、2階の庇についている4枚の集熱パネルが給湯用で、1階の庇についている4枚が暖房用集熱パネル。
よく、太陽光の電気エネルギーの効率は10〜20%で、太陽熱の効率は50〜60%と言われている。
しかし、この写真を見ると、断熱材を巻いていない管が縦横に走っている。 これは、どこまでも素人目にすぎないが、これだけ管が現わしになっているのはもったいないという気がする。
次にこの実験棟で注目されるのは、2階の南面3.185メートルと西面1.82メートル (3.25畳) のサンルーム空間。 その外壁側に、設けられている幅約60センチ弱のダブルスキン空間。
このダブルスキンというのは、外壁の外側または内側にガラスなどの壁を2重に設けて、その空間を温熱コントロール空間として利用するもの。 多い使用例は、バルコニーの外側にガラスの壁を設けて、バルコニーで温めた空気を暖房に利用する方法。
大洋建設の実験棟は、札幌だからバルコニーがない。 変わりに小さなサンルームが設けられたということ。
北海道では、最近の傾向として南面以外はトリプルサッシを採用し、南面だけをペアーガラスにする例が多く見られると聞く。 南面までトリプルサッシにすると、冬期には日射熱が少なくて寒いから‥‥。
これは、冬期の室内の相対湿度が30%以下と低くなっても我慢しているから、ペアーガラスでも結露が生じていないだけのこと。 冬期の相対湿度を快適な45%以上にしたら、北海道の住宅はほとんどが結露だらけで、住宅寿命が極端に短くなってしまう。
つまり使う方位によって、ガラスの日射取得率 (η値) を変えるのが本筋。 それをやらない手抜きの悪い風習が、北海道では横行しはじめていると言うことらしい。
一方、昨年の4月30日付のこの欄で、北海道無暖冷房住宅研究会の、絵内先生などの集熱と蓄熱の研究について報告した。
太洋建設の実験棟でも、2階の南面の6畳の子供室の床に大建工業のDKPM-20という蓄熱フロアーを採用している。 また、地下の基礎空間を蓄熱層として活用している。
しかし、ダブルスキン空間と言うのは、私にとっても初めての経験だったが、北海道ではおそらく初めての試行であろう。
大洋建設のダブルスキンは、外側にトリプルサッシを用い、約60センチの内側にロールスクリーンを内蔵したペアサッシを用いている。 夏期はこのロールスクリーンが日射を遮蔽する。 肝心のガラスのη値を聞くのを忘れた‥‥。
太陽熱集熱パネルとこのダブルスキン空間で温められた空気は、基礎のスラブへ送られて蓄熱される。
しかし、ダブルスキンの空間は限られている。 他の南面や西面の窓からは、ダイレクトに太陽光が入って、オーバーヒート現象を起こす。 そのため、この実験棟では室内の空気の循環量を増やして北側の部屋へ循環させている。
それと、吹雪が3日間も続いた時は、集熱パネルもダブルスキンも役に立たない。 地下の基礎に貯えられた熱もなくなってしまう。
そこで、2階の南面に4.5尺角の空調室が設けられている。 冬期の予備暖房として、夏期の冷房運転として機能しているのだろう。
この空調室の内面は、写真で見る通り6面ともアルミ箔仕上げ。 音や熱の伝導を防ぐためだろうが、その効果のほどはどれほどなのたろうか? ここまでやらなくてはダメだったというクレームは、今までに一度も受けていないのだが‥‥。
この空調室はダクトで各室と結ばれていて、オーバーヒート時の空気循環にも大活躍している。
九州大の指導で内地で行われる一般的なシステムでは、換気も湿度調節もエアコンで行っているのだそうだ。 しかし大洋建設の実験棟では、事業主の意向で別途に第一種換気を設置しているという。 そして、湿度調節機器は設置していないとのこと。
ところが、2階の西側の6帖の子供部屋の押入れに設置されていた温湿度計では、室温が21℃で、相対湿度が48%であった。 絶対湿度は8グラムと冬期としては理想的。 したがって、湿度調節機能を持っているという風に考えてしまったが、これは考えすぎだったらしい。
多くの参観者の吐く息で、相対湿度が上がったらしい‥‥。
上の写真は、台所に置かれた貯湯タンク。
念のために、ガス会社のエコジョーズが併設されていた。
給湯については、いまさら触れるまでもなかろう。
同行した4人の意見では、「新技術の開発だから、いろんな試みがなされていて参考になった。
しかし、機械ものは10数年から20年で必ず壊れる。 そのアフターメンテが非常に大切。 ところが、車のように定期点検が義務化されておらず、機器の損傷に対する消費者の予備の貯金もなされていないのが現実。 このため、ビルダーとしては60〜100年間の住宅性能そのものについては保証出来るが、機器に対しては保証出来かねているというのが現実。 ここらあたりのシステムを、是非 NEDO で考えていただきたい」 という意見に収束された。
一つの意見として参考にして頂きたいと思うが、セミナーでの各講師の発言内容の資料が配布されていないので、これ以上の詳細な報告は出来ないというのが現実。
内容の不備や舌足らずな点は、お許しいただきたい。