2015年04月10日

4年前に、こんな面白い小説が出版されていたのですね!



真山 仁著「コプラティオ」(文芸春秋社 1714円+税) 

 コラブティオ.JPG

コプラティオとは、ラテン語で 「汚職」 「政治的腐敗」 という意味。 
舌を噛みそうな題名をつけるよりも、日本語で 「汚職」 とか、「政治的腐敗」 とつけた方が意図が分かりやすく、かなり売れたはず。 
そういった意味では、文春の編集者は作家と口論してでも売れる題名を選ぶべき。 作家のラテン語への拘りを許したのは、編集者としてのポリシーの無さを物語っている。
そんなわけで、ネットで 「コプラティオ」 で探してもヒットする数はたったの10数点のみ。
著名作家の小説で、これほど少ないヒット数も珍しい。 その中に文春の文庫版の広告があり、この初版本の半値の価格で入手できることが分かった。 もし関心のある方は、そちらを選ばれた方が良い。
真山氏の著作は、私の愛読書の1つで、ほとんど読んでいると思っていた。
ところが、偶然にも図書館でこの本を見つけた。 
つまり、編集者が弱腰だったので、「コプラティオ」 と牽いても、ネット上で10数点しか反応がなかった小説。 このため話題にもならず、4年前にこの本が出版されていたことすら私は知らなかった。

図書館へ行って、面白そうな新刊本がないと、どうしても小説とか伝記、旅行などの本を漁ることになる。
というのは、経済とか社会、さらには政治関係の本は、寿命が極端に短い。 つまり、1年以上経過した本は読むに値しない。 1年以上経っても価値のある希少品は、ごく例外中の例外的な存在。
しかし、伝記や旅行本は数が限られていて、これはという本は読み尽くしている。 そこで、
蔵書が多い小説のコーナーへ行かざるを得ない。
私は、いわゆる 「私小説」 が大嫌い。
女流作家に限らず、名のある男性作家も 「私」 のことしか書けない作者が多い。 といっても、椎名誠とか阿川佐和子、東海林さだおなどの漫談調の作品はほとんど読んでいるので、一貫性が乏しいのだが‥‥。
ともかく、本は面白くなくてはならない。 
私が面白いと感じるのは、企業小説であり、社会問題にまともに体当たりしている小説。 そして、真面目に体当たりしておれば、対象が子供であれ、スポーツであれ、老人であっても良い。
爽やかな読後感を残してくれるものなら、何でもよい。 そのために、片っぱしからいろんな作家の面白そうな題名を選んで借りてくるのだが、そのほとんどが頂けない。

私は、どんなにつまらない本でも、我慢して最初の1/3は読むことにしている。
1/3読んで、見込みがないと思った本でも、最後の1/6は読むことにしている。 
どのような結末になっているかを知りたいのと、どのような終わり方をしているかを知りたいため。 つまり、どんなつまらない本でも、半分は読んでいる勘定。
ところが、最初の1/3が面白くない本は、最後の1/6もつまらない。 これはという終わり方を期待することがムリ。
それが分かっていても、義務として半分は読むことにしている。
これが、私流の読書術。
前書きが長くなりすぎた。 この著書は、最初から最後まで、ハラハラしながら読み終えた。
実に内容が充実しており、飽きさせなかった。 久々に面白い小説に巡り会えたと感謝感激。

この小説の対象になっている時期は、東日本大震災が起こった直後。
そして舞台は、首相官邸と日本を代表する暁光新聞社。
主な主人公は3人。
まず、東日本大震災で国民が意慾と自信を喪失している時に、その人柄と 「政治とは約束。 努力すれば希望がかなう社会を作り上げるのが私の約束」 との名演説で、国民に希望を持たせ、高い支持率を得ている宮藤隼人首相。 
この宮藤首相は、生まれつき左足が不自由。 それをずっと恥じてきたが、アメリカで車イスのバスケット選手が、健常者と勝負しても負けないのを見て、「この左足こそ神様が私にくれた最高のプレゼント」 と考えられるようになった。
そして、誠実な生き方と説得力で首相の座を得止めた。
それと、高校の時から宮藤議員に認められ、奨学金を得て東大で政治学に明け暮れ、大学院を卒業するとともに宮藤議員の政策秘書となった白石望。 宮藤が内閣総理大臣になった時、内閣官房専門調査官という総理大臣の公的スタッフになっている。
もう1人は白石君の中学時代の友人の神林裕太。 慶応大経済学部をトップクラスで卒業し、コロンビア大でジャーナリズム学を学び、暁光新聞社に入社して10年。 初任地の群馬では特ダネを連発して順風満帆だったが、念願の経済部に配属されてから3年間は 特ダネに恵まれず、腐り気味。

白石は、東大時代に原発に関するプロジェクトを提案していた。 
アメリカは1979年にスリーマイル島で炉心溶解事故を起こし、以来30年に亘って原発の新設を抑制してきた。 このため、世界の原発2大メーカーと言われたAE (アメリカン・エレクトロ二クス) とイギリスのWC (ウィルバー・コム) は事業の縮小を余儀なくされた。
そして、その間隙を狙って日本の大亜重工、武蔵、サクラ電機などの総合電機メーカーが、AE、WCの製造を請負って伸びてきた。 そして、イギリスのWCが経営難に陥った時、サクラ電機が大亜重工との争奪戦に勝ってWCを傘下に収めた。
原発には、大別すると2つの仕様がある。 1つは核分裂したエネルギーで水を沸騰させてタービンを回す沸騰水型原子炉 (BWR)。
もう1つは、原子炉内で発生する高温高圧水を蒸気発生器に送り、タービンを回す加圧水型原子炉 (PWR)。
ところが、サクラ電機は上記のBWRのメーカーで、PWRはWCのオリジナル。 つまり、サクラ電機は争奪戦には勝ったが、宝の持ち腐れ。 大亜重工こそがWCのPWRの最大メーカー。 だとしたら国がWCを買取り、PWR方式で地球温暖化対策に寄与して産業復興を図って行くべきだ と言うのが白石プロジェクト案の内容。

この提案書に対して、宮藤は 「原爆を落とされた国が、核の力で産業を復興させると言う考えには賛同できない」 として、当初はこの提案を没にしていた。 
しかし、福島原発事故で国民の意気が悄然としている今こそ、白石プロジェクトを採用して、国民に活を与えるべきだと決意した。
このため、事業で大赤字を出しているサクラ電機を国家産業支援法の第一号に指定し、国有化してWC社の技術を最大限活用すべきだと方針を変えた。
その国家の決定を、たまたま外資系金融機関の若手が集まるパーティに出席していた暁光新聞の神林記者が、サクラ電機を支援しょうとしているファンドのトップから、「サクラ電機は国が買取る。したがって引下がるように言われた」 とのホット情報をキャッチした。 そこで、コロンビア大時代の仲間で、日銀に勤務している参事役に電話したところ、なんとか裏が取れ、「サクラ電機は国有化へ」 という特ダネが暁光新聞の1面を飾った。
そこから、この物語は始まる。

しかし、2011年春に書かれた著書だから、出版にあたっては全面的に書き直している。
だが、小泉元首相がフィンランドのオルキルオト島の原発の最終貯蔵庫 「オンカロ」 を訪れたのは2013年の8月。 10万年も貯蔵しない限り原発は最終処分が出来ない。 その事実を確認して小泉元首相が 「原発反対」 を唱え出したのは2013年の秋から。
私は2011年の時点で、地震国日本には核の最終処理場にふさわしい場所がなく、「現在の原発の稼働が終わった時点で原発に見切りをつけ、地熱発電に切替えるべきだ」 と考えていた。
当然のことながら、著者の原発に対する考えの甘さが気になる。 
しかし、それ以外では手に汗を握らす力作で、4年前の小説だが、敢えて取上げるだけの価値があると考えた。


posted by uno2013 at 09:39| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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