2014年06月10日

来年から38条が復活!?  あまりにも変身した一条の枠組壁工法 (下)



(4) 吹抜け空間は、206の通し柱にによるバルーン・フレーミングとすること。

これは、枠組壁工法の初期のころは常識だった。 1間以上の階段室が外壁側にくると、206の通し柱にしなければならないということを誰もが知っていた。 最初の公庫のピンクの仕様書には、勾配屋根の壁に用いるスタッドの項目があった。 
つまり、「204のスタッドは3.2メートル高までしか使えず、それ以上の長いスタッドには2-204を使い、3.8メートルを超える場合のスタッドは206によらねばならない」 というような内容だった。(詳細な数値は忘れてしまったが‥‥)。 このことは、フレーミングコンペの会場に来た全てのフレーマーも、参観者のほとんどの人も十分に認識していた。 
そして、206の通し柱が難しい時は、下屋を付けたり、バルコニーを付けたりして水平力に耐えられる構造体になるよう工夫した。 どうしても不可能な時は、現わしの梁で補強。
そんなにまで苦労して消費者を地震から守ってきた。 だが、いつの間にか公庫の仕様書からは肝心の項目が消えただけではなく、告示1540号と1541号によってかつての約束事を知らない構造設計事務所が、平気な顔で耐震性の弱い住宅の構造設計を始めた。
体質の弱い設計事務所。 いざという時に消費者に対して金銭的な責任を負えるわけがない。
その責任は、全部ビルダーの肩にのしかかってくる。 その危険性を強調したが、アメリカの実態を知らない構造設計事務所と、ビルダーの担当部長は無責任にも頬被り。 
そのような危険な現場が、残念ながらかなり出現している。

ところで、パネル化をやっている一条工務店の場合は、通し柱を使っている現場を見たことがない。 本当に大丈夫なのか‥‥と心配になってくる。
一条工務店の場合は、吹抜け部分の1階と2階の壁は見事にブチ切れている。 
その代わり、吹抜けの部分は基礎と1階壁を結ぶホールダウン金物が入っているし、1階壁と2階壁とを結ぶホールダウン金物も必ず入っている。 つまり。吹抜けのある空間の外壁は、必ず3点のホールダン金物で一体化させている。 
私は構造計算をしたことがないので大きなことは言えない。 だが1階と2階を繋ぐホールダン金物が、吹抜け空間のない家にも入っているのを目撃すると、「よくやっている方だ」 と思ってしまう。 しかし、2階の床が千鳥張りのダイヤフラムでないことを考えると、これは罪滅ぼしではないかと勘ぐってしまうのだが‥‥。

(5) タルキと外壁の緊結には、必ずハリケーンタイを使用すること。

在来工法を支持する人は、必ず金物やクギを使わない継手、仕口の自慢話を始める。 そして、細い3.5寸角の柱やスジカイを礼賛する。
かなり以前に、杉山先生に 「アメリカのポスト&ビーム工法とプラットフォーム工法のように、在来木軸工法と枠組壁工法のドッキングは考えられないでしょうか」 と聞いたことがある。 
その時先生は、「君の考える在来工法というのは、まさか3.5寸角のスジカイ工法のことではないだろううね」 と念を押された。 
日本の伝統的な在来工法と言うのは、どこまでも大きな柱を前提にした大貫工法。 これは鳥居に見られるようにペチャンと倒れない耐震性を持っている。 そして、農家や町屋という建築が廃れて細い柱のサラリーマンの庶民住宅の時代になってきた。 しかし、日本の町場の大工さんには斜材を入れるという発想は全くなかった。 明治から大正にかけて、町場の大工さんが用いた耐震技法は土塗り壁と小壁だけ。 これが関東大震災で庶民の命を奪った大原因の1つに。 戦後の1950年にはじめて建築基準法が改正され、公庫の共通仕様書が出来て土塗りに変わってスジカイの天下になり、布基礎と接合金物に光が当てられてきた。
「そのスジカイ工法とツーバイフォーのドッキングは考えにくいね。 やはり合板などエンジニアウッドが先行する形でしかないだろうね‥‥」
この杉山先生の考察は、1996年・丸善刊 「地震と木造住宅」 という名著に詳しい。 この著の中で大貫工法の耐震性の実態にも触れているので、参考になる。

