2015年09月05日

高気密・高断熱の空調換気システムは根源的な問題に遭遇している (上)



高気密・高断熱を目指しているビルダーだけではなく、消費者の方も最近は、どちらの方向へゆくべきかのか? という根源的な問題にぶち当たっているように思えてならない。
他人様はともかくとして、私は完全に混迷状態。
数年前までは、楽観的な見通しを持っていた。
R-2000住宅で、日本の住宅にフィットする完全なセントラル空調換気システムが、完全に構築出来ていた。
後はQ値の性能に併せて、空調機器の性能を落とし、冷暖房にかかるイニシァル・コストとランニング・コストを低減させてゆけば良いだけだと安易に考えていた。
そして、9年前に北海道住宅産業新聞の視察団に加わって、スウェーデンとドイツの新しい住宅視察にに参加した。  
この時は、どちらかというとハンス・エーク氏がスウェーデンの東海岸のヨーテボリ市に開発したタウンハウス団地の視察が主目的だった。
これは、それほど参考にならなかった。
むしろ、ドイツ・ベルリンへ移ってからの、RC造のロックウールとPVCペア・サッシによる断熱改修工事のスケールの大きさや、その徹底ぶりに感動させられた。 しかし、日本でこのような大規模の公営・公団住宅の改修工事か行われるのは、何十年か先になるだろうと、絶望的な気持にさせられて帰ってきた。 
つまり具体的な収穫は、ほぼゼロだった。

これではいかんと、7年前の暮れにエコ・トランスファー・ジャパン社のバウマン社長にお願いして、昇龍の勢いであったパッシブ研究所をはじめとして、断熱・サッシ・暖房・住宅会社の各メーカー・流通業者・住宅展示場、2ヶ所以上建築現場の実態調査が出来るルートを開発していただいた。 
そして、私を含めて7人の仲間に呼びかけて、バウマンさんの運転と通訳で、ワゴン車でドイツとオーストリアを徹底的に調査してきた。
この調査で多くのことが分かった。

まずなんといっても、ファイスト博士が起こしたパッシブハウス研究所が、勉強になった。
博士は、建築価格がやたらに高くなるので、最初から 「ゼロ・エネルギーハウス」 を狙うのを意識的に避けていた。
屋根・天井及び外壁のU値は0.15Wでよいとした。 これだったら、東京周辺でも簡単に出来る。
つまり、パッシブハウスはエネルギーの消費量を15kWh/uとした。 大変に賢明な選択。
そして、RC造の中層マンションや賃貸住宅を見て驚かされるのは、ドイツの住宅は 「原則として地下室を持っていること」。 この地下室は、物置や機械室として使われている。 
これは、南3階建、北2階建のパッシブハウス研究所も例外ではない。
そして、地下を掘る時に、必ず地下層に長さ30メートルのアースチューブを敷設する。 このために、外気が氷点下以下になっても、アースチューブを通じて10℃以上の温度が得られる。 そして、ドイツのパッシブハウスでは、このアースチューブを絶対必要な最低条件としてきた。
そして、ファイスト博士が力点を置いたのはサッシと換気の開発。
私が最初にR-2000住宅に取組んだ時には、世界で一番すぐれたサッシでも、U値は1.8Wに過ぎなかった。
トリプルサッシがやっと開発されたばかりで、それでも1.6Wもあれば上等だった。
そんな時、ファイスト博士は 「サッシのU値は0.8Wであるべし!」 と叫んだというから、狂気の沙汰。 しかし、博士はサッシメーカーの技術者を呼んで、PVCの型枠を変え、PVCやウッドサッシに断熱材を装填するなどして、「U値0.7Wのサッシを開発した」 というから、「お見事」 というしかない。

