2014年06月05日

来年から38条が復活!?  あまりにも変身した一条の枠組壁工法 (中)



前回、とくにこだわってきた6点について列記したが、この各点を中心に一条工務店がどのような《適合判定》を得てきたかを見てゆこう。
これは、写真を添付すれば一目で分かって頂けること。
しかし、「現場で摂った写真は、やたらにブログなどで公開しない」 というのが一条工務店との約束事。 なかには一条のノウハウそのものもあろう。 したがって写真を添付できないので理解しにくい点が多々あることを、前もってお断りしておきます。

(1) 1、2階の床、野地合板は、ダイヤフラム理論に基づき限りなく剛にすること。

アメリカには、5つの代表的な木質構造が現存していた。 しかし、1974年に告示第56号で日本でオープン化されたのは、そのうちの 「プラットフォーム・フレーミング」 だけ。 
杉山先生に、「ポスト&ビームまでを含めて木質構造全部をオープン化出来ませんか」 とお願いしたら、「それは絶対にムリ。 日本の学界の錚々たるお偉方がこぞって反対に回って収拾がつかなくなる。 今回はプラットフォームだけで我慢しなさい!」 とたしなめられた。
ご存じのように、プラットフォーム工法は別称 《盤工法》 とも言われていたもの。 したがって、「枠組壁工法」 と訳すよりは、「枠組盤工法」 と訳した方が、より一般の人には納得してもらえる水平剛性の高い工法。 
そして、素人が言うのは不謹慎だが、アメリカにおける木質構造は代表的な5つのフレーミングとも強い床剛性‥‥ダイヤフラムを大前提に構成されていると考える。 (なおダイヤフラムについては、新井信吉著・建築研究所刊の「北米における枠組壁工法の建築構造技術」、又は水谷達郎著・日刊木材刊「木造住宅における技術革新」を参照されたし。 ただし、いずれも出版年が古く、在庫切れの可能性が大)
当初の日本の、枠組壁工法の1階の床組は、土台と束立てで大引きを2730ピッチに入れ、206材で根太を組み、15ミリの本サネ加工をしたT&G合板を接着剤併用で千鳥張りするものが、もっともポピュラーな構造手法。 
しかし、29ミリの厚いT&G合板が開発されたことにより、土台と大引きを3尺間隔に入れて206の根太を省く 「根太レス工法」 が、あっという間に普及した。 もちろん、接着剤併用の合板の千鳥張りは厳守された。 
この根太レスが普及したのは生産性が高かったのと、東京などの狭小敷地では たとえ14センチであれ、北側斜線がクリアー出来る効果が大きかったから‥‥。

一条の1階床組には、セゾンなどの木軸工法に採用されているのとそっくりのものが、 i-cube や i-smart に採用されている。  パネル工法ではない。 施工はフレーマー・グループではなく、当該現場担当の日本人の大工さんが行う。
具体的には、3尺間隔に土台と大引きを、腰掛け鎌継ぎとか蟻継ぎ、大入仕口などの継手・仕口で施工してゆく。 根太レスで、その上に3尺角の断熱材付きの厚い合板を、タイルの芋目地のように施工する。 確認はしていないが、多分接着剤併用で‥‥。
これは、10年以上も前の免震工法住宅に採用されていた1階の床構造と基本的に不変。
ご案内のとおり 一条は木軸工法からスタートした会社。 
まさか数年間のうちに icube や i-smart が主流になるとは考えてもいなかったのだと思う。
木軸がどこまでも主流であると考えていたから、フィリピンの工場にしても、今まで育ててきた大工さんや現場監督にしても、生産性という面からも作業内容をなるべく変えたくなかった。 
このため、ダメモトで認定機関へ在来工法と同一の構造で申請したら、枠組壁工法の1階床構造として必要な床剛性を持っていると認定機関が判断して 《適合認定》 が得られたのだと思う。 
まか不可思議な現象が発生した。 
ゼロからスタートした三井ホームなどは、当然のことながら告示第56号と公庫の標準仕様書からスタート。 そして、一条工務店もツーバイフォーへの進出が10年も早かったならば、三井ホームと同じ道を歩いたはず。

また、三井ホームなど多くの企業がツーバイフォーにエントリーしたのは、格段に優れた耐震性と防火性に着目したから。 次に注目したのは、デザインの自在性と分譲住宅における性能と生産性の高さ。
一方、一条工務店がツーバイフォーにエントリーした動機は、異なっている。 
これは推測にすぎないが、木軸だと通し柱の関係から簡単にパネル化が出来ない。 プレカット材だと建前までは早く進捗するが、全体の生産性が上がらず、折角のフィリピン工場のメリットが十二分に発揮されず、価格面での差別化を図ることが出来ないでいた。
だが、免震工法を売ってきた一条工務店としては、ツーバイフォーでのパネル化を図ったとしても、いまさらながら耐震性を謳うわけにはゆかない。
「謳うなら、今までツーバイフォーの大手メーカーが手を出せなかった高気密・高断熱という性能。 この性能面で工夫を凝らし、なんとかパネル化が果たすことが出来れば、一挙に局面が変えられるのではないか‥‥」 と開発担当者が考えたのだと思う。
しかし、告示第56条と公庫の標準仕様書を大前提にしたのでは、箱型のコンポーネント化は可能であっても、パネル化はほとんど不可能。 
ところが、告示第1540と第1541号が誕生して、北米の木質構造とは理論的に異質なものが、能天気に容認されるようになってしまった。  
かくてパネル化が、可能になった。
最大の難点であった気密性 (C値) は、充填されるEPSにはソリッドを入り、さらに外断熱のEPSで補うシステムを考案して、0.7cu/u前後の気密性能を確保。 
Q値は0.9Wをコンスタントに上回るシステムを開発し、プレハブ各社とは完全に別次元の差別化を完成させた。 
そして、地場ビルダーには太陽光で凌駕した。 消費者の負担なしで太陽光発電を搭載することで、一条工務店の快進撃が始まった。

