2015年12月15日

耐震性と防火性こそ、消費者が求めている最低限の条件  (上)


最近の私は、住宅性能面で 0.5cu/u以上の気密性能 (C値) と、1.0 W 以上の断熱・省エネ性能 (Q値) を求めている。
しかし、それ以上に求めているのは、耐震性能であり、防火性能。
ご案内のように、建築基準法で求めている耐震性能は、「震度5強の中規模地震ではほとんど損傷を生じることがなく、極めて稀にしか発生しない震度6弱以上で震度7までの地震には、傾くことはあっても倒壊することはないものにすべし」 というもの。
非常に常識的な判断だと考えられる方も多かろう。
最近は直下型の震度7という地震はほとんど聞かない。 しかし、阪神淡路と中越地震という直下型で震度7という地震が、10年余前に連続して起こった。
そして、「30年以内に東京で震度7の直下型地震が起こる可能性が非常に高くなってきている」 と言われている。
「東京の震度7の直下型地震に対処するにはどうしたらよいか」 という大きなテーマを抱えて、神戸と川口町の現場を訪れた。

さすがに神戸への視察者は多かった。 しかし、「大阪周辺へは大きな地震はやってこない」 という伝言に踊らされたのか、神戸の耐震性能の低さには呆れるほどのものだった。 無筋の基礎工事を多く見たし、柱や梁なども3寸と細いものが圧倒的で、ほとんどの住宅は最初の一揺れで通し柱が折れ、1階がぺシャンと潰れてしまっていた。
そして、1階で寝ていたお年寄りを中心に、7000人以上が圧死してしまった。
正直言って、あの地震の加害者は、木材関係者や建築業者。
ツーバイフォー工法は、ほんの一部の大手の住宅メーカーの住宅が潰れただけだった。 これに対して、在来木軸業者の住宅は、軒並みに潰れていた。
神戸の被害を見た多くの人は、「これで、在来木軸は完全に死んでしまった」 と考えた。
私には、「在来木軸の根本的な解決策」 が何一つ浮かんでこなかった。

神戸の場合は、「潰れて当然」 と言えるものだった。
これに対して、中越地震の時は、私は翌日には震度6強の六日町に入り、知人のトピアホームを中心に取材をしていた。 最初の頃は中越地震での倒壊数は400棟と言われていた。 そのうちに激震地は川口町だと分かり、倒壊戸数も3000棟に近いことが判明してきた。
トステムが、スーパーウォールの代理店・川口町の渡部建設の被害状況を調査するために調査団を派遣することになったと聞いた。 その調査団に同行して渡部建設を訪れられるようトステムに依頼した。 それ以外にも2度に亘り同社をを訪ねて取材を続けた。
渡部建設は町から依頼されて、全被害地域の基本調査を行っていた。 その調査で、同じ川口町でも被害がひどかった地域が4ヶ所あることを渡部社長は語ってくれた。 ご案内のように、震度6までは強と弱がある。 しかし震度7には強弱がない。 一率に震度7で統一。
ところが、渡部社長が案内してくれた烈震地の1つの武道窪では 17棟のうち16棟が潰れ、倒壊していなかったのはスーパーウォールの1棟だけ。 その1棟も、仏壇が部屋の中央まで動き、内壁の石膏ボードはほとんどやられ、外壁の構造用合板もかなりやられていた。 そして何よりも強調しなければならないのは、気密性が完全に失われていたこと。
「今までは、前の坂道を昇る自動車の音は全然気にならなかった。けれども、今はうるさくてやりきれない。 確かに倒壊しなかったことには感謝しているが、失われた気密性と騒音は、どうしてくれるのでしょうね‥‥」
建築基準法から言うと、倒壊しなかったのだから、建築業者が問われる理由は1つもない。

