2014年08月20日

ITを上回る電力市場を未来産業化するイノベーションとは!


中島洋著 「エネルギー改革が日本を救う」 (日経BP社 2000円+税)

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この著は、個人の考えを述べた著作ではない。 
1991年に国際大学にグローバル・コミュニケーション・センターが設立された。 
その中で、情報・通信技術分野をベースに活動してきた経営者らで構成するFTMフォーラム (未来技術経営フォーラム) に集ったNTT、東芝、日本IBM、パナソニック、大和総研等をはじめとして、経済産業省、東大、慶大、東理大、国際大、立命館大など産官学のメンバー24人が、3年前より日本の技術開発の在り方を議論してきた。
インターネットの急進展に追いつけずアメリカに大きく離された日本。 一方、安く大量生産する新興国の攻勢に押されて、得意芸だった産業も空洞化する‥‥。 この現状を打破するには、従来の常識を覆すイノベーションに期待するしかない。
政府は、これからの産業として農業や医療機器や介護産業をあげているが、情報・通信分野の技術を最大限に生かす場としてFTMフォーラムは電力市場に狙いを定めた。 しかし、電力ということになると、避けて通れないのが原発。 
しかし、村上憲郎座長は、原発に触れることをタブーとした。 それを議論する場はいくらでもある。 それにとらわれると、新しい技術開発の道が見えてこない。 この判断は大変に正しかったように思われる。 原発以外での活発な議論が進み、いくつかの画期的なイノベーションの方向が見えてきている。
その議論を FTMフォーラムの主幹で、国際大教授の中島洋がまとめたもの。 元日本経済新聞の編集委員であった著者は、自分の考えを抑え、最大公約数をまとめ上げている。
そして、イノベーションの範囲は、スマートハウスをはじめとして多岐に亘っている。 全体像を知りたい方は、この著書を読んでいただくしかない。 
紙数も限られているので、私は自分が印象に残ったイノベーションだけを紹介したい。

まず、最初に挙げれているのは、「直流給電」 の採用。
現在の家電では、装置が動く最後の段階では直流給電。 携帯電話、パソコン、テレビ、ラジオも直流だし、洗濯機やエアコンなどモーターを使うものも直流。
交流のまま使えるのは熱や光を出すドライヤーと白熱灯ぐらい。 白熱灯は急速にLEDの直流が主流になってきている。
今までは、大きな発電所が開発され、それが細かく枝別れして各家庭に電力が配布された。 その方が生産性が高いのでコストが安く、発電も安定している。 この場合の送電は交流。
この電力供給システムの根幹は急には変えられぬ。
しかし一方で、直流型マイクログリッドの「オープンエネルギーシステム」の実験も行われている。 各家庭に太陽光電池と蓄電池を備える。 こうした分散電源のほかに、小規模水力発電を併設する場合もあろう。 そして、住宅同志を自営の電線で結んで、直流電力を融通し合う。
こうした小さ自然エネルギーでのネットワークシステムの場合は、直流型のマイクログリッドシステムと呼ばれる。 インターネットの蜘蛛の巣状のシステムは世界に繋がったが、自然エネルギーシステムの蜘蛛の巣状は世界につながらない。
そして、開発された当時は、だれも携帯電話が主流になるとは考えていなかった。
日本のように、電話網が張り巡らされていた国ですら、携帯電話が主流になってきた。 まして一般庶民に固定電話が普及していない後進国では、固定電話を飛び越えて携帯電話の普及に拍車がかかっている。 
同じように、自然エネルギーの直流型マイクルグリッドシステムも、後進国では携帯電話のように飛躍的な普及を見せるかもしれない。

さて、問題は電池。
素人の私は、電池は価格が最大の問題だと勘違いしていた。 一番問題になるのは、その寿命だという。
リチウムイオン電池は、充電・放電を300回から500回くりかえすと、性能が劣化する。
このため、イオン電池に、「オリビン型リン酸鉄リチウム」 を用いると、寿命が大幅に延びるて、数千回までに延ばせるという。「これだと、10年ぐらい利用し続けることも可能ではなかろうか」 とのこと。
この「オリビン型リン酸鉄リチウム」の分野で、アメリカのA123社の奪い合いが話題を呼んだ。
このA123社はアメリカのエネルギー省から2.5億ドルの補助金を受けたベンチャー企業。 しかし、日米の自動車メーカーに採用を働きかけたがほとんど反応がなく、2012年に経営が破綻。
その買収をめぐって、中国の万向集団と日本のNECなどが競り合いに。 入札の結果は万向集団の勝ち。 しかし、NECは諦めなかった。 電気自動車向けの電池部門以外の、大企業や電力事業者に提供する「A123エネルギーソリューション部門」を万向集団から買収する交渉を進め、今年の3月にその買収に成功したという。
IT産業は、他の業種との融合によって適用領域を拡大してゆくことが次の重要な戦略。
ITを基盤にした農業、医療、教育、自治体、中小企業の育成というイノベーションが、これから本格化しょうとしている。 
その一方で、電力業界のことはIT企業の視野には入っていなかった。 巨大ユーザーである電力業界は、必ずしもイノベーションを歓迎するわけではない。 しかし、地球温暖化と再生エネルギーの活用が直近の大課題として浮かび上がり、エネルギーはIT産業が挑戦する新しい領域になってきたのである。

もう1つだけ付け加えておこう。
8月5日付と10日付で紹介した浮体式洋上風力発電。 それをこの著でも大きく取上げている。
資源エネルギー庁の新エネルギー対策課長・村上氏は、福島沖で実証実験が始まった浮体式洋上風力発電について、その構想から実施までわずか1年半しかかかっていない速さに驚いている。
「風力発電の場合、通常は計画だけで2〜3年、それから工事にとりかかるので、5年ぐらいかかるのが一般的。 それなのに、福島沖は異常なスピード。 これだったら、東京オリンピックの年までに原発1基分の洋上風力発電を完成させたい」 という。 当然、変電所も。

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村上氏が特に強調するのは、日本の技術力の確かさ。
浮体物を固定させる1本200kgのチェーンを造ったのは兵庫の中小企業。
当然変電所も洋上に浮かべ、チェーンで留める。 その変電所は1メートルも動かないし、傾斜は1度も傾かない。
変電所のコアの部分にも日本の技術が使われている。万が一 30度傾いても大丈夫なように、日立では過酷なテストをくりかえしている。
洋上変電所で変圧した電気は海底ケーブルで陸上へ送られる。 その海底ケーブルを敷設するのはロボット。 海底にジェット気流を吹込み、ケーブルを地下1メートルに埋設してゆく。 この技術体系が確立すれば、間違いなく世界をリード出来る。
「地上の立地での風力施設は、ヨーロッパではもう満杯。 これからは、深海での浮体式に変わらざるを得ない。 価格的な面が改善されると、日本の技術は世界に飛翔する」 と村上氏は断言する。
そして、「地上の風力と海上では、同じ風力でもメンテナンスを含めて全く別の産業。 洋上エンジニアリングに関しては、北欧に完全に遅れてしまった。 しかし、日本は浮上式システムの完成で、北欧に追いつける」 という。 期待は大きい。

posted by uno2013 at 15:26| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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