2013年11月30日

仏の放射性廃棄物最終処理場の与論を見て、日本の原発を再考 !?


ジャン=マリー・シュヴァリエ他著「21世紀エネルギー革命の全貌」(作品社 2200円+税)

21世紀エネ表紙.JPG

この著書はフランスのドフィーヌ大経済学部教授で、エネルギーと地政学センター前所長のジャン=マリー・シュヴァリエ氏と、同大教授で現センター所長のパトリス・ジョフロン氏、それとフランス電力配電会社部長ミッシェル・デルデヴェ氏の3人によって執筆された「エネルギーの未来・すべてを包み隠さずに‥‥」を翻訳したもの。
今まで、エネルギー革命というと、スウェーデンやドイツの関係者のものがほとんど。 最近はオーストリアのバイオエネルギーが注目されているが、フランス人が書いたものが翻訳されたことは皆無と言ってよかった。

現在のEUは、原発推進国と脱原発国に大きく分かれている。 前者はフランス、イギリス、フィンランド、ポーランド、チェコ、リトアニアにプラスしてオランダがそれに近く、後者は福島原発で方針変更を余儀なくされたドイツ、イタリア、スイス、オーストリアなど。
日本のテレビや新聞では、ドイツなどの脱原発国の動きが盛んに紹介されているが、フランスやイギリスなどの動向はほとんど紹介していない。 したがって、世界は圧倒的に脱原発の方向へ進んでいるものと勘違いしている向きが多い。 
この著書は、CO2を削減して気温の上昇を2℃以内に収めることこそ大目的だとしており、化石燃料の比率を減らすため 基本的に原発を容認している。 
しかし、東電の福島原発の意図的に創られた《安全神話》や管理の杜撰さについては、強い批判を浴びせている。 
この著書は、基本的にエネルギーの安定供給を問題にしたものではない。 エネルギーが消費者に届くまでの生産、輸送に関与するサプライチェーンの安全性と脅威について述べている。
その中で、特に私の目をひいた項目が3点あった。

1つは、現在EU27ヶ国の化石燃料に対する依存率は、なんと80%にも及んでいること。
石油が37.6%、天然ガスが23.5%、石炭が18.1%になっている。 とくにドイツとポーランド、チェコの石炭の比率の高さが気になる。
そして、再生可能エネルギーの比率は13%だという。 内訳はバイオ10%、水力2.3%、風力0.2%、太陽光・地熱が0.1%、という。 数値が何年のものなのかがはっきりしないが、残りが原子力発電ということだろう。 
いずれにしても、これからの40年間に先進国はCO2を今までの1/5にまで減らしてゆく必要がある。 それには、EUだけで毎年3000億ユーロ (約40兆円)近くを投資してゆかなければならない。 果たして、それが可能かどうか ?

2つは、どのエネルギーを選んでも、エネルギーリスク・ゼロというものはあり得ないこと。
例えば、2010年には石炭の採掘現場でアメリカ人は29人亡くなったが、中国ではなんと2500人もの命が失われている。インドでも多くの犠牲者を出している。
スイスのバウル・シェラー研究所の調査によると、1969年から2000年までの31年間にエネルギー関連で5人以上の死亡事故は1870件も発生しているという。 そして、石炭の採掘現場では1万8000人が亡くなっている。 
また、地球温暖化による水害‥‥ダムの放流などて3万人以上の人命が失われている。
たしかに、チェルノブイリでは29人が即死しており、以降の70年間に9000人から最大3万3000人 に被害が出る可能性が指摘されている。 
たしかに原発は怖い。 しかし、石炭発電による微細粉塵の大気汚染で、70年間に96万人の死者が見込まれている。
だが、福島原発では直接の死者は出ていない。 その代わり移住を強いられたり、別離をさせられたりと言う被害が出でいるが‥‥。 
しかし、OECDの専門家は、同期間に自然放射線量による死亡者をチェルノブイリ事故の1500倍の5000万人と予測していることを忘れてはならない。

3つは、人々はいろんな施設の必要性を認めているが、自分の家の裏庭にそれが建設されることには反対するということ。 これは世界共通の現象。
2010年のフランスの与論調査によると、次の施設が近くに建設されることは迷惑だという意見が圧倒的多数を占めていた。
・化学工場の建設 94% ・空港の建設 91% ・家庭用ゴミ処理施設の建設 90% ・放射性廃棄物地下保管庫の建設 86% ・高速道路の建設 81% ・原子力発電所の建設 79% ・高速鉄道路の建設 76% ・高圧送電線の建設 73% ・携帯電話のアンテナ基地の建設 55% ・風力発電所の建設 42%。
フランスでは、原発に対する信頼感が日本より高く、裏庭で建設されるのは迷惑と感じるのは79%に過ぎない。 ところが放射性廃棄物の地下保管庫となると86%が迷惑と感じている。
この3点以外にもこの著書には紹介すべき点は多い。 だが今回は、原発の放射性廃棄物の最終処理施設問題だけに的を絞って、皆さんと一緒に考えてみたい。

