2015年07月10日

農業で成功する手法が、地場ビルダーにそのまま当てはまるか?



久しぶりに面白い本と、面白い課題にぶつかりました。
今週の 「独善的週刊書評」 で取上げた、澤浦彰治氏の 「農業で成功する人、うまくいかない人」 は、単に農業だけではなく、地場ビルダーに共通する大きな問題を提起してくれています。 したがって、今週は予定を変更して、この問題を取上げたいと考えます。

澤浦氏の著作の内容は、書評欄で取上げたとおり。
短く抜粋してあるので、なかなかその内容が伝わらないのが、正直言って口惜しい! 詳細を知りたい方は、是非一読を。 得をした気分になる一冊であることを保障します。
この本を読んで私が感じたのは、題名を 「地場ビルダーとして成功する人、うまくいかない人」 と変えても、ピタリ当てはまるいうことだった。 筆者が言わんとしていることが、そっくり地場ビルダーにも当てはまる‥‥。
今、地場ビルダーの方は、需要の減退で大変な困難に直面している。
しかし、こうなることは10年も前から分かっていた。 10年前から対策を建てておくべきだった。 いまさらジタバタしても始まらない。
いつの時代でも、地場ビルダーとして真っ先に考えなければならないことは、安定した需要の確保。 この需要が確保出来ていないと、まず大工さんをはじめすべての下職の職人さんがソワソワしはじめる。
次の仕事の当てがないと、生活がかかっているのでどうしても落ち着きがなくなる。 そして普通では考えられないクレームが発生したりする。
したがって、ビルダーのトップにとっての最大の仕事は、受注の安定的確保。
私の仲間の全員が、安定した受注の確保に、それぞれ大変な思いで努力中。
時には、職人さんを遊ばせないために、安値受注をすることもある。 つまり、ソワソワされてクレームが発生するよりは、多少儲からなくても、すべての職人さんが、安心して仕事に打ち込んでくれた方がベター。
つまり、地場ビルダーのトップの仕事は、1にも2にも、安定した受注力。

安定した受注を確保するには、地場の仲間だけではなく、大手プレハブメーカーに対しても差別化できる武器が必要。
最近の大手は、ITと出先の東南アジア諸国の人々を活用して、ともかくプランの変更や見積りがやたらに早い。 少しぐらいの価格差だったら、消費者はカッコよいパースをすぐに出してくれる大手に靡いてしまう。
昔は、大手プレハブメーカーでも、展示場に一人の技術屋さんしか置けなかった。 このため、図面や見積りの作業にどうしても時間がかかった。 それが、現在ではITを利用すると若い女子社員でも簡単にパースが出るし、東南アジアの安い技術者を使えば、見積り変更などは容易に。
つまり、地場ビルダーに一人か二人しか技術者がいない会社は、プラン力とか見積力で大手に負けてしまう。
これを解消するために、私が20数年前にとった手法は、営業マン制度を廃止して、最初の段階から設計士に営業をさせた。
当然、これには反対の意見が多かった。 とくに設計士はプライドの塊。 営業マンよりも自分達がはるかに上の存在だと考えている。
しかし、設計事務所には、原則として営業マンはいない。 所長自らが営業で飛び回っている。
「君らは全部が所長だ。 そのつもりで最初から営業に取組んで欲しい!」 と。
もちろん、それなりの対価を払った上でのシステムづくり。 このシステムに文句を言う設計士は皆無だった。 したがって20数年前から営業マンを廃止。
したがって、大手のプレハブは、決して怖いと感じたことはなかった。

ただし、設計士を営業マンとして活用するには、最初からモデルハウスが不可欠。
いくらなんでも、設計士に飛び込み営業を強要することは出来ない。 いや、仮に行ったとしたら、今度は消費者の方で引いてしまうだろう。 「設計士に飛び込み営業をやらせている会社なんて、信用できない」 と。
つまり地場ビルダーは、総合展示場内にモデルハウスを持つかどうかの選択を迫られている。
設計士に営業までやらせるには、余分なカネを投じても総合展示場への出展が義務。 展示場がなくても、施主が非常に協力的で、いつでも展示場として公開してくれるところがあれば、ワザワザ高いカネを払って展示場へ出る必要はない。 
しかし、この場合でも施主宅を展示場として使えるのは、せいぜい3年間だけ。 どんなに素晴しい邸宅であっても、子供が学校へ通うようになると、展示場として使うことが出来なくなる。
使っても、年に1〜2回がよいところ。
そして、多くの地場ビルダーに採用されているのが、自社物件だけの個別展示場。 これには社長の自宅や本社を兼ねている場合が圧倒的。 どうせ自宅や本社を建てるなら、ついでに展示場を兼ねさせるという構想。
これは、特殊な機器が付いている場合は比較的長持ちするが、しかし展示場としての寿命は長くて数年。 それなのに、10年以上使っていて、展示場としての機能が完全に終わってしまっている例の、何と多いことか!
ただし、マイスターハウスの前橋総合展示場のように、わざと10数年間も建替えず、「10数年経ってもこんな状態です」 と、見せつけるだけの内容を持っておれば、それはそれとして絵になる。 しかし、非常にまれな特例として考えるべき。

