2013年12月05日

家庭用デシカに対する質問に答えられるほどの実績が‥‥


住宅用デシカにたいする質問をいただいたので、ネットフォーラム欄で私なりの返答を書いていたのですが、前回のブログの不確かさの指摘を受け、話がそちらへ流れたので、この欄でまとめて取り上げたいと考えます。 
同じことを何度取上げるつもりだ、と怒られる向きもありましょうが、今一度お付き合いを。

家庭用デシカは、いきなり生産されたわけではありません。
ダイキンが業務用デシカを開発してマーケットへ投入したのは5年前の2008年か、その前年だったはず。 いずれにしろ業務用デシカは、2008年の 「省エネ大賞」 を得ている。
そして、翌年には滋賀工場内に2億円を投じて《エコラボ》と称する家庭用デシカの実験棟を建てています。
この実験棟は、大手鉄骨プレハブに依頼したもので、気密性 (C値) は0.8cu/uとR-2000住宅クラスだったが、熱損失係数 (Q値) は0.8W〜2.7Wと、内地で求められる最高値に近い性能から次世代基準までに対応。
必要に応じて、自在にQ値をアジャスト出来る内容だった。
そのエコラボの見学と、デシカに対する知識を深めるため 北洲の3人のトップと私が滋賀工場を訪ねたのが2009年の年末。 その様子は、2009年の12月20日付のこの欄で紹介してます。

ダイキンとしては、Q値が0.8Wの層から2.7Wの層までの需要を睨んでいた。
その、0.8Wクラスの層の意見を聞く機会として、北洲と私が呼ばれたのだと思う。
そのほかに、1.9W〜2.7Wを狙うプレハブ各社も当然のことながら呼ばれていたと推測。 そして、プレハブ各社も非常に高い関心を示したはず。 
だが、湿度を完全にコントロールするには気密性が物を言う。 
業務用はRC造が多く、気密性能は高い。 したがって抵抗なく受け入れられたが、プレハブなどの大手住宅メーカーにとっては、次第にこの気密性能が重荷になってきたはず。
そういったこともあって、家庭用デシカの開発は当初よりもかなり遅れることになった。

私が最初にデシカに取り組んだのは、Q値が0.9WのS邸。 一条工務店がダイキンに仕様書発注をし、鳴り物入りで売り出した《ロスガード90》。 何しろ全熱交で、夏期の潜熱も回収してくれる優れ物として前評判がやたらに良い。
これを、単なる換気装置として使うのではなく、「セントラル空調換気システム」 として採用したいとダイキンエアテクノ東京に頼み込み、一条工務店の許可を得てS邸など2棟に採用してみた。
ところが、潜熱まで交換するせいか、相対湿度が60%以上と高くて とてもじゃないが快適な生活は出来ない。 設定温度を25℃にして、やっと相対湿度が60%。 
こんな冷気の中での生活は身体に悪いと言われて、クーラーを除湿力の高いアメニティビルトインに変えざるを得なかった。 
それでも、Sさんは9年前のダイキンの初期の除加湿機能システムの方が良かったと言われるので、ダイキンに頼んで業務用デシカを2010年8月に入れてもらい、1年間に亘ってデーターをとってもらった。
そのデータの一部を、今年の8月15日付のこの欄で紹介している。
2011年の8月は、平均して室温が27℃で、相対湿度は40%。文句なしの快適さ。 男で、面の皮の厚い私は、32℃で相対湿度が30%の方がより快適に感じる。
一方、12月から3月までの冬期は、室温が21〜22℃で、相対湿度が45%。 もう少し相対湿度を上げたいところだが、準防火地域でサッシが限定され、45%を超すとサッシに結露が生じてしまう。 このため、45%をキープ。

