2014年06月15日

壁倍率20倍の断面構成と、中国における新木質構造の登場前夜



生活者にとって、住宅で一番大切なことは間取りであり、バリアフリーであり、デザインのスマートさと色が美しくあること。 そして、初期の建築費が高くないことと、燃費やメンテなどのランニングコストが安いこと。
ところが、住宅を設計する人間にとっては上記の条件を満たした上で、耐震性や台風、あるいは最近増えてきた突風に強い家であることと火事に強い家であること。 加えて除加湿機能までもが求められる。

品確法では、地震に対する等級は3つに分けられている。
一番強いのが3等級で、建築基準法で定める1.5倍の耐震性を持っている住宅。
次が2等級で、建築基準法の1.25倍の耐震性をもっている住宅。
1級と言うのは、建築基準法で定める最低限度の耐震性をもっている住宅。
そして、低層住宅の場合は、やたらと開口部が多い住宅を除いては、ほとんどが品確法で言うところの最高級の3等級をパスするのは容易。 したがって貴方は、「わが家は最高級で、直下型の地震がきてもビクともしないはず!!」 と安心していませんか ?

これは、私が言ったのではない。 私が言うことだと信用して貰えない。
ある建材業界の、トップ技術者の本音の発言だということを心にとめて頂きたい。
「日本で3等級が一番地震に強い建物だと考えられているが、本来は4等級、5等級、6等級、7等級があってもおかしくはない。 しかし、鉄筋コンクリート造 (RC造) や鉄骨造のマンションなどでは、建築基準法の1.5倍の性能を出すのが精一杯。 したがって、国交省はマンション業者やRC造や鉄骨造業者に遠慮して、3等級が最善だと思わせている!!」
そのような訳で、原発の各施設が、「震度7の直下型が襲っても、ビクともしません!!」 と大見栄を切ることが出来ないでいる‥‥。 
大型のRC造や鉄骨造には、そのように耐震上の限界が‥‥。

中越地震の時、烈震地の当時の川口町を3度も訪れた。 訪れる度に2500ガルという直下型の震度7の地震というのは、これほどまでに恐ろしいものかと驚愕させられた。
豪雪地の川口町にはツーバイフォー工法やプレハブ工法は1つもなく、唯一あったのは外壁を構造用合板でガードしたスーパーウォールだけ。 この構造用合板で武装していたスーパーウォールは、1戸も倒壊してはいなかった。 
柱が10.5センチ角ではなく、豪雪地のため最低でも12センチ角、大きな住宅は15センチ角が当たり前。 しかし、内部の壁に入れていたスジカイは、弓のように面外へ挫屈して内部の石膏ボードを全て吹っ飛ばすとともに、倒壊はしなかったがホールダウン金物のネジが切れるなどして、外壁はスカスカ状態に虐められていた。
つまり、高気密住宅が肝心の気密性能を失い、表を走る車の音がうるさく、完全に安眠が失われてしまっていた。 
その入居者の嘆きの声を聞いて、私は最低でも建築基準法の2倍の性能‥‥つまり5等級が最低限度であって、出来たら6〜7等級の住宅を提供する義務があると痛感させられた。

さて、3等級とか5等級、7等級と言っても一般の消費者には分かってもらえない。
仮に5間×4間の総2階建の延べ40坪の住宅があったとしよう。 1階の床面積が66.25u。
2階の耐力壁は無視してよい。 
要は1階の耐力壁だけが問題になると考えて頂きたい。
軽い屋根の場合は、66.25uの床面積に0.29を掛けた数値が必要壁量。 66.25×0.29=19.21m。
つまり、壁倍率1倍の壁だと、東西、南北とも19.21メートルの壁が建築基準法上最低必要だということ。 幅が0.91メートルの壁だと東西、南北とも22枚が必要。
これが1.5倍の3等級だと32枚、5等級だと43枚、7等級だと53も必要。 これだと壁だらけで開口部が取れない。 そこで、壁倍率が3とか5という強度の強い壁が必要になってくる。
壁倍率が3倍だと先に上げた数字の1/3に、5倍だと1/5になる。
つまり、壁倍率が3だと3等級だと11枚、5等級だと15枚、7等級だと18枚。
壁倍率が5の場合は、3等級だと7枚、5等級だと9枚、7等級でも11枚で済む。

ツーバイフォー住宅の場合は、合板工業会で以下の条件で壁倍率5をとってくれている。
国産構造用合板12ミリ。 使用クギはCN65。 ピッチ外周50ミリ以下、中通り200ミリ以下。
壁倍率 5.0倍 (認定番号 TBFC-0114) (注 クギ打ちの縁端距離は縦枠・受材で10ミリ、上下枠で19ミリとする)
国交省は、特別の場合を除いて壁倍率5以上を認めてくれない。 
しかし、ツーバイフォーの場合は、3×8の石膏ボードをGNF40を、外周100ピッチ、中通り200ピッチで打てば、1.0倍の壁倍率が得られる。 しかし、12ミリの外壁合板で5.0倍の壁倍率をとると、その上に石膏ボードを加算することは出来ない。 しかし、内壁の裏と表を2重ばりすると実質2.0倍となる。
それらを加算して、最低5等級 (基準法の2倍) の性能を消費者に還元すべきだと言うのが中越地震の調査で得られた私の結論。 出来ることなら、基準法の2.25倍から2.5倍の等級6〜7を狙いたい。 
そして、内部の壁でも絶対にスジカイを採用してはならない。 また、石膏ボードのクギのピッチは、公庫の標準仕様書を完全に守ること。 
これを実行することこそ、良心的な地場ビルダーの証明だと考えている。

