2014年09月05日

宇宙エレベーターで太陽発電宇宙基地が建設出来るのは2050年?


宇宙エレベーター協会編 「宇宙エレベーターの本」 (アスペクト 1600円+税)

エレベター.JPG

2010年の上半期面白本ベスト10で、石川憲二著「宇宙エレベーター」を取上げている。
しかし、あれから4年間たって、やっと宇宙エレベーターの建設予定地とかその構造体、必要建設費などかなり具体的な検討が進んできている。 しかし、肝心の真直ぐ上に伸びる10万kmにおよぶケーブルの製造技術は、未だに目鼻が立っていない。
アメリカでは20年以上も前から、「太陽光発電宇宙基地建設構想」 が打ち上げられていた。
地球の上に太陽光パネルを並べるのは、雨や曇りの日があるだけでなく、夜は一切発電してくれない。 パネルの効率が30%に上がったにしても、効率が悪すぎる。
したがって、砂漠や屋根に太陽光を敷設するのは許されるのだが、耕作地などにパネルを敷設するのは、「愚の骨頂」と言われてきた。 その愚の骨頂が、メガソーラーの名で日本で進行しているから情けない。

アメリカの宇宙太陽光発電ステーション基地構想の最大の弱点は、「パネルなどの必要資材を如何にして宇宙まで運ぶか」 にあると言われていた。 ロケットで運ぶとすると現時点では1回当り数10億円から100億円程度の打ち上げ費用がかかってしまう。 数10億円もするロケットの機体を使い捨てにするからだ。 しかも、必要資材を大量に運ぶことは出来ない。
仮に、宇宙太陽光発電基地建設のために1000回もロケットが打ち上げられたとする。 その打上げ費用だけで10兆円がかかってしまう。
また、原子力発電1基の能力は100万kWと言われている。 1基の建設費を仮に500億円として、200基を建設するとなるとこれまた10兆円。 国単位ではなく地球規模で考えると、最低そのような投資が必要になる。
これに対して、宇宙エレベーター協会から委託を受けて、大林組が設計した宇宙エレベーターの総建設費が10兆円。 
もちろん、宇宙エレベーター協会が構想した宇宙エレベーターの設置目標は、高度 36,000km の静止軌道に設置される一般消費者対象の 「無重力体験ツアー基地」 であり、57,000km に設置される 「火星連絡ゲート」 と、それに 96,000km に設置される木星や小惑星への玄関口になる 「太陽系資源探掘ゲート」。
それのおまけとして、静止軌道に 「宇宙太陽光発電衛星」 を設置することを考えているにすぎないように見える。

この著書で対談に応じている田原総一朗は、次のように述べている。
宇宙開発の動機は、冷戦だった。 アメリカが原爆を持ったのでソ連も持った。 ソ連が宇宙飛行に成功したのでアメリカが月旅行を強行せざるを得なかった。 どちらがより先へ進むかという競争が始まった。 しかし、この競争は1991年のソ連の崩壊によって終わり、宇宙開発戦争の目標がなくなった。 NASAの予算も縮小されてきている。
ところが、「環境」 という新しい目標が生じてきた。 最近は温暖化の影響で海水温度が上昇し、日本は台風や集中豪雨で大騒ぎしている。 それどころか、今世紀中に地球の気温が4.8℃も上がると言われている。 集中豪雨や土砂災害が今よりはるかにひどくなる。
2050年には世界のエネルギー使用量が今の2倍になると言われている。 今世紀末には3倍以上となり、地球環境はますます悪くなってゆく。
CO2の削減の有力な方法として原発と核融合が考えられていたが、福島原発で日本では新設が困難になってきている。 そこで、注目されてきているのが「宇宙太陽光発電」。 冷戦に変わって環境問題が人類を追いたてている。 
もはや、アメリカがどうしたとか、中国がどうだとか、ソ連がどうだとかと言っておれない。
人類の共通の目標として宇宙開発問題が提起されてきている。

私は、この田原論に大賛成。 10兆円で宇宙エレベーターが出来るのであれば、1基と言わず4〜5基も設置して、宇宙太陽光発電の時代にすべきだと思う。 ところが、宇宙エレベーターの適地は、赤道上にたった3ヶ所しかないという‥‥。
そういった、宇宙エレベーターに関するいくつかの疑問を、大林組の設計と東海大佐藤講師の解説をもとに、眺めて見ることにしょう。

