2015年10月25日

健康住宅は、自然素材を使うとか風通しが良いだけでは得られない!


今月の30日(金) の 「独善的週刊書評」 で、「健康住宅を手に入れる5つの知恵」 という著書を紹介することにしている。
なんということはない。 「無垢のパイン材を床に使い、内壁を漆喰塗りにして、風通しと日当りを良くして、マイナスイオンを多くすれば健康住宅は得られる」 と、一般的な常識論を並べているだけ。 それだけなら許せる。
「高気密住宅にしながら、24時間機械換気をやっているのはナンセンスだ」 と挑戦的な言動を弄んでいるので、堪忍袋の緒が切れた。
当然、私は 「R-2000住宅のワークショップで、カナダと日本の学者や官民がこぞって7年間にわたって研究し、多面的に議論して確立してきた健康住宅。 それをこの程度の知識しか持合わせていない人間に、糾弾されてたまるか!」 ということで反論した。 そして私の読者の方なら、この欺瞞的な発言に猛批判を加える力を、全員が持っている。
ともかく、独善的週評では紙数が限られているので、まともな反論にはなっていない。
そこで、言い足りなかった最低限のことを、敢えてここで取上げることにした。

ASHRAEダニカビ.JPG

まず、ASHRAE (アシュレ=全米空調衛生学会) が、40年も前に発表した 「相対湿度と微生物との相関関係」 の図を見て頂きたい。 この図は、過去に20回以上も紹介しているので、我ながらいささか情けなくなってくる。 だが、これほど相対湿度が、バクテリア、ウィルス、カビ、ダニ、呼吸疾患の発生に大きく関わっているということを見事に立証した図は、今までに見たことがない。 何回見ても納得させられる。
これを見れば一目のように、@バクテリアは、相対湿度が30%を切った時と、相対湿度が55%を超えた時にのみ発生する。 冬季よりも夏季の方が要注意。
そして、風邪などをもたらす Aウィルスは、相対湿度が50%以下か、70%を超えた時に発生する。 やはり冬季の方が発生しやすい。 だが、湿度が高いときの夏風邪にも要注意。
一方、いやらしい Bカビは、相対湿度が60%を超える夏季にしか発生しない。 冬季は窓ガラスが結露に覆われるが、相対湿度60%以下であれば、それほど心配しなくてもよい。 ともかく、窓枠とガラスを丁寧に拭掃除をすることが肝要。
これに対して、夏季にやたらと悪さをするのが Cダニ。 とくに、相対湿度が50%を超えると発生するので、夏季は何はさておいても相対湿度を50%以下にしたい。
Dの呼吸疾患。 これは相対湿度が50%を切る冬季のみに発生する現象で、冬季の相対湿度に気をつけておけば、それほど心配することはない。

この要点を丸暗記して欲しい。
全米空調冷凍学会は、相対湿度が40〜60%の間だと 「快適ゾーン」 だと強調しており、1年を通じて40〜60%の相対湿度で生活することを奨めている。
ヨーロッパ各国やアメリカ大陸の西海岸では、冬季が雨期で夏季が乾燥期。
したがって、夏季は問題なく相対湿度が50%以下。 当然のことながら、日本やアメリカの東海岸のように、高温多湿を気にする必要は一切ない。 つまり、夏のダニ、カビ問題は、ヨーロッパやロスアンゼルス、サンフランシスコなどでは無視してよい。
そして冬季は、東京やニューヨークのように、異常乾燥のために鍵穴にカギを触れるだけで、ビリッと静電気が走るようなこともない。
ところが、そのヨーロッパで、セントラル暖房が普及した冬季に、日本の夏季のようなダニ、カビ問題が急増している、とドイツで開業医をやっている日本人から聞いて驚いたことがある。
冬季のヨーロッパで、日本の夏季に匹敵するダニ、カビ対策やシックハウス対策を講じる必要性が増大しているらしい‥‥。
つまり、今までは温度コントロールだけで済んでいたものが、日本と同様に湿度コントロールが、冬季の場合には必要条件になってきているのだ。

