2014年12月27日

2014年下半期  読んで面白かった本のベスト10 (下)



このブログは、本来30日に掲載する分。
しかし、今日は土曜日で、今日から年末休暇に入るところも多いと聞く。 その人達に、「書店へゆくのは30日以降にしてください」 とは言えない。
3日早いが、30日分を速めて今日掲載することにした。

先週でベスト10を締め切った。
今年下期に撰んだ1位と2位のブログは、いずれもこの欄で紹介済み。
また、3位と4位と6位は独善的週評で紹介済み。 そして、10位もブログで紹介済み。
したがって、新規に紹介するのは5、7、8、9位の4つだけ。 
なにしろ、トップ10候補が59点もある。 そのどれもが、トップ10に入ってもおかしくない実力が備わった力作ばかり。 したがって、ブログや週評で取上げなかったものを優先的に紹介したいと考えるのだが、そうなればトップ10を選ぶ意味がなくなってしまう。
私がトップ10を選びを始めたのは、勤めていた時 正月休みに何を読んで良いかいつも迷っていたから‥‥。 書店へ行っても、なかなかこれはという本が見つからない。 このため、実に多くの著作を見逃してきた。
そして今は、かつてのように朝から晩まで仕事に追われることはない。 少しでも、皆さんの本選びに役立てればと考えて ベスト10を恒例化した。
したがって、この欄でクダクダと述べなくても、詳細を知りたい方は日付を遡って参照していただければ、おおよその内容が理解していただけるはず。 気楽にゆきましょう‥‥。 

◆10位

人材危機表紙.JPG

これは、10月5日付のこの欄で紹介済み。
大変にセンセーショナルな題名。 建設業から人材が離れているのは事実。
2007年度までは、新設建設の延べ面積は18,000万uはあった。 それがあのオイルショックで、11,000万uと40%も減少してしまった。
当然、大手ゼネコンを中心に、なりふりを構わないリストラの嵐が吹き荒れた。
そして、2013年度には15,000万u近くまで回復したが、ご存じのとおり2013年度は消費税値上げのための駆け込み需要に支えられたもの。 したがって、これからは全建設の新設需要は13,000万u以下となろう。そのことを、直感しいるのが建設や住宅関連の労務者。 
たしかに、2019年度までは東京オリンピック関連の仕事は増えるだろう。 しかし、オリンピックが過ぎたらペンペン草も生えないような事態が予想される。
国交省は、ドイツなどと異なり公団・公営住宅の断熱補修事業に不熱心。 こんな不熱心な役人が威張っている業界からは逃げだすに限る。 それが、建設関連労働者の本音。
この著は、その肝心な点を見逃している。

◆9位

林業男子.JPG

そもそもこの著作は、矢口史靖監督・脚本の映画 「WOOD JOB!」 からスタートしている。
この映画の元になったのは三浦しをんの小説、「神去 なあなあ 日常」。
筆者は森林に関してはド素人。 それが、東京チェンソーズの青木氏の著作づくりに協力したのか発端となって、次第に林業界に関心を持ち始めてきた。 
決定的な影響を与えたのは、上記の映画と小説。
そして、林業で活躍している男子だけでなく、女子を含めて12人から多面的な取材を行って、この著作をまとめている。 
「林業男子」というタイトルでありながら、「林業女子」の草分けである高齢者の栗原慶子氏をはじめとして、3人の個性的な林業女性を紹介している。
このほかに、林業に関しては川上の山造りから川下の木工場経営までをコンサルタントをしている人や、工学部卒業生の棟梁、床材や家具づくりで地域の再興をしている人など、興味深い人間像を紹介してくれているので楽しくなってくる。