一条工務店の1階床に関しては、鉄筋入りの200ミリ厚の基礎底盤を標準仕様としているメリットを考えると、適合認定を黙認することはやぶさかではないとも考えられる。 
だが、2階床や天井床、ならびに野地面では合板の千鳥張りを採用していないだけでなく、ダイヤフラムを無視した乱雑な施工性。  これを 「適合認定」 と判定した認定機関の不勉強ぶりは、どうしても許せないと考えている人が多いが、私もその一人。 
これは、告示56条人間の悲しい性。 

(2) 横架材は必ず2級以上のグレーデングされた材を使用すること。

枠組壁工法材は、すへてJASの認定工場でグレーデングされ、マーキング入りの製材品が使うことを義務づけている。  そして、すべての枠組壁工法材は、特級、1級、2級、3級、コンストラクション、スタンダード、ユティリティの7段階に分けて、マーキング。 
壁組に用いられるスタッドや上枠・頭つなぎは、3級・コンストラクション・スタンダードでも良い。  下枠は時には切り落とすこともあるので、最下級のユティリティでも可。
しかし、横架剤 (根太、タルキ、土台、大引き、マグサ、梁など) として使用する場合は、日本農林規格で 2級品以上を使うことを義務づけている。 

 製材品         特級            1級            2級
(単位:ミリ)  中央部 材縁部 穴    中央部 材縁部 穴    中央部 材縁部 穴
404(土台大引)  22  22  19      38  38  25      51  51  32 
206(タルキ等)  48  29  25      57  38  32      73  48  38
208(マクサ等)  57  38  32      70  51  38      89  64  51
210(根太  等)  67  48  32      83  64  38      108  83  64
212(側端根太)  75  57  32      95  78  38      121  95  76

このように同じ節でも中央部と材縁部では許容される大きさが異なる。
何故かと言うと、横架材の上半分には圧縮力が働き、下半分には引張力が働く。 下部に大きな節や切込みがあると、引張力でそこから材が破損する懸念があるから。 したがって材の反りの確認も大事だが、下部に節が来ないようにするチェックがより大切に。 したがってアメリカの現場では 必ず材縁部の節を確認しながら施工している。 これが常識。
しかし、日本ではそうしたチェックが実際的に難しいので、210や212材を TJIやIジョイストの工業製品に変更して採用している良心的な会社が多い。

そして、アメリカでは分譲住宅が主流だが、日本では圧倒的に注文住宅が主流。 
最初の土台や大引きの施工時点で、51ミリもの大きな節があったのではクレームの原因とはならなくても、悪い印象を施主に与えてしまう。 このため日本への輸出材は、「ジャパン・グレード」 と呼ばれるものが一般化している。 
ユティリティ材は省かれ、404の土台や大引材などには1級品並の40ミリ以下の節のものしか輸入されていない場合が多い。  とくに、防蟻処理が不要と言われている青森ヒバ材に類するものでは、無節の集成材が多用されてきている。
在来工法で育ったHRDのフィリピン製材工場では、こうした一般的なツーバイフォー材の現状認識が乏しく、時には 「この節は51ミリ以上もあるのではなかろうか」 との写真を、消費者から送付されてきたりする。
そういった点で、HRDのJAS認定工場でのグレーデングの一段の強化と、出来たら土台や大引きなどの仕様は1級品並みにグレードアップすることが求められているのではなかろうか。

(3) 外壁は、原則として一体壁として建て起こすこと。

これが、枠組壁工法のパネル化の最大のネック。

長い壁の建起し.JPG

何度も書くが、アメリカでは長さ30メートルに近いアパートの壁も、上のように一体として起こすのが常識。

10p 9.1m.JPG

私の友人のA&Mカーペントリー社では、6間‥‥約11メートルまでの208の壁を、上の写真のようにサッシ込みで吊上げていた。 これを見て、私は敷地に余裕のある現場でのIジョイストによる208の壁工法に、大きな期待を寄せた。 しかし、Iジョイストの認定と吹込み断熱材の改良などで、一般化するのには今しばらくは時間がかかりそう。

11.302階壁.JPG

上の写真は、一条工務店の工事現場。 
既存宅地での建設の場合は、このように電線が密で、しかもかなりの高さまで走行している。
その関係上、長い壁を吊り上げることは不可能な場合が多い。  とくに風の強い日は、電線に絡む怖れが高いので、一条の場合は壁パネル長さは原則として2間まで。 
したがって、上枠・頭つなぎと下枠、さらには壁合板までがバッサリと泣き別れ。 お世辞にも一体壁とは言えない代物。
そこで、パネル工法でよく見かける頭つなぎをダブルに入れる手法を採用。 
そして、壁パネルと壁パネルの接合部分には断熱材の充填を省き、CN90の赤クギを上から下まで細かいピッチでビッシリと仮止め。 
そのクギの剪断力とダブルの頭つなぎで、かろうじて一体化。 
これで、「適合認定」 を得たのだと思う。
私が推奨しているのは、北海道で普及している金物工法606の通し柱と206とのパネルの合体工法。 柱を挟んで合板でパネルとパネルを現場で一体化させる方法がよりベター。
だが、一条のこの方式も、なかなか工夫されたものではないかと考えさせられた。 これをアメリカ人に見せたら大笑いされるような苦しい逃げの手法‥‥。  だが、ダブルの外壁の頭つなぎが206だから、かろうじて許されるのではなかろうか?!







posted by uno2013 at 19:29| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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