6.13-2.JPG

前書が長くなりすぎた。
さる13日に、Iジョイスト工業会で、以前に森林総合研に勤めていて、現ホクセイの技師長である神谷文夫氏のセミナーがあったので聞きに行ってきた。
氏は東大農学部出身の農学博士。 森林総研時代にワシントン大の交換教授としてタコマドームに関わった関係上、単に壁構面だけでなく水平構面と一緒に考えるべきだと言うダイヤフラム理論に接し、日本でのダイヤフラム論の第一人者。
そして当時、主流であった3×8のパネルでの実験ではダメだと言うことで、6尺×10尺の大型パネルを造り耐震テストを行っている。

6.14-2.JPG

その実験体の詳細は省くが、カラマツの集成材で上の写真のような間柱抜きの骨組を組む。
こうした骨組では、力を掛けた時は足元が簡単に抜けてしまう。 このために、タイロッド式と言われる ラグスクリューボルトなどの特殊な柱脚固定金物で浮き上がりを防いだ。

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そして、28ミリと厚いスギの合板に、CN75のクギを50ミリピッチで2列打ち。
この結果、壁倍率は21.8倍と信じられないような数値が出ている。
この数値が、どのように実用化されたかは、時間がなくて聞けなかった。
しかし、木質構造というのは、驚くほどの耐震性を持っているということを示す実験であったことは間違いない。
これに比べると、等級2もクリアーしていないLCCM住宅 (Life Cycle Carbon Minus) などは、学者先生の単なる遊び道具にすぎないことが良く分かる。
ただし、間柱を抜いてゆくスタッドレスを神谷氏の自宅に採用したということだったが、内部の石膏ボード張りに支障がきたのではないかと心配になってきた。
北米の住宅では16インチ (約40センチ) ピッチにスタッドが入っており、最近では24インチ (約60センチ) ピッチもI型ビームを採用している住宅に増えてきている。 4×8石膏ボードを横張りしている北米では問題は起こらないが、3×8の縦張りの日本ではどうしても455ピッチのスタッドを抜くことには問題が多そう。


当日の、神谷氏のセミナーのもう一つのテーマは、中国における木質構造の新しい動向。
何しろ13億人の人口を抱える中国。 新設住宅の着工数は950万戸にも及ぶ。 なんと日本の10倍というすごさ。
住宅の大部分は中高層ビル。 日本のような戸建て需要というのは田舎の農家需要しかない。
木造の比率はまだまだ低く、ほとんどが分譲による別荘などの需要。
しかし、中高層住宅でも内部には木が多用されるので、神谷氏の推測では中国産の木材は7000万m3程度ではないかという。 あとは輸入。
主な輸入先としては、ロシア2440万m3、カナダ1413万m3、アメリカ944万m3、ニュージランド894万m3に対して、日本はたったの5万m3に過ぎない。 あまりにも少ない。
それどころか、ダイワハウスにしても、シャーウッドにしても、中国の集成材メーカーからほぼ100%近くを輸入しているはずだという。
中国の集成材工場にしても合板工場にしても、立地環境は良くて、新しいので工場なので、日本の工場に比べてはるかに清潔で綺麗だという。

ともかく、木材の輸出入の関係をみると、明らかに輸入超過。
これを何とか打破して、日本からスギやカラマツ、ヒノキを輸出したい。
しかし、中国で木造住宅の主流を占めているのは、カナダ、アメリカ、ニュージランドのツーバイフォー住宅。 木軸などは古い仏閣建築を除けば、ほぼゼロ。
つまり、現在の中国の木質住宅の基準は、すべてツーバイフォーで成り立っている。
そこへ日本が入ってゆくには、ツーバイフォーの基準を順守して、木軸を加えて行くしかない。
北米で、木質構造の1分野としてポスト&ビーム・フレーミングが存在するように‥‥。

私は、この中国のポスト&ビームが、正しく普及することを祈念したい。
日本の木軸工法には、あまりにも非科学的な要素が多すぎる。
杉山先生がかつて言われたように、大貫工法こそ日本の伝統工法。 それなりに耐震性を持っていた。 ところが、明治以降の日本の木軸は変な継手・仕口だけがひとり歩きして、全く科学性と総合性を欠くものになってしまった。
日本の金物工法などが、北米のオープンなツーバイフォーに対して、オープンな工法として改良改善が加えられ、高い生産性を立証して、日本へ逆輸出されるようになることが、日本の消費者にとってベターなのではないかと私は考える。
中国で、基準法の一部が変わって、ポスト&ビームが、告示として発表されるのは来年になるのではないかというのが神谷氏の見通し。
住宅産業界にとって、中国は別天地では無くなるかもしれない。







posted by uno2013 at 07:37| Comment(0) | 展示会・シンポジウム・講演 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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