2015年05月20日

中国はアメリカを追い越せず日本も健闘。BRICs時代は終焉!(上)



山口正洋、山ア元、吉崎達彦 鼎談 「ヤバい日本経済」(東洋経済 1500円+税)

日本経済.JPG

この 「ヤバい」 を、この本を読むまでは 「危ない」 と読んでいた。 つまり 「危ない日本経済」 のことを書いた本だと考えていた。
ところが、「ヤバい」 というのは、最近の若者言葉でいうところの、「すごい」 と言う意味だと知らされた。 つまりこの著書は 日本経済の危弱さを嘆いている本ではなく、「日本経済のすごさ」 を再確認しているもの。 
しかも、テーマごとに、3氏がそれぞれに分けて執筆するのではなく、最初から最後まで3氏の鼎談形式。 つまり、いろんな見方や意見が延べられていて、納得させられた。
今まで読んだ金融・経済の本は、最初から最後まで特定の個人の考えや意見で終始しているものばかり。 私のような素人には、著者の考えを支持するか、反対するかの二者択一の選択を強いられてきた。
住宅とか省エネ関係だと、それなりに判断出来る。 
しかし、金融・経済となると、自信を持って 「これだ!」 と選択出来る人は、情報取得の面から限られているのではなかろうか。

それと、山口、山ア、吉崎の3氏とも、初めて接する人ばかり。 
著名人だと、部外者の私でも単行本か雑誌を読み、ある程度の予備知識がある。 しかし、不勉強な私には、残念ながら今まで接したことのない人ばかり。 この本を読むまでは、どんな経歴の持主かが分かっていなかった。
しかし、さすが東洋経済の編集部。
鼎談させるために呼んできた3氏とも総合商社、銀行、大学教授、経済界、コンサルタントなどを転職し続けてきたモサばかり。 広い視野を持つ第一線のプロのエコノミストで、情報の新鮮が高い。 自分の固定概念を浸食されるのを怖れているそこいらの 「定食の賄い」 とはちょっと味が違う。 それだけに、もう少し早く紹介すべきだった‥‥。
だが、それが分かったので、私は安心してこの本に没頭してゆけた。
この著は大きく、【日本経済編】、【アメリカ経済編】、【中国経済編】、【新興国経済編】、【マネー編】 に分けて議論している。 それぞれの編の中で、とくに面白く感じたほんの一部分を抽出して紹介したい。

【日本経済編】
吉崎 3本目の矢が飛ぶ気配のことばかり問題にされているが、1年経って見るとデフレ脱却の
 可能性が濃くなってきた。 私はアベノミックスに極めて懐疑的な見方をしていた‥‥。
山ア アベノミクスの本質は資産価格誘導策。 円安にして株価と地価を上げる。 資産価格が上
 がればフロー経済が活発になって物価も上がるという狙い。 一応、前向に評価して良いのか
 もしれない。
山口 北海道のニセコは、外人が多数やってきて家を買ったので土地価格が上った。たしかに、
 東京・丸の内周辺の地価は上っているけど、通勤1時間半以上の地域では上っていない。 地
 価が上がらないと庶民は景気回復感がない。 日本の国債を5億円以上買った人には、日本国籍
 をあげると言えば、中国からどっと金持ちが集まってきて、財政赤字も少子化問題も解決され
 るかもしれない。
吉崎 5億円も払える中国人は犯罪を起こさないし、洗練されていると思う。 しかし安倍政権
 では、中国人に不動産購入権と永住権は与えられないでしょう。 しかしいくら外国人を呼込
 んでも地方の地価まで上げられない。 中央公論の14年6月に掲載された元総務相・増田寛也氏
 の「消滅する市町村は523」 にもなるという記事が話題になっている。 この著書の秀逸な点
 は、若い女性に見離されたら自治体はやってゆけないことを抉り出したこと‥‥。
山口  私は岩手県に住んでいおり、たしかに若い女性の少ない自治体の衰退は驚くほど速い。
 教育、医療、上下水道という基礎的インフラが、あと5年も もたないという自治体が多く散見
 される。 しかし当該自治体や住民の間では、それほど切迫感が見られない。
吉崎 現実の日本で起こっていることは、雇用者数が570万人と今が史上最高水準。 その内容を
 見ると非正規労働者が増えて1/3になっていることと、増加分は4:1で女性が圧倒的に多い。
 その理由が分からなくて困るっていたら、自動車メーカーの調査部の友人が教えてくれた。
 男はどの世代も免許書の保有率はほぼ同一。 ところが高齢の女性は免許書もなく、働いていな
 い。 ところが若い世代は働いているし、免許証も持っている。 これが雇用水準が最高という
 数字に現れているのではないか、というのだ。
山ア 3.11以降、貿易収支は赤字になり 大問題だと騒いでいるが、達観して言えは、国際収支
 は黒字の場合もあれば赤字の場合もあると考えて、悲感する必要はない。
吉崎 日本はモノづくりの国だから、「貿易立国を放棄してはならない」 と言う意見がある。
 この点を自動車メーカーの友人に聞いたら、「金融業と一緒にしてもらっては困る。 3万点の
 部品を組立てるサプライチェーンを作るのに3年間はかかる。 円安で国内リターン傾向は出て
 はきているが、3年先にどうなっているか? 
 「国内でのモノづくりしんどい」 と言うのが本音らしい。

