2014年07月25日

資源に対する意表な視点。火山国・日本の海は資源大国 !?


横瀬久芳著 「ジパングの海‥‥資源大国ニッポンへの道」 (講談社α新書 880円+税)

ジパングの海.JPG

こんなにもエキサイテングな著書が、あったのですね!
この著に前後して、今年の3月31日まで産経新聞に連載されていた楡周平氏の小説 「ミッション建国」 を読み、唸らさせられた。 選挙とか汚職とか、政治家の側面を捉えた小説はいくつか読んだ。 しかし、政治そのものを真正面から取上げた小説は今までになかった。 それは邪道なプロパガンダと見なされ、小説とは見なされてこなかった。 それなのに、敢えて政治を中心に据えた異色の中でも 極め付きの異色作品。 
少子化問題の解決策や尖閣諸島問題をまともに取上げている4章以降がとくに面白い。 だが、政治小説をこのブログ欄で取上げる勇気が、私にはない。 
したがって、斜に構えて資源物を取上げたけれども、これも学会と言う既得権の学閥に挑戦する核心的な政治問題なのかもしれないが‥‥。 
この 「ジパングの海」 も、4章以降が面白い。 桜島から南下して奄美大島にいたる薩南諸島のトカラ列島。 そこでの金鉱脈探しの実話苦心談が読ませる。 それを読み終えた上で、1〜3章までの全体的な背景を読むことをお薦めしたい。 

私どもが幼い頃から 耳にタコが出来るほど聞かされてきたのは、「日本は資源のない国。 だから石油をはじめあらゆる資源を諸外国から輸入し、加工して世界へ輸出しないと食べてゆけない国」 という言葉。
ところが中世ヨーロッパでは、700年前からマルコ・ポーロの 「東方見聞記」 で、日本のことを 「黄金の国・ジパング」 と呼んでいた。 
たしかに、江戸時代は金の小判で商売が決済されていたし、江戸時代の16世紀後半から17世紀初頭にかけては、日本の銀生産量は飛躍的に向上して年間の生産量は200トンにも及び、世界の銀生産量の1/3を賄っていた。
また、敗戦直後の盆踊りの花形は、「月がでたでた 月がでた‥‥」 の炭鉱節で、灯油が普及するまでは石炭産業の羽振りは大変なものであった。 鉱業は立派な産業だったし、主な財閥は鉱山で貯め込んだ資金を基に形成されてきている。
つまり、日本はオイルやガスは少なかったが、かつては石炭をはじめ金・銀・胴・鉄・亜鉛などの鉱物資源に恵まれた国であった。 しかし、高度成長期に需要の急増と低品位化によって、石灰石と鹿児島の菱刈金山以外はほとんど廃坑に追いやられてしまったが‥‥。

日本が、金や銀の産出国であったというのは、何も偶然のことではない。 
アメリカ人のアルフレード・ウェゲナーが、1915年に 「大陸と海洋の起源」 を発表した。 今では世界の常識になっている 「プレートテクトニスク論」。 
アフリカ大陸と南米大陸はジグゾーパズルのようにピッタリ一致する。 つまり、かつては大陸は1つの大陸だった。 それが、地球の表層部がマントルというプレートの動きに従って次第に分裂して移動してゆき、現在のような5大陸といくつかの島々に分解した。
マントルと言うのは岩で出来た硬い個体。 これが地殻の熱で温められて液体化して膨張して軽くなり上昇する。 その上昇力が少しずつマントルを周辺へ押しやっている。
この温められたマントルが上昇するエリアのことを 「海嶺」 という。
押されたマントルはやがて冷えて他のマントルの下へ潜る。 この潜るエリアのことを 「海溝」 という。 ご案内のとおり、日本にはユーラシアプレートが張り出していて、その下へ北アメリカプレート、太平洋プレート、フィリピン海プレートが潜り込もうとしている世界でも珍しい海溝地域。
硬い岩の下に硬い岩が潜るので、その摩擦熱で世界で452ある火山の75%はこの海溝地域に集中しており、地震の90%は環太平洋火山帯で起こっている。
そして、ドロドロに熔けたマグマが、地殻浅部で沈殿固化したのが浅熱水性鉱床。 だから、金山、銀山は海溝の火山地域に多い。

大航海時代に金銀を多産したのは南米のインカ帝国、マヤ文明、アステカ文明と日本。
南米の文明を崩壊させたのはスペイン。 1510年から1660年までに殺した人々は3300万人。 150年間に収奪された金は分かっているだけで181トン。 銀は1万7000トンにも及ぶ。
その後、1848〜1855年にかけて、サンフランシスコの郊外でゴールドラッシュが起こっており、
さらに50年後の1897〜98にかけてアラスカでゴールドラッシュが起こった。
さらに、パプアニューギニアのラドラム火山からは年間24キロ程度の金が回収出来る熱水が報告されており、ニュージランドのロトカワ地熱地帯では金が年間37〜109キロ、銀にいたっては5〜11トンも回収可能であると報告されている。
いずれも、環太平洋火山帯に属している。
つまり、海溝地域には 火山灰が降るとか地震が発生するという大きなデメリットはある。 だが、火山のおかげで日本は温泉に恵まれ、金や銀、銅、亜鉛、アンチモなどの鉱物資源にも恵まれていたということ。 マイナス面だけを捉えるのではなく、プラス面も合わせて捉えるべきだと筆者は説く。