◆8位

ホンダとサムスン.JPG

著者はホンダで最初は車体腐蝕の研究をしていたが、途中からリチウムイオン電池の研究に取組み、チーフエンジニアとして活躍していた。 しかし、ホンダではリチウムイオン電池を本命視しない派が次第に会社を牛耳るようになってきて、筆者はホンダを追出された。 2004年にサムスンに常務として拾われた。
現代自動車ではなく、サムスンだったのが日本にとっては救い。 
本命の自動車では、今でも日本は世界のトップを走っているらしい。 しかし、数年前までは民生用の電動工具などのリチウムイオンの技術では日本が世界のトップを走っていた。 だが、現在では完全にサムスンの後塵を拝しているという。 ホンダは、余計なことをしてくれた。
筆者は2012年でサムスンを退社しているが、ホンダとサムスンという日韓のトップ企業で、経営者として働いた氏の経験は貴重。
「部下の声を聞かないホンダ。 もっと聞かないサムスン」 「責任の取り方があいまいなホンダ。 峻烈なサムスン」 「殿様商売の日本。 きめ細かい韓国」 「スピード感のない日本。 せっかちな韓国」 「基礎研究に厚みを持つ日本。 ノーベル賞受賞者がいない韓国」 「特許マネージメントが拙い日本。 抜け目のない韓国」‥‥こうした比較が延々と続く。

◆7位

ミッション.JPG

小説部門ではトップ10候補が、古いものを含めると15点にも‥‥。 
その中で、産経新聞に連載されていて、今年の6月に出版されたこの著と、7月に出版された「猟師の肉は腐らない」 の2冊だけを選らばせてもらった。
後者については異論がないと思う。 だが、前者は誰もが小泉進次郎と想像できる若手の国会議員が主人公の政治小説。 それだけに、異論も多いはず。 
ブログの書評欄を2〜3読んで見たが、まともに取上げているものが少ない。 そして、どうせ取上げるのなら、もう少し変わった視点とか、掘下げた視点が欲しかったとの注文ばかり‥‥。
当然の注文だと思う。 
高齢化で過疎化した地方都市と、少子化問題。 この問題には、納得できるで結論を用意している政党もなければ、これはという特別な知恵があるわけでもない。 女性の社会復帰問題をとってみても、そのことでことで安倍首相の揚げ足はとることができても、誰一人として満足な解決案を用意できないでいる。 お互いに無いものねだりしてもしょうがない。
そういった意味で、敢えて政治を取上げたこの著書には、「それなりに価値がある」 というのが私の見解。

◆6位

農業論.JPG

この難解そうな理論は、10月24日付の週評で取上げている。
ともかく義務感のようなものがあって、1300円を払ってこの本を購入したが、さっぱり読む気が起きない。 1ヶ月も過ぎて読む本が無くなったので開いたら、グングン惹き込まれてしまった力作。
農林省は、農業にやたらに国税を注込んでいるのをカモフラージュすために、「カロリーベースの食料自給率は40%を切っている」 と騒ぎ立てている。
2012年の農産物の国別生産額のランキングをみると、たしかに中国、インド、アメリカ、インドネシア、ブラジルが上位を占めている。 そして、驚くなかれ日本は堂々の7位で、12位のフランス、16位のイタリア、18位のオーストラリア、24位のカナダなどを大きく上回っている。 
国民1人当りの生産額でみても、日本は7〜8位をキープ。
そして、2010年の農産物の総輸入額や1人当りの輸入額を見ても、ドイツやフランスに比べて日本が飛びぬけて大きい訳ではない。 農林省の恣意的な催眠術に、国民は完全に騙されている‥‥。
たしかに、コメの輸出額は減ってきている。 
それは、ジャポニカ米という特殊なコメを日本ではつくっているから‥‥。 ジャポニカ米のおいしさを分かってもらうためには、炊飯器という炊き方のノウハウと一緒に輸出すべきだと論じているのには、感動させられた。 必読の書。

◆5位

スーパー銀行.JPG

この著は、ベールに包まれていてその実態が知らされていなかった 「中国国家開発銀行」 の全貌を、アメリカ・メディア北京特派員の2人が、綿密な調査をもとに明らかにした内幕物。
この中国開銀の貸出残高は108兆円。 世界で4位の三菱UFJ銀は84兆円でしかない。 
開発銀行で比較すると、世銀が15兆円、日本政策銀は14兆円、国際協力銀は10兆円。 桁違いの融資額を誇り、中南米やアフリカで資源を確保しつつ公害をまき散らしている元凶が中国開銀。
ともかく、私などは中国のソーラーパネルの乱立が気がかりで、経済を大きく失速させるものとして懸念していた。 ところが、ソーラーパネルへの膨大な投資を平然と支え続けており、赤字なぞは問題にしていない事実を知らされて、腰を抜かすほどびっくりさせられた。 中国開銀を抜きにして中国経済は語れない。
中国の資本主義化は急激な都市化を進めて、農村人口を流動化させ、新規に3億人もの労働者階級をつくりだした。 世界史の上で、このような短期間に労働者階級を生みだした例は皆無。それほど中国の国家資本主義化は急速。 それが、環境負荷として全人民に及んできている。 
日本のメディアは、習近平氏の動向を追うことに全力を投入しているが、陳元開銀総裁の動向に、もっと関心をもって取材して頂きたい。