【アメリカ経済編】
山口 オバマ大統領はは経済政策で失敗していると言われるけれども、基本的に悪いことは1つ
 もないと言うのが私の見解。 株価がリーマンショック前の高値を抜けたのは、2011年の東日
 本大震災の前だった。 問題の失業率も回復してきており、一番厄介だったのは住宅関連モー
 ゲージバック証券。 塩漬けになっていた民間の住宅ローンが、量的緩和の資産買入れで 片付
 いてきている。
 それとシェルガス開発。ゴールドラッシュを生で見たことはないが、アメリカの電気料金が劇
 的に下がり始めている。
 どうしょうもなかった金融セクターが立ち直り始めたので、アメリカ経済は万全。
吉崎 たしかにアメリカで変わったと実感出来るのは、住宅着工の推移。 思い切り踏み込んで
 いたアクセルを 少し戻しただけ。それを勘違いして、「新興国へ流れているドルがアメリカ
 のマーケットへ戻される」 と心配している向きがあるが、早合点してはいけない。
山ア ただ、先進国では景気が悪くなるとこれまでは財政政策でやってきたのが、最近では資産
 マーケットに働きかける金融政策が中心になってきた。 このため、不景気の後にブームが来
 ると過剰なクレジットが発生し、バブルが起こる懸念が高い。 この繰り返しが避けられなく
 なってきている。
山口 確かにウォールストリートを見ると、「こいつら懲りない野郎だ」 と思ってしまう。
 リーマンショック前にはレバレッジが10倍どころか100倍という商品がゴロゴロしていた。 そ
 して大暴落した直後には、「信用力は1しかないのだから10倍とか20倍のレバレッジは止めよ
 う」ということになった。 だが、クレジットの膨帳によるバブルはウォールストリートの体
 質化してしまっていて、「懲りない野郎」 になっている。 
 それと、アメリカ人は個人的には同じ体質。ご存じのとおり、アメリカの住宅ローンは返済出
 来ない時は、現物の住宅を差しだせば借金がチャラになるノンリコース。
 それと住宅の評価額が1億円だったものが1億2000万円になると、追加で2000万円余分に借りら
 れるというメチャクチャなシステム。 逆に1億円の評価額が途中で8000万円になると、8000万
 円しか借りられず 消費を詰めるかしか方法がなくなってしまう。
山ア 次期大統領候補として民主党はヒラリー候補が有力視されており、共和党は 「ティーパー
 ティ」 の存在が問題になっているが‥‥。
吉崎 ヒラリー候補は唯一頭を下げねばならないのが、キャロライン・ケネディ駐日大使。
 共和党では、「ティーパーティ」 が余りにも党を突きあげたので、決別騒ぎが起こった。沈静
 化してくるだろうが‥‥。
山ア となると、アメリカを動かしているのは一体誰なのかが問題になる。 日本は間違いなく
 官僚組織だが‥‥。
吉崎 アメリカでは、世論を動かしているモノとして知られているのがシンクタンク。
 このシンクタンクは、原則として独立していて非営利で政策志向的。 これに対して70%はシ
 ンクタンクを真似て大手業者からカネを受け取って世論工作をする「アドボカシ―」。 これ
 は企業の代弁者に過ぎない。 そうした多国籍企業群が最近力を付けてきて、世論やワシント
 ンを動かしている。
 アメリカでは、産業ごとに 「2強+その他」 というシステムを巧みに構築している。 価格
 を2番手にあわせて、3番目以下を駆逐する多国籍企業システムがのさばっている。
山口 それにしても、ウォールストリートの凋落ぶりは目を覆うばかり。 かつては、「法律は
 いつでも作れるし、変えられる」と豪語し、日本の金融庁なんか相手にしていなかったモルガ
 ンやゴールドマンが FRBの傘下に入ってしまった。ウォールストリートの時代は完全に終わっ
 たのかもしれない。
 それと、アメリカのIT業界では、目まぐるしいほど主役が入れ替わっていますね。クーグルや
 アップルだって、いつまでも栄えておれるという保証がない。
吉崎 シェルガスでもう1つ注目すべきは、アメリカの化学会社が、自分達が損をするのを嫌っ
 て、シェルガスの輸出に猛反対している事実。 供給がダブついての低価格競争。 一部では
 生産停止も伝えられており、商社が安く輸入してくれるとの期待は、難しい話かも知れない。


posted by uno2013 at 08:31| Comment(0) | 書評(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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