2014年04月30日

初の「熱容量計算ソフト」の開発   札幌無暖房住研 (上)


5年半前という昔の話。
エコ・トランスファー・ジャパンのバウマンさんの運転する中型のワゴン車で、仲間の7人がドイツとオーストリアのパッシブハウスを多面的に調査してきた。
この時の日程は8日間。 バウマンさんが選んだ視察先はほぼ完璧だった。
@最新のパッシブハウスで建てられた完成住宅2棟の見学  Aパッシブハウス研究所訪問  Bハイデルベルクという美しい住宅地の視察  C木造のベンツと呼ばれる住宅工場の視察  DウッドとPVCの両方を生産しているサッシ工場視察  E新しい換気システムの工場視察  F新しい調湿と気密性抜群のべバーバリア視察  Gビルダー相手の資材販売店視察  Hいま大注目のCLT (クロス・ラミネーテット・テンバー) の建築現場視察  I56戸にも及ぶ戸建て木構造の総合住宅展示場を視察。
今から欲を言うと、日程を9日間にして製材工場を加えれば、より完璧だった。 それだけが今でも心残り。

まず、印象に残っている主な点を挙げよう。
まず、パッシブハウス研究所では、 @ファイスト博士は最初からU値が0.8Wのサッシの開発を狙っていたこと。 Aアースチューブの重要性をしっかり意識していたこと。 B熱回収率の高い顕熱交換機の開発を意欲的に進めていたこと。
これは、すでに何度も書いているので重複は避けたい。

ミュンヘンで見た56戸にもおよぶ戸建て住宅の大きな総合展示場。 全てが木質構造で、5年半前だったのに最低でもQ値は1.0W以上だった。 
そして、ほとんどのモデルハウスは  @6寸以上の勾配で、 A大きな軒とケラバの出を持っており、 Bその上にほとんどが室外にルーバーを取付けていて、直射日光の侵入を防止していた。 夏期が乾期のドイツでは、これでクーラーが不要に。
そして、どの住宅を見ても驚かさせられたことがあった。
それは、地震がないために外壁に合板とかOSBを採用しなくてもよいこと。 つまり、鉛直荷重の計算だけでよく、水平力は無視していたこと。 
さらに驚いたのは、壁体内の結露を防ぐために、 C全社とも壁紙から断熱材、外壁仕上げ材、塗料に至るまで、全て透湿性のよい資材を採用していたこと。 その徹底ぶりにはびっくり。
おまけに、水平力を無視してよいのにどの木質構造も柱は16センチ角で、間柱は7.5×16センチ程度 (私はこれを3×7材と命名したが‥‥) を2尺間隔に入れているように見えた。 もっとも4尺間隔程度に柱をいれているものもあったが、日本のように10.5センチ角という細い柱は皆無。
そして、使われている断熱材は圧倒的に  D木の繊維によるもので、ソフトボードをはじめとしてその種類は多岐に。

一方、ビルダー相手の大きな建材店と実際に完成した住宅を見て痛感したことは、 @ほとんどの住宅が、地下室を持っており、そこにアースチューブと換気設備がセットされていた。 Aアメリカでは見られなかった2階の床の振動音に配慮したいくつかの工夫が凝らされていた。もちろん柱の太さも大きな意義を持っている。  B壁や床の蓄熱に対して大変に配慮しており、多様な方法や資材のモデル展示がなされていた。 そして、実際の住宅には特殊なブロックなどが採用されていた。

おまけにもう一つ追加するなら、古い中高層RC住宅の断熱改修には、 @10センチ厚のロックウールで、繊維方向を壁に直角に施工するラメラボードの外断熱を採用している。 A1.0W以上のサッシの採用。 B太陽熱による温水設備がドイツの共同住宅では不可欠だということ。


