2014年08月05日

“脱原発派”が唱える 熱い自然エネルギー革命‥‥(下)


大下英治氏は、すでに孫正義氏に関する2冊の本を書いている。
このため、この著書でもソフトバンクのエネルギー政策についてかなりの紙数を使って触れている。 しかし、孫氏の考えはどこまでも買取価格を前提にしたもので、イノベーションには一切触れていないので片手落ちという感が否めない。

この著書でも、「メガソーラー」 というのは、まるで電力を生みだす魔法の杖のごとき扱いを受けている例が多いことを指摘している。 耕作放棄地に中国産の安いパネルを並べ、電力の制御のことも考えずに、電力会社に 「この電力を買え!」 と迫る業者が出てくると、あとで大変なことになる可能性が高い。 整備や管理体制がしっかりしていない事業者が逃げたりする場合の、パネルの撤去にかかる手間とカネのことを筆者は心配している。
また、先に開催された PVJapan 2014 でも、現時点での平均設備利用率は13%程度と低く、パネルの製造段階や取付段階で使われる電気の総使用量を考えると、決して省エネになっていないという意見さえ聞かれた‥‥。 
現在の技術程度では、実験室段階ですら最高の設備利用率は25%で、市販されているものの最高値は20%程度。 これでは、太陽光を利用すればするほど、国民の電気代負担率が増えるだけ。
決して褒められる内容とは言えない。
 
やはり、利用効率が30%以上の技術を開発することが先決。 これだと、今までの電気代と変わらない価格で電力会社や個人が設備を揃えることが出来る。 それこそが目的。
それ以外では、かつてNHKの 「サイエンスゼロ」 が取上げていた砂漠の砂を利用してパネルをつくり、世界中の砂漠で安価な太陽光発電を行い、これを世界を繋ぐ電磁波電線網を利用して一日中電力を供給するという案。 これは夢のようだが、なかなか説得力を持っていた。
あるいは、強力なリチウムイオン電池を開発して、砂漠で発電した電気を蓄電し、かつて石油を運んだタンカーで日本へ運ぶという案も検討に値しょう。 しかし、「人材を育てるホンダ、競わせるサムスン」 の著者・佐藤登氏によると、「電動工具など民生用のリチウムイオン電池では、日本は完全に韓国の後塵を拝するようになってきている」 と断言。 
「日本が進んでいるのは、電気自動車とか電池自動車という、技術面で世界に先行する自動車に絡んだリチウムイオン電池だけだ」 という。 
たしかに、トヨタの燃料電池自動車 (FCV) は本年度中に発売される予定だし、ニッサンや三菱自の電気自動車 (EV) は、来年度には発売される予定。 したがって、リチウムイオン電池の開発と、圧縮機の不要なスタンドの建設計画なども一気に進むものと考えられる。
この著書でも 「究極のエコカー・燃料電池車」 を取上げているが、記述内容が時間的に古いので、全面的に紹介出来ないのが残念。

これに付随して、家庭用燃料電池の 「エネファーム」 も取上げている。 ただし、電気は良いが同時に発生する熱を、これから中心になる老人などの小家庭では 本当に消化しきれるかどうかを心配している。
たしかに、われわれの意識の中には、原発を大前提とした時代の思考が残っている。 原発が主流の場合は、勝手に発電を停められないので、深夜電力とかゴールデン・ウィーク期間中の電力の消費が大問題であった。 このため、エコキュートの普及こそが最善の解決策だと信じられて政策の中心に据えられていた。 
こうした背景もあって、日本では太陽光だけがチヤホヤされ、ドイツの最先端住宅のように 太陽熱を大切にするという意識があまりにも欠けている‥‥。
オール電化住宅を盲信することも、改めなければならないだろう。
さらには、10年以上もまえから欧米で検討されていたように、宇宙空間で発電し、それを地上へ送るというイノベーションでないと、太陽光発電の単価的は 絶対に安くならないのでは‥‥。
太陽光の不当な買取制度の高さだけを金科玉条として、踊らせられている現状から少しは離れて、冷静に考える必要があろう。