◆4位

自然をまねる.JPG

これは10月31日付でに週評に掲載されている。
貴方は、「バイオミミクリ―」 という言葉を聞いたことがありますか?
「バイオ」 とは生物のことで、「ミミクリ―」 と言うのは 《真似る》 という意味。 つまり生物の真似をして、新しい物造りを行うこと。
産業革命以来、そこいらにある廉価な石炭などを燃やして物を作れば良かった。 しかし、世界で都市化が進み、大気や水が汚染され、土地が痩せてきて公衆衛生面でリスクが大きくなった。
同時に地球の温暖化で、集中豪雨にや台風、土砂災害の危険も増えてきた。
これに対して、自然は全く異なる原則で機能している。 最小限のエネルギーで、生態系を損なわずに生き残り、再生を続けている。
人間の心臓と血管系を考えて頂きたい。 毛細血管まで入れると全長は9600キロメートルにも及ぶという。 東京―大阪間よりもはるかに長い。 それなのに、血を末端まで送るのに、1.5ワットの常夜灯のエネルギーしか消化していない。 自然は如何に合理的であるか!
新幹線はトンネルへ入る時にドカーンという大きな音がする。 それを防ぐためにカワセミの嘴を真似て車体を作り、フクロウの羽根をヒントに騒音がしないパンダグラフを開発した。
そういった、自然を真似た開発例でこの本は埋められている。 ともかく、私どもの常識に対する挑戦状として、最後まで息を継ぐ寸暇も与えてくれない好著。

◆3位

猟師の肉.JPG

これは9月5日付の週評で取上げている。
お馴染みの小泉節。 顔が広い筆者は、いろんなところに仲間がいる。 今回の主人公は都会生活に愛想を尽かした義っしゃんが、福島・茨城・栃木にまたがる八溝山の山小屋へ引越した。
もちろん電気もなければ水道もない。 そして、熊のような大きな犬と1人と1匹で、父親ゆずりの猟師暮らしを始めた。
今まで以上に猟師の知恵や生活ぶりが丁寧に描かれており、実話として読み終えた感想は非常に満足すべきものだった。 そして、念のためにとネットで調べたら、実話ではなく 「小説」 に分類されていることを知って慌てた。 そういえば、確かに最後のシーンはいままでのものとは違い、わざとらしさがあった。 しかし、それ以外は、今まで通りの小泉節で安心出来た。
義っしゃんから電話があって2ヶ月も過ぎたころ、先生はむやみに猟師生活がしたくなった。 そこで粕取焼酎の1升ビン2本とクサヤ3枚をリックに入れ、タクシーを降りてから2時間も山道を歩き、やっと20坪程度の平屋の山小屋へ辿りついた。 1泊2日の予定だった。
初日は猪の燻製肉の薄切りと、野菜とイワナを味噌でのごった煮。 それと持参のクサヤで粕取焼酎をあおった。 
2日目はイワナとヤマメ釣り。 釣上げた魚は水音焼きで昼飯。 そのあと罠にかかっていた2匹の野兎を、灰燻の珍方法で土産に加工してくれた。 その生活の面白さで結局は3泊4日の旅に。
3日目は木の幹を叩くと脳震とうを起こした蝉が50匹ほど簡単にとれる。 それを夜の串焼きに。
また、赤蛙をエサに地蜂の巣を探し、巣を掘って地蜂飯に。 これが格別。
4日目はドジョウ獲り。 
これで味をしめた先生は、2年後の冬に義っしゃんを訪ねて、さらに新しい猟師の技法を体験する。 こんなに面白い小説はまたとない。

