2015年01月10日

空調換気に関する時系列的な系統図と光冷暖に対する疑問と期待 (上)



長らく住宅業界で生きてきたのに、私は 《光冷暖》 の存在を知らなかった。 
2ヶ月前に、消費者からその存在を教えられ、慌てて猛勉強を始めたというお粗末さ‥‥。 
ところが、実物に接したことがないので、《群盲が集って象を撫でる》 というコトワザ通りで、さっぱり要領が得られない。 
幸い、新しくリンク先に加わった横浜のビルダー・創建社は、新築住宅や病院建築、増改築や共同モデルハウスなどで、過去に数回 光冷暖を採用した経験があるという。 
早速、実態の教えを請うために、昨日あたふたと都筑区の現場へ参上した。
しかし、同社が今まで扱ってきた光冷暖を備えた建築物は、気密が低すぎるし、Q値 (熱損失係数) がいずれも悪すぎるので、「現時点では、紹介出来るほどのものはない」 と言われてしまった。 そして、とおり一遍の資料を貰っただけ‥‥。
だが、創建社のK社長はなかなかのやり手。
このままでは引下がれないと、横浜・都筑区に建築中の自宅は、今までの太陽光発電だけが頼りのゼロ・エネルギー住宅の内諾証を惜しげもなく捨てて、Q値やC値をパッシブハウス並に一新することにした。 
そして、友人・小川氏の経験と知恵を借りて、スウェーデンの代表的な換気・RECシステムに、冷暖房機能を付加させることを計画。 その上で光冷暖システムを採用し、エアコンなどのない無暖冷房住宅を目指すことにしている。
その途中までの経緯は、ネットフォーラム上で5回までは紹介しているが、佳境に入るのはこれからということになる‥‥。

蛇足になるが、ここで お馴染みの日本におけるセントラル空調・換気システムの時系列的な系統図の おさらいをしておきたい。
日本に、最初に高気密・高断熱都いう概念と、結露防止という概念をスウェーデンから移入してきたのは、デックス社の石原氏であることは、間違いない。 おそらく1980年頃には、同氏のフアンが、北海道で根付いた。
関東で、最初に超高気密・高断熱住宅のR-2000住宅をやろうと決意したのは、今から25年も前の1990年 (平成2年) のことだった。 そして、「どうせ理想的な住宅を狙うなら、北米で100%の普及率を見せているセントラル空調・換気システム付きの住宅にしょう」 と、今から思えば無謀とも思える決断を、当時の加藤社長に求めて同意を得ている。
北米で生活したことがある人だと、アメリカやカナダで売られている全てのカスタム住宅はもちろんのこと、タウンハウス形式の分譲住宅にいたるまで、100%セントラル空調・換気システム付きだということを知っている。 
それだけではない。 賃貸アパートも全戸セントラル空調・換気付きが常識。
寒いデトロィト市などのアパートだと、10月の上旬から5月下旬まで、アパート代には暖房費が含まれている。 日本のように、冷暖房施設とそのランニングコストは、入居者が払うというバカげたシステムは北米にはない。
つまり北米では、1年中生活する住空間は快適であるべきで、セントラル空調・換気システムは絶対的な必須条件。
最近の資料を持っていないので断言することはできない。 だが、北米では30年前までは 個別の空調・換気システムを採用していたのはモーター・インの貸間業だけだった。
モーター・インは毎日必ずお客があるとは限らない。 そして、チックインする時間も非常に不安定。 これでは、24時間セントラル空調・換気システムを採用したのではペイしない。 
したがって、モーター・インだけは大型の個別エアコンシステムに依存していて、必要な時間帯だけONにして使う。 このため、その大型のエアコンは五月蠅くて、日本人の繊細な皮膚感覚では眠れたものではなかった。
こうした北米の空調・換気システムの実態を、延2ヶ月間におよぶアパート生活で体得していたので、セントラル空調・換気付を絶対条件にしたという次第‥‥。

