2015年03月15日

2x4耐火10周年記念セミナー。 地場に木質ゼネコン企業を!



このセミナーは、都市大・小見教授の基調講演に始まり、実践的に取組んでいる5氏 (清野協会技術部長、建研・中島上席研究員、吉高綜合設計代表、三井ホーム大坪マネジャー、麓COFI日本副代表) からそれぞれの事例の紹介があり、最後にこの6氏によるパネルディスカッションが行われた。
写真は、左から報告順に並んだ6氏と司会の平野さん(右端)。

3.11 2x4セミナー.JPG


まず、小見康夫教授の基調講演。 ロガース氏が称える普及理論。 「13.5%の普及を見せると、普及が加速化する」 という一歩手前まで耐火木造は来ている、と言うのが教授の判断。
木造の寿命は25年ぐらいで、30年間は持たないと言う間違えた認識が、日本にある。 それは、取壊された直近5年間の寿命が、2012年統計で約27年間経過したものだったという減失住宅の平均寿命のこと。 
取壊されなかった住宅まで勘定に入れると、55年近い寿命を木造住宅は持っている。
しかし、木造に限らず住宅の長命化は断熱・気密性能が悪く、地震や火災に対する抵抗力が非常に弱いので、人口の高齢化・単独世帯の増加により避難困難者の増大が見込まれる。 このままでは、空き家を中心にサッシなどの不適格住宅が増大してゆく。
不適格木造を耐火木造に建替える技術開発と、それを支援する政策が何よりも求められる。


このあと、清野明協会技術部会長より 「耐火建築物の10年間の歩み」 と題して次のような報告があった。
協会としては2001年より耐火建築の開発に取組み、2003年にCOFIと共同で下記の耐火構造認定をとってきている。
●外部耐力壁 16仕様、●内部耐力壁 4仕様、●床 25仕様、●屋根 2仕様、●階段室 2仕様
なお、2014年には陸屋根と外部床の認定を追加取得している。
そして、下表のように、専用住宅や共同住宅の需要は横ばいだが、2008年頃から老人福祉施設の伸びが急増して、2013年は半分近い面積を占めるまでになってきている。

3.11-2.JPG


建研の中島史郎氏のグループは、ツーバイフォー工法で6階建の3つのプランを作り、2時間耐火仕様の問題点を抽出して注目されている。
まず、当然のことながら6階建の多層階化すると、地震荷重と風荷重がのしかかってくる。
そして、下層階ほど鉛直力は大きくなる。
このため、市販されている2〜3階建用のホールダウン金物では、鉛直力に対して十分に抵抗出来なくなる。 このため、タイダウン金物 (通しボルト) などが必要になってくる。
そして、耐力壁に対する圧縮力や引張力を計算すると、最低 下図程度のタイダウン金物が必要になってくる。 この場合、北米で採用されており、故杉山英男先生が提唱されていた 「開口係数を用いた設計法」 が非常に有力となってくるが、日本ではまだ採用が認められていない。

3.11-6.JPG

それと、4階建の場合は1時間耐火仕様でよいため、厚さ21ミリ+15ミリの強化石膏ボード2枚でよいが、5階建以上は2時間耐火となるため、21ミリ厚の強化石膏ボードが3枚必要になる。
と同時に、耐力壁の仕様は厚12ミリの合板が2枚の両面張りが求められる。 そして、枠材は206ではなく、306材が求められる。 つまり、57×140ミリが最低仕様になる。
このため、試験体の耐力壁の仕様は、下記のようにゴッツイものに成らざるを得なかった。

