2015年05月05日

木軸金物工法はどのメーカーのものが良いか。 耐震性能は?



木軸の金物工法を選ぶなら、どのメーカーがお薦めか?  また耐震性能はどの程度か?
という 「剛直球の質問メール」 を、消費者の方から頂きました。
正直言いまして、私は何社かの金物工法の現場は見ていますが、同工法を本格的に採用したいと考えたことがないので、金物工場とかプレカット工場は詳しく見ておりません。 従いまして、この質問に対する回答者として適任者ではありません。
本来ですと、この質問は住宅ジャーナル誌などの専門家に譲るべきだと思います。 しかし、運悪くゴールデンアワーに突入したので、簡単に振ることは出来ません。
そこで、とりあえず常日頃私が考えていることを書き、詳細については後日 専門家の意見を聞いた上で、改めてペンを執りたいと考えます。

少し古くなりますが、日刊木材新聞が2013年の2月に 「金物工法特集」 を組んでいます。 
その時に取上げられていたメーカーは14社。 木軸の金物メーカー数はその程度は存在し、各社それぞれに特許を申請して独自性を主張しています。
また、金物工法推進協議会 (前田会長) には、金物メーカー7社 (タツミ、グランドワークス、木建技研、カネシン、タナカ、カナイ、ウッドワイステクノロジー) のほか、プレカット工場など46社が参加しています。
このほかに、積水ハウスをはじめとした住宅メーカーや、ナイスなどの大手問屋が、各メーカーとタイアップして、それぞれに横文字の工法を発表しています。 したがいまして、ネットを調べてもいろんな工法が登場してくるので、どれか1社だけに絞るのは なかなか難しいというのが実際のところ。

何回も書きますが、金物工法が開発されたのは、阪神淡路大震災で在来木軸の通し柱が2階の梁の欠込み部分で簡単に折れ、1階がぺシャンと潰れ、6000人以上もの即死者を出したことを反省して、通し柱の折れない工法の開発に努めて金物工法に辿り着いたもの。
ともかく、当時の神戸の在来木軸というのはひどいものでした。
「大阪は大地震がない」 ということが流布されていたので、無筋の基礎工事も多かった。
そして、通し柱は良くて3.5寸角 (10.5センチ) で、中には3寸角 (9センチ) というものも多く見られた。 この細い柱にホゾ穴の欠込みをするものだから、運搬途中や 建方途中に折れるということも多々あったと聞いている。
つまり、関西系の木軸は潰れて当然のものだった。
大手木軸メーカーが展示場へ出展していたモデルが潰れ、長期間に亘ってブルーシートがかけられていたことは、記憶に新しい。
そして、在来木軸だけでなくプレハブメーカーのプレハブ基礎も横転していたし、鉄骨のパネルもかなりやられていた。 それどころか、耐力壁の入ってない間口2.5間のツーバイフォー工法も実質的に倒壊していた。 
しかし、なんだかだと言っても、ツーバイフォー工法は在来木軸に比べて被害がダントツに少なく、各工法の中で一番輝いていた。

金物工法が普及したのは、通し柱が折れないように断面欠損と結合強度をアップ出来たことに最大の理由がある。
しかしそのほかでは、3×6尺で厚さ24〜28ミリの構造用合板が日本で開発されたことも大きかったと思う。 それまで日本で流通していた床合板は、ツーバイフォー用に開発された206の根太で、ピッチ455ミリ用の12〜15ミリ厚のものしかなかった。 
在来木軸の場合は、土台・大引き、2階床梁の上に細い根太を455ピッチで入れていた。
それが、24〜28ミリ厚の構造用合板が開発されたので、455ミリピッチに根太を入れる必要がなくなってきた。 いわゆる 「根太レス工法」 の開発。 
在来木軸工法では 1、2階とも根太レスが当り前になってきた。 つまり、1階に関しては3尺間隔に土台・大引きを入れ、2階は3尺間隔に410程度の集成梁を入れるのが常識に‥‥。
そして、これは何も木軸工法だけに限ったことではなく、ハーティホームではツーバイフォー工法の1階の床組にいち早く根太レス工法を採用。 それまで標準的に採用していた206の根太を省き、13センチ程度1階床を低くして、北側斜線をより有利にクリアーすることが可能になった。 やがて、この方法はハーティホームだけでなく、ほとんどの2×4業者が採用するところとなった。
しかし、ツーバイフォーの場合は、根太レス工法が採用されたのは1階床だけ。 2階床に関しては455ミリピッチに210ないしは212の無垢材、あるいはTJI、 I ジョイストが採用され、床合板は12〜15のT&G (本サネ加工品) が標準品に。

在来木軸が、3.5寸 (10.5センチ) ないしは4寸 (12センチ) の柱に併せて、幅3.5〜4寸で、セイが7〜10寸 (21〜30センチ) の梁を採用したのは、原則として3尺毎に柱が入るため。
本来だと、ツーバイフォーのように455ピッチで210〜212の根太を入れたいところ。 
ところが、根太を受ける間柱をツーバイフォーのように38ミリと太くすると、3尺毎に角材を入れているのと重なるので、材積がツーバイフォーに比べて30%以上も余分にかかり、価格的に高いものになってしまう。
このため、間柱にシワ寄せがきて、3センチ以内と細くせざるを得ないのが現実。
間柱を細くすると、合板や石膏ボード受材として評価が低くなり、耐震性が落ちる。 
それだけではない。 ツーバイフォーの場合は、出隅から455ミリ内側に入ったスタッドから合板や石膏ボードを張り出す。 そして開口部周りは合板や石膏ボードをくり抜くようにしている。
このため、中越地震で証明されたように、震度6強の地域でも開口部の内壁に亀裂が入るという被害は見られなかった。
これに対して、木軸の合板と石膏ボード張りのスーパー・ウォールでは、震度5強の地域から開口部周辺に亀裂が見られた。

2004年12月4週の 「中越地震-8」 を読んで頂きたい。
十日町の北に位置し、あの旧川口町の烈震地・田麦山に近い下条町のYさん。 この町も震度6強を経験しており、大変に好奇心が強いYさんは、同町のあらゆる工法の被害を見て回った。
そして、結論的に次のように言っていた。
「下条町では、耐震性の強い住宅を順に挙げれば、1にツーバイフォー、2にスーパーウォール。 3、4がなくて5にダイライト」。
もちろんこの時点では、スジカイだけの在来木軸は完全に選外。
つまり、同じ構造用合板や石膏ボードを使っても、3尺毎の柱にサッシとボードを取付け、隙間を端材で埋める処理では、どうしても亀裂が入ってしまう。 このため、スーパーウォールはツーバイフォーよりも1ランク下になった。
この基本的な欠陥は、どの金物メーカーも 未だに解決策を用意していないように見える。

25年前に、根太レス工法が登場した初期の頃には、金物工法には多くの欠点が見られた。
たしかに、通し柱は折れなくなったが、通し柱・管柱と床との緊結には問題が多かった。
最初は厚い床合板をくり抜いて、柱を土台や大引きに結びつけていた。 当然のことながら、床剛性は損傷されていた。 また、柱と床との緊結もゆるく、これでは直下型地震には一発でやられてしまうという懸念が強かった。
しかし最新のものは、床と柱がマルチボルトやドリフトピンを打込むだけで簡単に、しかも確実に緊結されるようになってきている。 耐震強度は飛躍的に向上してきている。

だが、3尺毎に柱を建て、集成材の梁に拘っている以上は、如何に耐震性と現場作業が向上したにしても、必要以上に材積を喰い、価格高というジレンマから抜け出すことは難しいように感じられてならない。
それと、木軸に拘っていると、どんなにリキンでも4寸 (12センチ) の壁厚が限界。 断熱材を12センチ厚以上の厚さにするには、+外断熱にならざるを得ない。 そして、外断熱材の保持力と価格高が直下型地震では厳しく問われてくる。
つまり、単なる耐震性だけではなく、これからは断熱性の高い住宅が求められる。
一方、中越地震の烈震地・武道窪で唯一倒壊を脱がれたスーパーウォールの奥さんが、次のように訴えていた言葉を、未だに忘れることが出来ない。
「確かに近所では唯一 倒壊を免れたのだから、スーパーウォール工法には心の底から感謝しています。 けれども、肝心の気密性能が完全に無くなり、前の坂道を登る車の騒音に朝から夜中まで悩まされ続けています。 これからは、倒壊しないだけではダメ。 気密性を担保出来る住宅でないと、住人は本当に安心することは出来ません。 気密性担保のことついては、誰一人として言ってくれてませんが、気密性担保を最大の問題にして欲しいですね‥‥」

これを解消するには、北海道で普及を見せている外壁に606の通し柱を2〜3間毎に建て、206材のパネルを間に挿入する。 内壁には404の通し柱をこれまた2〜3間毎に入れ、2階床は国産材の I ジョンストで施工するという、軸組と2×4パネルの混淆工法を、是非考えて頂きたいもの。 もっとツーバイフォーメーカー側から、金物メーカー側へ 積極的なアプローチがあっても良いのではないでしょうか。
日本の金物は、こと木軸 (ポスト&ビーム) に関しては、はるかに北米を上回っている。
そして、ブツブツに千切れて一体化していないツーバイフォーの壁パネルと合板を千鳥ばりしていない床パネル。 これを救うものは606の通し柱による金物工法とのマッチングであり、床合板に関しては現場施工しかないのではないかと、私は考えている。
もっと木質構造体として、木軸業者もツーバイフォー業者も、将来を見て考えていただきたいものだと願うのだが‥‥。

そして、敢えて挙げるならば、次の諸点を吟味して金物メーカーを選んだ方が良いと思う。
(1) スジカイを採用しておらず、外壁、床、野地に構造用合板ないしはOSBなどの面材を用いて
  いた 「モノコック構造」 であること。
(2) 品確法の耐震等級3 を取っているかどうかを厳選する。 最低でも耐震等級2 をとってい
  るメーカーを対象にしたい。
(3) 開口部や出隅部に、構造用合板や石膏ボードの端材を使っている業者のものは、絶対に選択
  しない。
(4) 石膏ボード張りは、公庫の標準仕様書に基ずき、まず天井面から先に張り出し、壁は後で天
  井に押し込むように張っている業者を選ぶ。
(5) すべての柱と床が、ドリフトピンやマルチボルトで、完全に一体化しているシステムかどう
  かを確かめる。
(6) コストを徹底的に追及し、高すぎる場合は別の業者なり、工法を考える。


posted by uno2013 at 09:31| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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