2014年11月05日

思わず唸ったNHKスペシャル 「女と男」 の科学番組


NHKスペシャル取材班 「女と男‥‥最新科学が解き明かす〈性〉の謎」 (角川文庫 629円+税)

女と男.JPG

申し訳ありません。
5年前の2009年1月に、NHKスペシャルが、「シリーズ 女と男‥‥最新科学が読み解く性」 を3回に分けて放送していたのですね‥‥。 その科学番組が好評だったので、ダイヤモンド社が 「だから、男と女はすれ違う」 という題名の本を出版していたことも知らなかった。
大体、「男と女」 に関する報道番組や出版物は多すぎる。 そして、そのほとんどがいたずらに好奇心をくすぐるものばかり。 まともに科学したものはお目にかかったことがない。
したがって、私がNHKのスペシャルシリーズを見なかったのも、ダイヤモンド社の出版物に気がつかなかったのも、ある意味では許されると開き直っている。 
「省エネ」とか「環境」 という文字を見ると、なんとなく惹かれてしまう。 だが、今頃「女と男」と言われても、無視するのが常道。 
いちいち関心を寄せていたら、それこそ気が狂ってしまう。

1年以上も前に、角川文庫から出版されたこの著を図書館で見かけた時、正直いってほとんど気乗りがしなかった。 読みたい手ごろな本が見つからなかったので、期待しないまま借りてきたまで‥‥。
ところが、女と男の考えや行動の違いを、科学的に探究している研究者や学者は、世界には意外と多いのですね‥‥。
そういった科学者をことごとく調べ上げて、NHKは取材している。 
NHKのスタッフの、その徹底した取材ぶりには、感心させられると言うよりも 頭が下がる思いがした。 
その取材の結果として、近い将来に男性の30%が結婚出来なくなる怖れがあるという。
だが、500〜600万年後の将来には Y染色体が滅亡し、「男なしの世界」 が現出するかもしれないというのだ。 私が知らなかった驚異の世界が、科学的に語られていた。
古い著書だが、急遽取上げることにした理由を、ご理解いただきたい。 そして、取上げられているテーマのほんの一部しか紹介出来ないことも、併せて了解頂きたい。

心臓病と言うと昔は男の病気だと考えられてきた。 医師は今までは男性の冠動脈しか疑っていなかった。 ところが、女性の場合は微小血管の狭心症が多い。 そのことを発見したマーズ医師。 1984年以降、アメリカでは女性の心臓病による死亡者が男性をはるかに上回っているが、これは冠動脈の検査を中心に診断してきた結果だという。
また、1989年に39歳のアメリカの女性が、食事中にひどい不整脈を発症して意識を失った。 その原因は、女性が服用していたテルフェナジンという抗アレルギー薬の副作用。 その薬は決められた量しか飲んでいなかったが、その量は男性を対象に決められた量で、女性の場合は量が多すぎて、危険だということが分かった。 このように、かかる病気は同じでも、薬の効き目は男女差があるということが判明してきている。

よく、「生まれか育ちか」 が問題になる。 
アトランタのエモリー大のキム・ウォレン博士は、人間の子だけではなく猿の赤ちゃんにも「ぬいぐるみ」と「車」を与えて、結果を観察した。
人間の女の子は、ぬいぐるみを選んだのは6割で、車が4割。 これに対して男の子は8割以上が車を選び、ぬいぐるみは2割弱。
ところが、猿の子でも、男の子と女の子の選択比はほとんど人間と変わらない。 
このことから、男女のおもちゃの好みは、育て方よりも生まれた時から決まっていると判断出来そう。 ウォレン博士は、「車のおもちゃが現わしているのは活発な行動。 一方ぬいぐるみが現わしているのは育む行動。 ヒトもサルも、自分に快適だと感じた行為を選んだ結果」 と断言している。
つまり、生まれた時からオスとメスでは快適と考える行動が違う。 子供には、おもちゃを自在に選ばせた方がよいというのが結論。

レスブリッジ大のデボラ・ソーシャー博士は、ビクトリア州の墓地で、「●南東に向かって19メートル進め ●東に回り60メートル進め ●北西に曲がり17メートル進んだところが目的地」 というメモ用紙を男女の学生に渡し、博士が一緒について歩き、間違回数をカウントした。
間違えた回数は男性が2.95回、女性が9.86回。
2回目のテストは、「●真直ぐ進んで聖人像にぶつかったら右に曲がれ ●眠れる少年像のところで左に曲がれ ●真直ぐ進んで幹がVの字に分かれた松の木が目的地」 と言うメモ。
間違回数は男性が4.02回、女性が2.85回。
この結果、男性は方向の指示を得意とし、女性は目印の指示を得意とするということが分かった。 よく、女性は 「地図が読めない」 と言われるが、これは地図が方向指示で書かれているから。 この男女の得手、不得手は、数百年前にアフリカの大地で作られたもの。
狩りをしていた男は、獲物を追って遠くまで出かける。 帰り道は方向感覚が頼り。 
これに対して、女性は木の実や芋などをあさった。 また、子供の顔色を見て健康かどうかを判断しなければならなかった。 このため、女性は目印で判断するようになった。

一夫一妻と言う制度が人類では当然のことになってから、精子の質が著しく劣化してきているという。 とくにノルウェーで、その傾向が最近顕著になってきている。
それどころか、男をつくるY染色体が崩壊の真っただ中にあるという。
2002年の科学雑誌 「ネイチャー」 に、「およそ1000万年後には、Y染色体は形跡もなく消えてしまう怖れがある」 という研究が発表された。
女はX染色体が2つ。 男はXとY染色体が各1つずつ。 ところが、このY染色体が著しく劣化してきている。 
オーストラリア国大のグレーブス博士は、哺乳類ではオスをつくる性染色体が著しく衰退してきていると分析。 ネイチャーに発表後コンピューター・シミュレーションで、「1000万年後どころか、500〜600万年後にY染色体がなくなる」 という試算が得られた。
哺乳類が何故XとYという染色体を得たのかなどについての記述は、長くなるので省く。 詳細はこの著を読んでいただきたい。 
東京農大の河野教授は、「万能細胞を使って精子や卵子をつくることで、Y染色体崩壊後の生殖システムも人為的に確立できる可能性が高い」 と唱えている。
こんな大問題が、人類を襲っているとは知らなかった。

また、少子化が進むと言うことは、年下の女性が少なくなるということ。 そのほかの事情を考えると、「30%の男性が結婚出来ない時代が目前に」 という話題をはじめ、恋人選びに使われる男女の感覚の違い、二足歩行が変えた骨盤の変化と「未熟」のまま子を生むシステム、離婚を招く会話パターンなど、あまりにも興味深い科学がこれでもかと続く。 一読の価値あり。


posted by uno2013 at 11:55| Comment(0) | 書評(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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