化学物質過敏症とかシックハウス対策が叫ばれて、間もなく20年になろうとしている。
日本へホルムアルデヒドの基準や換気の基準を持ち込んだのはカナダのR-2000住宅。 日本とカナダの学会や政府、民間が一緒になって、「日加リサーチ&開発のワークショップ会議」 が設けられて、7年間にわたって徹底的な研究と議論が重ねられてきた。 その影響を受けて厚生省がホルムアルデヒドに関するガイドラインを発表したのは1997年。
ホルムアルデヒドの日本基準は、世界基準と同じ0.08ppm。 この基準に準じて、早速構造用合板等の農林規格F1〜F3が発表された。 ともかく、F1の構造用合板を床、外壁、野地に採用しておれば、ホルムアルデヒドが0.08ppm に抑えられ、人畜には全く無害。
それを立証するために 国立衛生院の池田部長にお願いして、ホルムアルデヒドの測定器を購入して、全戸でホルムアルデヒドの濃度検査を実施した。

私は、渡部建設の社長の案内で、中越地震の激震地だった川口町の現場を3回も見てきた。
震度7の直下型地震に耐えるには、木質構造住宅の床、外壁、野地には、絶対条件として構造用合板ないしはOSBの面材を採用することが 不可欠の条件だということを学んだ。
在来木軸のスジカイ工法では、全部のスジカイが折れるなり面外へ弾き飛ばされて、倒壊しないまでも 気密性が完全に損なわれるという被害に遭遇していた。
F1の構造用合板を用いると、自然素材と同様にシックハウスから免がれられる。
その肝心なことに目をそむけている輩のなんと多いこと。 こういった輩が、日本の木質構造をダメにしいている。
とはいっても、初期の頃は0.08ppm を達成するのは 大変に難事だった。
測定器で構造用合板完了時に測定すると、全部のホルムアルデヒド濃度は0.08ppm 以下。 ところが、押入れの引戸を空けると、段床に採用している薄い合板はF1仕様ではなくて、0.08ppm を突破する。 慌ててメーカーにねじ込んで、薄い合板をF1仕様に変更させた。
こうして、0.08ppm 以下の性能を持った新築住宅を引渡しても、実際に人が住み始めた家を測定してみると、軒並み0.08ppm を突破。 
その原因は、施主が買ってきた家具や家電に用われている合板やパーティクルボードから、大量のホルムアルデヒドが発散していた。 このため、引渡した全戸のホルムアルデヒド濃度が、基準値の0.08ppm をクリアーするまでには、2年近くの時間がかかった。
「健康住宅を手に入れる…」 を書いた著者は、どのようにしてホルムアルデヒドの濃度を測定を行ったかが一切書かれていない。 したがって、私は著者を信頼出来ないでいる。

ホルムアルデヒドを0.08ppm 以下にするには、ビニールクロスを使っても問題はない。 ビニールクロスからの可塑剤の放出は極めて微量。
問題は接着剤と塗料の選定。 
接着剤としては、当時はポリウレタン1液、エポキシ樹脂2液、ないしは変成シリコン系を選べば問題がなく、塗料としてはエマルジョン系を選ぶしかなかった。
加えて防腐・防蟻処理も重要なウェイトを占めていた。  
農薬以上に問題になったのが、タバコの煙。
また、子どものアトピー性皮膚炎は、生後1〜2ヶ月で発生するものが多く、その90%は食物アレルギーとして発症すると言われていた。
そして、2才児になると60%以上が、家屋塵やダニアレルゲンによると言われていた。
家屋塵としては、@空気中から吸込むハウスダストとしてのダニ、カビ、花粉、ペットの毛やフケ、胞子、粉類がある。 A皮膚に接するものとしては、ウルシ、化粧品や染料、ニッケルなどの金属と、ゴムがある。 また、B薬剤としてはペニシリンなどの抗生物質と、 C食物の添加剤がある。
一番問題になるのはダニであった。
1985年にアメリカのロール医師が、家庭内アトピー患者の発症原因のほとんどが、ダニのフンであることを発見。 つまり、人の血を吸うマダニが問題ではなく、ホコリダニの死骸やフンが原因だと発表した。
もう一度、上のASHRAEの図を見て頂きたい。 ダニは夏季に相対湿度が50%を超えた夏季に発生する。 そして、居場所としてはカーペットとビールの袋入りのヌイグルミ、ソファーや毛布、畳のワラ床などが多かった。
ということは、今までのようにダニの居場所を清掃し、駆逐することだけを考えるのではなく、夏季の相対湿度を50%以内に抑えることそが、ダニの発生は防ぐ最良の方策ではないか‥‥。
この発見が、私共をして夏季の湿度コントロールへ走らせた。