この著書で述べているとおり、現在原発から出てくる《高レベル放射性排気物》の10万年に及ぶ最終処理場を決めたのはフィンランドとスウェーデンの2国だけ。
いずれもボスニア湾寄りで、フィンランドは列島の西側のオルキルオトに、スウェーデンは列島の東側のエストハルマンの地下400メートルから700メートルに建設している。
アメリカはネバタ洲のユッカマウンテンでの許認可申請書が08年に正式に受理されたが、09年の政権交代で計画中止が表明され、計画の見直しが議論されているところ。
フランスは北東部のビュールを内定し、2015年には設置許可の申請を行う予定となっている。
これに対して、イギリスをはじめ世界のほとんどの国では、その設置位置さえ決まっていない。
ご案内のように、日本では2035年から40年にかけて操業を開始したいとしているが、その候補地すら未だに絞られていない。 問題を先送りしているだけ。

小泉元首相が今年フィンランドのオルキルオトの最終処分場を見学して、「日本では最終処分場は建設出来ない」 という判断から、原発を中止せざるを得ないという判断にいたったと経緯を語っている。
実は、私は昨年下半期の面白本のトップに挙げた木村政昭著 「巨大地震は連鎖する」 を読んだ時点で、「地震国日本には10万年間も安全に保管しておける最終処分場はない」 ということに気付かさせられた。
日本に、人類が住むようになってからせいぜい3〜5万年程度と言う学説がある。 その真偽のほどは分からないが、少なくともその2〜4倍も長い期間に亘って、地下に安全に保管しなければならない。
地震国日本では、断層があろうがなかろうが、技術的に考えて10万年も安全に保管しておける場所が本当にあるのだろうか。
下の、「地震分布の世界地図」 を見てほしい。
日本からフィリピン、インドネシアと南アメリカの太平洋側は地震大国。 あまりにも地震が多発しすぎている。
http://emigration-atlas.net/environment/earthquake.html

この図を見ると、スウェーデンやフィンランドでは、過去に一度も地震が起こっていない。
堅い岩盤で出来ているから、地下400〜700メートルに最終処分場を設けても安心な気がする。 しかし、フィンランドの技術者は、「氷河期がくれば、果たしてこの処分場が安全と言い切れるかどうか分からない」 と言っている。
氷河期云々の前に、「地震がないところを選定する」 ということを最優先させるべきではなかろうか。
そうすると、上に挙げた地図からは、北緯55°以北、東緯10°〜110°の北欧3国とロシアが最有力候補地となる。
このほか、北米、南米、アフリカにも適地が見つけられるが、日本と東南アジアに限っては適地がゼロと言えるのではなかろうか。
中国もこの図で見れば、あまり安全とは言えない。

それと、強調したいのは、鉄筋コンクリートだと、最先端の技術を使っても現在の日本の技術では500年の寿命が精一杯。 とても1万年とか10万年は持たない。
鉄筋コンクリートだと、鉄筋の数を増やし、厚くすれば何100年でも持ち、どんな地震が来ても安全な施設が造れると考えてはいないだろうか ?
私もそのように考えていたことがある。 
しかし、ある木質系の技術者から、「木造だと震度7〜8にでも対処することが可能。 だが、鉄筋コンクリートだと、現在の建築基準法の1.25倍の等級2から 1.5倍の等級3が限度。それ以上のものは自重が木造の7倍という関係もあって造れない。 マンションには等級2までで、等級3のものはほとんどない。 日本のインフラが50年でほとんどダメだと言われているのはムベなるかなだ」 という話を聞いたことがある。
この真偽は横に置いておこう。
地震では震度もさることながら、問題になるのがガル。
阪神淡路大震災が来るまでは、私はせいぜい400ガル程度のことしか考えていなかった。
ところが、1995年の阪神淡路大震災では818ガルを記録していた。
ところが、2004年の中越地震では、川口町ではなんと2516ガルという驚くほどのガルが記録されていた。 その90%以上の住宅が全壊している烈震地の現場を見たとき、私は2500ガルに耐える建築を建てねばならないと痛感した。
そして、中越地震では多雪地のため1階はコンクリートの高床で出来ていたが、これにはほとんど被害がなかったことを知り驚いた。 被害はその上の木造に集中していた。

ところが、福島原発は600ガルではなく460ガルで実質機能を失ったという意見を聞いた。 ストレステストは700ガルから800ガルに基準を厳しくしたという話も聞いた。
中部電力の浜岡発電所は、「国の800ガルではなく。1000ガルに対応できるように08年に改善しました」と書いている。 大飯原原発は1260ガルに耐えられると言っている。
しかし、中越地震の2516ガルのあと、2008年の岩手・宮城内陸地震ではなんと4022ガル、そして2011年の東日本大震災では2933ガルと、いずれもストレステストを上回るガルが、日本では3回も連続して発生している。 
それを、どこまで設計に織り込んで行くべきなのか ?
その地震国・ニッポンで、10万年間も安全性を保証出来る最終処分場が、本当に建設できるのだろうか ?

私の個人的な意見は、ロシアと交渉して、今まで地震がほとんどない中央シベリア高原辺りで、日本が技術面と資金面でかなりの負担を覚悟して、なんとか共同で最終処分場を造れないかというもの‥‥。 
それこそが外交であり、それが成功出来ないようでは、小泉元首相の言い分に、分があるように感じるのだが‥‥。


posted by uno2013 at 17:04| Comment(0) | 書評(建築・住宅) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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