2013年12月15日

日本的2×4工法の合理化努力に感心させられた一条の現場 (上)


ご案内のように、私は建築学科卒のプロではない。
その私が、「公庫の枠組壁工法の標準仕様書]の叩き台と、「R-2000住宅の設計・施工マニュアル」 の叩き台を書いたのだから、我ながら呆れている。

ともかく、アメリカの大工さんの基本教科書である 「カーペントリー」 は、必要に迫られて何回となく読んだ。
しかし、いくらカーペントリーを読んでも ツーバイフォー工法が完全に理解出来るわけにはゆかない。 細部の収まりがどうしても理解出来なかったから‥‥。
そこで、アメリカの建築現場を訪ね、「ハーイ」 と若干の土産を渡して、アメリカの基礎工事屋さんから建て方の大工さんにはじまり、造作大工さん、ドライウォール工をはじめ、仕上工に至るまで 25種類以上に及ぶ全職種の作業内容とその生産性の高さを、延べ70日に亘って観察し、測定した。
と同時に、スーパーバイザーと呼ばれる現場監督の動きを、朝の8時から夕方の5時まで綿密に記録した。
また、アメリカから3人の大工さんを呼んできて、日本全国の10ヶ所で 大工さんを集めての 「建て方のキャラバン」 を実演して回った。 もちろん丸1日の講義も含めて‥‥。

その結果、アメリカの大工さんは 「カーペントリー」 にものすごく忠実であり、その上で生産性を向上させるために 各自がいろんなチエを絞っている実態が、痛いほど分かった。
とくに建て方は、原則として3人が1つのチームを作っている。 それぞれが手を休めることなく仕事をするには、各自が別々に働き、壁を建て起こす時は全員が一体となる。 
指定されたクギを間違いなく、素早く打つて壁や床を作る個人技の早さと、チームワークとしての段取りの良さは、長年の経験に裏打ちされたもの。 
これが、日本の大工さんの8倍以上の生産性をもたらしていた。
つまり、アメリカの建築現場には、学ぶべき点があまりにも多く、「現場を知らずしてツーバイフォーを語る資格はない」 と断言できた。
その現場へ、延べ70日も通い続けた私の頭の中へ、素人だったが基礎工事からペンキの仕上げ工事までのすべての作業内容と段取りが叩き込まれた。
公庫の 「枠組壁工法の標準仕様書」 の叩き台を用意することは、それほど難しいことではなかった。 カーペントリーを読みながら、アメリカの現場を思い出すだけでことが足りた。

そして、私が日本へ導入しょうとしたのは、単なるツーバイフォー工法という木質構法ではなかった。 2×4材という木材の普及が目的でもない。 
アメリカのランドプランニングという大きな共有地のもたらす環境保全。 住宅建築現場が持っている合理的で高い生産性がもたらす低コスト。 それと、消費者のことを考えた防火性、耐震性の高い性能。 さらには、クレームを皆無にする2重、3重のチェック体制がもたらす安全性であった。
つまり、消費者志向型の住宅産業の展開にほかならなかった。
そのために、新しいビルダー群が生まれてきてほしいと熱望した。 
それだけではなく、欲張りな私は、プラットフォームと呼ばれていた 「床が剛な盤工法」 だけではなく、バルーンフレーミングと呼ばれていた 「1、2階を206による通しスタッドで構成する工法」。 さらにはポスト&ビーム工法と呼ばれていた 「柱・梁工法」 を、スパン表と一緒に導入出来ないかと考えた。
木質構造の第一人者であった杉山英男先生に相談を持ちかけた。

これはすでに書いたことだが、杉山先生は、「木軸までいじろうとすると、日本の長老方が猛反対して収拾がつかなくなる。 ここは、プラットフォーム工法に限定すべきだ」 と忠告された。
先生は床剛性の高いプラットフォームを積極的に支持されており、そのために床に設ける階段室などの 「床開口部」 には厳しい考えを持っておられた。 極論すれば、「2.4メートル角以上の床開口部はとってはならない」 という意見だったように思う。
これには、私は困ってしまった。 なぜなら、アメリカには勾配屋根空間や大きな吹抜け空間が、206の通しスタッドでどんどん作られている。
ポスト&ビームまでは望まない。 最低バルーン・フレーミングとの併用を認めてもらわないと、プランらしいプランが出来ない。
アメリカでは、下の写真のような広々とした空間が、プラットフォームと併存してほとんどの住宅で作られている。