今まで専ら壁の耐震性に頼り切っていた日本の考えに、北米・西部で開発された合板という床を中心とするダイヤフラム理論の登場。 先生は当然のこととしてツーバイフォー工法の金物やクギにも関心を持たれていた。
金物やクギを長持ちさせる住宅とは、当然のこととして雨漏りがなく、壁内や床下、天井裏で結露が発生しない住宅。 しかし、この面では 杉山先生は必ずしも専門家とは言えなかった。
そして、19年前に発生した阪神淡路大震災。 決定的なダメージを受けた木軸工法。 
この難局から木軸を救ったのは金物工法。 
従来の継手・仕口に変えて、剛なる金物を木材の中に埋める工法は、耐火性の面でもメリットがあった。 しかし、先生はほとんど金物工法にはタッチされていない。 つまり、先生の木質構造の外側でイノベーションが大きく進んだ。 この金物工法が、29ミリと厚い合板による根太レス工法とドッキングして、日本の木軸を大きく変えてきている。
しかし、3.5寸の柱に拘っているこの金物工法は、生産性の面と耐震性の面で大きな欠点を持っている。 その後で起こった中越地震。 震度7という直下型地震で、烈震地・川口町では2500ガルを記録。 もっとも激しかった田麦山では100戸のうち残っているのはたったの10戸で、武道窪では17棟のうち倒壊が16棟。
ここで、残っていた木造はスーパーウォールなど外壁に合板を用いた住宅。
しかし、倒壊は免れたが武道窪の家は完全に気密性を失っていたし、田麦山のスーパーウォールは室内側の柱が床合板から完全に抜けていたし、内部のスジカイの面外挫屈で石膏ボードはほとんど吹き飛ばされていた。
つまり、外壁は構造用合板のおかげて柱が土台から抜けることがなく倒壊を免れたが、柱を土台に取り付けるため合板に穴をあける手間暇かけた内壁の柱がそっくり抜けて家を歪め、弓のようになったスジカイは、石膏ボードを弾き飛ばした。
この現象を、諸先生方は誰も目撃していない。
私が外壁は606の集成材による通し柱を2〜3間毎に入れ、間に206の地スギ材のパネルを入れ、胴差しや敷桁を金物で抑える工法を提唱している。 内壁は404の柱と204のパネルで構成するオープンなミックス工法。 この方が耐震性が高く、枠組壁工法よりも信頼性の高い金物を使用することが可能になるから‥‥。
柱のために剛な床合板に穴をあけるというバカげた発想をやめて、地スギで204,206材を挽き、パネル化して生産性と床剛性を高めることを、金物工業会では真剣に考えて頂きたい。

一条工務店には、地スギによるパネル化は、一切期待していない。
ただ、同社の i-smart のシステムは、2階の天井を210で組んで断熱材を充填している。 そして、太陽光の屋根を搭載するために204で1.5寸の片流れの屋根を組んでいる。 そして、ほとんど軒の出ていない物件が多く、ハリケーンタイを使用していない。 3尺も軒先が出ていた現場で疑問を感じ、「絶対にハリケーンタイを取り付ける」 ように指示したら、K社の試験報告書を提示してくれた。
それによると、長さ150ミリのロングビスを455ミリ間隔に打てば、ハリケーンタイに匹敵する吹上げ防止効果があるという。
今まで、車庫を除いては屋根を204材で作るとは考えてもいなかった。 東京周辺では束を立てての206のタルキが圧倒的。
204材のタルキだから可能な特別の秘法。
いづれにしても、一条工務店は枠組壁工法用金物は嫌いなようだ。

