2014年06月30日

2014年上半期  読んで面白かった本のベスト10 (下)



先週でベスト10を締め切った。
そのあと、今週読んだ渡部昇一氏の「国家とエネルギーと戦争」は、今までの視点を根本的に崩すものとして注目される内容を持っている。
また、山ア真由子さんの「林業男子」は、素人ながら日本の林業の現場に飛び込み、意欲的な取材をしていて頷かされるところが多い。 
いづれも ベスト10のトップ近くに入る力作。 しかし、残念ながら締め切った後なので、下半期に回すしかない。 だが、出来るだけ早い機会にこの欄か、週刊書評欄でとりあげたいと考えています。
そして、トップ10に入ったものは、2つを除いてすでに私のブログ、ないしは週間書評で紹介済みのものばかり。 その除いた2つも、すでに週間書評に入稿済みで、7月の4日と11日付で掲載される予定。 
私の悪い癖で、印象に残ったものは我慢が出来ず、すぐに見せびらかせたくなってくるらしい。
したがって、この欄でクダクダと述べなくても、詳細を知りたい方は日付をさかのぼって参照していただければ、おおよその内容が理解していただけます。

◆10位

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私が熊本知事・蒲島郁夫氏の著作を取上げたのは、何も「くまモン」を紹介するためではない。
経産省のメガソーラー計画では、熊本県民は土地を提供するだけで、メガソーラーの利益はすべて県外の投機資本家に持って行かれる。 そして、県民と県内の事業所は高い電気代を払わされるだけ。 何一つメリットがなく、デメリットだけが転嫁させられる。
経産省の計画は、ドイツでは拒否されたものでしかない。 太陽光にしろ風力発電にしろ、地域の利益と雇用機会をもたらすものでなければ意味がない。
ということで、「県民発電所構想」をブチあげている。
これ以外にも、熊本県のことは熊本でしか解決できないと、県独自の農業に対する補助金政策を打ち出している。 
(1) 米粉を使った新商品の開発支援。 (2) 学校給食に米粉パンの導入。 (3) 飼料用米を安く生産して畜産農家に活用してもらうプロジェクト。 (4) 耕作放棄地に菜の花やレンゲの栽培を奨励し、小・中学生の農業体験の場として活用するなど、いくつかの画期的な施策を打ち出している。 これらの活動を紹介したかったまで‥‥。

◆9位

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これは、7月4日の週間書評に掲載される予定。
私の小説欄で、上位にくるのは江上剛、幸田真音、黒木亮など、経済小説と呼ばれるジャンルものが圧倒的な位置を占めていた。
たしかに、今回も江上剛の「断固として進め」と「慟哭の家」など面白いものがあったが、それよりも有川浩、真保裕一などの方が面白く、ベスト10に入ったのはこの2人ともう一人が須藤靖貴。 実は最後の一人を誰にするかで悩んだ。
というのは、浜田文人「胆斗の如し」、村松美香「アフリカッ!」、深井律夫「黄土の疾風」、金沢好宏の古い「社長解任動議」、山本甲士「ひかりの魔女」など、候補作品が目白押し。
その中で、必ずしも成功作とは言えないかも知れないが、新鮮さに惹かれてこの作品を選んだ。
主人公の僕は高校の食物調理科の3年生。 特別な物語があるわけではない。 30歳を過ぎた女子先生を中心に包丁技術試験や卒業展示会などのイベントを中心に淡々とプロの調理師になる授業が進んでゆく。 それだけなのに、琴線に触れる面白さが感じられた。

◆8位

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これは、6月6日付の週評に掲載ずみ。
最初は何を言わんとしているかが分からなかった。 日本の食料問題を解決するにはイモしかないと言いたいのかな、と考えて読み始めた。 そしたら、日本で消費されるエネルギーのすべてをサツマイモで賄おうという少し頭が狂ったと思える提案。
現在、日本で消費されている電気、ガス、ガソリンから薪までの全エネルギーは2000万テラジュールに及ぶ。 これだけの大量のエネルギーを賄うものとしては、太陽光とか風力などでは絶対に不可能。
メガソーラーは膨大な土地を求めるし、夜間は使えない。 風力は音が五月蠅いし、日本には常時風が吹いているという適地は皆無。 そして、太陽光と風力の基本的な欠陥としてはメンテナンスが不要で、雇用を増大しない。 
唯一、期待が持てるのがバイオマスだか、しかし上手く行って総需要の10%を賄うのが精一杯。
そこで、サツマイモの登場となるのだが、この説はどこまで信用していいものか。 マユツバものだが、今までになかった一石を投じた労を多とした。

