2014年09月10日

「空き家」 を少なくする方法は、低性能住宅の徹底した制限!!


長嶋 修著 「《空き家》が蝕む日本」 (ポプラ社新書 780円+税)

空き家.JPG

この原稿は、原則として上記の著書の紹介ではあるが‥‥。
しかし、総務省が今年8月に発表した2013年の 「住宅・土地統計調査」 の速報とは内容が異なる点が一部に見られる。 したがってこの記述は、主に下記の総務省の 「速報集計 結果の概要」 によるものとした。

http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2013/pdf/giy00.pdf

この結果の概略によると、2013年現在で日本の在庫住宅戸数は6,063万戸。 これに対して、世帯数は約5,246万世帯。
つまり、空き家が約820万戸 (13.5%) もあると明記。
この5年間にはリーマンショックがあって、住宅の増加率は305戸 (年平均61万戸) に過ぎなかったが、世帯がそれほど増えず、古い住宅の取壊しも少なくて、5年間で空き家は63万戸増えたという勘定になる。
イギリス、フランス、ドイツの世帯当り人口は2.0人強というところ。 日本は、2013年時点では2.42人とやや多い。 
したがって、まだ少し世帯の増加が見込めるようだが、昨年のような駆込み需要で新築戸数が伸びると、空き家率は間違いなく近いうちに20%を超えるようになる。
野村総研の試算によると、世帯の増加のピークは2015〜2020年頃で、このまま何も施策をとらないと、2040年には空き家率が36〜40%にもなるという。

5軒に2軒が空き家といういう状態は、どんな状態なのか?
それを、歴史上で再現したのが、かつての東ドイツだったという。
ベルリンの壁が取り払われた時、職場がないので東ドイツの人々は西ドイツへ移住した。 幸い西ドイツは高度成長期で人手が不足していた。 このため、喜んで東ドイツからの移住を受け入れた。 西ドイツは空前の建築ブームで賑わった。
一方、空洞になった東ドイツの空き家率は40%近かったという。
40%の空き家ということは、不法な住人が勝手に空き家に棲みつくということであり、治安が極端に悪くなることでもある。 
また、学校、病院、公的機関、ショッピング、介護サービスなどのレベルが、急速に劣化するということでもある。 
このため、東ドイツでは、「住むならこの範囲」 という線引きが実施されたという。
ということはそれと同じ状態が、2040年の日本でも起こる可能性が高いということ。 
つまり、野村総研の予想が正しいとするならば、地方では県庁所在地という大都市でも、線引きが出てくる可能性がある。

さて、空き家が増大するのには、3つの大きな要因がある。
1つは、家を壊さずにそのままにしておくと‥‥つまりボロボロの建物でも壊さないでそのままにしておくと、その土地は「宅地」の扱いを受け、「更地」(空き地) よりも、固定資産税が安くて済む。
すなわち、わざわざカネをかけて解体し、更地にしたとたんに固定資産税が重くなる。 だから使わなくなった住宅やアパートは、そのまま放置される。 高度成長期に、何とかして固定資産税の優遇措置をとって更地を宅地化しょうと考えた制度が、悪用されているということ。
これを避けるために、各自治体は条例を作成して、50万円とか100万円の助成金と言う名の税金を投入して撤去を促そうと考えているが、それほど効果が出ていない。 やはり、「3年以上空き家のまま放置しておくと、税金を掛ける」 という荒技を法制化しない限り、この固定資産税にオンブする状態は、避けられないだろうと筆者は言う。

