2013年11月25日

《太陽光10kW時代》という大手の戦略と、どう戦えばよいか‥‥


いままで、住宅用エネルギーの使用を抑えるために各国がとってきた政策は、「まずは住宅の断熱性と気密性を上げ、無駄な冷暖房費、給湯費、照明などの家電費を出来るだけ省くこと。 しかし、どうしても換気、家電、パソコンなどに3〜5kWの電力が必要。 これを太陽光、風力、バイオなどの再生可能エネルギーから、如何に多く取り込めるかがカギ」 ということに尽きたと思う。
ヨーロッパは完全にその方向に向かっているし、北米も遅ればせながらそこへ向かっている。
日本の消費者も、地場ビルダーも方向感覚は同じだった。

この欄で、6回に亘って紹介したユウキ邸は、その代表例。
前提条件としたQ値は、南関東なのに0.8W。 当然のことながら屋根と外壁の断熱性能を高めて、サッシはトリプルを採用。
気密性能 (C) は、最初は遠慮して0.5cuを求めた。そしたら、ビルダーと職人さんが頑張ってくれて、0.3cuを軽く突破し、パッシブハウスまでになった。
そして、デシカによるセントラル空調換気システムを採用。
「建築費が若干高くなっても、まず震度7に対応出来る耐震性があり、壁内結露などは絶対に起こさず、躯体そのものの耐久性能は50〜100年経ってもビクともしない。 それだけでなく、50〜100年後も最先端の住環境性能を保持し続けていること。 それが可能であれば、3kWの太陽光パネルの搭載と蓄電システムは、近い将来には100万円も投資すれば可能になり、文句なくゼロ・エネルギーハウスにすることができる」 というもの。

大手住宅メーカーの中で、この方向へ180°の方向転換を決め、実行したのが一条工務店。
何んだかだと問題点はあるが、私はこの一条工務店の大転換には感動を覚える一人。 
あの木軸一本槍で、ダクトによるセントラル換気を毛嫌いしていた会社。 
それがたったの3年間で、ツーバイフォー業界のトップメーカーに変身した。 これほど見事な変身は住宅業界だけでなく、日本の産業界でも珍しい。
極論すれば、世界でも稀な成功例と言えるのではなかろうか。
この大転換を成功裡に導いたのが、フィリピンHRDの大型工場の存在。 単に工場だけでなく、営業マンが施主と打ち合わせた内容を図面化する実務設計業務も、こなしている。
つまり、中国よりも賃金の安いフィリピンで、工場スタッフと設計スタッフを育成し、業務の大幅な外国への移転‥‥企業のグローバル化がもたらした成功と言えよう。
しかし、グローバル化の成功と言うには、まだまだ早い。 
生産拠点が国内から海外へ移転するということは、国内での就業の機会を少なくするもので、双手を挙げて賛成というわけには行かない。
一条工務店が国内需要だけでなく、海外のマーケットを開拓できるようになることが、本当の意味でのグローバル化。 
日本の住宅メーカーは、いずれも国内だけを相手に考えているお山の大将。 発想が貧弱で、諸外国へ打って出てゆける商品力、技術力、価格競争力を持っていない。

一条工務店が、とりあえず日本で成功をおさめたたのは、当然のことながら日本の消費者の支持を得たから。 
つまり、今までの住宅局の政策は、どこまでも大手プレハブメーカーと宮大工など一部の工務店の鼻息ばかり窺ってきて、真に消費者のことを考えてこなかった。
つまり、欧米各国は 《消費者志向型の住宅産業》 の展開を図っているのに対して、日本は一貫して 《大手メーカーと宮大工志向型の住宅産業》 しか展開してこなかった。 
その悪しき見本が、次世代省エネ基準から 「気密性の基準の廃止」。
この暴挙に対して、一条工務店は工場生産住宅でありながら、C値0.6cuを謳い、その性能を担保している。 また、私に言わせれば i-cube の実質的なQ値は0.8W、 i-smart の実質的なQ値は0.9W程度にすぎないと思うが、それにしても今まで考えられなかった性能値へのトライを果敢にやってのけた。 この果敢なトライを《イノベーション》という。
日本の消費者は、そのイノベーションに感動した。
それまでの一条工務店の商品は、田舎の旦那衆を相手にした泥臭いものでしかなかった。 いわゆるダサイ企業に過ぎず、都市の消費者からは見向きもされなかった。 
唯一の取り柄は 《免震構造》 だけ。