世界には活火山と呼ばれるものが1500個あり、うち日本には110個あり、さらに九州〜沖縄地域にはそのうちの1/3に当たる32個がある。
日本の110個のうち、とくに噴火の頻度が激しい47個の火山に関しては24時間体制で観測・監視が行われている。そのうちの9個が九州にある。 さらにこのうちの8個はカルデレラ噴火と因果関係にある。
そして、南九州と地質環境がよく似ているニュージランド北島には、金鉱床がたくさん存在する。 つまり、トカラ列島の海底に金鉱床があることは、明々白々ど筆者は確信。 
金鉱山という宝探しのターゲットは、トカラ列島以外にはあり得ない!!
ということで、2007年から7年間に亘る宝探しの記録がこの著書。

ここで、筆者の略歴を紹介しておかねばならない。
1960年の新潟生まれというから、今年で54歳。 新潟大地質鉱物学を卒業し、岡山大で博士号を取ったという陸上火山学者で、無機化学分析をやっていた。 現在は熊本大の准教授。
しかし、1992年に外洋調査船に乗って以来、海洋底に関する研究の割合が次第に増加。 1990年代に海洋調査技術は長足の進歩を遂げ、学術的に深海底大航海時代が到来。
そんな時、3年間に亘ってハワイの海底を火山地質学的に研究するチャンスを得た。 有人潜水艦 「しんかい6500」 に6回も登乗する機会を得た。 ハワイ諸島やマリアナ諸島から得られた膨大な海底映像と地形データは圧巻。
そして、地球上の火山活動の3/4は海底で繰り広げられていることを知ったことと、欧米の海洋学の底の深さと凄い蓄積をみて、筆者は日本で初めて 「海洋火山学」 を創設している。
しかし、日本には東大や京大などの出身者で固めた海洋研究開発機構 (JAMSTEC) が存在している。 著者は何人かの知人のお世話になっているが、熊本という田舎大准教授などをまともに相手にしてくれない。
著者の言う宝探しというのは、「山師」 のやっていたこと。 今までは陸上を探しておれば、金山、銀山、銅山が発見出来た。 しかし、陸上の鉱山は掘りつくした。これからは 「海師」 の時代。 だが、海を調査するには調査船が不可欠。 独立行政法人・石油天然ガス鉱物資源機構 (JOGMEC) が採掘の対象にしているのは沖縄本島沖の 「伊是名海穴」 か、「伊豆〜小笠原弧べヨネズカルデラ」 という深海程度しかない。
民間にもさまざまな調査船はあるが、外洋域となると賃船料は数百万円/日にもなる。 とても年間何十万万円の予算しかない田舎大の研究費では賄えない。 
予算をたっぷり使える機構や独立行政法人が、海のものとも山のものとも分からないトカラ列島の調査に協力してくれるわけがない。 調査船がないと、丘に上がったカッパ。 身動きがとれなく茫然自失しているしかなかった。

ところが、まさかと思っていた科学研究費1000万円が獲得出来、東大の海洋研究船 「淡青丸」
を2007年3月と8月の2回に亘って使えることになった。 一方長崎大水産学部が所有する 「長崎丸」(842トン) を、9月の2日間と11月の5日間、7年間連続して借りられることになった。
そうなれば、必要になるのは海底に存在している石などの物質を剥がして持ってきてくれるローテクの金属製のバケツ・ドレッジの入手。 錆びないステンレス製だと小型のもので1台50万円。普通物だと150万円。 しかもこのドレッジは根がかりして失われる可能性が非常に高い。
予算のない調査に高価なステンレス製をロストしていたのでは、研究が続けられない。
そこで、錆びにくい全鉄製の口径40センチの円塔型を地元溶接業者に作ってもらい、たった15万円でチェーンバック・ドレッジを自作。
しかし、実際に使ってみると障害物に当たると折角かき集めた岩石を吐き出してしまうという致命的な欠陥が見つかった。
このため、改良に改良を重ね、最初の年にには2つの自作ドレッジを長崎丸に積んで出港したが、1つが損失してしまった。
その後口径60センチの物など2つを自作したが、以降は1つも損傷していない。
その間、サンプルとして採取した岩石は5000個以上で、岩石的分析に回したものは約300個。
しんかい6500だと、岩石1個を拾う費用が50万円もの費用がかかるのに対して、自作したドレッジによる費用は、1個5000円と1/100になっている。

そして、金山発見とまでは行かなかったが、輝かしい成果を上げ、NHKスペシャルで海底模様の映像と貴重な鉱石採取の映像が 全国に放送された。
その細部は、こ著を読んで頂くしかない。



posted by uno2013 at 07:01| Comment(0) | 書評(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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