2014年10月10日

高さ6mで、30℃の温度管理がなされたシロアリの巣の林立!



写真インゴ・アルント 「建築する動物」 (スペースシャワーネットワーク 2800円+税)

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今回は写真集。
写真家インゴ・アルントは、2年間もかけいて世界を一周して、動物たちの素晴らしい巣造りという建築物を撮りまくった。

いま、「バイオ・ミミクリ―」 ということが叫ばれている。 
「バイオ」 は生物のことで、「ミミクリ―」 とは真似るという意味。 物造りに、自然界の生物の素晴らしいアイデェアと知恵を学んでゆこうという新しい学問体系。
ジェイ・ハーマンが書いた400ページにも及ぶ 「自然をまねる、世界が変わる」 というやたらに面白い本を読んだ。 本来だとこの欄で紹介するところだが、先に 「週刊書評」 へ原稿を投稿してしまった。 掲載されるのは1ヶ月先。
その代わりに この欄では、同じ系統の本著を掲載することにした。
ジェイ・ハーマンの著書では、驚かされた点が数多くあったが、中でも次の3点には腰を抜かさんばかりに驚かされた。

1つは、人体の心臓血管系。 全長はなんと9600キロメートルにも及ぶと書いている。 東京と大阪間が500km。 
したがって9600メートルの間違いではないか思ったが、その身体の隅々まで血液を送り届けているエネルギーが、寝室に取付けられている常夜灯の1.5ワットでしかないという。 50〜100ワットという数値ではなく、わずか1.5ワット。
これほど効率の良い機械は、世の中には1つもないのではないかという。

2つは、その血管をはじめとして、自然界には直線がないということ。 普通だと、われわれが最大の効率を考えると、設計図を引く時は必ず直線を選ぶ。 しかし、自然界には直線はあり得ず、直線は人々の神経を苛立てる。
そのことを、最初に教わったのが40年前のアメリカの郊外の開発地。 車道にしろ遊歩道にしろ、全てが曲線で出来ている。 日本の真四角な碁盤状の区画とまるっきり異なる分譲地。 そのためには、専有地を出来るだけ少なくして、共有地を多くする。 つまりオープンスペースの多い 「オープンスペース・コミュニティづくり」 が、全米で流行していた。 言ってみれば住環境を守るために、土地の共有化という社会主義的な手法を採用していた。
その素晴らしいランドプランニングの技術を日本に紹介し、三井不動産の3000坪程度の端材の団地数ヶ所で、「オープンスペース団地」 を設計してあげたが、古い意識の幹部を説得出来ず、オープンスペース団地は、日本では夢物語に留まってしまった。
次に注目したのは、スペインのアントニ・ガウディの建築物。 10年近く前にスペインを訪ねた時、曲線で建築物や公園を開発しているガウディのグルエ公園、カサ・ミラなどに感動した。 
ともかく中層の住居なのに、壁や床までに曲線が取り入れられており、それがなんともしっくりしていて嬉しい。
そして、建築途中のサグラダ・ファミリアの超高層建築の曲線には圧倒された。
しかし、ガウディを語る建築家は日本に多いが、伊東豊雄以外の建築家で、意識的に曲線を取上げている人物にはお目にかかれない。 情けないことだと思う。
だが、そのポイントをジェイ・ハーマンが取上げてくれているのには、嬉しくなってきた。

3つ目は、オーストラリア北部に群立しているシロアリの巣というか塚。 細部のシステムは良く分からず、未だに人間の手によって実用化が図られていないが、内部は常に30℃に維持されており、どの塚でも電気代ゼロで快適な空間を造っているという。
一度、別の記事でも読んだことがあり、何とか探求したいと考えていた。
ところが、この写真集にはそのシロアリの塚の驚くほどの林立ぶりと、その個々の威容、ならびに無数のシロアリの築塚の様子が、大きな3枚の見開きな写真を含めて12ページにも亘って紹介されている。 
私が欣喜雀躍したのはもちろんのこと、皆さんにもその写真の一部を見て頂きたくて、この欄で取上げたという次第。


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まず、上の写真を見て頂きたい。
オーストラリア北部の広大な原野。 ここに磁石シロアリの塚が写真のように密に林立している。 その数についての記述はない。 おそらく数万から数十万にもおよぶのではなかろうか。
誰か、その数を調査して欲しい。


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そして、これ等の塚の高さは平均すると3メートル。 そして、写真のように高さ6メートルにも及ぶものがあるという。
その中に200万〜300万匹のシロアリが生活している。
この塚は、正確に南北向きだという。 つまり、細長くて、細長い部分が南北を指している。
これは、真昼の熱い太陽光を避けるためで、東西面が広いのは、朝と夕方の熱を取入れるためらしい。 
この塚は、自然の換気システムと空調システムを備えていて、塚内の温度は30℃に保たれているという。 しかし、一日中の室温や年間を通じた室温の推移、またどのようなシステムになっているのかについて、空調換気メーカーや専門学者が詳細に調べたデータはないよう‥‥。

これは、どこまでもド素人の推測。
おそらく日本の東京以西だと、この塚は夏は蒸し暑くて住めたものではない。
しかし、北オーストラリアの乾燥地だと、温度が30〜33℃でも、カラリとしていて大変にすごしやすいはず。 温度と換気管理だけに配慮したシロアリの塚で、気持ち良い生活が保証されているはず。
日本の空調換気メーカーさん。 一度丸1年間に亘って、自社の技術者と大学の専門家を北オーストリアへ派遣して、この塚の謎に挑んで頂きたいと、心の底からお願いしたいのだが‥‥。






posted by uno2013 at 11:22| Comment(0) | 書評(建築・住宅) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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