2015年11月30日

木質構造の今後の住宅・非住宅への展開のポイント (3) 金物工法



阪神・淡路大震災が起こったのは今から20年前の1995年だった。
ツーバイフォー協会から人材の派遣要請があり、何人かの社員を送りだした。 だが、私は自在に神戸の市内を見て回りたいと熱望していたので、神戸在住の松下電工の社員にムリを言って、被害の跡地を案内してもらい、ポイント地点を一巡した。
ともかくいくつかの印象を、思いつくままに並べ上げると次のようになる。

@在来の木軸工法はとくに弱かった。 柱はほとんどが3寸角で、通し柱は2階の部分で折れ、2階がそのまま落下してしまい、1階に寝ていた老人などが、下敷きになって即死。 即死者は5万人を突破した。

A阪神地方は地震が少ないという噂があったために、信じられないほど無筋の基礎が多くあったのには、驚かされた。

B旭化成が自慢していたプレハブの基礎が見事にひっくり返っていて、建物もメチャメチャに壊れていた。 これを見て、基礎は現場打ちの一帯工法でないと、ダメだと教えられた。

C低層の木軸工法だけではなく、RC造の事務所やマンション。 あるいは鉄骨造の超高層ビルも大きな被害を受けていた。

Dとくにひどかったのは、三の宮とか元町という繁華街の南北へ通じる道。 間口が狭くてせいぜい3.5間から5.0間程度の4〜6階建の中層建物。 それらが道路を挟んで途中から曲がって隣の建物へ寄りかかり、500メートル近くも延々と将棋倒しが続いていた。 これは解体するのも容易でないと嘆かせられた。

E一番被害が少なかったの、告示されたばかりのツーバイフォー。 しかし、間口か2.5間しかなく、1間の開口部と1間の玄関をとっていた大手のツーバイフォー住宅は、耐力壁が足りないために倒壊。 ただし、隣の家が迫っていたので転倒は免れていたが、完全にアウト状態。
それよりひどかったのは展示場内の某大手の在来木軸。 かなり長期間ブルーシート掛けられていて、回復に手間がかかっていることが一目に。

Fこのほか、低層の鐵骨アパートも、パネルがバラバラにやられていたし、中層のビルの壁の新建材が吹き飛び、裸状態になっている現場も多数目撃。

ともかく、私は低層の木造住宅はツーバイフォー工法以外は安心できないと感じた。 別の日、神戸の惨状を視察された杉山先生も、「在来木軸の時代は、完全に終わったね。しかし、良い時期にツーバィフォーをオープン化出来たのは、幸いでした」 と語っておられた。 杉山先生ともあろう人が、在来木軸工法に完全にサジを投げていた。
それなのに、それから5年後の2000年の品確法が制定された時に、タツミを中心とする金物工法が在来木軸を生き帰えらせた。
在来木軸は、どうして生き帰ったのか?
それまで大工さんがやっていた梁が架かる部分に、柱に大きな穴を掘って仕口をつくる‥‥とくに大きな梁が3方から架かってくる場合だと、細い柱では強度を保障できなくなる。 つまり神戸の多くの住宅は、仕口の部分で柱が折れてしまった。
そうでなくても、運搬途中に柱が折れて、使えなくなった柱も見かけてきたほど。 したがって、神戸の在来木軸は、潰れて当然。

そこへ登場してきたのが金物工法。
ともかく柱を3.5寸にして、柱や梁は集成材に変えた。 梁を受けるために柱のなかに金物を埋める。 しかし、大工さんがやっていたように穴をあけて柱の木材を捨てるわけではない。
柱に埋め込んだ金物をボルトで締め、梁の金物もボルトで締めた。 これで、通し柱が梁の部分で折れるという懸念がなくなった。
この金物工法の考案で、在来木軸工法は蘇生。
しかし、大手住宅各社は、各社ごとに独自の金物を開発した。 しかし、汎用性がないので高いものになり、ミサワ、セキスイ、ダイワ、パナソニックはタッミないしは同類のグランドワークス社製の金物を使ってきている。
これに対して住林はマルチバランス構法を開発し、金物の生産はカネシン、タナカ、ナカイなどに依頼している。
このため、金物工法はオープン工法ではない。 しかし、住木センターで合理化認定を受けたことがあるので、公庫の標準仕様書には書かれていないが、公的な認知は得ていると言う。
だが、オープン仕様ではないので、共通の仕様を持っていないのが弱み。 だが、木軸の大手住宅メーカー全社が、全面的に金物工法採用に踏み切ったのは、なんといっても強い。

こうした金物は、プレカット工場で木材が加工され、現場へ搬入される。 しかし、加工方法はもっぱら長手方向なので、加工性が悪過ぎる。
こうしたプレカット工場は全国に500社もあるといわれている。
しかし、専門の建築士を持ったプレカット工場は少なく、今でも伏せ図は、必ず棟梁の承認が必要だという。 元請けはどこまでも工務店。 プレカット工場はリスク・ヘッジを避けるために、棟梁の承認を貰っている。
つまり、どこまでも消費者とカネを握っているのは棟梁であって、プレカット屋はその下請けにすぎない。
フレカット屋の出身を見ると、製材工場、流通業者が圧倒的に多く、ビルダーなどの住宅業者出身は少ない。 つまり、住宅業者として消費者に接した経験が乏しく、棟梁の言うまま加工しているだけという業態が多くならざるを得ない。
建築士を抱えていても、建築の現場をほとんど知らず、クレームで振回された経験もない。
自ら、構造図を書いた経験者も少ない。
CADが描く図面を鵜のみにしているだけだから、主導権は棟梁に握られたまま。 これが、これからの10年間でどこまで改善できるか? プレカット工場のトップが、どこまで踏み込んで改善できるか?