◆7位

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この著は、テレビをはじめ各方面で取り上げられたので、ほとんどの人はその内容を知っているだろう‥‥。 副題が、「糖質制限からみた生命の科学」。
本人は、その体験からご飯を食べるという習慣をやめたら、あっという間に肥満体質が改善され、いくら肉を摂っても全然体重は増えない。 
人類が炭水化物と糖質を摂りすぎるようになったのは、動物の食べ物にすぎなかった小粒の小麦の甘さに気がついたから‥‥。 以来、小麦が人類の主食に。
ご飯、パン、うどん、ラーメンなどを制限することこそが、メタボから解放される唯一の方法だと筆者は説く。
もちろん、筆者だけでなく多くの医療・食品関係者が、炭水化物と糖質の摂りすぎに警報を発してきた。 炭水化物の悪者論は、何も筆者の特許ではない。 
たが、私を含めて<、「ドンブリ一杯のご飯が、角砂糖何個分に匹敵するのかが 分かりますか」 と言われて、気が動転したわけ。

◆6位

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母親に口説かれて、仙台に戻ってT種試験に合格して県庁へ勤めたが、同期は秀才ばかり。 ドサ回りからやっと解放されて本社勤めになったと思ったら、今度は赤字ローカル線の会社へ副社長として出向を命じられる。
沿線の人口が半減し、第3セクターになった時、県や沿線市町村、民間が30億円を用意して経営安定基金を作った。 ところが低金利で運用がうまく行かず、リストラをして人件費を圧縮したが、年間5億円の売上に対して支出が7億円。 基金の残りは2億円だけ。 つまり、1年後には清算しなければならない。 その清算役を命じられたわけ。 
その上、地元の有力なスーパーマーケットのトップでありながら ローカル線の会長に登用されていた民間の最大の出資者。 その会長が銀行出身の社長に変えて、JRの社内販売でカリスマと言われていた女性をスカウトし、新しい社長に抜擢するところからこの物語は始まる。
女社長の行動力は驚くほどのものがあった。5ヶ月で2000万円の黒字を達成してしまった。 この黒字化が全社員のやる気を引き出し、主人公の副社長も思わぬ大活躍。
単なる小説かも知れないが、その意表をつく経営ぶりには惹きつけられてしまう。
ところが、第4章からは構成が意識的に変更されて、小説としては深みが出たかもしれないが、物語性が激減。 それがなければ、もっと高く評価が出来たのに‥‥。 本当に惜しい作品。

◆5位

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これは実話。 6月27日の週評に掲載されたばかり。
さくらんぼで有名な山形県東根市。 人口47万人で、その市にある唯一の高校が県立東根工業高校。 生徒数は約460名で、機械システム科、電子システム科、プロダクトデザイン科がある。
この高校の創立60周年記念事業として、全生徒が35班に分かれ、駐輪場の屋根に100枚の太陽光発電パネルを手造りしょうという計画からこの物語は始まる。 パネル造りは薄いセルを低温ハンダづけしたり、ガラスにセルをラミネートして34枚のセルをフレームに取付け、配線して防水処理をして完成させるもの。 決してハイテクではないが、細かい作業の連続。 1つのパネルの完成に1班で3時間ほどかかる。 つまり延300時間に及ぶプロジェクト。
このプロジェクトだけなら、単なる社会科の実習としてしか評価されない。
同校の凄いところは、この技術を3年計画でモンゴルの高校生に教え、電力のないゲルに取付けようと計画したことにある。 
最初の年には、(1) 太陽光発電、(2) 充放電コントローラー、(3) LED照明、(4) インバーター製作の4グループで一式をつくり、6人の引率教員と8人の生徒がモンゴル高校に行き、単に組立ただけではなく、マニュアルを説明して、メンテが出来るように指導している。
次の年には冬期の日射不足に対するて対応策を教え、最終年には高校内にゲルを建て、その取り付けやメンテ方法を教えた。
これが評判を呼び、バングラデッシュやネパールへも技術輸出に旅立っている。
後進国にモノを恵むという時代は終わりで、高校生にローテクの技術を教えてゆく時代。 それを先取りした東根工高のチャレンジの記録に、心が躍らさられる。