もう1ヶ所、渡部社長が案内してくれた激震地は田麦山。 
約100棟ある住宅のうち、倒壊を免れたのはたったの10棟だけ。 倒壊率9割という凄さ。
つまり、震度7の川口町でも震度7弱と震度7強の地域があたことが歴然。
このことを、各大学をはじめ気象庁も調査をしているはずだが、学会の発表会でも各報道機関でも、なに1つ触れていなかった。
それに新潟の豪雪地で、プレハブ住宅が1棟も建てられていなかったので、各住宅メーカーもほとんど調査をやっていない。
豪雪地なので、ほとんどの住宅は高床式。 つまり、1階基礎と天井はダブル配筋をして、1階は車庫や物置として使用。 そして豪雪時は、2階から出入りする。
この田麦山の100棟をすべて見て回ったわけではない。 主に渡部建設が建てたスーパーウォールを中心の視察になったが、驚くことに倒壊した住宅のすべての高床は、ほぼ無傷で残っていた。 そして、スーパーウォールで目撃したのだが、なんとホールダウン金物の先のネジになっている部分で、ネジが千切れていた。
つまり、ダブル配筋のコンクリートの床は無傷だったが、それとホールダウン金物で結んでいた木構造部分がやられていた。 基礎を丈夫にしただけではダメだと立証してくれていた。
この大切なポイントを、建築学会をはじめほとんどが見逃していた。
もちろん、コンクリートの高床は無傷だったが、駐車しておいた車は壁に当たって大破していたり、1階床に立ちあげていたエコキュートが倒れて、使いものにならなくなっていた。

一方、こうした激震地以外の、いうなれば震度7強ではなく、震度7弱の町中のスーパーウォールの被害状況も数ヶ所見せていただいた。 こうした住宅は、外から見ていると全く被害がないように見えた。 しかし一歩中に入ると、ひどいものだった。
天井から下げていた電灯は暴れてあちこちに傷を付け、クーラーは脱落していた。 夜間電力を利用する蓄暖は、壊れてバラバラ。
それに、ほとんどの家は1ヶ月以上はたっているというのに、未だに片付けが終わっておらず、足の踏み場もないという住宅にもあった。
そして、豪雪地なので使われている柱は最小でも4寸角。 中には5寸角の柱も見受けた。
内部に使われているスジカイはその1/2から1/3。 つまり最低でも厚は40ミリから75ミリ厚。
そのスジカイが横からの力で圧縮され、面外へ挫屈していた。 このため、内壁に張られていた石膏ボードが、1枚残らず吹飛ばされていた。 全く想像も出来ない姿。 これを見て、スジカイ擁護論者の顔を見たくなった。 なんと言うのだろうか?
その川口町の中の倒壊率は、全体的には30%程度と言われていた。
多くの読者は、「また川口町の話か‥‥」 と眉を寄せていることと思う。 しかし、私以外に誰1人として川口町の実情を正しく伝えてくれていない。 折角の教訓が活かされていないと思うから、少し焦っているかもしれない。
初めての方で、もっと川口町の詳細を知りたい人は、2004年11月4週から2005年の1月4週にかけて、このブログ欄で9回に亘って掲載しているので、それを読んで頂きたい。

こうした神戸や川口町の実情を見て、私は在来木軸工法に対して、消費者視線から救いようがないと考えていた。 ところが、日本には知恵者がいるのですね。 タツミが中心になって通し柱が折れない 「金物工法」 を開発してくれたではないですか。 日本の在来木軸にがっかりさせられていた私も、この金物工法で救われたと感じた。
しかし、金物工法によって通し柱が折れる心配は皆無になったが、同時に古くて弱い木軸工法も息を吹き返してしまった。 消費者視点を無視して、再び大工さんや棟梁の勝手が通るようになってきた。 スジカイや火打ちが素晴らしいことのように伝えられ始めている。
そして、期待していた金物工法の普及率は、贔屓目にみて20%と聞く。 大手の住宅メーカーの全てが金物工法に変わったのに、未だにこの数値だという。
この最大の理由は、金物工法がツーバイフォーに比べても材積が20%近く余分にかかっている。
つまり価格が高いので、おいそれとは使えない。 耐震性や防火性、さらには省エネ性能でも劣るのに、古式の在来木軸の存在を許している。

