2014年08月16日

柱と梁を使いすぎて材積過多の金物工法と中層賃貸頼みのCLT


昨日、新住宅ジャーナルの9月号が送られてきた。
「耐火木造建築と木製サッシ特集」 とあったので、いち早く開いて読んでみた。
木製サッシ特集は少し肩透かし気味だったが、論壇では日経新聞の 「木材大国への道」 の間違いを指摘していたし、1時間耐火木造建築特集と、「国産材スタイルツーバイフォーの家を創る会」 の発足記事は、それなりに読ませた。
たしかに、林野庁の言うとおり、日本の森林は1秒間に3m3ものスピードで成長している。
しかし、日経の言うように、「大型製材工場が各地に立地し、価格的にも割安感が出てきた。 だが、米ツガ丸太(径30cm上、長さ6m) とスギ丸太(径30〜36cm、長さ3.65〜4m) を単純に m3 換算して、国産材が安い」 と決めつけるのは、勇み足。
外材の輸入は、かつての丸太輸入から製材品輸入に変わってきている。 そして、米ツガは高値で売れる内装仕上げ材に使われている。 一方、日経が安いと叫んでいるサイズのスギ丸太は、梁桁材やハガラ材にしかならない並材。 価格だけで両者を比較するのは、大間違い。
それに、現在安く出回っているのは伐採後に植林の手間暇を計算していない間伐材が主流。 
日本の山の生産性を上げてゆく近道は、やはり山道の整備とそれなりの機械化しかないのかもしれない。

しかし一方で、国産材のスギ丸太やスギ集成柱や集成梁を使った金物工法による木軸木造住宅が増加しているのは事実。
新住宅ジャーナル誌は、この金物工法普及の先兵として活躍している月刊誌。
実際のところ、阪神淡路の大震災で在来木軸の通し柱が折れ、軒並みに1階がぺシャンと潰れて多くの圧死者を出した。 その悲惨な実態を見た時、「在来木軸は、もう2度と蘇れない!」 と感じた人は、決して私だけではなかった。 日本の木質構造の神様と言われた故杉山英男先生も同じ感想を持っておられた。
ところが、日本人というのはすごい。
通し柱が折れないように、柱に溝を刻まない 「金物工法」 なるものを発明した。
杉山英男先生が力説されていたことがある。 それは、「日本の伝統的な木軸工法は、大正時代以来に普及した 《細い柱によるスジカイ工法》 ではない。 太い柱を大前提にした 大貫 (おおぬき) 工法である」 と。 
江戸時代に完成したといわれる木軸工法。 しかし、日本の大工さんは大貫工法以外の耐震の技術を持っていなかった。 わずかに土壁に頼っているだけで、何一つとして参考になるものがない。 そして、杉山先生がその名著「地震と木造住宅」で検証されているように、1930年の北伊豆地震では大黒柱を持った農家型建築の方が、しもたや型建築よりも被害が多かった。 これは小黒柱が多くの刻みで折れたのが主原因。
その太い柱と大貫材が次第に入手できなくなって、大正時代以降に3.5寸という細い柱とスジカイや方杖が採用されるようになった。 これは、やむを得ない最低の選択肢。 

つまり、大工というのは地震や大火の災害に対して何一つ責任を取らない‥‥というよりは一切の責任が取れない単なる職人にすぎないことが、誰の目にも明確に。 
そんな職人に、耐震性や耐火性だけでなく、性能保障や完成保障、更には長期のメンテナンス保障を求めることが、本来的にムリな相談。 
その結果、責任の取れるビルダーの誕生を促し、同時に金物工法の開発となった。
この金物工法は、通し柱が折れないという面では画期的な意義を持っていた。
とくにすごいのは、ラーメン工法の開発。 これは世界に誇ってよい素晴らしい技術。
しかし、世界の木質構造体を比較研究した結果として生まれたものではなく、どこまでも日本の木軸の改良型という面が強すぎた。 
それが顕著になってきたのが、28ミリという厚物の床用構造合板の開発。
この開発で、それまでは1.5尺 (455ミリ) 毎に必要とされていた根太が不要になってきた。
1階は3尺 (910ミリ) 毎に土台と大引きを入れ、2階は梁を入れてゆけば構造的に処理出来るようになってきた。
3尺毎に梁が入れられるようになったので、逆に3尺毎に柱が必要になってきた。
この結果、3つの面で大弱点が金物工法に育まれてきた。