大変に、前書きが長くなった。
5年半前にドイツで、冬期の暖房費を節減するには、0.8Wのサッシを採用し、厚い断熱材を施工し、熱回収率の高い顕熱型換気装置の採用と、畜熱に配慮すべし、ということを学んできたはず。それなのに、私の意識の中からは《蓄熱》のことがスッポリ抜けていた。
つまり、パッシブハウス研究所・ファイスト博士の発言が気にかかり、蓄熱の重要性を等閑視していた。
無暖房冷房住研の総会は、事業報告や技術委員会報告のあと、熊谷勇先生から「無暖房住宅の推進活動から見えてきたもの」という発表があった。

この研究会は、いかにして暖房費を少なくして限りなくゼロに近付けるかが目的で、太陽光などを搭載して「ネット・ゼロ」を目指すことは最初から考えていない。
暖房費をゼロにしてゆくには、@まず集熱を徹底的に追及しなければならない。
当然のことながら日射をいかに多く取り入れるかということと、機器や人体からの発熱ということも考慮してゆかねばならない。
Aつには蓄熱。
取得熱の半分を占めているのが蓄熱。 当然のことながら熱容量の大きな資材の活用を考えてゆかねばならない。
私の親戚の農家で、温室で野菜を栽培をしている方がいる。 ビニールシートを3重にかけて、地面の熱容量を最大限活用している。 冬期の野菜栽培には40℃の室温が求められるが、3重のビニールシートの中の空気層と、土の熱容量でそれほど灯油代はかかっていない。 これ等からヒントを頂いて行くべき。
Bはもちろん断熱。
そして、夏期は床下の冷気の活用と、通風と遮熱がポイントになる。
しかし、無暖房という言葉にやたらに拘る必要はないと私は考えている。 曇った日が何日も続く時がある。 あるいは、病気になって安静にしていなければならない時もある。
その時に、補助暖房機を動かすことは決して罪ではない。 補助暖房といっても、せいぜい300〜500ワット。 100ワットの電球の3〜5個分。
つまり、めったに使わないが、「補助暖房のある無暖房住宅」こそが、この会の理想とする姿ではなかろうか。

つづいて、同研究会の特別会員であるコンサルタントのタギさんから、鋭意開発を進めている最中の、「熱容量計算ソフト」について、その具体的な内容と運用方法についての、大変に興味深い中間報告があった。
熱損失 (Q値) に関しては、ある程度の知識が普及している。 
しかし、熱容量に関しては、どのように計算したら良いかを知っている人は少ない。
単に、外壁とか屋根、あるいは床だけではなく、内壁や家具なども熱容量としてカウント出来る。 しかし、どれだけを、どのようにしてカウントするかについては、その基準があいまい。 熱環境計画の指針には、何も書かれていない。
だからこそ、逆説的だが必要性が高いということでもある。 もちろん、タギ試案がそのまま公的に認可されるとは考えられない。
やはり、絵内先生あたりのサジェスチョンが大きくものを言ってこよう。
下の写真は、タギさんの試案のあと、タギさんの映写を見ながら、考え方の要点を説明している絵内先生。

絵内先生とタギ氏.JPG

ドイツなどの北欧は、暖流が流れてきているせいで、冬期の平均温度は札幌より高い。
しかし、ヨーロッパは冬期が雨季のために、雨天や曇天の日が多く、日射量に関してはドイツなどに比べて札幌の方がはるかに多い。
しかし、同じ北海道といっても、道東、道央、道北、日本海側によって、日射量に大きな差がある。 1つの数値だけで論じることは出来ない。
たとえば、札幌の暖房期間を3ヶ月 (90日) とした場合、札幌の次世代省エネ基準のトップランナー水準 (Q値 0.5W) だと、年間暖房量は12kWh/uとなる。
「前回、札幌では熱容量を2倍にアップすれば、おおむね無暖房に出来るのではないかと提唱したが、タギ方式をよく検討して、皆さんが簡単に使えるものにしたい」 との報告があった。
これは、大変先鋭的な研究であり、その発表か待たれる。

懇親会.JPG

このあと、席を変えて懇親会が行われ、若い会員には札幌の次世代トップランナー方式にトライしている会社が多く、また一条工務店との受注合戦にも勝利しているという報告も相次ぎ、楽しい一夜を過ごすことが出来た。





posted by uno2013 at 13:06| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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