金物工法は、柱と集成梁によるラーメン構造にその基本がある。
このため、3尺ごとに柱を建て、3尺ごとに集成梁を入れるという剛な形が基本となっている。
私は、ラーメン構造を決して否定していない。 木質構造としては、絶対必要な技術だと考えている。 しかし、やたらにラーメン構造に拘るのはいかがかと考える。
私が以前から提案しているのは、北海道の一部で広く採用されている金物工法とツーバイフォー工法とのドッキング。 すべてをそれに変えろと言っているのではない。 価格的に対応出来ない層に対して、そうした選択も大いにありうると強調しているだけ。
具体的には606の通し柱を2.5間〜3.0間に入れて行く。 その間に206で組んだパネルを入れてゆく。 内壁は204材のパネルでよい。
そして、肝心なことは、出隅部分に45ミリ強といった端材を絶対に使わないこと。 出隅から約500ミリのスタッドから3×8尺、ないしは3×9尺の合板と石膏ボードを張出す。 そうすると、開口部周りは合板や石膏ボードがコ型に抜かれることになる。 このため、耐震性能は飛躍的にアップして、開口部周辺から亀裂が入るということはほとんどなくなる。 もちろん欧米で流行っている4×8尺の合板、石膏ボードの横張りは大歓迎。
と同時に、通し柱を挟んでその部分だけを建築現場で合板を打ち付けるようにすれば、パネルとパネルが完全に一体化してしまう。 これは大変な魅力。
金物工法の欠点は、3尺ごとに柱を入れるから、間柱は20ミリ厚程度のものにならざるを得ない。 このため合板や石膏ボードのクギがあまり効かず、耐力壁の強度が落ちてしまう。 これを206材に替えることによって、パネルの強度が上がり、当時に省エネ力 (Q値) も大幅にアップすることが可能になる。



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2015年12月10日

木質構造の今後の住宅・非住宅への展開のポイント (5) CLT



CLT (クロス・ラミネーテッド・ティンバー) が最近やたらと注目されている。
昔人間の私は、「木質構造の PC 版のことですね‥‥」と言ったら、建築関係の若い人の全員が 「?」 と、黙り込んでしまった。
「つまり、木造のプレキャスト・コンクリートのことですね‥‥」 と糺したのたが、プレキャスト・コンクリート版のことを知らない人がいたのにはビックリ。
あわてて、ネットで 「PC版」 を開いてみた。
そしたら、出ているのはすべてネット関連の用語ばかり。 プレキャスト・コンクリートのことは1つも出てこない。
つまり、わざわざ 「プレキャスト・コンクリート」 と打ちこまない限り、今どき若い人は 「PC 版」 と言われても、ネット関係の用語しか頭に浮かんでこなくなっている。

いまから20年前は、PC版 (プレキャスト・コンクリート版) のことを知らない建築関係者は皆無だった。 公団住宅や公営住宅だけでなく、中高層のビルの外装にもほとんど PC 版を採用して、建てられていた。
たしかに、現場で合板の型枠を組むよりも、何回となく鋼板の型枠が使えるし、コンクリートの精度もはるかに高度なものが得られる。 したがって、防火を目的とした現場打ちの RC 造よりは、PC 造の方がはるかに公的住宅や中高層の建築には適していた。
ただし、PC 版には問題点があった。
と言えば、誰しも耐震性だろうと感じるはず。 ところが鉄筋は現場で溶接できるので、中層建築においては、CLT 建築ほど問題になることはなかった。
一番問題になったのは防水性。
シーリング材で防水工事を行う以外に、これはという名案が得られなかった。 これが PC 版の泣きどころ。

CLT というのは、2.5センチ厚程度の無垢の木の板を、繊維方向を交互に交差させ、接着剤で合板のように接着して一体化する。
6〜7年前より日本へも紹介され、関係者の間ではその存在は深く知られていた。 たしかに面材としての強度はあるが、木そのものが熱橋になるので、高性能住宅での採用が躊躇されていた。
もっともオーストリアでは、約20年前から接着剤を使わずに木のダボで、乾燥した無垢の板を圧着して製造しているトーマ社 (THOMA) がある。 同社の日本総代理店「自然の住まい社」は、10年前より床・外壁とも17センチと厚い一体パネルを採用して、日本の認定機関から壁倍率の8倍程度の認定を得ている。
ただ 坪単価が100万円前後と高いために、年間せいぜい数棟程度しか受注していない。 だが土壁を塗るなどしてQ値を高め、性能的には日本一と言っても良いほどのすぐれた内容を持っている。
ともかく、接着するにしろ圧着するにしろ、厚みが合板のように7〜9ミリというものではない。
120〜170ミリもあるのだから、ともかく面材としての耐震性はやたらに強い。
ただしこれは、日本では低層住宅に限った話。
一方、地震のないヨーロッパや北米大陸の東海岸では、この CLT で7〜8階建の高層建築が認可されてきている。 だが、地震の多い日本では耐震面では面材としては問題ないにしても、接合部分の強度が大きな問題になってくる。

