2015年08月15日

日本で何故アメリカのコーヒーチェーンが成功したのか?



梅本龍夫著「日本スターバックス物語」(早川書房 1600円+税)

スタバの表紙.JPG

今日、入稿を予定していた資料が、私の手違いで遅れてしまいました。 このため、急遽予定を変更して、「日本スターバックス物語」 を掲載することにしました。
だが、いきなりスターバックス物語に入るよりも、まず日本におけるコーヒー業界の事情がどのようになってきているのかという変遷を知らないと、スタバは語れない。
私の知っている 《喫茶店》 というのは、戦後になって日本全国に生まれたもの。 待合場所とか打合場所として広く使われてきた。 つまり、《喫茶店》 には、《昭和》 の臭いが強烈に焼き付いている。 それがこの20年間で大変革を遂げている。

昔は、お茶好きが多かった。 だが今はコーヒー好きに一方的に押しまくられて、その影は限りなく薄くなってきている。 たしかに、私も毎日コーヒーを飲んでいる。 しかし、私が飲んでいるコーヒーは、インスタントもので、自慢てきるような香りの高いものではない。
しかも、私はインスタントコーヒーの中に、クレープと一緒に砂糖代わりにココアを入れ、ゴマ粉や干しブドウ、クルミ、カシュナッツも入れている。 なんと7種もの食材が入った総合ドリンクで、とてもじゃないが香りを楽しむものではない。
こうした総合ドリンクファンが一人くらいいても良いのではないかと、開き直っている。 だからといって、香りを楽しむコーヒー党の存在を否定しょうとは一切考えていない。
ただ、例外的な人間も多くいるということを、考えてもらいたい。

そんなコーヒー音痴なので、まず日本のコーヒーチェーン店のビック5がどうなっているかを先に調べて見た。 少し資料が古いので申し訳ないが、2013年5月号のZAITENに、大澤博一氏の 「日本のコーヒーチェーン店の動向」 調査が発表されている。
それによると、日本の喫茶店マーケットのピークは、1982年の1兆7396で、2012年には40%以上も減少して、1兆円を切ろうとしているという。 おそらく最近では、1兆円を確実に下回っているはず。 セブン・イレブンなどが乗出してきているので、「調子のよい業界だろう」 と考えていたのは、甘い判断だったとまず知らされた。
そして、日本にコーヒー・チェーンが誕生したのは、今から35年前の1980年。 あのドトールコーヒーが東京・原宿にセルフ式の第1号店を出したのをもって嚆矢とするらしい。 価格は150円のドリップ式ブレンドコーヒー。
私はツーバイフォー工法の調査で、20回以上アメリカへ行った。 その都度、アメリカのコーヒーのまずさに呆れさせられてきた。 とくに 《アメリカン》 とよばれていた薄くて味のないコーヒーには、うんざりさせられてきた。
そのアメリカのドトールが日本へ上陸しても、お茶で肥えた日本人からは はじき出されてしまうだろうと考えていた。 ところが、価格とセルフサービスで日本のセールスマンの需要をしっかり掴み、私なども待ち合わせ場所としてドトールを結構使ってきた。

この動きに遅れてはならじと、サントリーがUCCと組んで、現 「フロント」 の前身である 「プレス」 を銀座にオープンさせたのが1988年だったという。 この2つの動きを、日本におけるコーヒーチェーンの 「第1の波」 と言うらしい。
第2の波というのは、1996年に、「エスプレッソという高品質・高価格のスターバックスと言うシアトル市のローカル・チェーンに過ぎなかった小さなチェーンが、日本でもその名を知られていないサザビーと50対50の出資比率で組んで、日本スターバックス社を設立した時だった」 と大澤氏は述べている。 そのスターバックスが、今年の4月の時点で、世界約65ヶ国に2万1000店舗を持つ巨大産業に変身してきている。