3.11-5.JPG


次は、綜合設計の吉高久人代表の話。
2006年に大分市に完成させた特養老人ホーム 「明治清流苑」 をはじめ、全国でこの10年間に11棟の特養老人ホームを設計し、建設してきている。 その11棟の延べ面積が、3万5600u (1棟平均980坪) というから驚かされる。 
ツーバイフォー建築協会のセミナーは、専ら会員社の技術屋を対象にしたもの。
しかし、明治清流苑の完成と同時にカナダのCOFIの応援を得て、吉高氏が行ったセミナーは、福祉関係社のオーナーを対象にしたもの。
最初の頃は、ゼネコンの低い意識にオーナーがふりまわされていた。「ツーバイフォーで建てるとコストが20%も高くなる」 といい加減なことを言っていた。 ところが、8年前にツーバイフォーで建てた1時間耐火の老人ホームは、坪50万円以下であがった。 
オーナーにとっては、RC造に比べて減価償却が半分で済むというのが最大の魅力。
しかも、木造なので入居者の転倒による事故が少ない。
木造だから高齢者の精神が安定してくるし、ランニングコストも安い。 認知症患者が間違って床で寝ても冷たくはない。 つまり、今までのRC造はどこまでも 「施設」 であったが、それが ツーバイフォーで 「住まい」 に変わった。
そして、養護する側の人間にとってもやさしい。
ツーバイフォー工法の通り一遍のメリットではなく、オーナーにとっても、入居者にとっても、また介護する側にとっても多面的なメリットが理解され、圧倒的な支持を得て普及した。 これはツーバイフォー業者や、技術者には理解出来なかったメリット。 その新規需要を開発したのが、吉高綜合設計。

今、RC造業界は職人不足で坪単価120〜150万円と言っている。
その中で、最近値上がりはしたが吉高氏は外構工事を含めて90万円と言っている。 建築費だけだと坪80万円だという。 相対的に700〜1000万円コストが安いことが、老人ホームのツーバイフォーブームを支えている。
下の写真は、同社が昨年船橋市に完成させた 「みやぎ台南生苑」。 延べ床面積が5816uと、今までもっとも大きな特養ホーム。 これについては、昨年その工事中の現場を紹介したので、覚えておられる方も多かろう。 3階建が見事に完成している。

3.11-7.JPG


次は、三井ホームの大坪浩二氏の 「都市における耐火ツーバイフォー」。
銀座での1階RC造、2〜5階がツーバイフォーの店舗併用住宅の紹介が中心になされたが、私は下の写真の所沢市の延べ886の幼稚園か、2013年に完成したコープ札幌、あるいは現在工事中の延べ2384uの4階建老人ホームの話を聞きたかった。
しかし、都市の中心部では、借地が多くて権利関係が複雑。 このため、なかなか大規模再開発が難しいことや、道路が狭くて建設機械の搬入が困難なこと、また土地が狭いので足場を組むスペースがないなど、身につまされる話には納得させられた。

3.11-8.JPG


最後は、COFI技術担当の麓英彦氏の 「カナダにおける中層建築物」。
築100年以上の5〜9階建の中層建築物10点の紹介があったが、いずれも1メートル角という太い柱と梁による軸組工法。
それが、最近では206のプラットフォームに変わり、下の写真のように、スタッドだらけだとか、タイダウン金物が採用されてきている。 新しいプラットフォーム工法による現場が10数点紹介された。 それにしても、このスタッドの不揃い具合には呆れてしまう。
また、内壁ではアパートの界壁のように、204材を交互に入れる方法も考えられている。

3.11-11.JPG

3.11-12.JPG

そのほかに、最近注目されているのは、下の写真の 「ミッド・プライ」 という方式。
これは、今までのように204材に12ミリの構造用合板を打ち付けるのではなく、204材を横に2枚並べて、その間に12ミリの合板を挟むという方式。
壁厚は今までの89ミリではなく、88ミリと若干狭くなるが、内壁の耐力壁として使われている例が増えている。 中には206〜208の外壁の一部として使っている例も見られる。 
いずれにしても、中高層建築にツーバイフォーが使われるにしたがって、いままでにない断面形状が考案され、普遍化してきている。

3.11-13.JPG

こうした結果、下の写真のような20階建の高層木造ビルが、ブリテッシュ・コロンビア州で計画されているという。 いつまでも古い考えにとらわれていることなく、地場ビルダーはそれぞれの地場で木質構造のゼネコン化すべき時ではなかろうか。 その先駆者が、吉高綜合設計であり、人手不足がさけばれているが、型枠大工を1週間徹底的に鍛えたことにより、優れた戦力になってくれているという。
いま必要なのは、ビルダー業のトップの意識改革かもしれない。 (なお、パネルディスカッションの主要な内容を、各講師の話の中に取組んだつもり‥‥)

3.11-14.JPG



posted by uno2013 at 12:49| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。