「木造は、どんなにリキンでも剛にはならない」 と日本では言われてきた。
つまり、「CLT がいくらリキンでも、鉄骨造か PC 造にオンブしないかぎり、小手先の金物では高層建築としては使えない」 というのが建築業界の常識。
しかし、日本の山にスギやヒノキを植えるために沢山の国家予算を使ってきた林野庁。 そのスギ材が適齢期を迎えているので、なんとしてでも消化しなければならない。
このため、なんとか国交省を巻き込んで、「国内材利用のロードマップ」 を造らせたまでは良かった。 しかし、国交省は今までの認可の関係からも、林野庁のために建築基準法の骨格までを変更させることは出来ない。
それで焦った林野庁は、経済産業省や文部省を巻き込んで、「地域再生」 という大義名分で、国交省の考えを変更させるべく秘策を練っているとも聞く。
私個人は、木造が住宅だけでなく、大型建築に普及してゆくことには諸手を挙げて大賛成。
現に老人養護施設などに、ツーバイフォーで何千坪と言う建築物が建てられている。
そして、肝心な防火性能は、厚い石膏ボードを2枚以上も使って、高齢者が安心出来る建築物を提供している。 つまり、ツーバイフォー協会が造った国際的な安全基準は完全に守っている。 それでいて、RC 造に比べて、施工価格が20%程度違うので、「木質構造大歓迎」 という空気が老人養護施設関係者の間には広がっている。
この姿勢こそ、役所が守らねばならない基本原則だと思う。

しかし、ごく最近木造校舎が、完全に全焼してしまうという、まったくみっともない実物大燃焼実験が行われた。
あの実験の記録映画を見た消費者は、自分の大切な子供を 火災から守れないような校舎へ、敢えて送り出そうと考えるだろうか‥‥。
私の個人的な感想としては、あのような惨めに全焼してしまう地スギを使った校舎へは、自分の子供や孫を、絶対に送り出したいとは考えない。 そんな、子供の命を軽視する学校には、そもそも受験をさせない。 これこそが、親の愛というものではなかろうか。
ということで、国産材を使った大型で、高層建築物に地スギやヒノキを無理矢理に採用することに対しては、賛成出来かねている。
つまり、地震国日本では、パネルの緊結金物の開発は大変な手間がかかり、防火性をもたせるための石膏ボードの厚さをどれだけにしたら1時間耐火とか2時間耐火性能が得られるのか?  
その性能実験こそ、最優先させるべきだろう。

林野庁は、今までの固定概念の延長線上でしか国産材の利用を考えているとしか考えられない。
つまり、CLT の普及こそが もっとも手っ取り早くて、最善だと考えている節が見え見え‥‥。
しかし、緊結金物に問題があって高層建築として使うには耐震性に難があり、防火性でも実験の裏づけがともなった結論が得られていない。 その CLT を、やみくもに後押しすることが本当に正しいのだろうか?
たしかに、地スギをツーバイフォー材として挽かせることには、国際価格と言う面と強度という面から問題点があることは十二分に理解している。
同じことで、地スギで作った CLT の強度も問題になってこよう。

「総論には賛成だが、今の林野庁の動きには賛同出来かねる」 というのが、私の取材した範囲内の結論だったように感じた。



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2015年12月05日

木質構造の今後の住宅・非住宅への展開のポイント (4) CAD-CAM



コンピューターを利用して、設計から生産までを一貫して行うことを CAD-CAM 方式という。
そんな程度で、世の中は留まっていてはくれない。
工作機械用の金型まで一貫生産する方式が、自動車・航空機・発電所・医療機器・産業用部品・精密機器部品・家電・日用雑貨などで一般化している。
とくに歯科用の分野では、今まで歯科医師の手作業で行われていたものが、最近は CAD-CAM方式+工作機器の分野で、長足の進歩を遂げていると言う。
ひるがえって住宅業界は‥‥と問うてみると、たしかに最近は設計に CAD を利用する例が増えてきている。
しかし、プレカットまで一貫して行う真似事は行われているが、生産性はいたって低く、他産業と比較するまでにはいたっていない。 NC (ナメリカン・コントロール) 工作機を駆使するとか、ロボットを利用するところは、残念ながら見あたらない。