まずエレべーターということに対する誤解。
エレベーターというと、反対側に錘のついた、立ったまま乗り込む普通のエレベーターを私どもは想像してしまう。 そうではなくて、宇宙へ向かって真っすぐ走る“列車”だと考えた方が理解が早いという。 しかも、約15〜18帖ほどの個室になっているらしい。 客船の個室と考えた方が良いようだ。 ただ、この個室には窓がついていない。 
というのは、宇宙には寿命が尽きた人工衛生や、捨てられたロケットの破片などが一杯ある。 10cu以上のデブリと呼ばれる廃棄物の軌道は分かっているので、それを避けて運転されるが、衝突して出来た10cu以下のゴミの存在は分からない。 したがって、列車は小さなゴミが当っても被害が出ないように国際宇宙ステーション並の防護がなされ、小さな窓しかついていない。 風景は、カメラが写すものをテレビ画像で見るらしい。
この列車の速度は、少し前の新幹線と同じように時速200kmというところ。 したがって、36,000kmの静止軌道ステーションに着くまでには、途中に火星重力センター、月重力センター、低軌道衛星投入センターなどの停車駅があるので、8日間ぐらいかかる。 新幹線並の速度だから、車酔いなどの心配はない。 また、高度20,000kmまでは、重力は軽くなるが、飲物や食べ物はテーブルの上に置いても問題がないので、安心して旅をすることが出来る。
そして、無重力を体験するには片道8日間かかるというから、宇宙の旅は 暇との闘いということになる。 もし、96,000kmの太陽系資源探掘ゲートまでゆこうと考えると、片道で1ヶ月近い日時を覚悟しなければならない。

列車はレールの上を走る。
つまり、宇宙エレベーターにとってもっともポイントになるのがこのレールに匹敵するケーブルの敷設。 何しろ10万kmにも及ぶ長くて軽くて、しかも宇宙に存在する大小様々なゴミがぶつかっても損傷しないものでなければならない。 さらに重力と遠心力にも耐えねばならない。
そんな素材がこの世に存在するか?
1991年に、飯島澄夫博士により引張り強度が鋼鉄の20〜100倍もあるといわれるカーボンナノチューブの発見により、理論的に宇宙エレベーターのケーブルの可能性が得られた。
しかし今のところ、実際に作ることが可能なカーボンナノチューブの長さは数cmのものにすぎない。 10万kmの長さの太いケーブルがいつ頃までに製造出来るようになるかについては、誰も答えることが出来ない。
しかも、10万kmのものだと、ロケットで打上げるにしても最初は極細のものでしかあり得ない。 それをどんどん補強して太くしてゆく。 なにしろ、どれだけの重さのものを運べるかは、このケーブルの太さによるという。 したがって、どれだけのた太さが可能かについても、誰も答えられない。
そして、最初は低高度の貨物の運送から初めて、次第に静止軌道までの貨物輸送用として使われ、安全度が確かめられてから観光ツァー客を運ぶことになろう。

一方、列車そのものの開発だが、宇宙エレベーター協会が主催する技術競技会が2009年より毎年開かれている。 毎年開かれているのは日本だけだという。 第5回となる2013年には高度1100メートルの昇降に成功している。
しかし、これもまだまだ初歩段階で、本格的な技術開発というには程遠い。
大林組が設計した宇宙エレベーターは、赤道直下の海上に発車駅 (アース・ポート) が設けられている。 見学者用の宿泊施設などは陸上に設けられており、発車駅までの海上は円形の弾丸道路で結ばれている。
そして、36,000kmの静止軌道ステーションおよび宇宙太陽光発電衛星と、96,000kmの太陽系資源採掘ゲートなど、6ヶ所のゲートが用意されている。
これ等の全ての施設の建設費用が約10兆円で、完成するのは2050年と大林組は予想している。
果たして、この価格と予定年に完成するかどうか?
また、この宇宙エレベーターの開発主体や費用の分担などについても、一定の国や企業に偏ることがないように、Q&A式で答えてくれている。

何度も言うが、宇宙太陽光発電に対する意識が低すぎるのが気がかり。 だが、宇宙エレベーターが抱える技術的問題点をはじめ、制度上の問題点など教えてくれており、一読に値する。

posted by uno2013 at 19:09| Comment(0) | 書評(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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