◆2位

女と男.JPG

この本は11月5日のこの欄で紹介している。 詳細はそれを参照して頂きたい。
何しろ、5年前の2009年1月に、NHKがスペシャルシリーズとして3回にわけて放送したもの。 残念ながら、私はその放送を見逃した。
「男と女」 の痴話は腐るほど聞かされてきた。「もういい加減にしてほしい」 というのが偽りのないところ。
ところが、題名は 「男と女」 ではなくて、「女と男」。 女が前面に出ている。 そして、サブタイトルが 「最新科学が解き明かす 『性』 の謎」。
最新科学といっても、「どうせ 『性』 に関しては新しい発見などはあり得ない」 と言う風に私は考えていた。 ところが、NHKのスタッフは、毎週アメリカの大学に通って、今までは考えられもしなかった理論と事実を報告している。 
つまり、新しいテーマーで研究している学者を、NHKのスタッフは徹底的に調べ上げていたということ。 だから面白い。 放送されてから5年目に文庫本化されたというには、それなりの理由があるということ。
中でも私がビックリしたのは、フィンランドの男性の生殖能力が急速に劣化しているという事実。 この研究が進んで、「近い将来に男性の30%が、結婚出来なくなる惧れがる」 という。しかも、500〜600万年後には、Y染色体が滅亡し、「男なしの世界が現出するかもしれない」 と言うのだ。 私だけでなく、貴方も知らなかったことが、陸続と続く。
文庫本だから629円+税と安い。 5年前にテレビを見過ごした方は、是非今度の正月休みに読んで頂きたい。

1位

地震本写真.JPG

これは、ごく最近の12月10日付のこの欄で紹介したので、覚えておられる方も多かろう。
今年の下半期には、地震関係の本だけで5冊も読んでいる。 ともかく 「地震」 と名がつくと片っぱしから読まずにはおれない中毒患者になってきている。
これだけ読んでいると、新しい事実にほとんど巡り会えない。
この本も、題名だけだと非常に陳腐。 どこを探しても新発見はなさそう。
ご案内のように、日本は@ユーラシアプレート、A北米プレート、B太平洋プレート、Cフィリピン海プレートの4つのプレートが沈み込んでおり、世界で最も地震の多発国として有名。
これに対して、アメリカはロスを中心としたカリフォルニア州とアラスカ州の西海岸以外は、地震には無縁と言われていた。 つまり、アメリカ大陸の中央部や東海岸には地震の心配が皆無だと信じられていた。
ところがこの著によると、今まで地震がなかった中部のオクラホマ州、アーカンソー州、コロラド州、ニューメキシコ州のほかに、南部のテキサス州においても震度3〜4の地震が頻発しているという。
とくにオクラホマ州では、2014年は地震が多発していて、6月19日の時点で207回も記録して、カリフォルニア州の140回を数では上回ったと言う。
この原因は水圧破砕法によって取出されるようになったシェルガスにあると筆者は断言。 確かに水圧で頁岩層を破砕する方法は、どう考えても無害というわけにはゆかない。 そして、この現象はシェルガスを産出しない日本では無縁であるように考えている向きもあるが、そうとは言えないと筆者は忠告している。
2004年に、地震と縁がないと考えられていた中越地震が起こり、2007年には中越沖地震が発生している。 いずれもマグネチュード6.8という大地震。 この原因は今まで謎とされていた。 
しかし、筆者は両方の地震の中心地から20キロの南長岡ガス田で、高圧水を注入してガスを入手していたし、ガスが取れなくなった跡地で経産省の環境産業技研が、地下1100メートルに、合計1万トン以上のCO2を圧入する実験を行っていた。 それが、中越並びに中越沖地震の原因ではないかと問題提起している。
そして、阪神淡路地震も、もしかしたら明石海峡の海の中に造られた橋脚工事で、海水を地面の奥深くまで浸透させたことが原因だったかもしれないと、問題提起。
いずれにせよ、地中にCO2を圧入すればCO2問題は解決すると言う考えは甘く、再検討を余儀なくされよう。 そういった大問題を提起しているという点で、この著は必見の価値がある。


posted by uno2013 at 08:46| Comment(0) | 半年間の面白本ベスト10 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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