2015年05月15日

メガソーラーの太陽光発電で、日本の電力は本当に賄えるか!



川口マーン恵美著 「ドイツの脱原爆がよくわかる本」 (草思社 1400円+税)

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著者は日大のピアノ科卒で、ドイツの南西部に位置するシュトゥットガルト国立音大ピアノ科卒でもある。 本来はピアノで生計を立ててゆく計画だったのだと思う。 そしてシュトゥットガルト時代にドイツ人と結婚したが、ピアノでは食えず、ドイツ在住の通訳などとして駆り出された。 ドイツが省エネで世界の注目を浴びるにつれて、その方面の仕事が増え、次第に経済や政治に首を突っ込むようになったのだと推測する。 これはどこまでも推測。
経歴を調べたら1956年生まれというから今年は59歳に。 30年間もドイツに住んでいたのに、日本での出版物が10数点もあるのには驚かされた。 
私が著者を知ったのは、講談社α新書の 「住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝」 と、同じα新書から昨年売出された 「住んでみたヨーロッパ 9勝1敗で日本の勝」 という2匹目のドジョウを狙った作品。
題名としては話題性があって面白かったが、内容的にはとおり一遍で つまらなかった。 その著者か書いたものだから、なんの期待もなく読物として読み始めた。 
ところが、この著書のためにドイツの学者に対する取材を行い、資料も丁寧に集めている。 また、日本の資料も精力的に集め、3ヶ所の原発などの取材も行っている。 
この種の本では、ほとんどがドイツ政府の発表を真に受けて、まともな取材をしてない著書に多く出逢ってきた。 いわゆるドイツに対する一方的な礼賛論。 
それとは違って、足で稼いでいる点が嬉しい。

さて、終戦前後を別にすれば、日本人はほとんど停電の経験を持っていない。
電気というのは、雷でやられない限り、いつでも簡単に得られるものだと思っている。 ところが、福島原発の後でほんの短期間だが、「輪番制の計画停電」 が行われた。 事前に停電になることが分かっていても、計画停電のわずらわしさに泣かされた人が多かった。
一般的な食品とか衣類などの需要は、そんなに極端に変わるものではない。
ところが電力需要は、刻々と変わる。
朝の7時半頃より通勤電車の需要が増え、9時に工場や事務所がが活動を始めると、一気に需要が高まる。 そして、真夏の甲子園球場で高校球児が大熱戦を展開している時に、需要がピークに達すると言われている。 そして、深夜は需要が大きく落ちる。 また、日曜日にワールドカップの中継があれば、その時間帯だけコブのように需要が増える。 
その日の天気や番組表を見ながら、電力会社は刻々と変わる需要を予測して、発電計画を立て、需要の激しい増減に対処している。 つまり、どんな場合であっても、停電は避けねばならない。 供給が少ないのは問題外。 多すぎる場合にも大規模停電が発生すると言われている。 これは、絶対に避けねばならない。
著書は、需要の変化に応じた電源の組合わせ (ベストミックス) について触れているが、図が示されていないので分かりにくい。 このため、まだ原発が稼働していた数年前の資料を掲載して、どのように電力会社は需要に対応しているかを見ることにした。
http://www.fepc.or.jp/enterprise/jigyou/juyou/sw_index_01/index.html

この図を見れば分かるように、夜中とピーク時には2倍以上も需要量が異なる。
このため電力会社は、電源ごとに、@ピーク供給力用 Aミドル供給力用 Bベース供給力用に分けている。
問題はベース供給力。 原発が稼働している時は、ベース供給力になるのは圧倒的に原発。 それにプラスされたのが普通の水力発電。 時折ミドル供給力に過ぎない石炭火力が ベース供給力として使われてもいた。
そして、ミドル供給力の中心になるのが石油を除くLNG、LPGなどのガスと石炭などの火力。
ピーク時用の供給力の中心になっていたのが、@揚水式水力。 Aこのほかに調整池式・貯水池式水力と、B石油火力が使われている。
この中で、揚水式水力というのは、深夜にだぶつく原発発電を使うのが常識。 深夜の原発の利用量が増えれば、その分だけ原発の比率を大きく出来るので、深夜の原発発電を使うエコキュートシステムの普及が 5年前までは強く叫ばれていた。
ところが、ベース供給力の中心をなしていた原発がほとんど使えなくなった。
そして、現在は火力発電が中心になったため、火力の輸入が急増して電力会社の利益が削られている。 また原発が使えないので、今までのように安い深夜電力が使えない。 このためピーク供給力に、世界一高価な火力発電を用いて 揚水発電ための揚水を行っている。 淋しい。
エコキュートに変えて太陽熱を給湯に利用するという考えも、余りにも不足している。