私が最初にコンピューターに取組んだのは、正確には明言は出来ないが、今から31年前の1984年の頃だったと思う。
仙台に本社があった北洲が、営業のために張っていたネットに、コンピューター積算が引っ掛かり、ハウジング部門で極めて早い時期にコンピューターによる積算業務を開始したとのニュースをキャッチ。 早速、担当者を連れて仙台にお願いにあがった。
幸運にも、北洲ハウジングが積算システムを公開してくれ、当時 私か所属していた藤和の積算は、いち早くコンピューター化を果たすことが出来た。
それから2〜3年過ぎた頃、昔 同じ職場で仕事をしていた井上君のホームビルダーコンサルタンツが、設計業務にアップル社のコンピューターシステムを導入したと聞いた。
早速、井上君に電話したら、「最低でもコンピューターを8台ほど導入すれば、私のところのベテラン設計者を派遣して、4日間程度のレクチャーをしてあげてもよい」 との返事。
当時のアップル社のコンピューターの値段を聞いてビックリした。 なんと1台200万円近い。
社長に無理矢理に話をつけ、何とかマックを8台を井上君のルートで購入して、その道のプロの設計者から使い方をレクチャーをしてもらった。

そのレクチャーを聞いているうち、社内用の8台とは別に個人的にコンピューターを1台を購入して、自分の家で勉強する必要があることに気付いた。
というのは、藤和の約100億円の工事高のうち、7割はツーバィフォーになってきていた。
そのすべての構造図と大工さん用の姿図を私1人で書いていた。 いくら平・立面プランをコンピューター化でこなしても、構造図や姿図を手書きしているようでは、仕事の効率化が図れず、遅れたままになってしまう。
そこで、14インチの一番小さいコンピューターを私用に頼んだら、なんと140万円もすると言われて腰が抜けるほどビックリ。
だが、言い出した以上は後に引けず、泣く泣く140万円を払った。 今だと、せいぜい3〜4万円程度で簡単に入手出来るものだが、当時は自動車並の高価格。
この14インチのコンピューターを買ったことにより、構造図だけでなく、姿図も簡単に書けるようになった。 それだけではなく、営業マンに頼まれれば、平面図だけではなく立面図もコンピューターで書いて施主に提案した。
もちろん初期のマックシステムだから、2次元的な表現は出来なかった。
ただ、線が細くて目がこまかい斜線で影をつくり、それなりの陰影で訴求力を持たせた。

私のコンピューターによる CAD 化は、そこまで‥‥。
20年以上も以前に、業界仲間を連れてスウェーデンの最新のプレハブ工場を見た時に、すでに NC 工作機が実用化されていた。
だが当時の私の CAM に対する関心はいたって低く、その意義を十二分に分かっていなかった。
このため、なんとか CAD 化は進めたが、CAM 化までは手が回らなかった。
そして、1996年に建材問屋ナイスの支援を得てハーティホームというベンチャー企業を14人の仲間と創設した。 それ以来、私の最大の関心事は 「ホームページ作り」 に移行。
営業マンを1人も採用せず、もっぱら設計士のみで新会社を作って設計士に営業活動を任せた。
というのは、前の会社にはすぐれた営業マンもいたが、中小の住宅会社の営業マンには、「食いつぶしたので業マンでもやろうか」 という筋の営業マンも多く見られた。 このため、最初から彼らを締め出すことにしたのである。
それをやって分かったことは、設計士の営業支援のためには当時始まったばかりのホームページを充実させ、積極的に設計士を支援することの重要性。
ホームページを手掛けたのは2000年。 他社のホームページを見て、見よう見真似でガムシャラに内容を充実させていった。 今では笑い話だが、何とか読んで欲しくて、「多摩のランチ食べ歩る記」 というコーナーを設けて、日に2度もラーメン屋とか寿司屋を訪問した。 もちろん自腹で、体重が増えてしまったが‥‥。

そうこうするうちに、300頁にも及ぶホームページを全部印刷して持参してくれる人が現れたり、消費者の中にファンが出来て、ホームページの更新を楽しみにしてくれる人が出現してきた。
そして、日に100人以上がホームページを訪れてくれるようになったのは、1年後の2001年になってから。 今のように、「ツィッター」 とか 「フェースブック」 という情報発信の手段がなかった。 そして、コンピューターを持っている消費者も 少なかった。
その中で、日に平均100人のアクセスがあるということは、営業のツールとして大変役に立ってくれた。 私の仕事の80%は、ホームページづくりに取られた。
しかし、社内では私の仕事を評価してくれる者が少なく、「定年退職」 ということで、職場から追われてしまった。
そして大変残念なことに、後任のナイスからの出向社員はホームページの持つ重要性が理解出来ず、急成長していたハーティホームを、1年余で休業に追い込まれる有様に‥‥。
時代を読めず、責任をとれないサラリーマンが、いずこの会社にも跋扈していたということであろう。

さて、今回 CAD のことを書くに当って、私が取材しなければならない対象は、JW-cad をはじめとして Victor Works、Aato-CAD、DRA-CAD など、数が多かった。 とくに無料で CAD を開発している JW-cad の取材は欠かせないと思った。 しかし、同社についてはすでに多くの人が取上げている。 今さら素人の私がシャシャリ出ても、たいしたことは出来ない。
そこで私が選んだのは、ツーバイフォーにも本格的に乗出してきている福井コンピューター社。 同社の品川にある関東営業所には、COFI のセミナーで一度訪れているという気安さがあったというのが本音。
同社の住宅用 CAD は、木軸用、ツーバィフォー用、鉄骨造・鉄筋コンクリート造用に大きく分けられている。 そして、いずれも有料。
例えば、同社は 「2×4造住宅サンプル図面集」 を出している。
@1、2階平面図 A天井・屋根伏図 B配置図1,、2、3、4 C立面図 D平面詳細図 E矩計図・断面図 F日影・天空図1、2 G法規LVS H壁量計算1、2 I換気計画 J構造図1、2、3、4、5、6 Kプレゼンテーション用立体図1、2 L温熱環境計算1、2 M建具表 N仕様書 O電気・衛生設備図1、2 P外観・内観パース・鳥瞰図 Q日当りシミュレーション 風向シミュレーション R家相チェック S展開図と、20項目、34頁に亘っている。
これ等の全部の CAD ソフトを注文すると、約400万円以上と大変な額になる。(税別)  このため、必要最小限度の80万円前後にとどめている会社が多い。

この中で、私が一番気になったのは、6頁にも及ぶ構造図。
実は、アメリカではツーバイフォー工法がベースとなっており、4年間の夜間高校でも詳しく教えてくれている。 このため、アメリカには構造図はあっても、大工さん用に、どの壁からどの順序で組み立てるのか? また壁の長さはどこからどこまでか? という姿図は皆無。
ツーバイフォー工法をオープンな形で日本へ持ってこれるようになったが、各壁ごとの姿図がないと、慣れていない日本の大工さんや設計者はとまどってしまう。
最初にアメリカから大工さんを呼んできて、全国10数ヶ所をキャラバンして回る時、姿図がないと日本の大工さんや設計士は理解が困難だと分かった。 そこで急遽、アメリカには全くない姿図を、私の偏見で描いてみた。
幸運なことに、アメリカから呼んできた大工さんも、この姿図には全然抵抗感がなかっただけでなく、「これがあるために、作業はスムーズに進む。 つまり、誰がどの壁をつくっているのかがよく分かって効率的だった」 と、予想以上の褒め言葉。 以来、ツーバイフォー工法には、姿図が付きものになってきた。
ただし、福井社の構造図はやたらにスタッド数が多く、現場をよく知らない設計士が書いたもので、壁を組む順序や壁の長さが分かりにくい。 そして、内壁については姿図が見られない。
少し 専門的にすぎるが、あえて苦情を述べさせていただくと上記のようになる。

また、在来木軸に関しては、床に火打ち材が入っている古色然としたもの。
ご存知のように、私は神戸と中越の震度7という直下型の烈震地の現場を見てきたので、福井社の在来木軸程度だと倒壊が必死と断言が出来る。
少なくとも耐震性に優れている金物工法を紹介すべきだと考えたが、各社によって納まりがバラバラなので、福井社としては採用することが出来ず、古式の在来木軸をベースにするしかなかったのが実情だと推測。
しかし、金物工法推進協議会の前田会長が言っている通り、「地震に対して強度を保障出来るのは、面材しかない」 というのが現実。
いまさらスジカイを多用したり、火打ち材を多用しているのはナンセンス。
もう少し、消費者の立場に立っての CAD でないと、信用する訳にはゆかない。

これは、福井社だけに言っているのではない。 在来木軸で CAD を計画しているすべての業者に対して言えること。
「合板を使うと、ホルムアルデヒドで子供がシックハウスに罹ってしまう」 という、一昔前の話をむし返して得意げに語っているバカが大勢いる。
F1合板を採用すれば、シックハウスなどは簡単に吹き飛んでしまう。
それよりも住宅業界人としては、地震で命や財産を失うことを真剣に議論すべきなのに、その肝心の面材と責任を放棄している住宅人が余りにも多いことを、嘆きたい。
本当に恥ずかしい。

すべての CAD に、問題が残っている。
国交省、通産省、林野庁の役人は、一体このことを どう考えているのだろうか?


posted by uno2013 at 19:20| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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