この著者は慶大経済部卒、スタンフォード大でMBAを取得、NTTなどを経てサザビーリーグの取締役企画室長として、合弁企業の立ち上げに一貫して関与してきた人が書いたもの。 日本スターバックス社を語るには最適任者。
ともかく、最初にスターバック社のシュルツ社長にアプローチの手紙を出したのは、日本で多彩な高額商品群を扱うサザビーの角田雄二社長。
雄二社長がスターバックス社に感じたのは、「なにか特別に匂いを持っている」 という直感。
同社は、世界各国からコーヒー豆を集めるとともに、その焙煎には丹精を込めており、特別な匂いを放っていた。
その匂いに一目惚れした雄二社長からのラブレターが、シュルツ社長へ届けられた。
しかし、シュルツ社長には苦い経験があった。 某社と組んで成田空港へ1号店を出した。 しかしこれは散々な失敗に終わった。 1992年のサンクスギビングデーという祭日の前日に、シアトルの焙煎工場の脇の本社へ案内された雄二社長は、その焙煎の確かさを確認するとともに、「お宅のコーヒーは最高だが、メシが不味い。 マーチャンダイジングもなっていない。 当社の 《アフターヌーン・ティ》 と組めば、成功間違いなし」 と強調した。 シュルツ社長も雄二社長の琴線に触れ、両社の合体へ向けて舵は切られた。

しかし、サザビーという会社は、利益を主に考える会社。 これに対して、スターバック社は出来るだけ早くチェーン店を1000社にまで持って行こうというポリシーを持った会社。 このため、最初から必ずしも順風万帆というわけではなかった。
最初に挙げた大澤氏の、「日本のコーヒーチェーン店のビック5」 には、次のような記述が見られる。

チェーン名  スターバックス  ドトールコーヒー  タリーズ  サンマルク  フロント
年間売上高    1076億円      721億円    233億円   191億円   175億円
市場占拠率     39.6%      26.5%     8.2%    7.0%    6.4%
店舗の数      955店      1479店     460店    296店    231店
うちFCの比率     39店      1157店      −     13店     −
1店当り社員    1.9人      0.7人      1.1人    0.3人    0.8人
対象や商品    一般客   エスプレッソ拘り派  バリエーション 一般客 一般+フード

このビック5の一覧表を見ると、売上高で1000億円を突破しているスターバックスが、店舗数でもすでに1000店を超えトップに立っていることが良く分かる。 そして、同社の場合はドトールに比べて、圧倒的にFCが少ない。 これは、大型ショッピングセンターなどに、独力で出店している結果。 このために売上高では最高。
ドトールはフランチャイズと価格で伸びてきていることが、上表で良く分かる。 また、1店当たりの社員の少なさが、スターバックスにサービス面で劣っていることも頷ける。
タリーズ社というのは、アメリカのシアトルに本社を持つ会社で、日本タリーズは伊藤園が中心になって運営しているらしい。
サンマルクというのは、コーヒー以外にパンやかき氷などで人気のある日本のチェーン店。 関連会社として、函館市場、鎌倉パスタなどを持っている。
サントリーとUCCの合弁会社として大きな期待がもたれたフロント。 単なるコーヒー客だけでなく、フードを一緒に注文する女性客も伸びており、いつまでも5位に甘んじているわけにはゆくまい。

このほか、マクドナルドやセブンイレブンなどのコンビエンスストアも大きく動き初めており、
アメリカから江東区に上陸を果たしたブルーボードコーヒーからも目が離せない。
これからのコーヒー業界がどのように変わってゆくのかを、予断するのは困難。
なお本著によると、日本スターバックの普及に多大な貢献を果たしたサザビーリーグが、1000店という目標を到達したのを機に、50%の証券を全て手放したと報じている。 サザビーリーグは、すでて上場企業ではなくなっている。
肝心のその辺りの情報が、この著から得られないのが最大の欠陥。


posted by uno2013 at 16:31| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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