◆4位

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これは7月11日に週評に掲載される予定。
A4版の大きな写真集。 当然のことながらアメリカのシカゴやニューヨークの超高層ビルの紹介が続く。 日本の東京都庁舎や横浜・ランドマークタワーも紹介されている。 それだけではない。 かつて丹下健三氏がシンガポールの依頼で設計したOUBセンターも紹介されている。 
「数は少ないが、日本も頑張っているわい」 と安心して読んでいた。
ところが、最後の方に2015年にまで建てられる予定の、「超高層ビル建築のベスト100」 が掲載されている。 それを見てビックリした。 
トップは、この写真集の表紙に使われているドバイのブルジュ・ハリファ (828メートル) であることは知っていた。 だが、2位が2015年に完成予定の上海・平安国際金融中心 (660メートル) で、3位は昨年完成したばかりの上海タワー (632メートル) だということは知らなかった。 5位には天津・中国117タワー (597メートル) が入っている。
それだけではない。 なんと2015年の世界の超高層ビルベスト100のうち、香港を含めて半分の49もが中国に建てられる予定。 この衝撃的な事実を、皆さんは知っていましたか?
つまり、GDPでは最近の中国の成長はストップ状態。 中国がアメリカと肩を並べるのは後30〜40年かかると言われているが、超高層ビルの分野では中国がアメリカを追い抜いたという事実。
そして、アメリカは中国に抜かれただけでなく、ドバイなどのアラブ首長国連邦の20棟にも抜かれて、3位の7棟でしかない。 4位がインドの5で、5位はロシアとサウジアラビアの各3棟。 日本は1つもはいっていない。 
霞ヶ関ビルの柔構造建築で、日本は世界の最先端とは言わないまでも、耐震性では先端を走っていると信じていたのですが、甘い考えだったよう。

◆3位

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この小説は数年前に書かれたもので、昨年映画化されて大好評を博したもの。 3月28日の週評を参照されたし。
こんな面白い小説を見逃していたとは、面目ない。 慌てて有川氏の作品を10冊近く読ませてもらったが、この「県庁おもてなし課」 がズバ抜けている。
東京オリンピックの招致運動で、滝川クリステルさんが用いた 「おもてなし」 という言葉が一大ブームに。 しかし、数年前の高知県観光部に 「おもてなし課」 が発足していた。
知事からは、「独創性と積極性でどんどん企画、立案してほしい」 と言われたが、公務員の常で、前例があればこなせるが、新規事業の場合はどこから手を付けてよいかがまったく分からない手探り状態。
課が発足して1ヶ月ほど経ったとき、課長から 「何かアイデェアはないか」 と聞かれた時、若い主人公は、「各自治体は《観光特使》という制度を採用しているようです。 当県も手始めにやってみたら‥‥」 と言ったらそれが採用され、主人公はその担当者に‥‥。
早速、県出身の有名人を物色したら、数十人の名前が挙がった。
その中に、主人公が担当する若手作家の吉門喬介氏がいた。 そして、「趣旨が良くわからないので説明して欲しい」 との電話があり、主人公と吉門氏との深いつながりが始まる。
だが、庁内の根回しに思った以上に時間がかかり、吉門氏への連絡は1ヶ月後なってしまった。
連絡したら、「1ヶ月も連絡が無いので、この話はご破算になったものだと思っていた。 役人はこれだからダメ。 もっと庶民感覚が分かる外部の若いスタッフを入れなさい。 でないと、これ以上付き合いきれない」 と言われ、総務課のバイトの女子をおもてなし課に抜擢し、若い主人公と3人の珍道中の始まり、始まり‥‥。
役人モノで、これほど面白い小説に初めて遭遇。