そして、換気はどこまでも 「ダーディソーン」 からの排気を考えていたので、顕熱交を前提としている。 日本の換気メーカーや住宅メーカーは、ビル用の全熱交を前提にしてしているので、一条工務店の排気計画に見られるように、全くおかしげなものにならざるを得ない。 よくあんな全熱交を ダイキンともあろうところが、喜んで仕様書発注を受けているものだと、情けなくなってくる。
日本の学界と官界、それと消費者は完全にバカにされている。
そして、7年前の段階で、PAUL社の92%の熱回収のシステムをはじめ、熱回収率90%以上の機種の顕熱交が数点展示されていた。 それを見て、日本のメーカーが開発してくれないなら、90%以上と熱回収率の高い機種をドイツから輸入するしかなかろう、と考えていた。
そして、先ほどドイツの家屋は例外なく地下室を持っていると書いた。 冬期は外気が氷点下以下になるので、アースチューブの設置がパッシブハウスにとっても不可欠の条件と書いた。
ただし、ドイツでは冬期はアースチューブを使うが、春から秋にかけては一切アースチューブは使わない。 アースチューブを封鎖して、そのまま外気を導入して換気している。
それを実感させてくれたのが、60戸以上も大型のモデルハウスを展示していたドイツ・ミュンヘンの総合住宅展示場。 それまで、スウェーデン・ストックホルムの住宅展示場は見ていたが、
これは夏場の小さなセカンドハウスの展示がほとんどで、断熱や気密・換気などで参考になるものは皆無。
これに対して、ミュンヘンの60戸は見ごたえがあった。
そして、途中から気が付いたのだが、すべての家の外側に金属製のブラインドがついていて、夏の直射日光の侵入を避けている。 そして、7年前だが、クーラーを設置している住宅は、これまた皆無だった。 
つまり、冬期が雨期で、夏が乾期のドイツでは、夏は相対湿度が40%以下で、直射日光さえ遮れば、室温が25℃を超えることはめったにない。

このことを痛感させてくれたのは、フランクフルトの高校教諭の新宅を訪ねた時。
驚いたことが2つあった。
1つは、床がしっかりしていて、2階音が階下へ響かなかったということ。
もう1つは、ドイツ人は西日を大切にしていて、早く家へ帰って、家の西側についている長い屋根ブラインドを架けて、一家での夕食を楽しんでいる。
日本では、いくら9月になったとしても、西日の当るところでバーベキューを楽しむことは出来ない。 汗ダクになるし、虫が飛んでくるわで、外で夕食を楽しむなどということは想像すら出来ない世界。 それが、ドイツでは最大の楽しみというから、過乾燥の冬と、高温多湿な夏を抱えている日本では、自然条件がまるきり違うと言うことに、改めて気付かせられた。

さて、話をR-2000住宅に戻そう。
私は、カナダの資源エネルギー省の連中から期待されて、日本でR-2000住宅を軌道に乗せるために、大変な思いをさせられた。
一番困ったのは、Q値が1.4Wという断熱性能の担保。
気密性能の0.9cu/uは、大手と違い直施工をやっていたから何とかなった。 しかし、206の外壁スタッドだと、当時のグラスウールでは、Q値が1.6Wにしかならず、1.4Wはムリだった。 つまり、208のスタッドを用いて、一杯に充填断熱材を詰めない限りR-2000住宅にはならない。
つまり、価格が40坪であってもセントラル空調換気システムを装備すれば、70万円/坪で納まってくれず、どうしても80万円/坪台になってしまう。
そういった価格帯でも、喜んで買ってくれる層は確かにある。
初年度に、R-2000住宅だと威張れる性能住宅が2戸は売れた。 しかし、それ以上は無理。
やはり、サラリーマンが買える価格にしないと、普及は覚つかない。
そこで、小細工を施した。 R-2000住宅の性能を持つ住宅をSESA (Super Enargy Super Amenity) とし、Q値1.6Wの住宅をSEA (Super Enargy Amenity) とコジつけて売り出した。 そしたら、SEA
が何とか20戸は売れた。 その成果を持って、カナダで威張って報告した。
この肩身の狭いSEA時代は、2年余続いたと思う。

その時、神風か吹いてくれた。
PVCサッシのダブル・サッシが売出された。
これが安売り競争で価格が下がり、後でメーカーに聞いたところでは、一部には定価の1割とか2割という信じられない数字が提示されたらしい。
私のところはせいぜい4割程度だったと思う。 しかし、このPVCのペア・サッシの出現で、私のところだけでなく、北海道・よねくらホーム、仙台・北洲ハウジング、群馬・マイスターハウスなどか、206材を用いて100%のR-2000住宅専業ビルダーに脱皮出来た。
一頃のR-2000住宅は、それこそ肩で風を切って歩いていた。

それに近い状況が、今トリプル・サッシで起こりつつあるのではないかというのが 私の認識。


posted by uno2013 at 12:09| Comment(0) | 産業・経営 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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