技術的に、この難問を解決してくれたのがダイキンのデシカ。
デシカを採用しているSa邸やユウキ邸では、冬季の相対湿度は40〜45%で稼働させ、夏季は50%前後で稼働させている。 冬季は40〜45%稼働というのは、それ以上に設定するとペアの樹枝サッシに結露が生じる。 このために冬季の相対湿度は40〜45%がキープされている。 これだと、風邪とかウィルスの心配がほとんどない。
そして、夏季の相対湿度が50%。
というのは、55〜60%に設定すると、室温を26℃以下に設定しないと快適ではない。 それが相対湿度50%前後だと、室温の設定は27〜28℃でも快適。 つまりいやらしい冷気から解放されて、汗をかくこともない。
さらに 実質40坪強のユウキ邸の年間空調・換気・デシカの電気代を合計しても、kWh当り33円という高めで計算しても5万7000円で上がっている。 もっとも、ユウキ邸はQ値が0.8W/uと優れた性能を持っているせいではあるが‥‥。
つまり、性能的・技術的にダイキンは難問を見事に解決してくれた。
しかし、イニシァルコストが高すぎる。 機器だけの定価が100万円を超えており、これにダクト工事や分配器のコストを加えると40坪の住宅で200万円を突破、250万円近くならざるを得ない。
このため関係者の間で、何とか200万円以内に収めるべく商品開発が現在進行中。
残念ながら、現時点ではダイキンのデシカを含めて、価格的にこれはというシステムが開発されていない。 だが、ダイキンのデシカの登場で、ダニの心配が不要な商品が開発されたという事実は、心の底から喜びたいと思う。

さて、内閣府は2012年に50年後の人口予測を発表した。
詳細については、各報道機関から発表されているので省く。 一番問題になるのは、人口の減少と著しい高齢化。
                  2010年     2020年     2060年
総     人     口   約1.28憶人  約1.24億人  約0.87憶人
内65才以上の高齢者   約23.0%   約29.1%   約40.0%
15才から 64才まで   約63.8%   約59.2%   約50.9%
14才以下の若者比率   約13.2%   約11.7%   約 9.1%

とくに高齢者の比率が増え、2060年には65才以上の比率がなんと40%を占めるまでになる。 5人のうち2人までが65才以上の高齢者。
そしたら、どんな現象が起こるか。
まず、年寄りは体力が衰えているので、風邪などをひきやすい。 それを防ぐために、高断熱住宅が不可欠となってくる。 昔のような隙間だらけの住宅だと、老人の医療介護費が幾何級数的に増大する。 東京周辺でも、Q値0.9W程度の高断熱住宅が、最低条件になってこざるを得ない。
そして、気密性能のC値は、最低でも0.5cu/uが求められるであろう。
そして、10年前とは異なり、冬季は空気を透さず、夏季は空気を透すインテロというべバーバリアの使用が絶対条件になってくる。 地球の温暖化による夏季の逆転結露を防ぐために‥‥。
そして、日本のメーカーが制作してくれないなら、欧米からの熱回収率90%に近い顕熱交換気が輸入され、日本の換気の主流を占めるようになるであろう。
大手住宅メーカー各社が採用している全熱交換機や、一条工務店のロスガード90は、間違いなく過去の遺物扱いを受けることになる。 いや、しなければならない。
でないと、日本のいびつな換気行政は、いつまでたっても改善されることがなかろう。

まだまだ書かなければならないことが山積している。 しかし、紙数が尽きた。
ただ、湿度をコントロールするには、隙間のない住宅づくりこそがポイントであるというだけは、腹の底から理解して頂きたい。



posted by uno2013 at 15:21| Comment(1) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
高額なデシカ等無くても絶対湿度10g/kgは達成出来る。
エアコン内部の熱交換器部は0〜5℃程度になっている。
エアコン空気吹き出し温度10℃なら絶対湿度は7.6g/kg、室内発生水分が有っても10g/kg以下は高気密住宅なら十分に達成出来る。
10g/kgに出来ないのは室内の多少湿度の低い多量の空気をエアコンで処理してるからです。
室温を下げるには良いが湿度を下げるには多量の空気を冷やすのは無駄になる、無駄覚悟なら強力な再熱除湿運転をすれば良い。
湿気は元から断つ、デシカのように室内に入れる絶対湿度の高い換気空気を除湿すれば達成出来ます。
エアコンで室内空気を除湿するのでなく、室内の高湿度空気を低湿度換気空気で薄める方法です。
小型エアコン付き換気装置を作れば良いです、イメージとしては窓付けのエアコン、ポータブル除湿器。
小型エアコン付き換気装置は屋外に設置して自動給水の加湿器も付ければ良い、屋外ですから水漏れ事故に対しても対応出来ます。
Posted by 阿武隈高地 at 2015年10月26日 11:59
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