農業の場合は、味とか無農薬野菜ということが謳い文句になる。
筆者の場合は23年前から 「らでっしゅぼーや」 と付き合いがあり、当初から有機野菜に取組んできたという輝かしい経歴がある。 
また、コンニャク芋のJASをいち早く取り、有機シラタキとしてドイツなどへ輸出している。 世界の有機コンニャクの36%のシェアを持っているということが、いたずらな価格競争に走らなくてよいようになっている。
そして日本では有機野菜の比率が0.2%に過ぎないが、ドイツではすでに14%になっていることを熟知している。 このため、新規就農者の野菜は3年間に亘って優先的に販売するシステムを導入し、仲間を拡大している。 
これ等は、最初から成長戦略と差別化商品を持っていることにほかならない。

同じことが住宅の場合にも求められる。
ツーバイフォーの三井ホームを含めて、大手住宅メーカーは工事を下請けに丸投げしていることもあって、ともかく気密性能が弱い。 三井、三菱、東急というツーバイフォーの大手も、C値0.9cm/uというR-2000住宅の安易な数値さえクリアー出来なかった。 ましてパッシブハウスが称えている0.2〜0.3cm/uという気密性能は絶対にクリアー不能。
現在大手で気密性能を謳っているのは一条工務店の0.6〜0.7cm/uが最高。 したがって、直施工の地場ビルダーは0.5cm/u以上であれば、堂々と全ての大手に勝てる。 
単に高気密で勝ってもしょうがない。 
高気密住宅の持つ結露の無さや、PM2.5をはじめとした汚れた外気の侵入、騒音の侵入を防ぐとともに、省エネ性と健康性に素晴らしいことを 消費者に訴え続けねばならない。

そして、次は高断熱。
私の経験では、高断熱のポイントになるのは外壁や天井面の断熱層の厚さもさることながら、PVCのトリプルサッシではないかと考えている。
あの高価なR-2000住宅。 売るのに四苦八苦している時、PVCのペアーサッシが安くなり、おかげで全商品をR-2000住宅として売ることが可能になった。
R-2000住宅のQ値は北海道で1.2W、内地では1.4Wであった。
それが、北海道では20年前からQ-1.0 (キュー・ワン) 住宅が叫ばれ、札幌の次世代住宅の最高の水準は、Q値0.5Wになってきている。 しかし、内地では0.5Wは不要。 私は0.8〜0.9Wで十分だと考えている。 それを達成するには、0.8〜0.9Wの安いトリプルサッシが不可欠であり、外壁は206で熱伝導率が0.024W以上であれば十分だと考えている。
つまり、R-2000住宅やキュー・ワン住宅は古くて、これからは0.8〜0.9Wが 間違いなく内地における主流になってくるだろう。
その時に、価格的にものを言うのがPVCのトリプルサッシと、206の充填断熱パネルだと確信している。 いかに高性能であっても、庶民の手が届く価格でないと、R-2000住宅がそうであったように爆発的な普及はあり得ない。 坪単価が60万円台にならないかぎりQ値0.8〜0.9Wの高性能住宅は、普及しないと断言してよい。

さて、ここまでは澤浦氏の農業と、私が称える地場ビルダーの生き残りをかけた基本的な条件は完全に一致する。 
ただし、澤浦氏は農業は基本形として小さな家族経営がポイントだと説く。 しかし、消費者の年間を通じての供給希望を満たすには、販売システムとか資材供給システムでの協業化は避けられないと叫んでいる。
私も、サッシや外壁パネルに関しては、一定の量をまとめることが必要で、地場ビルダーの協業化は不可欠と考えている。 基本的な点で協業化しないかぎり、消費者が求める価格には到達出来ず、普及が見込めないから‥‥。
しかし、だからといって必要とする換気や除加湿装置を、澤浦氏の言うように 「必要な真空冷却器を自分らで開発したら、メーカー品の1/4の価格で入手出来た」 という話を、まともに受けることは出来ない。
これは、別途に考えるべきものなのだろう。


posted by uno2013 at 14:45| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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