2014年07月10日

急伸している《耐火ツーバイフォー》という名のイノベーション



2X4の10年推移.JPG

上の図を見てビックリした。
これは、ツーバイフォー建築協会が2012年の11月に発表した どこまでも推計値。
2013年度の実測の数値が発表されているはずだから、いつまでも推計値のままなのはおかしい。
なるべく早く時期に、実測値に切り替えることを強く要望したい。

(日本ツーバイフォー建築協会のホームページを開くと、一番上の欄の右寄り中央に 「ツーバイフォー建築」 という欄がある。 それをクリックすると、いくつかある項目の中に「ツーバイフォー大型建築物」 がある。 その中の、紫色の 「福祉施設」 を開くと、上の図に出会える。 その一番下には 「耐火木造による高齢者福祉施設」 という明治清流苑の正面写真入りのパンフレットと、淡い辛子色の「ツーバイフォー耐火構造による高齢者福祉施設づくり」というパンフレットが入手できる。 老人養護建築に関心のある人は一読の価値あり。ただし「会員限定」 とある 「耐火木造による福祉施設建設指針策定事業報告書」(2012年4月発行、91ページ) は、知り合いのツーバイフォー協会の会員社に頼んで開いてもらうしかない。このほかに、COFI (カナダ林産業審議会) にも、素晴らしい資料が数点ある)

まず、上図の説明から。
ツーバイフォー建築の新築住宅の着工戸数は、この10年来は10万戸前後。 マンションを含めた全住宅に占める比率は12%で、木造住宅に占める比率は22%というところ。
2004年に日本ツーバイフォー建築協会とカナダの林産業審議会が、共同でツーバイフォーによる耐火構造の大臣認定をとった。 それから、ツーバイフォーの耐火建築物の本格的な動きが始まった。
この耐火建築物を用途別、延面積的に見たのが上図。 
戸建住宅はこの10年来は2.2〜2.3万uと変わらぬ。 これに対してアパートなどの連続建・共同建住宅は2万u前後と、これも数年来不動。
これに対して、福祉・医療・教育・商業など 住宅以外の、いわゆる施設系建築物が次第に増え、2012年には3万uと、かなりの部分を占めるようになってきている。 そして、2013年にはその3万uが倍増し、6万uにもなり、ツーバイフォーの耐火建築だけで年間10万u近くにもなると ツーバイフォー協会は推計。
これは、決して根拠のない夢物語ではない。
協会で、ツーバイフォーの耐火構造と承諾を与えた建築物は、月平均で20棟を越すようになってきている。
なかでも多いのが防火地域の3階建ての専用住宅が63%近くを占めており、延面積は100〜200uのものが半分を占めていた。
しかし、2012年に行った 「耐火ツーバイフォー建築による養護老人施設の調査」 では、1500u以上の大型の養護施設の建設意欲が強いことを ヒシヒシと感じたよう。 
それまでも、年に数棟の大型建築物が散見されるようになってきていたが、2013年には1500uの養護施設が20棟増えると、それだけで3万uとなる。 それを確信できる情報を、各方面から得たのだろうというのが私の推測。 こうして上図は作成された。

私が現役の頃は、こうした耐火木質構造物はなかった。 札幌のよねくらホームが、今から20年ぐらい前に、120坪程度のクループホームを5棟とディサービス・センターを組み合わせた250坪程度の建築を、省令準耐火建築で建てていた。 しかし、この新しい動きは地場ビルダーの有力な武器として全国的に活用するということにはならなかった。
これに対して、耐火ツーバイフォーによる大型の特養老人ホームの場合は、吉高綜合設計コンサルタントが06年6月に大分市に明治清流苑を成功裡に完成させたのが大きい。 RC造の地下室668u(202坪) を持っており、1、2階のツーバイフォーは3801u (1150坪) で、延面積は4469u (1352坪)。
この成功を基に、同コンサルタント社は09年5月に別府市で特養「はるかぜ」を、10年6月には茨城・鹿島市で特養「大野の郷」を、11年には香川・多度津町で特養「かざみ鳥」を、13年3月には山梨市でサービス付き高齢者住宅「スローライフ山梨」を、そして今年の3月には福岡・吉富町で特養「さくら苑」と大分・中津市で特養「悠久の里」の2つを同時に完成させている。 大分県では3棟目の実績を積んでいるから、お見事。
そして、私が見た船橋市の工事中の特養「みやぎ台南生苑」は、今年の8月には完成予定で、9年間で8棟もの実績を挙げている勘定。 ツーバイフォーによる耐火特養建築でのトップランナー的な存在に‥‥。

