2014年03月10日

中国のブタ問題より、深刻な水不足こそ中国の生命線 !


柴田明夫著「中国のブタが世界を動かす] (毎日新聞社 1500円+税)

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筆者は東大農学部を出て丸紅の鉄鋼第一本部へ入ったというから異色なスタート。 そして2001年から丸紅経済産所主任研究員。 世界の食糧事情や水資源問題などで幾つかの著作かあり、シェール革命などの著書もある。
したがって、「中国のブタが世界を動かす」 という本を書くのは、著者にとっては朝飯前の仕事。 わざわざ褒めそやす必要などない。

言われて気がついたのだが、2010年の全世界の養豚数は 9億6585万頭。 このうち、49.3%に当たる 4億7642万頭が中国で生産されている。 ブタの最大の生産大国は中国であり、 同時に中国は最大の消費大国。
日本では、「お肉」 といえば、なんとなく牛肉のことを指すが、中腰で、「お肉」 といえば70%の圧倒的な人がブタ肉を連想するというお国柄。 
つまり、世界の人口比は20%だが、その20%の人口が世界のブタ肉の50%を消化しているというのだから、侮れない。 この事実を見ただけで、「中国を除いてブタのことは語れない」ということが、嫌と言うほど分かる。

しかし、そのことだけでこの本が書かれたのでは、隠れた3つの大きな副題が見える。
1つは、中国は東北の大地に大きなトウモロコシ畑をもっていて、長年中国産ブタの飼育を受け持ってきた。 いや、中国はトウモロコシの輸出国でもあった。
中国が、ブタが大好きで、地産地消しているのだったら、何一つ文句がない。
ところが、経済の発展と生活の向上によって、ブタ肉の消費が増え、2008年にはついに中国は国産のトウモロコシでは間に合わなくなってきて、ついにトウモロコシの輸入国家になっいてしまった。
2009年にはアメリカから130万トンを輸入し、2013年には700万トンも輸入しなければやってゆけない国になってしまった。

2つは、共産主義国家と言うのは、国民の不満を抑えるというか、不満をそらすために、生活の必需品を特別価格で提供している。 
広い国土を持ったソ連では、アパートの家賃と都心から100キロも離れた郊外の300uのダーチャという農園での生活が潤いだった。
しかし、土地の所有権で味をしめ、巨益の売買益に目覚めた中国の地方政治家は、この土地権益を絶対に手放すものかと必死になっている。 このため、不動産でバブルが発生し、外国に不労所得層にも建物や土地が売買の対象になっている。
そして、真面目な都市労働者にとって、住宅と土地という不動産は、諦めねばならない共産主義の差別化商品の、最たるものになってきた。
住宅とセカンドハウスに関しては、中国は共産圏の中でも最悪国になり下がっている。

しからば、今まで共産主義が中国人をここまで引き連れて来れたのは何だったか。
それは過去30年間におよぶ10%という経済成長率であり、4%以下のインフレ率。
その経済成長率が、10%どころか8%を切り、このままの体制が続くとしたら近いうちに6%を切るという見方まで出てきている。 これは、中国が実質中進国のまま凍結されるということ。 アメリカを追い抜くなど、とんでもない。
そして、投機資本が乱入する穀物相場にあっては、中国から穀物買いが必要以上の高値を呼び、中国の物価高を呼ぶ怖れ。
中国政府は、人々の離反を恐れて、インフレ率を何とか4%に収めている。
しかし、貿易収支による潤滑な予算をつぎ込んでも、いつかは抑え切れない時が来るのではなかろうか。
そして3つは、その時の中国の体制はこのままで良いのかどうか‥‥。

著者が 「中国のブタが世界を動かす」 の中で書いているブタの話はここまで。
ただ、この後に書かれている たった1/6しか占めていない「中国水資源」 問題の方が、はるかに私にとっては印象的だった。
その何点かだけれを抜きとって紹介しょう。
●温暖化に水不足の加速
温暖化は、地表面の蒸発、植物からの蒸発散をまし、寒海用水の需要を増す。また、温暖化によって北極をはじめ多くの永久凍土を溶かし、一時的に必要量をまかなってくれるという則面はある。
よく水資源という言葉が言われるが、非常に間違えた使い方がなされている。
石油や金属資源に比べて水資源の配分は最も不平等。
水資源ももっとも豊かな日本は、この大切な現実を忘れている。

●中国の深刻な水不足
中国の水には3つの特徴がある。
1つは、70%の農業用水。 食糧の自給率を維持するためにも、この絶対数は変えられない。
2つは、これに対して工業化のための工場用水と、急速な都市化にともなって生活用水が急造。 これが、新しい水問題を起こしてきているといっても過言ではない。
3つは、政治的な意図によって意識的に水道料金が低く抑えられているため、節水の意識が低いということ。
ちなみに北京市の家庭用水の使用量は5045m3。一方日本の使用料は208m3。なんと日本の家庭の24.3倍も家庭用水を北京市民は使っている。 しかも水道料金は北京の2元(約30円)/トンに対して東京は200〜400円/トン。
このような共産主義の偏った政策が、中国の水事情をさらなる深みへ招いている。
全く無駄な洗車のために盗水が平気で行われていたり、漏水が後を絶たない。 このため[水政観察大隊」 というパトロール隊までが存在するというムダの見本。

●自然支配型が現在の中国の支流
ご案内のように、長江の水を北京市へ運ぶ 「南水北調プロジェクト」 が、華々しい掛け声で進められている。
しかし、この自然の支配を変えてしまうという試みは、これからの世界の渇水化という大きな流れの中で、本当に正しいプロジェクトなのだろうか。

●1リットルの水が8リットルの水を汚染する
河川の流量が低下するということは、水汚染が進むということ。
この著は水資源の著書ではないので具体論は避けているが、1リットルの汚染量が8リットルの水を汚染するという原則に照らしてみると、如何に中国水資源不足が重大な問題かをうかがわせてくれる。 
そして、地下水を掘り過ぎて将来の可能性までを犠牲にして、いびつな経済発展に邁進中の政府と、それを許してきた国民。
単にブタ問題だけではなく、いろんなことを考えさせられる著書。




posted by uno2013 at 13:51| Comment(0) | 書評(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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