吹き抜けの部屋.JPG

そして、8尺高のアパートの20メートル以上の長い外壁は、既報のとおり一体壁として9人の大工さんによって建て起こされていた。 これが、「カーペントリー」 が唱える 「外壁は、必ず一体壁として起こしなさい」 という原則。 (写真は古い雑誌から転写したもので、ピンボケしているが、アパートの20メートル以上の外壁が9人の大工さんによって建て起こされているのがよくわかる)

長い壁の建起し.JPG

しかし、206の17尺にも及ぶ高くて長い壁は人力では起こせない。 そこで、下の写真のようなクレーンで吊上げられていた。 
また、建物のほんの一部だけを吹き抜けにするには、下記の写真のように、一部分だけが206のバルーンで組まれていた。

バルーン.JPG

吹抜けはバルーン.JPG

しからば、勾配天井の壁はどのように作られていたか ?
この場合は、最初から206の壁とするか、それとも3.2メートルまでは1-204とし、3.2〜3.8メートル (この正しい数値を忘れたので、数値は信用しないでください。だいたいこのような感じのものでした) までは2-204とし、それ以上の高い壁の部分には206を用いて、その部分だけは壁厚を50ミリばかり内外のいずれかにフカしていた。
杉山先生にバルーンフレーミングを反対され、セッパ詰まった私は、この勾配天井のスタッド例をこっそり最初の公庫の枠組壁工法の標準仕様書に書込み、勾配天井と吹抜け空間を何とか守ろうと画策した。
その画策が奏功して、東京や横浜地域をはじめ多くの地域では、206によるバルーンフレーミングが確認申請で公に受理された。

しかし、1998年 (平成12年) の建築基準法の 「性能規定化」 によって、構造計算によって安全が確かめられさえすれば、必ずしも206の通しスタッド、つまりバルーンフレーミングによらなくても、204材で、腹切した吹抜け空間も可能になってきた。
つまり、アメリカのカーペントリーをはじめとした大きな約束事のシバリが、日本のツーバイフォー工法にはなくなってきたのだ。
当時、私は 「技術顧問」 という肩書で、ハーティホームの全ての現場のチェックと入居1年経った施主の声を集めた 「通信」 の作成に携わっていた。 
したがって、堂々と全現場を見回っていた。
そしたら、アメリカの常識では絶対に許されない吹抜け空間が相次いで出てきた。 「このように補強した方が施主のためにベターではないか」 と担当責任者に補強策を提案したが、「構造設計事務所で確認申請を取得済みで、補強する考えはない」 と言われてしまった。
そこで、信頼している構造設計士に相談したがラチがあかず、杉山先生にサジェスチョンを請いに参上した。
しかし、建築基準法が改正され、構造計算によって 「耐震性能や耐風性能がある」 と認定されたものは、杉山先生でも手出しが出来ない。 そして、こう言われた。
「これで、震度7に耐えられるかどうかは、現場の人間が一番良く知っている。 貴方がダメだというなら、多分正しいでしょう。 そして問題は、貴方の考えているような社内の自主規定が制定出来るかどうかです。 つくれず、構造設計に責任が持てないなら、技術顧問を辞めるしかないでしょう‥‥」 と。

私が唱えてきたアメリカ式ツーバイフォー工法は、その形態は残しているけれども、過去のものになってしまった。 
それが、技術開発やイノベーションの進化の結果であれば、喜んで受け入れたい。
しかし、2007年 (平成19年) の国交省告示1541号には、私は本心から同意出来ないでいる。
やたらと建研の諸先生方をはじめとした構造設計の概念論だけが横行して、現場の視点と消費者の視点が失われているように感じられるから‥‥。







posted by uno2013 at 11:50| Comment(0) | Q値0.8W以上の住宅 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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