2015年11月20日

木質構造の、今後の住宅・非住宅への展開のポイント (1)




日本の住宅 (含むアパート)、および介護・学校・幼稚園・事務所など非住宅に対するこれからの木質構造の普及について、皆さんと真剣に考えて見たいと思う。

ツーバィフォー工法をオープンな形で日本へ導入した動機や経緯、および高気密住宅の初期の諸問題については、今から約20年前に住宅産業新聞社から刊行された著作 「ツーバイフォー 高気密住宅奮戦記」 で詳しく触れている。
残念ながこの著作は 現在絶版になっており、再販の見込みがないので、簡単に入手する方法が見当らない。
「どうしても、その間の経緯や問題点を知りたい」 と言う方には、著書を貸出して、A5版で208ページしかないので、全面コピーをして使っていただいているのが現状。
したがって、この著作との重複は避けたいと考えているので、分かりづらい点が多々出てくることがあることを、あらかじめお断りしておく。

さて、アメリカで一般的に普及している通称ツーバィフォー工法、正式には 「プラット・フォーム・コンストラクション」 を日本へ導入するにあたり、工法的に、またシステム的にどこまでオープンな形で導入出来るかが大問題になった。
ご案内のとおり、アメリカでは州によって若干異なるが、1人前の大工になるためには、昼は現場で働いて、週に2回は夜間高校へ4年間通わねばならない。 (夜の19時から21時まで。 つまり週に6時間、年間約130時間学ぶことが義務)
この授業料はタダで、職種は150にも及ぶ。(例えば建築関係だと大工さんのほかに左官、塗装、レンガ、板金、配管、電気、空調など多彩)。
国家試験にパスしない限り1人前の大工さんとして認めて貰えず、賃金も低いまま。
最初の6ヶ月までは、1人前の大工さんの60%しか支払われない。
そして、半年ごとに5%ずつ昇給してゆき、4年後には95%になる。
しかし、100%を貰えるようになるには、国家試験に合格しなければならない。
ただし、現場監督が特別優秀と認めた大工さんの場合には、3年間で国家試験が受けることが出来て、1人前のジャニーマンになれる可能性がある。
今から43年前の1972年のカリフォルニアのジャニーマンの時給は7.5ドルだった。
アメリカの現場は朝は7時と早いが、午後の4時には終わる。
しかも、金曜日はハンドンで、週休2日制。

それだけではない。
さらに現場で働き、勉強を続けて試験にパスすれば、時給8.25ドルのフォーマンになれる。
このフォーマンというのは、例えばフレーミング工であればフレーミングに関して、見習工を指導し、作業を指示できる主任という立場。
さらに、フォーマンになって2〜3年の経験を積み、さらに上の国家試験をパスすればゼネラル・フォーマンになれて、時給は20%アップして約10ドルになる。
このゼネラル・フォーマンというのは木工事全体を指示、指導出来る木工事に関する係長とも呼ぶべき役職。
これだけにとどまらない。
工全体を管理・監督するスーパーバイザーに転身することも不可能ではない。
このスーパーバイザーの資格が得られれば、時給から年収が保証されるようになって、2万ドル以上を確保することが可能。
この上のスーパー・インテンデッドの年収は、2.5万ドル以上。
さらに ゼネラル・スーパーインテンデッドだと、年収3.0万ドル以上が保証。

この教育および国家試験と 誰にでも一目で分かる給料制度を、なんとかシステムとして日本へ導入したいと考えた。
しかし、これは中央集権の強い日本では、文部省を動かさないかぎり何一つ出来ない。 建設省は動かせても、文部省を動かせるツテがない。
これまでの大工さんは、無休で年季奉公を勤めあげ、親方の承認を得て自立するしか日本では許されてこなかった。
これは、何も大工に限ったことではなく、寿司屋にしろ料理屋にしろ、職人の国家による無料夜間高校制度と国家試験がきちんと法文化されていない。 いかに、アメリカの制度を羨んでも、所詮は絵に描いた餅。

たしかに、アメリカの大工制度と教材を調べてゆくと、うらやましくなってくる。
「カーペントリー」 という大工さん向けの教材を読むと、単に 「プラットフォーム・コンストラクション」 のことだけではなく、吹抜け空間を前提にした 「バルーンフレーミング・コンストラクション」 や、日本の柱・梁工法の 「ポスト&ビーム・コンストラクション」、さらには重量木骨造の 「ヘビーテンバー・コンストラクション」 のことまで書かれている。
アメリカの大工さんは、単に 「プラット・フォーム」 工法だけで育っているのではない。 かなり広範囲の知識が求められる職種。
それが証拠に、アメリカの戸建ての建築現場を覗くと、たしかに日本の 「ホゾ・ミゾ」 ほど精緻ではないが、柱・梁構造も良く見かける。

それだけではない。
アメリカの大工さんには、基本知識として、「規矩術」 が必修科目になっている。
この規矩術というのは、大工業の基本。
日本の百科事典によると、何か日本古来の伝統技術であるかのように記しているものがあるが、これは大きな間違い。 日本だけでなくアメリカでも標準的な技術。
したがって、細かく調べたわけではないので断言出来ないが、おそらくヨーロッパでも標準的な技術ではないかと考える。

コンピューターを使えば、私でも難しい納まりでも何とか描くことが出来る。
しかし、あまりにも難しい納まりに音を上げていた現場の梁の加工を、青森の大工さんは規矩尺を駆使して簡単に納めてくれたことがあった。 日本の在来木造で育った一流の青森の大工さんは、ツーバイフォーの現場を任せても一流だった。
それを見て、私は規矩尺に感動した。
そして、以前にサンワホームが、ツーバィフォーの大工学校を開設した時、校長先生の特別な思い入れで、規矩術を必須の教材に加えていた。 これには、尊敬の念を抱いたことがある。
だが、残念ながらこの学校は、かなり前に閉鎖してしまった。 学校の運営は、民間企業ではなかなか難しい。
しかし アメリカでは、夜間高校では今でも規矩術を無料で教えているはず‥‥。

日本の1級建築士で、この規矩術を完全にこなせる人間は、一体どれだけいるだろうか?


posted by uno2013 at 08:22| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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