プレカットは、本来は工業製品のはず。
0.5ミリ以内の差しか認められていないJASの世界。 ところが製材品では未だにJASの2.0ミリの差を認めており、山で丸太のカットも旧態以前の3メートルとか4メートルが幅を利かせており、資材の端材の多く出て、ムダがやたらに多い。
北米のように、資材の寸法が決まっており、日曜大工店で部材や部品を買ってきて、消費者が自在に自宅を建てることが出来る。 だが、日本の木軸では不可能。 北米のような徹底した部品化、部材化をなんとしてでも急がねばならない。
それと、私が日本の金物工法の現場を見て痛感することは、木材の使用量が、ツーバイフォー
の現場に比べて20〜30%も多いこと。
これでは、いくら力んでも金物工法の普及に限界を感じてしまう。
一方、ツーバイフォーは、北米の現場では分譲化ということで一期の着工量を30〜40戸という具合に需要を集約した。 そして、各職種の細分化を進めて、大幅な生産性向上と住宅価格の低下を実現した。
しかし、日本では土地の利益にオンブしている不動産屋が跋扈していて、分譲化による需要の集約に失敗。
変わって登場してきたのが、ツーバイフォーのパネル化。

このパネル化に関して、北海道の故高倉氏は、20年前から警鐘を鳴らしていた。 つまり、道路事情の関係上、日本では幅2.5間とか3.0間のパネルしか運べない。 このため、どんなに長くても壁は一体化して起こさないと、強度は落ちるというのがアメリカのルール。
それなのに、上下枠と頭つなぎを同じ場所でカットしたパネルが目立ってきた。 もっとも、最近では頭繋ぎをダブルに入れて、壁の一体化を保とうと言う動きも出てきているが‥‥。
このツーバイフォーパネルの欠点をカバーし、金物工法のやたらな木材の使用量をカットするために、北海道の一部でツーバィフォーと金物工法をミックスした工法が生まれてきた。
つまり、外壁の2.5〜3.0間に206 (140ミリ) の金物工法による通し柱を建て、その間を206の配線・配管を終え、断熱材を充填した高性能パネルを建ててゆく。
金物工法は 3尺毎にスタッドを建て、集成材の梁を入れて行くので、間柱は20ミリ程度のものにならざるを得ない。 このため、合板のクギ打ちと石膏ボードのクギ打ちは面倒になると共に、必要な強度が担保できない。
もっとも悪いのは、外壁面から455ミリ離れたスタッドから合板や石膏ボードが打ち出せないこと。 つまり、外部開口部周りの合板や石膏ボードをコ型に切り抜いて、開口部周辺の耐震強度を飛躍的に高めることは不可能に。
それと3.0〜3.5間毎に外壁の合板を張り、両面のパネルを一体化させるというツーバィフォーの得意技が使えなくなる。 そして、床はアイジョイストとか平行弦トラスを用いて、構造用合板を張ってダイヤフラムを構成して剛にする。 その上に特殊石膏ボードないしはシンダーコンクリートを打って、特殊な接着剤でフローリングを張って2階の床音を解消するという手法が、採用しにくくなる。

外壁か206の壁だから、105ミリの集成材梁を用いても、根太材は35ミリも壁に乗るから安全。
たしかに、軸組だと、雨の多い日本では最初に屋根が乗ってから作業が出来るので安全。 しかし、パネル化の進んだツーバィフォーも、金物工法に比べて屋根が葺き上がるまでの日程は、半日からせいぜい1日の差でしかない。
私は窓コーナー部の耐震性や耐火性、あるいはコスト性、さらには断熱・気密性から考えて、ツーバィフォーと金物工法のドッキングこそ最上の選択であると考え、故高倉氏にその実現に最大限の努力を払うように伝えた。
ところが高倉氏からの返事は、「そうしたドッキングは北海道では日常茶飯事に行われており、わざわざ文章化するまでもない。 道の役人は十分に心得ていて、対処してくれている」
というものだった。
たしかに、道ではそうであったろう。 だが、全国的に見るとこのドッキング化は必ずしもスムーズには進んでいない。
大きなチャンスを失ったという気が、私にはしてならない。


posted by uno2013 at 10:22| Comment(1) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
先生ー 
犠牲者は5000人ちょっとです
Posted by at 2015年12月03日 19:35
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