2014年01月10日

気密性能を無視した住宅局が、現場力の低下を招いている (2)


数年前から、ヨーロッパを吹きぬけているパッシブハウスの大嵐。
一時期は大変に喧伝されたが、最近ではあまり騒がれなくなってきた。 
その最大の原因は、リーマン・ショックにより、ヨーロッパ経済そのものが この数年間は沈滞気味だったというせいにあろう。 イタリア、ギリシア、スペイン、アイルランドは沈没し、ドイツ経済だけの一人勝ちという形が明白になってきている。

しかし、そのドイツにしても新設住宅の着工面からみると、2007年間から20万戸を下回っており、2011年にいたってやっと20万戸台を回復した。 最新の資料が無いので明言は出来ないが、12年、13年とも20万戸をやや上回ると言うペースに過ぎず、住宅業界を潤わせているのは旧東ドイツ時代の中高層賃貸住宅の断熱改修工事だろうと私は判断している。
これは、何もドイツに限った現象ではない。
本家本元のアメリカは、バブルの真っ最中の2005年にはなんと215万戸を突破していた。
それがリーマン・ショック後は60万戸台にまで落ちている。 そして、最近になって80万戸台を回復し、やっとバブルからの脱却が実感されるようになってきている。
最もひどいのはスペインで、2006年には70万戸台を謳歌していたのに2011年には10万戸を切るまでになってきている。
イギリスもやっと10万戸を上回る数字にまで回復したところ。
ヨーロッパの中で、一人気を吐いているのはフランス。2004年から40万戸台を維持していたが、08年、09年は40万戸を割った。 だが10年から再び40万戸台に戻し、11年には初めて50万戸台に乗せている。
つまり、フランス1国だけで ドイツ、イタリア、イギリスを合算した戸数に匹敵するほど。

ヨーロッパ住宅市場がこのように縮んでいたので、北欧などの木材やサッシや住宅機器などの市場も 当然のことながら縮んでいたと考えざるを得ない。
私が仲間と一緒に、ドイツやオーストリアを調査のために訪れたのは2008年10月上旬で、もう丸5年半も昔のこと。
したがって、リーマン・ショックの直後のことであり、まだヨーロッパの住宅に大きな影を落とすには至っていなかった。 ドイツを中心に気密性能が0.2cu、熱損失係数のQ値にいたっては0.5〜0.8Wというパッシブハウスが、真剣に議論されていた。
そして、その動きがCO2の削減の動きに呼応して、そのまま世界の基準になるのではないかと考えられてもいた。
しかし、パッシブハウスの動きが否定されたという話は聞いていない。
方向性は不変ではないかと思う。 しかし、縮小するマーケットの発言力は弱く、世界を動かすには力不足のように感じる。

ご案内のように、日本の新設住宅の着工量は2008年は104万戸と堅実。
それが、リーマン・ショックに見舞われた翌2009年には77万戸と80万戸を下回った。
しかし、2010年からは順次回復に転じて10年は82万戸、11年は84万戸、12年は86万戸と戸数を伸ばし、消費税の値上げ前の駆込み需要で、昨13年度は1〜5月は7万戸以下だったが6月以降は8万戸台をキープしており、久々に90万戸台に及ぶものと推定されている。
しかし、これには消費税が5%から8%へ上がると言う駆込み需要が3割近く含まれているものと考えられる。  したがって、今年の上半期までの新築住宅の着工量はそれなりの水準を保つであろうが、後半になって崩れてくる懸念が強いのは否めない。

日本は、世帯数に比べて住宅の数が圧倒的に上回ってきている。 高齢者の比率も高まり国内需要の頭打ちが全産業界で叫ばれている。
このため、全ての産業が、東南アジアの成長力を取り入れてゆかない限り、産業として成長して行けなくなっている。
何しろ、隣国・中国の2010年の新設住宅の着工戸数は 1500万戸を超えているといわれている。
これに、低所得者のための 「保障性住宅」 の新しい需要1000万戸が加味される。 だが、日本の企業は指をくわえたままで、物欲しげに眺めているだけ。
これに対して、カナダや北欧などの木造住宅は、この1500万戸余というマーケットに対して猛烈な売り込みをかけている。
かって、木造需要の最大の消費国は、アメリカとともに日本が大きく挙げられていた。
しかし、面積はともかくとして 戸数では中国がアメリカの10倍の需要を持つ巨大なマーケットに変身している。
TOTOの便器が売れ、ダイキンのクーラーが売れているのは、けだし当然のこと。
しかし、日本のゼネコンが中国の賃貸マンションの大型受注を獲得したとか、セキスイハウスやダイワハウスが 注文住宅の受注のために上海の郊外に支店を出したという話は、未だに聞こえてこない。
また、数年前には、円安に乗じて四国や九州の杉に対して、中国から引き合いが殺到してきたことがある。 ところが、円が105円と円安になっているのに、引き合いが増えたという話は聞こえてこない。
日本の山に木が育っていても、それを製材して、商品化するという企業が日本では育成されていない。 ドイツが抱えている林業のプロが、日本では皆無に近い。
林野庁は、CLT(クロス・ラミネーテッド・ティンバー) の農林規格を発表したが、規格があるからといって 海外マーケットが開拓出来るものではない。

かつての阪神淡路大震災で、日本の旧来の木軸工法では地震に対してあまりにも弱すぎると言うので、金物工法が陸続と開発されてきた。
たしかに、今までの在来木軸に比べて金物工法は耐震性は抜群。 その面では再発見させられた。
だが、金物工法は金物を多用するので、コストが割高になるのは避けられないことだと説得させられてきた。 しかし、昨年暮れに2つの金物工法の現場へ入って見て、私は現場の生産性の低さに呆れてしまった。
たしかに、上棟まだの建て方には クレーン車を使うので早い。
しかし、その後にアメリカの現場に比べて2倍の労働力を無駄に使っている。 このため、折角の金物工法が 国際的な競争力は今後においても現状では持ち得ていない、と私は痛感‥‥。
机を前にした設計士の技術開発力で耐震力を上げることは出来た。 だが、肝心の現場を知っていない設計士が開発したので、やたらと人工を食っている。 つまり、現場のことを良く知らない、現場力の弱さがその普及を妨げている。
このままでは、国産材が円安で使いやすくなっても、現在の金物工法では決して国際競争力は持ち得ない という変な信念のようなものを持たされてしまった。

しからば、フィリピンで完全にパネル化してきている一条工務店のツーバイフォーは、驚くほど生産性が高いか ?
これに対しては、全職人さんのタイムスタディをやっていないので確言することは出来ないが、アメリカの分譲住宅の現場に比べると生産性は半分程度。
ここでも私は、日本の住宅建築現場における [現場力」 の弱さを、痛いほど感じさせられている。
なぜ日本のメーカーは、アメリカの住宅建築現場を訪ねて、その生産性の高さと性能保障力の高さを学ぼうとしないのだろうか ? 
もちろん、断熱性とか気密性という面ではドイツの現場がはるかに優れているが、こと生産性に関してはアメリカには叶わない‥‥。

posted by uno2013 at 11:37| Comment(1) | 産業・経営 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
気密性能を無視した住宅局が、現場力の低下を招いている 
全て拝見させていただきましたm(__)m
私、ごときが言うのもなんですが、
本当に素晴らしいです。

改正省エネ法から、換気の項目が抜けています

換気の基礎理論・・・・・

換気と気密は同じ理論と計算式で成り立って
いるので、気密を無視した換気計画はあり得ません・・・・。m(__)m


Posted by 毛鳥奈都子 at 2014年01月21日 10:25
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