2014年03月20日

一条工務店革命 ・ 企業の目的は「顧客の創造である」 (2)


昔の話である。
住宅業界紙の編集長をやっている時に、ピーター・ドラッカーの 「マネージメント」 と 「イノベーションと企業家精神」 (いずれもダイヤモンド刊) を読まされた。
正確な表現は忘れたが、企業の出発点は、どこまでも 「顧客を満足させることであり、企業の存在目的は顧客の創造である」 と書いてあった。
その基本になるのは、2つの技術であり、機能。
1つは 「マーケテング」 であり、もう1つは 「イノベーション」。
とくに 「マーケテング」 は、「何を売りたいか」 と生産者の立場で発想するのではなく、「顧客は何に価値を求め、何に満足しているか」 と、消費者の立場で絶えず考え続けること。
そして イノベーションは、基本的には生産性向上という技術革新によって推進されるが、それだけではなく、新しい経営方法や組織形態、新しい商品開発や、新しい生産方法の導入も生産性を高める重要なイノベーションだ‥‥と下村治氏に教えられた。

そして、業界人を引率してアメリカの住宅産業を調査した時、「ランドプランニング」 というオープンな共有スペースを拡大して環境を保全する技術体系と、 現場を工場として捉え 大工さんの技術を細分化して生産性を飛躍的に高める 「ツーバイフォー」 というオープンな木質構造の技術体系の存在を知った。
それらが 日本と全く異なるのは、オープン技術が 「メーカー指向型」 ではなく、どこまでも「消費者指向型」 として存在していたこと。
これを見て、私は 「消費者指向型の住宅産業」 を日本でも育てるべく最大限の努力をすべきだと痛感した。
幸い、ツーバイフォー工法は 当時の住宅局長をはじめとした住宅局の面々と、公庫の技術者の絶対的な協力が得られて、日本へオープンな形で導入することが出来た。 
そして、オープンスペース・コミュニティのタウンハウス団地も、三井不動産の3000坪程度の端材の分譲地で数ヶ所で試みてくれたが、結実するまでには至らなかった。 このため、オープンスペース団地は、40年以上経った現在でも、未だに日本には存在していない。 
これは、まことにもって残念至極な話。

いずれにしろ、私は早い段階で日本のプレハブメーカーによる住宅産業は、[メーカー指向の代表例」 に過ぎず、地場ビルダーによる 「消費者指向型住宅産業」 の育成のために、私自身をその立場に置いてきた。 
ツーバイフォー工法とR-2000住宅の普及に邁進したのは、ドラッカーのいう 「新しい顧客の創造」 そのものであり、正しい選択であったと確信している。 
そして、ツーバィフォーは年間約10万戸以上の需要を得る一方、在来の木軸工法にも金物工法という形で伝播し、耐震性を一変させてきている。 
しかし、多くの金物工法業者は 独自性を強調するのあまり、アメリカのツーバイフォーに学んで、生産性を飛躍的に高める努力をサボっている。
また、R-2000住宅は 全国の地場ビルダーの努力によって、延べで1万戸近くには及んではいるが、消費者指向型の新産業誕生というには遠く及ばない。
その後、新住協や北海道ハイムによってQ-1住宅運動 (Q値が1.0Wの住宅) が叫ばれたが、真にQ-1住宅と呼べるのは1000戸余に過ぎず、ドイツのパッシブハウスにいたってはまだ2〜3桁台にとどまっているようだ。
日本の官界や学会は、10数年前のカナダのR-2000住宅から一歩も前進しておらず、官学産は、「スマートハウス」 という言葉を弄て遊んでいるだけ。 ドラッカーの影さえも見えなくなってきているのが現状。

この中にあって、数年前から本格的にツーバイフォー工法に乗り出したばかりの一条工務店が、
40年来の長きに亘って、「ツーバイフォー工法のトップメーカー」 だと自画自賛し、2X4協会を牛耳ってきた三井ホームを 昨年には完全に追い抜いた。 
5000戸余の三井ホームの2X4実績に対して、一条工務店は8000戸以上。
おそらく今年は1万戸を突破して、三井ホームがどんなにジタバタしても敵わないツーバイフォーの王者になる。 それどころか、近いうちに住林やミサワも追いぬいて、木質構造のトップ企業になることは間違いなかろう。

しからば、一条工務店は何をしたのか。
ドラッカーの言葉通りの、「新しい顧客を創造した」 のである。
前回も触れたように、新しい技術開発にはカネと時間がかかる。
カナダで、「初期のR-2000の顧客は‥‥」と担当者に聞いたところ、「牧師と医師だけ‥‥」 と答えていた。 それほど、新しい顧客を開拓することは難しい。
日本でも、当初はサッシと断熱材が揃わず、R-2000住宅は坪10万円近くも高くなった。
ところが、PVCのペア・サッシがことのほか安価で入手出来るようになり、断熱材も安くなった。そして、何よりも職人が手慣れてきて、性能が2倍近いR-2000住宅が、坪3〜4万円高程度で供給出来るようになってきた。
初めて、「新しい顧客の創造」 を実感でき、全国でR-2000住宅の専業地場ビルダーが2桁に増大した。
しかし、その後はQ-1住宅でも、パッシブハウスでも、価格がこなれていて、新しい顧客を継続的に開発出来る地場ビルダーが 陸続と生まれてこなかった。 西方設計など、一部の設計事務所が目立つようになっただけ‥‥。
産業化運動とは、お世辞にも言えない状態。

そこへ、Q値が0.85W程度で、C値が0.7cu/u程度の高気密高断熱で、10kW程度の太陽光発電を搭載し、完全にゼロ・エネルギーハウスを達成出来る i-cube とか i-smart が登場した。
しかも、価格は40坪で60万円台。
かくて、新しい顧客は一条工務店へ殺到するようになったのである。
経産省や国交省が唱えるゼロ・エネルギー住宅を、たった1社で1万戸近くもこなす産業革命を起こし始めたのである。 国の税金を使わなくても、万戸単位のゼロ・エネルギー住宅が、陸続と建設され始めてきた。
経産省や国交省はの存在はカタなし。 もちろん大手の住宅メーカーの存在価値が薄れてきた。
同時に、高価格層を狙っていた地場ビルダーも追われる立場になってきた。
そして一方では、私のリンク先に乗っていない新しい地場ビルダーが、札幌市だけで2桁も増加してきている。

私は消費者の立場で、一条工務店の存在を是と思っている。
しかし、地場産業と地場企業の育成という面からは、多くの問題点が内包していることも知っている。
だが、企業の存立の基盤が、「新しい顧客の創造にある」 のが原則だとしたら、「いたずらに地場ビルダーの保護」 を叫ぶわけにはゆかない。 
一条工務店に堂々と対抗出来る中小のビルダー群の育成こそが、最大の課題ではなかろうか‥‥。

posted by uno2013 at 09:48| Comment(0) | ゼロエネルギーハウス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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