(1) 最大の欠点は、3尺毎に柱と梁が入るために、金物の使用と木材の材積がやたらに増え、
金物工法による木軸工法は やたらにコストが高い工法になってしまい、大衆には手が届きにくくなったこと。

(2) 内部の壁にも3尺毎に柱が必要であり、その柱を土台に固定するために28ミリ合板に柱型をくり抜かねばならず、手間暇がかかるだけでなく、一体床が持つダイヤフラムというメリットが大きく損なわれたこと。 
さらに言うならば、内壁の柱までは金物で土台に固定することが難しく、直下型地震の折には中通りの柱が床合板から飛び出す怖れが高いこと。

(3) 柱が3尺間隔に入るから間柱は28ミリ程度と細材を使って節約ざるを得ない。 このため、外壁ボードや内部の石膏ボードの固定が不十分。 したがって、ツーバイフォーのように石膏ボードを耐力壁としてカウントすることが困難に。
とくにツーバイフォー工法のように外部の構造用合板、内部の石膏ボードとも1.5尺入ったスタッドから張り出すことは出来ず、開口部隅部を横凹に抜くことにより強度を増し、亀裂防止を防ぐというメリットが発揮出来ない。

そんなわけで、最近の金物工法の現場を見る度に、その生産性の低さと総合的な省エネ性能の低さに 私は呆れさせられている。
私は北海道の仲間と、10年前に金物工法の改善方の提案を行っている。
それは外壁の4隅と壁の長さ2.5〜3.0間を超える部分には606通し柱を入れて、ホールダウン金物で固定する。
そして、外壁は206でパネルを組み、通し柱の間に嵌め込んでゆく。 このパネルは、断熱材の吹込済みの物でもよい。 ただ、4隅部の455ミリの部分には断熱材を充填せず、この部分のボード張りも現場施工とする。 当然壁を継ぎ足す部分の外壁合板は、606の通し柱を挟んで現場打ちとして一体構造化する。 つまり、206の壁パネルであっても完全に一体壁にすることが出来る。
そして、外断熱という耐震性の弱い手法に依存しなくても、熱伝導率の優れた断熱材を選べは、206の充填断熱材で内地ではQ値が0.9Wの省エネ性能は確保出来る。
内部の壁は204のパネルと通し柱で十分。
そして、側根太、端根太とも3-212の合せ打ち材として胴差しとマグサを兼ねる。 また、3尺毎に梁を入れるのではなく、455ミリ間隔に212のジョイストを入れて行く。 206の壁に26ミリ乗っかるので金物は不要。
床合板は15ミリ厚で十分。 通し柱の部分だけを抜いてダイヤフラムとする。
そして、2階の壁パネルを挟込み、3-206の敷桁を回して天井根太を取り付ける。
後は屋根タルキパネルの取付。
この方式は、すでに北海道のビルダーが実証済みのもので、札幌などでは堂々と確認が下りる仕様として半ば公認されている。

こうした、優れた省資源、省コスト仕様が存在しているのに、何故金物メーカーは集成材の梁と柱に拘っているのか?
たしかに、3尺毎に梁を入れた方が、金物を多用するのでメーカーとしては儲かる。
したがって、メーカーとしてはツーバイフォーとの混淆品だと商売になり難いということは良く分かる。 したがって、金物メーカーでなく、地場ビルダーが中心になった動くべき性質のものかも知れない。
そして、国産スギで206材を挽いてくれるなら、たとえ強度が若干落ちようとも、鉛直荷重を支えるには十分。 北海道住宅の会が推進しているように、単に204や206材だけでなく、針葉樹ランバーと国産材を使ったTJIなどのジョイスト工法の採用も考えられる。
国産材をうまく使ったツーバイフォーによる金物工法こそ、私は近未来の本命工法だと考えているのだが、故杉山先生のような強力なバックアップ者が不在のために、もたついている。

そして強調したいのは、林野庁はCLTを本命視していることに対する疑問。
私はCLTを木質のPC版として、以前から高く評価してきた。
コンクリートのPC版が普及したのは、主として公庫や公団の中層賃貸や分譲住宅用の分野。 そのPC版の需要開発にポイントを置かないかぎり 普及はそれほど期待できない。
高層建築だと、CLTよりもLVLや集成材によるラーメン構造の方が、はるかに効果的ではないかと考えている。
そして、低層住宅だと、206材によるものの方が、耐震性や耐火性、さらには省エネ性能の担保という面で、遥かに勝る。

そういった意味で、林野庁は本気で206と606材による金物工法の開発に、目を向けていただきたいと熱望したいのだが‥‥。

posted by uno2013 at 08:01| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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