2014年10月30日

今までの線材から面材への転機を迎えた木質構造の可能性



昨10月29日、新木場タワーで 「CLTは次世代基幹建材ななり得るか」 というセミナーが開催され、さる10月10日には 「オリンピックにつなぐ都市での木づかいシンポ」 が開催された。
2000年に建築基準法が改正され、木質の大型建築物が散見されるようになってきた。
学校建築や地方の役所関係、病院や養護施設などの大型木造建築は、これからますます増えて行くだろう。 それと、東京オリンピックに どこまで木質構造材が使われるか?
ともかく、林野庁がシャカリキになっている普及を図ろうとしている国産の杉を使った CLT (クロス・ラミネーテッド・ティンバーと呼ばれる直交積層板) の将来的な見通しはどうか、というのが昨日のテーマ。
そして、「オリンピック向けにいろんなアイデェアが出されているが、大都市で木質構造材がどんな使われ方をしてゆくのか」 を隈研吾氏などの建築家に語らせたのが10日のシンポジウム。
しかし、このシンポジウムは、マイクと司会が悪くて聞くに堪えず、途中で退散。

問題は、大型建築物というと、ゼネコンと一部の建築家の仕事であり、地場の建築業者とか地場ビルダーは関係ないと考えている業者が多い。 
ヨーロッパやアメリカでは、地場ビルダーが中心になり、新しい技術体系を身につけ、強力な武器として活用を始めている。 それなのに、日本の地場ビルダーは縮んだまま。 このままでは、完全に置いてき放りになる懸念が強い。
私の周辺の地場ビルダーは、ツーバイフォーによる1時間耐火の大型養護老人ホームの建設が、日本各地で、すさまじい勢いで進んでいるのに無関心のまま。 また、CLT に関しても ほとんどが関心を示していない。
ツーバイフォーと同じか、場合によってはそれ以上のビジネスチャンスが転がっているのに、狭い視野にとどまってチャンスを見逃している。
その根本原因は、地場ビルダーが木質構造を正しく理解していいないことにある。
このため、新しいトライを躊躇している。
そういった意味で、昨日の腰原幹雄東大生産技術研教授の 「線材から面材へ‥‥都市木造の可能性」 という基調講演は、大変に示唆に富むものであった。
それと、網野禎昭法大建築教授の 「ヨーロッパの木造建築から学ぶべきこと」 の基調講演にも一部示唆に富むものがあったので、紹介したい。


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写真は 「線材から面材へ」 と基調講演する腰原氏。 会場が暗くて写真が見難いのはご容赦。
氏は、まず日本の木質構造は、全て線材から出来ていたと説く。
いわゆる 「屋根が中心の建築構造」。
確かに、言われてみればその通り。 柱と梁という線材が日本建築の主流であった。
この延長線上に、格子や障子があった。 
細い線材を愛するが故に、火災にも弱かった。
江戸時代は大火の連続。 10年毎ぐらいに全焼。 ところがこの火事に対して、棟梁は何一つ責任を問われなかった。 むしろ「火事と喧嘩は江戸の華」 などと言って美化され、庶民は泣き寝入り。 これが、線材による建築の悪しき歴史。
しかし、この線材も、太い木材が無くなって、集成材やLVLというエンジニアウッドに変わってきた。 しかし、基本的に日本の木造建築は、火災に弱い線材が中心で、今でも建築家の中には不必要なまでに都市建築にも線材を多用している。