◆2位

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筆者は免疫力に関しては世界一の学者。 サナダ虫を自分の身体の中で飼っていることで有名。
私は健康法に関しては、すべて著者から学んだと言っても過言ではない。 
この著の副題は、「大切な腸を病気から守る30の方法」。 しかし、30ものことを覚える必要がない。 以下の諸点だけを覚え、毎日実行すれば、健康体になることを請け負える。
地球に生命が誕生したのは6億年前。 5.5億年前にカンブリア大爆発で多様な生命が誕生した。
しかし、初期の生命体は脳を持っていなかった。 脳の働きをしてくれたのが腸。
その腸から5億年前に初めて脳が生まれた。 脳はどこまでも腸のガキ。 それなのに、なぜか主人公気取りでいる。 これが問題。
脳は、炭水化物と糖質が大好き。 言って見れば脳の趣向品。 しかし、炭水化物や糖質ばかり摂っていると、糖尿病をはじめあらゆる生活習慣病に犯される。
腸は、「消化」「免疫」「解毒」 の3大機能を持っている。
そのほかに、「感染防止」「健康維持」「老化防止」 という重要な機能も腸は荷なっている。
したがって、「腸に良い生活を続ければ、125歳まで生きられる」 というのが著者の信条で、それを実践しているからすごい。
このように、腸には凄い機能がある。 とくに免疫力に関しては70%は腸が持っているという。
それでは、なぜ腸にそのような凄い機能があるのか?
それは、腸には2万種、1000兆個の細菌が活躍しているから。
この細菌のうち、善玉菌はごくわずか。 よっぽど偏食や肉食でもしないかぎり、悪玉菌も限られている。 ほとんどの細菌は日和見菌。
この日和見菌を、善玉菌に近付けて行くことこそが肝要。
それに不可欠なのが植物繊維と発酵食品だという。 私が考案したキムチ入りの納豆などは、その代表格。
皆さん。 細菌を殺す風邪薬や綺麗好きの習慣をやめましょう。 そして、タンパク質と糖質の摂取は出来るだけ止めて、植物繊維と発酵食品を多く摂るようにしましょう。 それが、病気に罹らず、長生き出来る秘訣だと筆者は叫んでいます。

◆1位

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これは5月25日付の、このブログ欄を見て頂きたい。
筆者はサントリーへ勤務していたコピーライター。 その肩書を見て、2年前に購買しなかったのは私のミス。
サントリーという会社は地下水を大量に使用している会社。
その良質な地下水を守るために、当然地下水の取得などに関しては細心の注意を払ってきている。 しかし、それだけではいけない。 地下水を涵養してくれるのは川上の森。
その森を調査し、森を守ろうという運動を、一介のコピーライターが社内で起こした。
基本理念と活動方針を書き、役員会に諮ったら、「やってみなはれ」 と企画書がそのまま通ってしまった。
現在、サントリーは東京ドームの1000倍以上‥‥約7000ヘクタールの森を、国や山林地主からタダで借り、サントリーがカネを注ぎ込んで、天然水の森を整備し、保全しょうとしている。
筆者は、そのために本職のコピーライターをやめて、毎日森へ出かけ、いろんな学者の力を借りて地下水の調査や保全のために全国をとび回っている。
今年の春の時点では、12都府県、17ヶ所の森を対象にしており、約4700ヘクタールが進行中。
東大の試験林を加えると目標面積はなんとか達成出来ている勘定に。
そして、森づくりの実践を経験して、筆者森づくりで一番大切なものは 「理念」 であるということを実感してきている。
そして、技術的な点では、不耕起による土地改良であり、森を生かすためには集中豪雨でも崩れない簡単で安くて丈夫な道づくりだと強調している。
その真しさと行動力が、この著をベスト1に引き上げた。

















posted by uno2013 at 08:48| Comment(0) | 半年間の面白本ベスト10 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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