2014年01月15日

気密性能を無視した住宅局が、現場力の低下を招いている (3)


若い人は、19年前の阪神淡路大震災や、10年前の中越大震災のことについて、間接的にはいろいろ聞いてはいるだろうが、現場へ入って直接被害を確かめた人は少なく、直下型の震度7の地震の怖さについては観念的にしか理解していないというのが現実だと思う。

大きな地震がないと考えられていた大都市・神戸の被害は、ひどいものだった。
大きなRC造のビルが倒れ、鉄骨ビルはALCの壁とガラスのカーテンウォールがほとんど剥がれ落ち、鉄筋も入っていない布基礎の木造軸組住宅が多く、軒並み1階が潰れて倒壊。
軽量鉄骨造のアパートのパネルがやられ、ツーバイフォー住宅でも間口が小さくて耐力壁が不足していた住宅は1/70ラジアン以上の傾きで、隣家に寄りかかっていたので倒れてはいなかったが住宅としての機能は完全に失われていた。
そして、今でも目に焼きついているのは、三宮や元町の駅に通じる北側の道路沿いの間口の小さな中層のペンシルビル群。 道路に沿って南北に揺れたために、道路に沿って延べ数百メートルに亘って折り重なるように倒れていた。 文字通りの《将棋倒し》。
今でも同様な街並みを見るたびに、当時の三宮、元町の状況が目に浮かんでくる。

これに対して、2500ガルという烈震に見舞われた中越の元川口町。 中でも武道窪とか田麦山など4ヶ所の激震地。 丈夫な高床基礎は一切やられていなかったが、90%が倒壊。 地震そのものの被害のひどさは神戸を遥かに上回っていた。 
しかし、信州大や筑波大の先生方は倒れた家だけを外から点検しただけで、倒壊していなかった10%の家の中に入り、その倒壊しなかった原因と、倒壊はしなかったが受けた大きなダメージについては何一つ調査していない。 報告書は実におざなり。
多雪地の川口町には、軽量鉄骨のプレハブもなければ、ツーバイフォー工法もなかった。 あった新工法は、トステムのスーパーウォールだけ。 幸いにも川口町で20棟以上の実績を誇っていた渡部建設を紹介してもらい、3度に亘って現地を訪れて実態に触れ、消費者のナマの声を聞くことができた。
トステムのスーパーウォールは、金物工法の木軸の中に、断熱材入りの合板パネルを張っただけのもの。 特別に優れた工法とは言えない。 しかし、この渡部建設のスーパーウォールは一つも倒壊してはいなかった。 最激震地でも、残った10%の中に必ず入っていた。
しかし、倒壊はしていなかったが、2500ガルの被害がもたらしたダメージは大きかった。

2005年6月2週号の 「2500ガル以上の脅威。 科学的な解明を切望 !! 」 を読んでいただくと、あのホールダウン金物のボルトの先が千切れている。 そして、千切れないまでも各ホールダウン金物がひん曲がるダメージを受けている。
先の東日本大震災の折、福島の海岸際の住宅が、3メートルの津波を受けながら、ホールダウン金物のおかげで木造住宅が浮上せず、きちんとした垂直を保ちながら唯一生き残った事例を東大・安藤直人教授が紹介している。
つまり3メートルの津波よりも、2500ガルという直下型の地震の方が、住宅に及ぼす影響が大きかったということ。
ホールダウン金物がこのように痛みつけられた中越地震では、ほとんどのエコキュートや畜暖機器が倒れ、クーラーが壁から落下していた。
そして、内部の壁に入れられていた筋交いは、圧縮を受けて面外挫屈を起こし 全ての石膏ボードを跳ね飛ばしていた。 それだけではなく、多くの柱が床から抜け、元の穴に戻っていない壁をいくつか目撃した。
そして、被害を受けた奥さんの嘆き節が、今でも耳の中で響いている。

「おかげで、全壊しなくて良かった。 そのことには心の底からから感謝しています。 しかし、この家は以前の静かな住宅ではなくなりました。 家の前の急な坂をのぼる自動車の騒音に悩まされて安眠が出来ません。 高断熱はなんとかなるけれども、もう高気密は二度と戻ってはきてくれないのでしょうね‥‥」

そうなんです。
住宅は、倒壊しないだけではダメなのです。 いつまでも高気密を維持してくれていないと、消費者にとっては価値が半減どころか1/10以下になってしまうのです。
したがって、現在の建築基準法で言うところの耐震性能・等級1では問題になりません。
等級2というのは、基準法の1.25倍の性能しか持っていません。 等級3にしたところで、基準法のたった1.5倍。 これでは気密性能は保障できません。
私は、「基準法の最低で2.0倍から2.5倍の耐震性能を保証しないと、気密性能は保障できない」 という考えの持ち主。 つまり、耐震等級で言うならば、5等級から7等級でなければならない。 そういった等級を新設しなければならない、という考えを持っています。
木造住宅だったら、この5等級〜7等級を出すことは不可能ではありません。 消費者がやたらと大きな開口部を求めず、またやたらと広い空間を求めない限り達成が可能。

しかし、小さな鉄骨造とかRC造 (鉄筋コンクリート造) では基準法の2.0倍は可能かもしれません。 だが、マンションなどの中高層ビルとなると、コンクリートの自重のためにほとんどが2等級止まりで、3等級の高耐震性を持ったマンションは例外中の例外と言われています。
東京で10年以内に直下型の震度7の地震がくると言われています。 その時、倒壊しなければ儲け物。 ただし、気密性能は大きく失われてしまう怖れがある住宅が なんと多いこと‥‥。
つまり、国交省住宅局は、鉄骨造とかRC造のことを考えて、基準法の1.75倍の4等級や、基準法の2.0倍の5等級という耐震性能を謳うことが出来ないのです。
私が、原発に対して強い懸念を持つのは、放射性廃棄物の10万年に及ぶ最終保管場所と保管方法が、断層だらけで堆積岩しかない日本では見つからないだろうと懸念されるから。
それと、もう一つの懸念は、現在の原発の耐震性がせいぜい2等級か3等級しかないのではないかという懸念。
福島原発事故が起こるまでは、私は原発関連学者と地震学者を盲信していました。
原発は、少なくとも、基準法の2.0倍以上の耐震性能を持っているはずだと考えていました。 耐津波対策でも、もう少しましだろうと考えていました。
この信頼が、根底から覆えされたのです。

気密性を無視する住宅局の考えが糺されない限り、日本の住宅の耐震性は当てに出来ず、信頼してはならないというのが私の考えです。
posted by uno2013 at 16:40| Comment(0) | 産業・経営 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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