業務用デシカだから、最初から空調機、加湿器、分配器ともども吊下げ方式。 そして、マイスターハウスは消音のために床に工夫を凝らしてくれていた。 床を張ったのは小屋裏の一部に過ぎなかったが、それ以外の部分には断熱材の端材を詰めるなどをして、消音に配慮してくれていた。 
このため、最初から音に対するクレームはゼロ。
そして、1階の同居予定の母のために造った浴室は、現場作りで腰壁から上は青森ヒバで仕上げており、2階の広い浴室はこれまたレッドシーダーの無垢材仕上げのため、天井面に結露水がつくことがなく、したがってカビの胞子が育つことは皆無。
つまり、S邸は結露が皆無の家で、浴室からの24時間排気を行ってもデシカの素子が塩素系の洗剤で痛めつけられる懸念は無し。
そして、エアテクノ東京は、便所からの24時間排気を考えて、RAダクト内に簡易な光触媒機能を設置してくれていた。
このため、業務用デシカに変えて問題点は、一度冬期の除湿数値の設定を間違えた大チョンボ以外では、何一つ問題がなかった。
そして、価格はかなり抑えられるという見通しを聞いていたので、私の意見は家庭用デシカ待望論一辺倒となってしまった。

この、S邸の業務用デシカの採用より半年程度の遅れで、家庭用デシカが北洲の2つの家庭で実験的に採用され、データがとられた。 
その報告書をダイキンから見せてもらったが、施主の家が仙台とか、北上と遠かったので、ズルをした私は現場を見ておらず、施主の率直な意見も聞いていない。 
それどころか、北洲の技術担当者からも、細部の意見を吸い上げていなかった。
つまり、家庭用デシカに対する真剣さが足りなかった。 もっともっと突っ込むべきであった。 そして、いち早くに問題点を発見し、メーカーに改良を要望すべきだった。
それを行わず、「家庭用デシカの発売時期だけにこだわっていたのは怠慢だ」 といわれても、言い訳が出来ない。 率直に非を認めるしかない。
そして、ご案内のように家庭用デシカが発売されたのは今年の春。
そして、価格は予想を大きく上回る高さで、定価で100万円。 このため、多くの消費者が離れて行かれたのは、ある意味では当然。 

ダイキンが、一条のロスガード90や、地所ホームのエアロテックを見て、家庭用デシカを床置きにしてフィルターの交換を優先したのは正しい選択だったろう。 
しかし、重さが135キロと重く、2階とか小屋裏へ上げるのは、将来の交換のことを考えると2の足をふまざるを得ない。
それに、仕様書に書いてあるように運転音が36デシベルとやや高い。 しかも四切弁の 「シューッ」 という切替音は最大で45デシベル。 寝室の側に設置すると、どうしても気になってしまう。
したがって、1階の玄関回りなどに設置する例が増えているようだ。 
しかし、一条工務店のような各室毎の分配器を持っておらず、単に換気用として採用した場合でも3尺角の空間で全部を処理することが出来ず、1階及び2階の天井裏に設ける2分岐、ないしは4分岐チャンバーで処理しなければならない。 当然のこととして、ダクト設置の手間が余分にかかる。
これが、セントラル空調換気システムにする場合は、出来たら小屋裏に吊った空調機、分配器まで200φ以上のダクトで結ばねばならない。 上げるダクトと降ろすダクトのスペースは、バカには出来ない。 設計士が熟知していないと、根太や梁で配せなくなる。

そして、デシカの素子が塩素系の洗剤に弱く、浴室やトイレ、あるいは台所からの排気は全部個別排気ということになると、熱回収能力は著しく落ち、省エネ機器とは言えなくなる。 それに、冬期の加湿力に問題が出てくる。
こうした諸問題に対して、実践の中で経験を積み、消費者のクレームを完全に追放してゆくには、かなりの時間がかかろう。
しかし、住宅用の換気システムとか空調換気システムは、そうした禊を受けない限り絶対に成長出来ないのは事実。
これは、何もダイキンだけに限った問題ではない。 ナショナルも菱電も抱えている問題であり、日本の住宅システムが世界へ羽ばたいてゆこうとする限り、絶対に克服しなければならない大きな壁。
勇気をもって、実績を積んでゆきましょうよ。

posted by uno2013 at 10:56| Comment(0) | 除加湿・空調・換気 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: