2015年12月27日

2015年下半期  読んで面白かった本のベスト10 (下)


(これは、本来だと12月30日に掲載されるもの。 しかし、それだと正月休みに突入して、正月休みの読書を楽しみにしておられる方には、遅すぎる発表になります。「すでにベスト10が完成しているのなら、早めに公開して欲しい」 という意見が寄せられました。 そこで、昨年からは最終号に限って繰り上げて発表することにしていました。 昨年は28日でしたが、今年は1日早い27日の発表になりました。 少しでも、皆さんの参考になれば幸甚です。 どうかよいお年をお迎えください)


今期は読書の数が多かったので、12月早々で下半期のベスト10を締め切った。
今年 下半期の1位と2位を決めるのには、やはり迷った。
なにしろ、■印のトップ10候補が105点もある。
その中から、どれをトップ10にもってくるかで 大変に悩まさせられた。 
そして、当然トップ10に入ると思っていた ●中田亮著 「理系社員のトリセツ」 ●井上功著「なぜエリート社員がリーダーになるとイノベーションは失敗するのか」 ●垣畑光哉著 「これからの会社でしょ」 ●高野秀行著 「異国トーキョー漂流記」 ●池井戸潤著 「ロスジェネの逆襲」 などが、ベスト10から姿を消してしまった。


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◆10位
10位は高野秀行氏の 「異国トーキョー漂流記」 にするか、それとも佐々木喜樹氏の 「家は買うものでもなく つくるものでもなく 育てるもの」 にするかで迷った。 佐々木氏の題名は気に入ったが、内容は残念ながら私の意に沿うものではない。
これに対して、高野氏の筆致は 快調そのもので、歯切れがよい。 どうしても高野氏に残って欲しいと願ったが、何しろこの欄は住宅屋の書評欄。 住宅・建築業界から無理をして16点を ベスト10候補に上げたほどだから、文章力の面白さだけで高野氏を選ぶわけにはゆかない。
かといって、佐々木氏の提案に納得したわけではない。 いや 本音を言うと、佐々木氏に代表される陳腐な議論には、聞き飽きていた。
それなのに、佐々木氏を選んだのは、このところ住宅業界のイノベーション不在。 これはと言えるほどのモノが見当たらない。
そういった事情から、やむを得ず佐々木氏に軍配をあげたのだが、いまだに迷走は続いている。


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◆9位
この著書は、10月20日付のこの欄で紹介している。
それを読んで頂くのがベストだが、多忙の方のためにとりあえず概略を説明しておきたい。
イ―ロン氏は南アフリカ生まれで、ペンシルベニア大で経営学と物理を学んでいた。 そして、卒業した時はインターネットブーム。 大学に残るよりも実践で発言力をつけることが先決だと考えた。 そこでZip2を立ち上げルと共に、Xドットコムも成功して 31才にして180億円を手に入れたというから、並大抵の手腕ではない。
そのカネで宇宙産業を開発することにしたが、3回連続でロケットの打上げに失敗して4回目でやっと成功。 けれども、180億円のうち100億円を注ぎ込む破目に‥‥。 しかし、使捨てロケットではなく、回収可能なロケットの開発と3Dプリンタによるロケットエンジンの開発で、費用はNASAの1/100の低価格で、2020年には100万人の人間を火星へ送り出す計画という。
一方、電気自動車も快調で、5000億円を投資して発電用のギガ・ファクトリーを稼働させ、2020年には350万円の大衆用電気自動車を発売するという。
どこまでが本音かは分らないが、アメリカの経営者というのは、やたらに前向きの姿勢を保っているには感動させられた。


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◆8位
小説のベスト10入り候補は、38点と一番多かった。 その中から急遽 池井戸潤の昔の小説を選んでしまった。 さすがにこのムリ押しのままでは、皆さんの冷たい視線を感じて居心地が悪い。 そこで、如何にも小説らしい小説として、表記を併せて選んだ。
私は、山本一力氏の作品はかなり読んでいる。 それなりに最後まで楽しく読ませてくれるのだが、かと言って特別に印象に残っているものはない。 そこいら新人作家のように、1/3も読んだら我慢が出来ず、思わず投げ出すようなことは一切なかった。 何を読んでも、最後の1ページまで、律義に付合いたくなってくる。 これが、実力と言うのだろう。
しかし、その中にあってもジョン万次郎の生涯を描いた作品は、著者にとってもライフワークと言ってよく、丁寧な取材が目立つ。 私も一気に5巻までを読んだが、まだ万次郎は 船長のはからいで 航海術の専門学校に入学したばかり。 したがって、当分は続編が出されることだろう。 とくに、この5巻の立志編はなかなか読ませる。
「この著書の、どこが魅力か?」 と問われれば、「やはり ジョン万次郎の人生そのものの魅力に惹かれたのですかね‥‥」と答えるしかない。 筆者がジョンマンの魅力に迫っているのは間違いない。 よい主人公を選んだものだと感心。


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◆7位
この著書は、今年の7月20日と25日に、このブログ欄で紹介している。
著者の嶋田洋平氏は1976年生まれと言うから、ギリギリの30才台。 ライオンズ・ファンの祖父が、北九州市で開いていた食堂に 「らいおん食堂」 という名をつけていたので、独立した時の設計事務所名を 「らいおん建築士事務所」 と命名したのはいただけない。
筆者は東理大建築卒。 恩師の小嶋先生は 「君たちか社会人になった頃には、日本ではバリバリ頑張るほどの仕事はもうない。 したがって、海外へ行って勉強しろ!」 と言うのが口癖。 それが証拠に、それまで160万戸あった新設住宅戸数が、1900年の後半には半減している。
実際、著者が独立するまでの仕事や、独立してからも請負ったはすべてリノベーション。
リノベーションというのは、リ・イノベーションのこと。 既存の価値やアイデェアを、新しい技術革新によって創り直すという作業。 具体的な内容はリフォーム業。
父が地下に入居していた北九州市のRC造の貸しビルで、「4階建の地上部門を借りていた婦人服専門店が不況で店を閉じることになった。 なんとか大家さんの相談に乗ってやって欲しい」 と電話があったことからこの物語は始まっている。 そして、そのRC造4階建と、木造2階建てを分割して若者に貸して、“若者のまち”に大改革できたことで、筆者は有名人に‥‥。
しかしこの著書は、本人が書いたものではなく、劇作家をゴーストライターに起用しているので話が大変に理解しづらい。 だが、新築時代が去った これからの住宅業界の在り方を考えるには、示唆に富む面も多い。 そういった意味で参考になろう。


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◆6位
この著は、あの 「北海道の家具屋のニトリ」 から、「日本のニトリ」 へ、さらには 「世界のニトリ」 へと、今まさに脱皮しようとしているニトリ会長・似鳥昭雄氏が、今年の4月に日経新聞の 「私の履歴書」 に書いたもの。 自叙伝を書くくらいだから若くはなく、71歳に。
それでも現在は第2次30ヶ計画の真っ最中で、店舗数3000店、売上げ3兆円を目指して頑張っている。 週刊書評では10月9日号で紹介済み。
樺太生まれの著者は、父がシベリアへ抑留され、母は札幌へ引上げた時にはヤミ米屋で生計を立てていた。 決して恵まれた家庭ではなく、勉強も出来なくていつもビリ。 それなのに、北大の経済学部へ進学しているから七不思議の1つ。
北大を卒業したが仕事がなく、コンクリート屋をやっていた父が 不況で工場を畳むという。 その工場跡地に、近所になかったという単純な理由で家具店を開いたが、主人公は口下手で商売にならない。 だったら、商才に長けた奥さんを貰うべきだと言われ、現在の百々代さんと結婚して2号店が出せるまでになった。
似鳥氏にとって 画期的な出来事は、ペガサスクラブの故渥美俊一氏との出会い。 そこで、徹底的に企業教育を受け、72年には第1次30ヶ年計画を発表している。 30ヶ年で100店舗、1000億円を目指すというもの。 1年遅れで達成出来、そして現在は第2次30ヶ年計画を推進中。 当然アメリカや中国における支店網も考慮に入れている。 国内は白井社長に任せて、中国やアフリカなどを飛び回っている筆者のバイタリティには頭が下がる。


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◆5位
今年早々に、中公新書より 「地方消滅」 という大きなアドバルーンを打上げた筆者は、「地方を消滅させないためには、具体的に何をしなければならないか?」 という超難しい疑問に対して、全国10ヶ所に及ぶ成功例を示したのが本著。 この本は、9月の25日のこの欄で紹介しているので、余裕のある人は読んでいただきたい。
筆者は、「これからの地方創設ビジネスのカギを握るのは、若者、ヨソ者、ITパワーだ」 と断言している。 この著を読めば読むほど、筆者の言わんとすることに納得させられてくる。
そして、それは地方創設だけに必要な案件ではなく、わが住宅業界にとっても不可欠な必要案件だと気付かさせられる。 ともかく、全国10ヶ所の成功例の全てをここに紹介するわけにはゆかない。 項目だけを挙げておくから、後は各人で調べて頂きたい。
・今治タオルの奇蹟の復活。 これについては、昨年12月26日付の週刊書評を参照。
・山形・鶴岡市の大学バイオ・ベンチャーの 「ハイテク蜘蛛の糸物語」。
・宮城・山基町の、「新市場を切り開くIT高級イチゴ」。
・福井・鯖江市の、「メガネのまち」 から 「オープンデーターのまち」 へ。
・栃木・宇都宮市の、「道の駅再生」 や 「大谷石採石跡地を利用したツアーやレストラン」。
・熊本・山江村の、「献上クリのブラインド復活作戦」。
・和歌山・北山村の、「日本一人口が少ない村が 《じゃばら》 で大儲け」。
・岡山・西粟倉村の、「森林・仕事・人を育てる森の学校」。
・北海道・ニセコ町の、「観光協会の株式化」 と 「カリスマ外人の活躍」。
・島根・海土町の、「Iターン組が人口の10パーセントを占める離島」。


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◆4位
「遺伝子組換え作物は、場合によってはガンに罹るおそれがあるので、なるべく食べないようにしょう!」 などと、私は無責任にも考えていた。 いや、「まともに考えたこともない」 というのが、正しい答えかも知れない。
ところが、「遺伝子組換え作物がガンになると証明出来たら、それはノーベル賞ものだ」 と言われれると、考えこんでしまう。 それよりも 食料油や家畜のエサとして、大量の遺伝子組換え作物が日本でも使われており、何一つ問題が日本でも世界でも生じていない。 むしろスーパーなどが 「これは遺伝子組換え作物ではありません」 と、高く売りつけていることが問題 !?
この著書は、日本で初めて「遺伝子組換え作物の正当性」を真正面から捉えた力作。
著編者の小島氏は毎日新聞の記者で、左翼かぶれで初期は遺伝子組換え作物反対派の論客。 それが2002年にアメリカの遺伝子組換え作物の現場を取材して180度考えが変わった。 そして 第1部で 「なぜ誤解が続くのか」 との解説を書き、第2部では学者、生産者、報道関係者 14人の寄稿を得て客観性を立証しているし、第3部では アメリカを中心とする17人の研究者、作付農家、評論家、企業人を動員して、その正当性を訴えている。
特徴的なことは、学者・研究者は最初から遺伝子組換え作物の正当性を理解しているが、それ以外の人々は、最初は 「遺伝子組換え作物の反対派」。 それが途中で現実を知って、著者同様に賛成派に鞍替えしている。 私と同様に 最初はまともに考えておらず、アンチ遺伝子組換え反対派の情報に踊らされていたにすぎないようだ。
確かに、アメリカでは遺伝子組換え作物のタネは3割も高い。 しかし除草のための労働は極端に減少して、収穫量は飛躍的に増加しており、農家の支持が厚い。 現状が続けば、日本は中国に置いてゆかれる。 この著書の発刊を機に、日本の意識改革が変革されることを期待したい。


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◆3位
弱肉強食が動物の世界の論理。 これに対して、植物の世界は平和的に共存しており、私共に 安らぎを与えてくれる。 森林は 素晴らしい酸素を与えてくれるし、美しい花を咲かせる路上の草。 どれ1つとっても争いのない世界。 イスラムのような憎しみもテロもない世界。
こんな風に、私は植物の世界をロマンチックに見てきた。
ところがこの著書によると、植物相互間の競争は激しいし、植物とバクテリア、植物と昆虫の争い、さらには植物と動物、植物と人間との争いは凄いものだという。 ただ、植物が声をあげないからわれわれは感じていないだけ‥‥。
36億年前までは、地球も火星や金星と同じように2酸化炭素に囲まれていた。
そこへ登場したのが あらゆる生命の元になった水中プランクトン。 太陽光を利用して光合成というシステムを手に入れ、2酸化炭素と水を利用してエネルギーと生命を生み出した。 その時に廃棄物として酸素を吐き出し、これが次第に溜まって太陽の紫外線を遮断するオゾン層になり、やがて病原菌となるバクテリアとか昆虫という強敵を育てることになった。
病原菌の存在を察知した植物は、細胞壁を厚くするなどの抵抗物質の生産を始めたが、時間がなくて病原菌を細胞内に入れてしまった。 この時、植物細胞がとった手段は自爆。 植物も死ぬが病原菌も死ぬ。 しかし、その後ポリフェノールやビタミン類の抗酸化物質の開発で、植物は微生物との共存関係を構築してゆく。 そして、これは何も 微生物とは限らず、昆虫類や動物との共存関係も構築してゆく。
しかし、最後まで共存関係が出来なかったのは、植物同志の光を巡る争いと人間との共存。
植物は光合成をするために少しでも大きくなり、葉っぱを拡げようと必死。 このため幹をいい加減にして蔓で葉っぱだけを成長させたツタやアサガオなどが生まれた。 また、乾燥地で水分の上昇を防ぐサボテンのようなトゲの葉も生まれてがた。
そして、山を荒らしている人間は植物との共存を放棄して、唯我独尊の道を歩み始めている。


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◆2位
上位4位までは、いずれも 「独善的週刊書評」 で取りあげている。 1 位は12月7日、2位は11月13日、3位は11月27日、4位は10月15日と言う具合に。 したがって、週刊書評とダブル点があることを前もってお断りしておきたい。
ご案内のように 筆者は岐阜の生まれで、慶大を出て三菱銀行に入り、2011年に 「下町のロケット」 で直木賞を受賞した売れっ子の経済小説家。
私は著者のファンで、書かれたものはほとんど読んでいる。 ところが、この小説だけは 見逃していた。 どうでもよい内容だったら、知らぬ顔で頬被りが出来る。 ところが、この小説はなみある作品の中で、面白さでは抜きん出ている。
たしかに 重厚さという点では、「ロスジャネスの逆襲」 などの方がよく構想等が練られており、小説の価値としては上位にランクされよう。 しかし、小説としての面白さは、この方がはるかにすぐれている、と私は感じる。
著者が 「あとがき」 の中に書いていることだが、この小説は銀行マンからは不評のようだ。
いわく、「今の銀行には、こんな臨店チームなどの存在はあり得ない」
またいわく、「女だてらに、上司にたてつく銀行ウーマンは見たことがない」 など。
筆者は、そんな批判は 折込済み。 それよりもエンターティメントとして楽しむことが先ではないか! 空想の世界に羽根をひろげることこそ、小説が果たさなければならない仕事ではないか!、と問うている。
この小説は 8つの物語からなっている。 いずれも、かつての部下だった花咲女史‥‥別名 狂咲君の武勇伝。 その面白いことと言ったら‥‥。


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◆1位
私は建築業界人。
したがって、世界最古で 巨大な石造ピラミッドの建造物には、無関心で居られるわけがない。
しかし、今までのピラミッド論争は、何のために建てられたのか、それは本当に 墓が目的であったのか、また こんな巨大な石造のためにどれだけの労働力が必要であったか‥‥ということに集中していて、社会的背景が無視されていた。
かつてテレビでは、エジプト学の権威者として、吉村作造早大名誉教授が やたらにもてはやされていた。 私もテレビをよく見たが、吉村理論には納得できない点も多かった。 吉村論も ナイル河の西側にピラメッドが多いのは、西が死の世界であり、建造した労働者も管理した人間も 河の東側に住んでいて、毎日10キロもギザの現場まで歩いたと考えられていた。 それどころか、石材までもが東側で加工されてから運んだ‥‥というドグマが支配していた。
ところが、20世紀の末になってアメリカのマーク・レーナー博士が、最大とされているフク王のピラミッドのすぐ河西の脇に、ピラミッドを創るために建造された都市‥‥ピラミッド・タウンを発見するという偉業を成し遂げた。
レーナー博士は、石材を発掘し、それを加工したり、積みあげる直接労働者だけで4000人は必要と考えた。 そして、石を掘ったり、加工したり、運んだり、積みあげるための道具・工具を作る人や、食料や必要品を手配する人、さらには食事を作る人までを含めると2〜3万人の人が必要になる。 2〜3万人というと、古代では立派な都市となる。 その都市はフク王のピラミッドの近くにあり、しかも石材も河の西で用意された、という仮説に立って測量師だけをつれて、フク王のピラミッド近くを測量し、6メートルにおよぶ発掘現場を特定した。
そして1989年から本格的な発掘に取り掛かり、世界20ヶ国からの研究者の協力を得て、ピラミッド・タウンの全貌を発掘。
著者は、このプロジェクトに1992年から2008年までの16年間に亘って加わり、発掘作業に携わっていた。
ただし、そのプロジェクトも、2010年に起こった 「アラブの春」 の勃発で、ギザの発掘は中断。 惜しまれるマラソン発掘は、一段落となっている。



posted by uno2013 at 12:14| Comment(0) | 半年間の面白本ベスト10 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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