次は風力発電。
この著書では、陸上の風力発電に対しては、北海道以外では否定的。 陸上で安定的な風力が期待できるのは東北以北。 騒音のことを考えると、北海道以外では難しい。 その北海道では送電線という大問題がある。
ということで、筆者が積極的に取上げているのは洋上風力発電。 
環境省は、2030年までに原発8基分に匹敵する803万kWにまで洋上風力発電を増やす計画。 2012年に、銚子沖3.1キロメートルに2400kWの洋上風力が完成しており、著者はそれを訪ねている。
そして、目玉になるのは《福島復興》のシンボルとて、経産省が2012年から計画している浮体式洋上発電。
丸紅、菱重工、新日鉄など10社と東大が共同で手掛けているもので、2012年に2000kWを計画し、2013年から2014年にかけて7000kW2基を追加して実証実験を行う。 その後は民間で100基程度の洋上風力発電を建設し、原発1基に匹敵するものにする計画。
この開発には想像出来なかった新技術が登場してきており、日本の成長戦略の1つになるのではないかと筆者は期待している。 しかし、洋上風力発電は陸上に比べてコストが2倍もかかるというデメリットがある。 このため、今年から20kW以上の陸上の買取価格22円+税に対して、36円+税という洋上風力発電の買取価格制度の新設を発表している。
ただし、ヨーロッパのように、海岸線から見えない位置に立地するように指導してほしい。


次はマグネシウム発電。
これは2012年に東北大の小濱教授グループが発明したもので、リチウムイオンに変わるものとして期待されているもの。
そもそも開発されたのは、時速500キロで走るエアロトレインの車体。 マグネシウムはアルミの60%の重みしかない。 難燃性マグネシウム研究のオーソリティである産総研の坂本氏の紹介を得て、時速200キロで新幹線の半分、リニアモーターカーの1/5という画期的な超低燃費性能を獲得している。
この時は、電池とは全く無関係。
「燃えにくいマグネシウム合金は、もしかしたら電池としての能力があるかもしれない」 と考えた教授は、マグネシウム合金を海水に浸して即席で電池をつくり、小型のファンを回してみた。 仕事が立て込んでいたのでそのまま3週間放ったらかしに‥‥。
仕事が一段落して、帰ってきた時に聞いてみた。
「いつまで回っていた」 と聞いたら、「まだ回っています」 との返事。
マグネシウムには発火、燃焼を抑えるためにカルシウムが添加されているからの成果だった。
発電したマグネシウムは酸化する。 しかし、1200度で熱すると酸素と触媒が反応して再びマグネシウムだけを取出すことが出来る。
このあと、多面的な実験を行い、砂漠の太陽熱を利用すればマグネシウム燃料電池をリサイクルできるということが分かってきた。 
マグネシウム電池の最大の魅力は、その蓄電能力がリチウムイオン電池の10倍もあるという点。
しかし、砂漠の太陽熱の技術は、コスト問題と絡んで簡単に開発できない。 小濱教授は、「5年以内に研究開発のメドをつけ、なんとか実用に向けてまい進したい」 という。
マグネシウム・太陽エネルギー循環構想が本格化すれば、真に持続可能な社会が、日本の技術によって開花することになるかもしれない。


次は、藻類のバイオマス石油。
藻類のなかのユーグレナ (みどりむし) については、今まで2度に亘って紹介してきた。 食料として、あるいは飼料として有効なだけでなく、最近ではサプリメントや化粧品としてもその知名度を高めている。
その一方、バイオエネルギーとしても藻類の研究は、アメリカをはじめ全世界で研究が進められている。
筆者が紹介しているのは筑波大・渡邊信教授。
教授は石油成分をつくる藻はないかとさぐった結果、「ポトリオコッカス」 にたどりついた。
ポトリオコッカスはオイル含量は乾燥重量の75%も占める。 しかし、培養には時間がかかるのが大きな欠点。 このため、生産コストは1リットル当たり800円と、石油の50円どくらべると16倍もして勝負にならない。
そんな時、渡邊教授は「オーランチオキトリウム」を2009年に沖縄沖で発見している。
ポトリオコッカスに比べるとオイル生成量は1/3と少ないが、36倍の速さで増殖する。 単純計算ではポトリオコッカスの12倍。
オーランチオキトリウムは4時間で倍々に増え、コストは100円以下、場合によっては50円で上がるかもしれないとというデータが得られた。
2万ヘクタール (200平方キロメートル) あれば、日本の石油の総輸入量2億トンの生産が可能だという。 これは、千葉北東部から霞ヶ浦の面積に匹敵するという。 ちなみに日本の耕作放棄地は約40万ヘクタールで、その5%の面積がオーランチオキトリウムの養殖池として活用されるだけで、日本は石油自給自足国になれる勘定。 
やたらにメガソーラー用地として、耕作放棄地の転用を急ぐ必要はない。
先生は、有機排水を培養に再利用するとか、東北の被災地で活用することを考えている。
「ともかく2013年に仙台市に、藻類バイオマス技術開発実験室が開所されたので、5年かけて実証し、2020年までには間に合わせたい」 と言っている。 
日本が、石油の輸出国になることも、まんざら夢ではなさそう。

紙数が尽きた。 海洋温度差発電に関しては別の機会としたい。

posted by uno2013 at 12:58| Comment(0) | 書評(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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