この 「線材文化」 に対して、「面材文化」 を持ち込んだのがツーバイフォーの枠組壁工法。
枠組壁工法も、初期はバルーンフレーミングに代表されるように、線材による建築であった。
それが、22ミリとか12ミリという厚い構造用合板の開発によって、ツーバイフォーは床を中心とした面材のプラットフォーム工法に変身した。
つまり、合板の千鳥張りによる床剛性を中心とした「 ダイヤフラム理論」 によって武装されてきた。
木質構造に、初めて面材が登場したのである。
もちろん、集成材やLVLによる100ミリ以内の面材は部分的に採用されていたが、構造材として幅広く登場したのがプラットフォーム工法。
そして、このプラットフォームは、線材の通し柱を不要とし、防火基準を満たせば中層の数階建ての建築も可能にした。
さらに注目すべきは、厚い石膏ボードの誕生させることによって、30分耐火だけではなく1時間耐火やそれ以上の耐火建築物も可能にしてきた。
それどころか、ドライウォール工法の開発で、鏡のようなフラットな面材の美しさを現出している。 ところが、残念なことに日本の研究者や学者先生の中には、このドライウォール工法の美しさや、耐震性並びに防火性について系統的に研究し、壁を面材として普及させるにはドライウォール工法こそが不可欠だと警鐘を鳴らしている人が皆無。
学者でない私などがいくら騒いでも、まともに取上げてもらえない。 是非とも腰原教授などに、音頭取りをお願いしたいところ。

そして、プラットフォーム以外にも、有力な面材として登場してきたのがCLT。
無垢の25ミリ厚の板を合板のように繊維方向を変えて積層する。 中にはピア・ウッドのようにコアに90ミリ以上の厚物のラミナーを使って、170ミリとか300ミリ以上の厚い面材も可能にしている。
このため、プレキャスト・コンクリート (PC版) に変わって、中層の壁や床材としての採用が期待されている。 
そして、PC版よりも遥かに優れているのは、比重がコンクリート版の1/5と軽いこと。 
このため、床材として使っても、壁材は予想以上に細いものでも構造上は大丈夫。
確かに無垢の170ミリ以上の厚ものだと、1時間耐火に十分耐える。 また、蓄熱性能も高く、暖房効果も高い。
それに、壁倍率が軽く7倍が取れるので、従来のホールダウン金物では、構造的に足元がもたない。 このため、CLT の中心部に穴をあける特殊で、強力なホールダウン金物を開発し、採用している。 このため、ある程度の津波や土砂災害には十分対処できるはず。

しかし CLT は、断熱性能の面で206のツーバイフォーには叶わない。
したがって、中層アパート建築などの壁の面材には、206ないしは208を採用し、床用の面材としてCLT を採用するということも考えられる。
ただし、床材として使った場合の防音の問題や、配管・配線の問題、さらに言うならば配ダクト問題などに課題が残っている。
天井の懐を深くすれば解決する問題かもしれないが、コストの問題もからんで一般化するには検討すべき問題も多い。
しかし、 CLT 独自のホールダウン金物が開発済みであり、これからの中層アパート建築などでは不可欠の建材になる可能性が高い。
したがって、地場ビルダーとしても、十二分に検討の価値がある。
以上が、腰原教授の 「線材から面材へ」 という話題を私なりに咀嚼したもの。


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ついで、網野教授の話の中で痛感させられた点。
上がドイツなどでよく見られる木骨土壁造の中層建築。
ヨーロッパは農地の生産性が低いため農地をやたらに宅地化することを犯罪ししたことと、熱を逃がさないために中世からこうした中層建築を建ててきた。 地震がないので土壁構造でも十分に水平力に耐えられる。 だが早くからプラットフォームを採用し、上階への防火を防ぐ工夫を凝らしていることに着目して欲しい。
そして、これからの都市木造建築の場合は、エコと言ってもエコロジーだけでなく、エコノミーも重要な要素だということを先生は強調。
また、CLT の場合は、大きな資本が必要になってくる。 しかし、ヨーロッパでは、10人くらいの地場ビルダーが、地場の木工場と一緒になっていろんな部材の開発をやっており、決して大手に技術的にも負けていない。
そういった地場ビルダーの動きも、これから大いに参考にしてほしい、との弁。


なお、以下は東京オリンピックの競技場や選手村のために、建築家が造ったいろんな木質構造による施設。 当然、線材による提案が多いが、選手村などには面材による提案も多い。
しかし、これ等が全部採用されるということではなく、あくまでも提案として見てほしい。

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posted by uno2013 at 15:15| Comment(0) | 展示会・シンポジウム・講演 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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