2014年07月05日

右翼論者の「国家とエネルギーと戦争」と原発擁護論


渡辺昇一著 「国家とエネルギーと戦争」 (詳伝社新書 760円+税)

詳伝社新書本.JPG

今年84歳になった渡部昇一氏の著書は、どんなことがあっても私のブログ欄で紹介するなどということは、絶対にあり得ないと考えていた。 
氏の右翼的な思考は、雑誌などでよく拝見していた。 敵を知らずして、如何にこちらに言い分が正しくても 世の中に通用するわけがない。 つまり、反面教師として、著者の意見を拝聴し続けてきたわけ。
ところが、今回の著作は中国や韓国を批判している訳ではなく、客観的に太平洋戦争における日本の敗因を指摘し、戦後に資源のない日本が何故大発展できたのかを論じている。 その中には私どもが忘れている重大な指摘が多い。 このため問題点があるのを承知の上で、あえて取上げることにした。

司馬遼太郎氏の 「坂の上の雲」 で、ロシヤ艦体を撃滅させて全国的にその名が知られるようになった秋山真之。 
1904〜5年の日ロ戦争は、石炭をいかに活用するかの時代だった。 
大国・ロシヤを破ったのは、石炭エネルギーという近代技術をマスターした東洋の小国日本が、陸と海でロシヤを叩きのめした事件。
ところが、それから10年後の1914〜18年にヨーロッパを主戦場として行われた第一次世界大戦。
この時は、もはや石炭の時代ではなく、「石油と機械」 の時代になっていた。
当時は、国際社会では 「観戦武官」 という制度があり、日本の陸、海、空の武官はヨーロッパの戦争を観戦に行った。 その武官たちは、いずれも強烈なショックを受けて帰国。
心の底では、「日本はもはや大きな戦争は出来ない。 列強の大国と戦えば、必ず負けるであろうと感じたはず」 と著者は断言。
心ある軍人は本音ではそう感じても、口には出せなかった。 唯一の例外が秋山真之。
彼は、2度も観戦に出かけるチャンスがあったので、「これからの戦争は、機械の優劣で決まる。その機械を動かすのが石油。 それと、女性でも武器が作れる産業構造の時代だ」 と明言。 
しかし、秋山は機械に重点を置いた発言を繰り返して、「機械力が戦力の70%を占め、人力が占める比率は30%を割っている」 と力説。 石油のことはそれれほど触れていない。

陸軍では、かつて花形だった騎兵隊の役目が完全に終わつた。
海軍では、戦艦も石炭から重油に切替わりつゝあった。 その先陣を切ったのが1911年のチャーチルのイギリス。 インドシナの重油をイギリス本国まで運べる体制を作ることによって可能になった。 日本が全軍艦を重油に切り替えたのは、イギリスより20年近く遅れた1930年。
そして、飛行機がフランスを中心にものすごい勢いで発達し、ますます石油力がモノを言うようになりつゝあった。
秋山も 「これからの戦争は、石油がモノを言う時代」 とは分かってはいたが、口でいくら石油と叫んでも、当時は何にもできない。 石油掘削の技術で一番すぐれていたのはアメリカ。 そのアメリカに頼んで、満州や樺太での石油開発をやれば良かったのに、そういった発想が出来る人間が一人も居なかった。 とくに陸軍はアメリカには何一つツテを持っていない。
そして、スターリンは日本が支那事変で体力が消耗することを願っていたし、近衛文麿首相の周辺にいた左翼思想家たちが、支那事件をやめさせまい、やめさせまいと画策していたと筆者は書いている。
そして、支那事件が起こって2年目に、日本の誤爆で軍事施設以外に爆弾が投下され、アメリカは「道義的輸出禁止令」 で日本へ石油を売らなくなった。 当時の日本は92%を輸入石油に依存していた。 そのうちの81%がアメリカからの輸入。 それがダメになったので、スマトラ、ボルネオ、南ベトナムまで南進すべく戦争の輪を広げるしかなかった。 その南進がアメリカを硬化させた。 日本は、石油さえ売って貰えば戦争する気など1つもなかった。 
そして、筆者のタラレバ論だが、もし二・二六事件で高橋是清が陸軍の手によって暗殺されていなかったら、太平洋戦争は避けられたかもしれないと書いている。 このタラレバ論はなかなか説得力を持っている。

そして、1941年12月8日の真珠湾攻撃で、太平洋戦争に突入。
連合艦隊の山本五十六長官は、アメリカとの戦争はすべきではないと主張していた派。 その五十六が日本の襲撃部隊の指揮官に南雲忠一という根っからの軍人を選んだのが大失敗の基。 南雲は軍艦だけを攻撃した。 アメリカの石油タンク、海軍工廠、輸送船の被害はゼロ。
アメリカの太平洋艦隊司令官・ミニッツ氏は、「あの時、重油タンクがやられていたなら、半年間はアメリカの軍艦は動けなかった」 と回想している。 
また、ハーマン・ウォーク氏は、「もしミッドウェイでアメリカの空母がやられていたら、アメリカの全陸軍は西海岸に集まり日本軍に備えねばならなかった。 ヨーロッパ支援は出来なかった。 もし空母と石油タンクがやられていたら、日米戦争はドローンゲームになっていた」 と書いている。 
ともかく、戦略なきサムライに、日本の運命を任せたのが大間違い。

そして、戦後アメリカは石油を絶って日本を近代国家から脱落させるという意思で、憲法を押し付けてきた。 アメリカは日本を数十年に亘って支配するつもりで日本国憲法を立案した。
ところが1948年にベルリン封鎖が起こり東西の冷戦が始まった。 そのため、日本を近代国家から脱落させるという政策は 180度の転換を余儀なくされた。
そして、それまでは 産油国はアメリカ、インドネシア、ロシアなどに限定されていたのに、中近東で次から次へと油田が発掘された。
戦時中は、「石油の1滴は、血の1滴」 とまで言っていたものが、水よりも安い価格でジャブジャブ手に入るようになってきた。 しかも、戦時中にほとんどの工場は爆撃を受けて閉鎖を余儀なくされていた。 埋立地に新規に工場を作り 安いコストで原料が入手出来、製品を輸出できるようになった。 大型の油槽船で大量に安い石油が運べたという僥倖が重なって日本経済は空前の大発展。
二度に亘る石油ショックも、日本は持ち前の省資源という技術力で克服した。
日本とともに資源のない大国・中国。 日本は石油がタブついていた時に経済再建が出来たのに対し、今の中国はそれこそ資源外交という名目で、世界を荒らし回っている。
中国は、いま原発の開発と売り込みに躍起になっている。 もし、安ものの中国原発が事故を起こせば、被害を受けるのは風下の日本。

さて、ここから著者は原発擁護論が連発される。
それは まず、「広島や長崎の原爆の被害者の多くの人が、放射能を浴び、白血病になったと考えているのは間違っていますよ」 との指摘。 
あの時死んだ人のほとんどが熱線によるもの。 言ってみれば焼き死。 あるいは爆風による家の破壊によって悲惨な死を。
長崎は75年間住めないと言われていたが、3週間目にはアリが出てきて、3ヶ月も経ったらミミズが湧いてきた。 著者の知り合いに長崎と広島の被爆者がいるが、2人とも とても元気。 
確かに放射能による白血病で死んだ人もいる。 だが、全体の被害者から見たら 統計にも載らないほどの数にすぎない。
第5福竜丸久保山さんは、水爆による禁止地域で魚を獲っていて放射能を浴びたのが死因と言われているが、死因は売血の輸血による急性肝炎。
チェルノブィリでは、火事だと思って飛び込んだ消防士と爆発を抑えるために無茶苦茶に働かされたリトアニア人の何十人かは死んでいる。 しかし、20数年間で甲状腺ガンに罹ったのは60人で、その中で死んだ人は15人にすぎない。 内陸で海藻を食べる習慣がないので、甲状腺の病気は風土病。 それほど大騒ぎするほどのことではない、と筆者は言う。
そして、福島。 たしかに故郷を追われて慣れない生活のために亡くなった高齢者はいるが、放射能が原因で死んだ人が1人もいない?
それよりも、原発が稼働しないために毎日100億円もの余分なカネを日本は払っている。
毎日ですぞ!
さらに言うならば、太陽の光と熱そのものが、原発とモンジュの原理で働いている。
確かに太陽熱を浴び過ぎると、日焼けしたりシミが増えたりする。 しかし、ビタミンDを補強するためにも必ず陽に当りなさいと医者は言う。 本当に放射能が怖いのなら、太陽を避けて生活すべきではないか‥‥というのが筆者のロジック。

私は、筆者のロジックには一理があると思う。
私が懸念しているのは、原発の安全性。 
あの程度の地震と津波でやられる原発だと、とてもじゃないが安心できない。 つまり、日本の地震学者と原発関係者の無責任さに呆れる。
鉄筋コンクリート造は、思ったほどの耐震性を持っていない。 震度7で2500ガルの直下型地震に遭遇しても安全であることを保証しない限り、消費者の不安は解消されない。
それと、地震国日本には、今後20万年間に亘って使用済核燃料を、安全に保存しておける場所がない。 北方領土問題よりも、ロシアの無地震地域で、ロシアと共同で使用済核燃料を保管できる場所を建設することが、より大切ではなかろうか‥‥。
その上での原発容認であれば、私は反対する理由はないと考える。 皆さんは如何?



posted by uno2013 at 05:30| Comment(2) | 書評(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「地震国日本には、今後20万年間に亘って使用済核燃料を、安全に保存しておける場所がない。」とありますが、日本の使用済核燃料は再処理を行いますので、保管期間は数万年程度で20万年間も保管する必要はありません。

現在開発が進められている「加速器駆動未臨界炉」で「核変換」を行えば、核廃棄物の保管期間を
数百年程度まで短縮することも出来るようになります。

数百年程度の保管期間であれば、地震国日本にも地質的に安定した場所は沢山ありますから、
北方領土を譲歩してまでロシアに頼る必要は全くないと考えます。

地震のリスクに関しても、現在、研究開発が進められている「三次元免震装置」を使えば、横揺れだけでなく縦揺れにも対応できますので、今後は直下型地震のリスクも克服できるようになると思います。
Posted by 一読者 at 2014年07月06日 17:13
じゃあ自分のすぐ傍に置いたら?
って言われると絶対に嫌がるんだよな

色々理由を付けてさ
Posted by 一読者様へ at 2014年12月28日 03:42
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