そして、日本の空調・換気メーカー全部に当ってみた。 
そしたら、日本のメーカーの技術屋も営業マンも、ほとんどといってよいほど住宅におけるセントラル空調・換気システムをの経験を持っていなかった。 ただし、以前にGE社 (ゼネラル・エレクトリック) の大型のダクトシステムを扱った経験者が何人かいて、その人から初期の頃の話を聞くことが出来た。 
当時の日本の住宅は、断熱も気密もスカスカ。 
このため、日本でGEのセントラル空調・換気システムを採用した先進的な人々は、その高い光熱費の請求金額を見て茫然となってしまった。 そして、1年以内にほとんどが機械を止め、そのまま放棄されたままに‥‥。
まず分かったことは、年間のセントラル空調・換気の電気代が、6〜7万円台に納まってくれないと、どんな金持ちでも 「もったいない」 と考え、東京では相手にしてもらえない。
つまり、最低R-2000住宅の1.4WというQ値と、0.9cuというC値が不可欠であることが判明。
したがって、どうせ高性能なR-2000住宅をやる以上は、東京ではセントラル空調・換気システムであるべきだということが、反面教師として浮上してくれた。
それと併行して、カナダ天然資源省のR-2000住宅部門の責任者であるマーク・ラィリー氏とその良き仲間から、私は特殊な任務を依頼されていた。
「単にR-2000住宅を普及するだけではなく、日本とカナダの学者と専門家による 《日加住宅R&Dワークショップ》 を開催したい。 ついては、貴君が日本の通産省と建設省に働きかけて、派遣して発表出来る諸先生方を両省から3人づつ推薦してもらいたい。 些少だが最初の発表者に限り、旅費の一部はカナダで負担することもやぶさかではない」 と。
この日加住宅R&Dワークショップは予想以上に好評で、3日間で分科会を含めて延べ30人近い発表があり、7回も開かれたワークショップにはそれぞれ300人以上が参加して盛況を極めた。 
私にとって有難かったのは、この7回におよぶ会議に全て参加することが出来、日加の最先端の情報にジカに接することが出来、知識を深めることが出来たこと。
こうした背景もあって、ハーティホームが販売する住宅の100%がR-2000住宅で、しかもセントラル空調・換気システムが96%を占めるまでになっていった。

次に問題になったのは、室内の空気の綺麗さを守るための、排気の位置。
日本で新築される住宅の規模は、33〜45坪 (110u〜150u) が圧倒的に多い。 日本の建築基準法には最低0.5回転の機械換気が必要と書いてある。 大まかに計算して気積は約275〜375m3。
一時間の必要換気量は、この半分として約138〜188m3。
それを、どこから排気するか? 
その排気する位置によって、室内の空気の質度が異なるという研究発表が、R&Dワークショップでなされていた。
この実態調査に基づき、ヨーロッパや北米では 台所・浴室・トイレ・ペット室・シューズルームなどの、汚れた空気が多く存在するダーディゾーンから排気しなさいと明記している。 
ダーディゾーンから排気するわけだから、熱交換機はわざわざ 《顕熱交換機》 にしなさいと注文を付けている。 台所・浴室・トイレ・ペット室などには悪臭がある。 これが 《全熱交》 だと、水分も一緒に交換される。 すると、当然のことながら臭いやCO2や病原菌なども一緒に交換されて室内に戻ってしまう。 
これでは住民の健康は担保出来ない。 したがって、わざわざ 《顕熱交換機の採用を》 と強制的に謳っていた。
これに対して、日本では 「排気はダーディーゾーンに限るべし」 という一大運動が起こらなかった。 これは、あくまでも私の個人的推定にすぎないが、次の理由によるものと考える。

最大の理由は、それまでの日本住宅はスカスカで、住宅の換気は開口部の大きさで決められていた。 つまり、窓などから空気が漏れるのが当り前で、必要な換気量は、開口部の面積で、自動的に決まると考えられていた。 つまり、住宅用に換気機械が1台も売れていなかった。 
換気が法規上問題になったのはどこまでもビル用。 
ビルでは浴室がなく、あるのは簡単な調理場とトイレ。 ここは24時間排気をしなくても、部分間欠運転でことが足りる。 
つまり、換気は各事務室と廊下から。 ここはダーディソーンとは言えないから、効率面から考えて全熱交に限る。 このために、夏の湿度問題もあって、日本では全熱交しか生産されておらず、住宅用の顕熱交を生産している換気メーカーはゼロ。
したがって、松下や三菱など日本の換気需要を寡占化していたメーカーは、R-2000住宅のような需要がどこまで発生してくるかについては非常に懐疑的。 ほとんと普及しないと踏んでいた。
そして、もしセントラル換気の需要が出てきたら、全熱交で排気の位置をダーディソーンからこっそりズラせばよい。 そのように 当時の松下の自称 《博士》 さんや営業マンも考えた。 
これに対して、カナダ側の強い意向と私どもの要望に応えて、顕熱交換機を開発してくれたのは換気に関しては後発のダイキンだった。 ダイキンにしてみれば、ハーティホームが全面的に顕熱交に切り替えると言っている。 これを橋頭堡に、日本でも大きなR-2000住宅運動が起こると判断して、顕熱交の生産に踏み切った。
ところが、ツーバイフォーの大手メーカーは0.9cu/uというC値、つまり気密性能が達成できなかったので、軒並みR-2000住宅から撤退してしまった。 ダイキンも年間50基のハーティホームからの受注では、1基生産するごとに10万円以上の赤字を抱えることになり、13年前の2002年にはついに顕熱交の生産から撤退を余儀なくされてしまった。