2つ目は、日本の住宅評価の一貫性と信頼性のなさ。 これは、不動産屋と銀行など金融機関への不信が重なりあっている。
欧米では不動産業者は医師や弁護士に匹敵するほど、社会的に高い評価を受けている。 しかし日本では、不動産屋というと「いんちき屋」と誰もが警戒する。 
つまり、土地の広さとか駅への近さ、築何年かだけで住宅を評価し、売りと買いの両方の顧客から3%+6万円 (税別) の手数料が入るため、情報を公開せず囲いこみを図る人間達。 
そして、ローンを組む金融機関は物件を見ることもなく、専ら申込人の属性だけでローンを決済している。 つまり、公務員とか1部上場企業の社員であるかどうかで判断し、物件を見て個別に判断を下す専門的な能力を持たない者が、不動産の価格やローンの有無を決めている。
今、仮に4000万円の物件があったとする。 その内訳は土地2000万円、住宅2000万円だったとする。 この場合、人が住んだ瞬間に住宅の評価額は20%減額されて1600万円になる。 そして10年後には半額になって1000万円。 そして25年後には住宅価格はゼロと見なされて土地価格だけの2000万円でしか売れない。
高度成長期で土地の値上がりが激しい時は、ローンを組んで住宅を取得し、たとえ住宅価格がゼロになっても、土地価格が25年後に倍以上になっておればという期待が持てた。 しかし、空き家率が13.5%になり、これからますます大きくなってゆけば、30キロ圏外の土地代は値下がりを見込まれている。 このままでは、ローンを組んだ途端に「債務超過」 ということになる。
この状態を如何にして無くさせるか。 それは、不動産に携わる人間の資格を厳しくして、住宅の評価を正しくさせるしかない。 
2013年の統計速報によると、構造別では木造3011万戸のうち、木造が1326万戸で、防火木造の方が1685万戸と防火木造の比率が56%と高くなってきている。 また、ペアガラスを採用した住宅は1081万戸に増えている。
そして、それらの高性能住宅が、如何に綺麗に住まわれ、またメンテナンスも正しく行われているかどうか。 そういったことで住宅と環境を正しく評価出来る不動産業者がとれだけ増えるかと、どれだけまともな耐震・断熱気密改修工事が行われるか。 住宅の評価が正しく行うには、以上の条件整備が不可欠だろう。

3つめは、「性能の悪い住宅の排除する」 という法律を成立させること。
築25年で価値がゼロになるような住宅を、これからは一切建てさせてはならない。 出来るだけ鉄骨住宅を排除して、Q値は最低1.3W、気密性能は0.5cu/u以上の、防火木造建築にして行くべき。 もちろん、郊外の一軒家の場合は防火木造に拘らなくても良いだろうが‥‥。
これは、どこまでも私の考えであって、住宅の技術に暗い著者の意見ではない。 著者は景気浮揚策としての新築住宅のいたずらな増加に警告を発してはいるが、大企業や国交省に配慮して、新築増加抑制のための具体的な提言が皆無。
もはや、やたらに戸数を追う時代は終わった。
戸数を追うのは中国などの途上国。 中国では900万戸という新築需要のうち3階建以下の低層住宅の比率は3%で、97%は中高層マンション。 インドなどの人口の多い国で都市化を進めるには、それ以外にはない。
ドイツやフランス、イギリスなどでは、新築住宅需要に変わって中高層住宅の断熱・気密改修が主力になってきている。 日本でも大都市では、マンションなど中高層の共同住宅が主力となってゆく。 しかし、公団や公営住宅の断熱改修工事は圧倒的に遅れている。
一方、地方ではこれからも低層木造住宅の需要が根強いはず。
古い木造住宅をホールダウン金物と構造用合板で断熱改修を行い、100ミリ以上の吹込み断熱材で外壁、天井、床を断熱・気密補強をし、トリプルサッシで結露をなくしてゆく。
新築住宅の場合は、壁や造作材の劣化を防ぎ、アフターメンテナンスを極端に少なくしてくれる湿度コントロールが不可欠となってこよう。
そうした政策が出揃って、日本の「空き家」問題は初めて解決されるのではなかろうか。

つまり、地場ビルダーも大きな転機を迎えていることを、2013年の統計速報から読むべきなのだろう。

posted by uno2013 at 08:44| Comment(0) | 書評(建築・住宅) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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