(6) ドライウォール工事の素晴らしさを再認識すること。

40年以上も以前に、当時の明大・杉山研に 「外壁に12ミリの合板を張り、内部にこれまた12ミリの石膏ボードを張った枠組壁工法の実物大耐震テスト」 をお願いした。 
それまで行った実物大テストは、外壁合板を張っただけのもの。 内部の石膏ボードを張ったテスト結果を見たい、との意向が杉山先生から伝えられて、実物大テストとなった。
ところが、あまりにも耐力があり過ぎて、家を引っ張るコンクリートが抜けて途中で試験は中止。 そして、杉山先生から驚きの口頭報告を受けた。
「いゃー。 石膏ボードを張った実物の耐震性はすごいですね。 壁倍率は5倍程度しか上げられませんが、実際の耐震性は7〜8倍はありますよ。 枠組壁工法というのは、本当にすごい工法なんですね」
つまり、公庫の標準仕様書のクギ打ちピッチに従って施工すると、枠組壁工法は建築基準法の2倍以上の耐震性を持っていることが実証されたのである。 これに基づいてホームビルダーシステムは大臣認可を得たが、よりオープンなシステムとして日本へ導入するために、オープン化運動を起こした。 そのことを知っている人は少なくなった。
ツーバイフォー工法に取り組んだ者は、最初から石膏ボード込みで耐震性を考えていた。
このため、開口部周りは合板だけでなく石膏ボードも繰り抜くように施工した。 また、内部のドア回りも細いボードを張り合わせるのではなく、必ず広いボードから繰り抜いた。
その結果が、中越地震ではっきり出た。 枠組壁工法には窓回りの亀裂が入らなかったが、木軸のスーパーウォールは震度6強の地点でも軒並み窓回りに亀裂が入っていたし、出隅部の45ミリの端材は、壁から剥がれ落ちていた。
つまり、最初の頃の木軸の24ミリ厚程度の細い間柱では、石膏ボードの耐震性が保障出来るような代物ではなかった。石膏ボードは単なるクロスの下地に過ぎなかった。 このため、使用するクギも公庫で指定するジプサムネールを使ってはいなかった。
木軸における石膏ボード張りの最大の欠陥は、天井ボード張りを最優先せず、壁ボードを先張りして耐火性能を著しく落としていること。

この欠点が、一条工務店の大工さんに色濃く残っている。
耐震性は、告示第1540、第1541号に基づき、一条工務店では9ミリ合板で,CN65ミリのクギを用いて、外周部50ミリ、仲通り75ミリで打つことにより壁倍率5倍の適合認定を得ている。 基準法では壁倍率5倍が限度。 それ以上やっても、国交省は認めてくれない。
しかし、当初から枠組壁工法に取り組んできた者にとっては、石膏ボートをきちんと施工すれば、杉山先生が驚いたように7〜8倍の壁倍率が出て、基準法の2倍以上の耐震性が担保出来る。
直下型の震度7の地震に遭遇しても十分に対処出来るように公庫の標準仕様書を忠実に守っている。
これに対して、一条工務店ではほとんどが9ミリの外壁合板で耐震基準を満たすので、内部の石膏ボードのクギ打ち間隔は200ミリと乱雑。 しかも天井先張りの基本ルールを無視し、私が見た現場では壁の先張りで、2階の天井ボード下地工事は、北米では絶対に許されない手法を堂々と採用している。
つまり、一条工務店にとっては石膏ボードは、木軸のルールに従ってどこまでもクロス下地としてしか見ていない。 出隅部に細い45ミリの端材を平気で使っているし、ドライウォール工法などは夢のまた夢。 一条工務店の内装の石膏ボード工事は、木軸の最低基準を持ちこんだモノで、お世辞にも 「枠組壁工法のポリシーを正しく活かしたもの」 ではない。

私は、気密性能及び断熱性能、それに太陽光と価格で先行している一条工務店の i-cube や i-smart を高く評価している。 
しかし、現実の工事現場の内容を見ていると、「ツーバイフォー材を使った木軸工法」 としか呼べないほどに、公庫の標準仕様書とは別体系のシステムになっている。 
肝心のダイヤフラムの理論体系と、「消費者により安全な空気と環境を提供する」 と言うポリシーがどこかに置き忘れられている気がしてならない。
つまり、現状では最早 「枠組壁工法」 と呼称することは出来ないのではなかろうか。 
来年から再発足する38条の大臣認定を受けて、「プレハブ工法」 として再スタートする方が良いように思う。 その方が、ツーバイフォー業界と一般消費者にいたずらな混乱を持ち込まないという意味でもスッキリするし、また一条工務店にとっても自在なことが可能になるので、よりベターな選択と言えるのではなかろうか‥‥。

posted by uno2013 at 18:56| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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