この吉高氏が、ツーバイフォーにこだわる理由として、次の6点を挙げている。

●入居者や介護する者へのやさしさ。
まず入居者の気が和むことを第一番に挙げている。 RC造ではギスギスしていた入居者がツーバイフォーの施設に移って温和になった例が多く見られる。
そして、床が木のフローリングで温かく、裸足で歩いても冷たくはない。 このため、転んで骨折することが少ない。 また、家族の面会の機会が増え、滞在も長時間になってきている。
一方看護する側でも、RC造の時はナースシューズを履いてクッションで和らげないとダメだった。 それが木のフローリングだと、立ち仕事を続けても脚が疲れることがない。 
気が和んでくるので、入居者にやさしく対応出来る。 

●イニシャルコストがRC造の8割。
重量が軽いので、基礎杭や基礎工事が大幅にコストダウン出来る。
また、RC造は、型枠の設置に時間と費用がかかり、どうしても工期が長くならざるを得ない。
工期短縮による労務費、保険料、光熱費などの節減で、RC造の80%程度で上がるのが良い。

●地球環境にやさしい。
木は再生出来るし、木を使うことでCO2を長期間固定させることが出来る。 また、製造過程においてCO2を出さないので、CO2の排出量はRC造の半分で済む。

●償却期間が短く、経営面で有効。
RC造の償却期間は39年。 木造は19年で償却出来る。 耐久性はRC造並と考えられるので、キャッシュフローという面でははるかに有利。

●メンテナンスが簡単。
木造なので、メンテナンス性に富む。 少ない予算でリフォームやリフレッシュをすることが可能で、途中でイメージが変えられる。

●ランニングコストが低減。
断熱性、気密性にすぐれているため、冷暖房を中心としたランニングコストが大幅に下げられる。

この点については、最後まで疑問が残った。 というのは、吉高氏は温暖地・大分が主なエリア。
このため、どうしても断熱や気密の面で考えが甘い。 同時に視察した2つの完成現場を見ても、RC造に比べて冷暖房費が低いというだけで、本来のツーバイフォー工法が持つメリットがほとんど活かされていない。 また、太陽光をはじめとしたゼロエネ化の努力には3棟とも見るべき物はなし。 ランニングコストゼロに挑戦していない建築物は、正直言ってつまらない。

やたらにメリットを並べたが、工事現場を見た印象では、私は問題点の多さに驚いてしまった。
COFI では、ツーバイフォーの耐火大型特養建築をこなせるであろう60の実績業者リストを発表している。 その中に、私が知っている地場ビルダー仲間と設計事務所が皆無に近かった。 貴社の名が挙げられているかどうか‥‥。
まず、問題になる業者と設計者。 いずれも、ツーバイフォー工法と特養施設の両方について、詳しい知識がなければならない。
その上で、構造設計に明るくなくてはならない。 構造計算をして、耐震性を完全なものにしなければならない。 耐力壁と非耐力壁を見定めて、その上で避難計画を練り、集成材やLVL、平行弦トラスなどのエンジニアウッドを使いこなさねばならない。
その条件を満たした上で、完全な耐火設計力が求められる。 防火区画や排煙区画の策定と防火戸の選択。 それにもまして重要なのが15ミリと21ミリの強化石膏ボードの手当と、熟練した工事業者の選定。
さらに、設備・電気計画にも明るくなければならない。 配線・配管・配ダクト。 いずれも防火面とメンテナンス面で構造体の中を通す訳にはゆかない。 そして、耐力壁を貫通する時のディテールを完全に消化していなければならない。 ダクトの配置すらまともに出来ない日本の多くの設計士のことを考えると、頭が痛くなってくる。
その上での意匠設計。
そして、誰が構造図やパネル、トラス、基礎などの部分詳細図を書くのか?

設計だけではない。 これらの図面を完全に頭に入れ、フレーマーや石膏ボード工などに適切な指示を出し、現場を間違いないようにチェックし続ける現場監督。
そういった、超人的な現場監督が本当に居るのだろうか。
第一、ツーバイフォー協会の施工フローでは、工事監理者や耐火構造検査員の存在を軽く感じているように思えてならない。

しかし、いずれにしても、最初からすべてが分かった人間はいない。
チャンスを与えて、学ばせるしかない。
それにしても、気が遠くなるような高い壁。 しかし、壁が高いからこそ、チャンスも大きいと考えるべき。 
そして、出来るだけ工事現場や完成現場へ出向いて、問題点を洗い出さねばならない。 
今こそが、その絶好のチャンスと言えるのではなかろうか。



posted by uno2013 at 10:31| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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