上記の図とは別に、東日本大震災の直後に、資源エネルギー庁がまとめた 「東電管内の夏期の最大使用日の電力需要構造の推計」 が下記。
http://www.meti.go.jp/setsuden/20110513taisaku/16.pdf
これを見ると、家庭用、大口業務用、小口業務用、大口産業用、小口産業用の時間ごとの必要量が良く分かる。 ピーク時は14時で、6000万kWとなっている。
こうした視点から、電力を考える必要がある。 いたずらに再生可能な電力に切替えるだけでは絶対にやり繰り出来ず、日本が最貧国になってゆくだけだと筆者は力説。
原発には1基当たりどれくらいの発電能力があるのか?
標準的な原発の能力は120万kWと言われている。 しかし、年間稼働率は70%と言う。
120万×365×24×0.7=74億kW/時となる。 標準家庭の年間電力消費量は4700kWと言われているので、約150万世帯分となる。
これに対して、風力発電の標準的規模は2000kW。 しかし、風は吹いたり吹かなかったりで、年間稼働率は20%程度。 ということは、原発1基に匹敵するには2000本以上の風車が必要になってくる。
太陽光発電の場合は、さらに分が悪い。 
普通の家庭の屋根に搭載出来るのは5kW程度。
夜はもちろん雨や曇った日は発電量が激減するので、設備利用率は12%程度といわれている。
仮に家庭用の1000倍のメガソーラーがあったとする。 原発1基に匹敵するに5000kWのメガソーラーを設置しようとするなら、なんと1400ヶ所も必要で、その面積は山手線の内側の面積に相当するという。

そして、筆者が力説しているのは、太陽光は夜や雨の日は全然発電してくれない。 このため、太陽光発電や風力発電と同じ規模のピーク供給力、ミドル供給力、ベース供給力を電力会社が設備として持たない限り、常に停電の危機に見舞われるという。
つまり、設備の2重投資となり、再エネ比率か上がるほど電力の質は低下し、しかも消費者の電力料金は固定価格買上制度のために高くなって行く。
ドイツの家庭用の電気代は、2013年ですでに40円/kW を突破している。
しかも、肝心の北の風力発電の現場から需要地の南部へ電力を送る送電線の建設は反対運動で進まず、原発の放射性廃棄物の最終貯蔵地も 猛反対のために未定のままだという。
しかし、ドイツは褐炭や石炭があるので、CO2は増大するが2022年までに原発をゼロにすることは可能。
しかし、褐炭や石炭がない日本では、ドイツを真似て再生可能エネルギーへ転換するのは、絶対に不可能だと筆者は強調する。 それに、ドイツは一般家庭での固定買上制度は残しているが、売電価格は買電価格より低くなり、2014年の改正でメガソーラは自分で売先を見つけなければならなくなった。
それなのに、日本では未だにメガソーラの固定価格制度を維持しているのは、全くナンセンスだという。

私は、メガソーラの固定価格買取制度は、ドイツの実例を見て投機資本を喜ばすだけのものだと分かり、最初から反対してきた。 太陽光発電は、電気を電力会社に売るのではなく、蓄電施設を持って自家発電用として活用すべきもの。 その蓄電施設のために税金使うのなら分かる。 しかし、現在の高い価格で20年間に亘って買上げるという制度は、いち早く廃止すべき。
そういった意味では筆者に同調するが、だからと言って私は原発賛成論者ではない。
原発の放射性物質は10万年間も消えないという。 ドイツのような地震のない国ですら最終貯蔵地が決まっていない。 10万年というと、新しい人類がアフリカに誕生した人類の歴史に匹敵するほど長い昔話。
そんな長期間、地震国日本に放射性物質を安全に貯蔵しておける場所がない! 
小泉元総理が、フィンランドのオンカロの最終核廃棄物処理施設を見て、原発反対に踏み切ったのには 納得出来る。 しかし、「今すぐに再生可能エネルギーに転化出来る」 との発言は、あまりにも甘すぎる。
ベース電力となり得るのは、日本では水力発電と地熱発電しか考えられない。 後は宇宙空間で採取する24時間の太陽光発電と、10万年間ではなく1/1000の100年間で放射性がなくなると言われている水素を使った核融合発電に期待するしかない。
この核融合はまだまだ開発段階に過ぎず、実用化出来るまでにはあと20〜30年間はかかりそう。
その間だけ、既存の原発の使用を認め、ベース電力の開発を急ぐとともに、ロシアに話をつけて核廃棄物の共同最終処理場を 日本の責任で建設するしかない。
そういった面では まだまだ中途半端な提案だと思うが、新しい視線でまとめているのには感心させられた。


posted by uno2013 at 05:28| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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