ダイキンが顕熱交から撤退する前に、日本では2つの事件が起こっていた。
1つは花粉症患者の急増から、日本の住宅の気密性の低さが大問題になってきた。 
つまり、いくら目張りをしても住宅の隙間から花粉が侵入してきて、家の中でも花粉が舞っている有様。 これを退治するには、気密性を高めて、花粉の侵入を抑える以外に方法がない。 
そこで、日本の歴史上で初めて気密性の重要さが、トラックの排気ガス問題と共に俎上に載せられてきた。
もう1つは、接着剤に含まれているホルムアルデヒドの被害が世界的に大問題になり、日本でもホルムアルデヒドの少ない建材の開発と普及が進む一方、欧米先進国並みの換気性能が求められてきた。 国会でも大問題になったがために、国交省は建築基準法を改正して、機械による0.5回転の換気の義務化を発表した。
これは、画期的な法改正であった。 しかし、導入が義務化されたのは換気機械だけ。 欧米のように排気位置をダーディゾーンに限定すると言うポイントの義務化が見送られた。 
そして、実際に導入された機械が機能して 0.5回転という換気が守られ、国民は綺麗な空気の中で生活をしているかどうか?  という肝心のチェックがおざなりにされてきた。 情けないけれど、これが現実。

この法改正を前に、空調換気冷凍学会が主催する説明会が開かれた。 私もイソイソと参加した。 その席上、ある病院の関係者から切実な質問が発せられた。 
「セントラル空調・換気システムを導入して以来、院内感染の被害が非常に大きくなって困っている。 この原因はどこにあるのでしょうか?  そして院内感染を防ぐには、どこをどう改善したら良いでしょうか‥‥」
この原因は2つ考えられる。 
1つは全熱交を採用しているため、臭いや病原菌の移動が容易であること。 つまり、院内感染の惧れがある病院では、全熱交は絶対に、採用してはならない。
2つには、外気の取入口と排気口は、出来たら別の壁を使うこと。 それがどうしても不可能で1つの壁から給排を行う場合は、取入口と排気口は最低2メートル以上の間隔をあけなさい、とカナダのマニュアルには明記。
当日、壇上にいた建研をはじめとした学者先生は、いずれもカナダと日本で7回も開催された日加住宅ワークショップでお馴染みの方が、半分を占めていた。 
病院関係者からの質問には、私でも答えられるほど簡単な問題だから、どなたかが必ず答えてもらえるハズと考えていた。 
しかし、5分たっても、10分経っても誰一人として発言しない。 

学界という世界は、やたらと先輩の業績を重視する世界。 
多分、今でも産学官界に発言力を持つある先輩が、日本は全熱交で行け! と命令を下したのだろう。 そして、松下・三菱と言う2大寡占メーカーは、この命令下で業務にいそしんでいる。
私の知っている諸先生方は、病院関係者から個別に質問を受けたのなら、適切な返答をして指導がなされたであろう。 しかし、大勢の群衆の前で、うっかり答えると、大ボスの先輩から睨まれ、その後の出世は諦めざるをえなくなる。 
人生を棒に振るほどの蛮勇を持った諸先生が、1人もいなかったということだと私は推察している。 そして、それはやむを得なかったのだろうと同情している。

だが、それ以来の私には、日本空調換気冷凍学界だけでなく、ほとんどの学会を信頼出来なくなってしまったのも事実。


posted by uno2013 at 16:36| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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