一条工務店は新聞や雑誌、テレビなどで一切のPR活動をしない。 このため、まだ多くの消費者は同社の動きを未だに知らずにいる。
しかし、ネット情報に明るい知識層や若者には、あっという間に同社の大変身が知れ渡った。
消費者で、「住まいのブログ村」 を利用して、ブログを立ち上げている人が、なんと約1万7000人にも及ぶ。 いかにブログを立ち上げても、これだけブログの数が多いと、1週間に1人も訪れないブログが2/3〜3/4にも及んでしまう。 会社のブログだと、社員が義理に開いてくれるが、個人のブログだと誰も見てくれないものもある。
したがって、ブログの数がやたら多ければ良いというものではない。 しかし、ブログの数は消費者の人気を反映している面もあろう。 とくに注文住宅の場合にはそれが顕著だと言ってもよかろう。
メーカー別にブログ村のベスト10を挙げれば、下記のようになる。
@一条工務店 523  A住友林業 333  B積水ハウス 227  Cセキスイハイム 141  D旭化成 129  Eダイワハウス 109  Fミサワホーム 97  G三井ホーム 94  Hトヨタホーム 47  Iパナホーム 41
この数字をもって、一条工務店は抜群の人気を持っているとは言えない。
しかし、PR費を一銭も使わずに、アッと言う間に三井ホームを追い抜いてツーバイフォー工法のトップに踊り出ただけでなく、ハイムが20年かかって営々と築き上げてきた 《太陽光発電のトップの座》 をも、奪おうという勢い。
これに、ブログが深く関わっていることは否定できない。
今年の9月までは、消費税がらみで各社とも忙しかった。
しかし10月以降は、地場ビルダーだけでなく大手メーカーも受注力が落ちてきている。 分譲はともあれ、注文住宅では今後の落ち込みを予想している業者が多い。
それだけに、好調を続けている一条工務店に対する警戒心と嫉妬心が強まってきている。
ハイムの 「スマートパワーステーションEX」 は、一条工務店対策として位置づけた方が、より理解がしやすい。

ハイムEX.JPG

私は、大手プレハブメーカーの中で、今までハイムを一番高く買ってきた。
なにしろ、北海道で206材によるツーユーホームで、天井のGW厚360ミリ、外壁のGW厚220ミリで、トリプルサッシを採用してQ値 0.99Wという商品《シェダン》を、数年以上も前から発売している。 北海道限定ではあったが、トライする意欲は高く買えた。
しかし、今回発表された鉄骨のEXのQ値は2.1Wに過ぎず、C値も2.0cuと鉄骨にしては頑張っているが、世界へ出したら笑い草。 ただし、近未来商品はQ値を1.9Wと、何とかトップランナーにまで高めている。 
一方、206のグランツーユーは、Q値1.6W、C値0.99cuで、シェダンよりはるかに性能が落ちているので今回は対象外。

これは、どこまでも私の印象に過ぎないが、ハイムは新しいトライを避ける 《守旧派企業》 になり下がったのではないかという気がする。 減価償却が済んだ既存の工場を動かすだけでよい。 冒険は一切避けるという企業に‥‥。
その工場を稼働させるためには、単価を下げても需要を確保したい。 そのために10kWの太陽光とHEMSだけを搭載したEXを59万円台から売り出す。 この基準となっている住宅の延べ坪数は38.5坪だという。 
38.5坪×59万円=2272万円。 
このうち、HEMSは画像を付けなければ10万円以下で済む。 それも含めて10kWの太陽光の搭載費を300万円と仮定すると、建築費の本体価格は約51万円。
ハイムとすれば、断熱や気密にカネをかけるより、10kWの太陽光一発で勝負した方がはるかに効果的と考えたのだろう。
地場ビルダーは、「太陽光のハイム」 という宣伝力に対抗しょうとすれば、断熱とか気密という性能をほどほどにして、10kWの太陽光をいかにして300万円近くで提供出来るかという競争に巻き込まれる可能性が高くなってきた。
一条工務店は、今までだと10kWのパネル費と工事費、それに1%の金利を加えても340〜350万円であった。 買い上げ価格が30円になると、金利費の負担が増える。 したがって、これからはハイムの価格がリーデング価格になるだろう。

300万円で10kWの太陽光を入手するには、1社では太刀打ちできず、共同仕入れを行っている協会とか協組に加入する必要がある。
これはあくまでも一例に過ぎないが、PVソーラー協会員になると、10kWの外国製品だと現金で150万円程度で入手出来る。 年会費を払い、工事費を払ってもなんとかなりそう。 だが、ハイムのネームバリューを覆すのは容易なことではない。
ともかく、待っているのではなく、自ら動かないと10kW時代には生きてゆけない。 
そして、ハイムに続いて守旧派の大手鉄骨プレハブメーカーが、陸続と同じような発表を行い、日本のゼロ・エネルギーハウス運動は、本命の高気密・高断熱から逸れて、「いかにして安く10kWの太陽光を搭載するか」 へ、まっしぐらに進むかもしれない。

消費者無視の騒動が、またまた熱を帯びる可能性が大。


posted by uno2013 at 14:39| Comment(0) | ゼロエネルギーハウス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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