2015年02月20日

クローバル化とは途上国へのアウトソーシングとロボットソーシング



アル・ゴア著「アル・ゴア  未来を語る」(KADOKAWA 1800円+税) 

ゴア写真.JPG

半年前に、この著書が出版されたことは知っていた。
しかし、何しろ550頁にも及ぶ力作。 目次を見てもなかなか難しそうで、おいそれとは手にするわけにはゆかなかった。
著者は8年前に講演会の大好評を基に 「不都合な真実」 を書き、映画化された。 その映画に使われた鮮やかなカラー写真が、従来の白黒写真では得られないド迫力で、地球温暖化の危機を訴えていた。 2940円と高価だったが私も書店へ走り、2007年2月5日付のブログ欄で紹介している。
ご存じのように、ゴア氏は下院8年、上院12年の議員生活を送り、1993年に副大統領に選出されて8年間も要職にあった。 その副大統領が講演内容を映画化し、2007年にはアカデミー・ドキメンタリー賞を受賞するとともに、同年にはノーベル平和賞を受賞している。
「不都合な真実」 が必要以上に注目を浴び、ベストセラーになったのは、副大統領という肩書がモノを言った側面もあったと思う。 つまり、単なる学者の発言ではなく、副大統領の発言だから公約を実現してくれるだろうとの期待値があったからだと思う。
しかし、ノーベル賞をとった筆者は、この著では 「私は政治家という病気から回復中の身。
再発の可能性がほとんどないと言えるとまでに回復してきたところ‥‥」 と書いている。その言葉が、この著を敬遠させていたのは事実。

これは、政治家でも副大統領でもないゴアという一研究者が、気象危機から回避する目的だけでなく、グローバル化という新しい経済的課題に真正面から取組んだ、本格的な著書。 
氏はこれからの世界を動かす6つの要因をあげている。 
その6つとは、アース・インク (地球株式会社) であり、グローバル・マインドであり、力のバランス、増殖、生と死の再創造、それと崖っぷち だという。
こういった観念的な言葉を並べられても、さっぱり意味が分からない。 大変に読みづらいが、6章に亘って展開されている氏の言わんとすることを1つずつ理解して行くしかない。
すると、今まで霞んでいた大問題が、明確な輪郭を持って迫ってくる。 
正直言ってこれほど面白い本だとは知らなかった。
そして、著者の言わんとすることを正しく伝えようとすると、1章だけでも最低3回に分けて解説しなければならない。 それをやるだけの価値はあると思う。 だが、私のブログ欄を、2〜3ヶ月もゴア氏の著作の紹介だけに費やすことは出来ない。
第1章のアース・インクのほんの一部の要点だけを かいつまんで紹介したい。 
関心のある向きは是非とも本著を入手され、他の5章も楽しんでいただきたい。

人類は、道具を使っての狩猟採取生活を20万年続けてきた。
小麦やコメの栽培という農業を開発しての定着生活が、それから8000年弱も続いた。
そして、アメリカでは産業革命以降の150年間に、90%も占めていた農業労働人口がたったの2%にまで激減した。 多くの人々が、農村から都市へと異動した。 
人々の意識と生活パターン変える大変革だったが、経済成長が発展して雇用を大きく増やし、平均所得を増大させ、貧困を減らして生活の質を歴史的に大改善した。
農業の機械化によって、農業の雇用が大幅に後退した。 生産性が大きく向上し、食糧価格は急落した。 だが、工場で生まれた新たな雇用が、農場で失われた雇用を大きく上回っただけではなく、収入も増えた。
中流階級が多く誕生してきて、社会の層が厚くなってきた。 
これを推進してきたのは、紛れもなく技術革新による生産性の向上だった。

しかし、私どもが学んできたこうした法則や考え方は‥‥人類がこれまで経験しなかっただけではなく、想像もしなかった速度と規模で進行しているアース・インク (地球株式会社) の時代には、通用しなくなってきている。
今までは、先進国のことだけを考えておれば良かった。 しかし、地球株式会社の時代には、ありとあらゆる国の労働者のことを考えざるを得ないと同時に、機械化という大問題も併せて考えねばならなくなってきている。
次の2つの大変化が、同時に起こっている。
1つは、先進工業国から、賃金の安い人口を多く抱える発展途上国や新興経済国への、仕事のアウトソーシング。
もう1つは、コンピューターやITによって向上が目覚ましい人工知識に代表される 仕事のロボットソーシング。

この2つのアウトソーシングが、グローバル経済化という名で、けたたましく進行している。
政治や政府の政策の世界では、「国家国民」 という概念が、今でも通用している。 しかし、経済面に関しては、もはや国家とか国民という概念は存在しない。 
雇用者は、簡単に自国の工場を閉鎖して低賃金国に工場を移すか、ロボット化で生産性を挙げるかの、2つの選択肢が出てきた。 しかし、職を失ったアメリカやヨーロッパ、日本の労働者から見れば、どちらも結果は同じで、失職には変わりがない。 
政策立案者は、生産性が向上しておれば、その結果を成功とみなす。 生産性の向上こそ、経済活動の終局の目的ととらえられてきた。 だが、アウトソーシングとロボットソーシング加速化で、先進国では雇用が停滞してきている。
賃金の低い国の労働者は、アウトソーシングで雇用の恩恵を受ける。 しかし、雇用者はアウトソーシングで得られたカネで、ロボットや自動化設備を導入できる。 そして、低賃金国でも雇用が次第に奪われてゆく。 中国の電子機器メーカーのファックスコン社は、今後の2年間で、100万台のロボットを新規に配備すると発表している。

そして、人工知能以上に大きな影響が与えられると考えられているのが3D印刷。
積層造形と呼ばれている製造プロセスは、三次元の極薄の層を重ねてゆくもの。 現在は比較的小さな製品に的を絞っているが、ロスアンゼルスのクラフティング社は、ドアと窓を別にして、わずか20時間で家が完成する巨大な3Dプリンターを完成させている。 
専門家は、「現在入手可能な3Dプリンターは1〜1000点までだが、数年以内に10万点をつくりだせるようになる」 と言っている。
そうした場合の、雇用の喪失のスピードを考えてもらいたい‥‥。

こうした結果、世界で貧富の差が拡大している。
アメリカでは、キャピタル・ゲイン所得の50%が、0.001%の超高額所得者の手に渡っている。
今やアメリカは、エジプトやチュニジアより貧富の格差が大きいのだ。
上位1%の年間所得は25年前までは12%だったが、今では倍増して25%になってきている。
富が偏在することで、消費が伸びない。 かつての中産階級の時代は消費の時代だった。 いずれにしても、世界の消費を引っ張ってきたのはアメリカやヨーロッパの消費者。 それが、アース・インクという地球株式会社によって、その基盤が失われようとしている。
また、アメリカの4半期ごとの成果で評価するという悪しき習慣も止めねばならない。
危機にある資本主義を、どうしたら持続可能なものにしてゆくか‥‥。

新たな雇用を生み出さねばならない。 アウトソーシングやロボットソーシングで職を失った所得は、公共財で埋め合わせねばならない。 しかし、アース・インクで利益を挙げたエリート層は、ことごとく、こうした動きを妨害してきた。
良いニュースは、インターネットはアウトソーシングとロボットソーシングを促進してきたが、同時にエリート層に支配されない新しい政治的影響力を構築してきていることだ。
次章以降では、この問題に焦点を当てたい。


posted by uno2013 at 12:49| Comment(0) | 書評(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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