2013年11月10日

木軸のFPの家の、Q値0.97Wの現場を初見聞してきました


もう15年以上も前のことになろうか。
岐阜の宇佐美ハウジングは、ツーバイフォーではちょっと知られた地場ビルダー。背が高い若社長はなかなかのやり手で、ゼネコンの宇佐美組とハウジング部門を順調に伸ばしていた。
若社長は学生時代はゴルフで鳴らしたシングルプレーヤー。ゴルフ場の経営にも手を染めていた。 その彼の経営するゴルフ場へ全国の仲間が招待され、いろんな情報を交換しながら一日ゴルフを楽しんだことがある。
彼の会社は、松本建工の中部地域のツーバイフォーの《FPの家》のパネル工場も兼ねていたので、その折に初めてツーバイフォーのFPのシステムを拝見させてもらった。 いろんな印象が残っているが、工場で硬質ウレタンを充填するために壁内配線が行えず、外側の通気層部分で配線をしていたことが当時としては珍しかった。 
その後、ウレタン充填パネルは206によるスーパーシェルなどでも多用され、別段に珍しいものではなくなった。

ご案内のように、松本建工は経営の行き詰まりから2009年5月に経営権は、ニチハに移行されている。 そして、今でもFPコーポレーションは全国に320社近い工務店を擁して、健在ぶりを見せている。
注目されているのが、「FPの家+スーパー・テクノロジー」という新しい技術提案。 札幌と東京で新しいデモ住宅が建築中。
中でも目を惹くのが札幌モデル。 札幌市のトップランナーの基準を超えた Q値0.5W以上という信じられない超高性能住宅が建設中。
Q値が0.5Wを上回るというのは、考えただけでも容易ではない。
このため、外壁は105ミリ厚の旧来のウレタンフォームパネルの外側に、構造用パネルを挟んで100ミリ厚のウレタンフォームを付加している。
同じように、床は床断熱で、140ミリのウレタンパネルの内側に、100ミリのウレタンパネルを付加。
そして天井には、ロックウールのブローイングを650ミリも吹いている。650ミリですぞ!!
サッシとドアは輸入のトリプルでU値は0.7W台というから最高水準。 換気もシステムエアー社の輸入品で、結露のしない顕熱交で 熱回収率は90%以上というもの。
6kW強の太陽光が搭載され、完全にゼロ・エネルギーを達成。
完成は来年の1月で、宿泊体験施設として広く公開される予定。
「性能オリンピック」 が目的であれば、誰にでも超高性能住宅を作れことは簡単。 問題なのは販売価格。 果たしていくらぐらいになるかが、注目されるところ。

一方、東京・府中市に建設されているのはニチハのT社員の自宅。
これも来年1月末に完成して2ヶ月ほど展示されるが、モデルハウスではない。
建てられるのは市街地の準防火地域。 したがってYKKのサッシが採用されるということもあって、Q値目標は0.97Wと、Q-1住宅並み。
準防火地域ということで、105ミリのウレタンパネルの外側に75ミリのロックウールが施工される。 防火という面から考えると、外側に付加する断熱材としては、ロックウールが最高の選択肢。
現在日本で流通しているロックウールとしては、KMブラケットとアルセコなどドイツから輸入品のラメラボードがある。
KMブラケットというのは、ポリカーボネートという不燃性の強いブラケットを600ミリ間隔にとりつけ、その間を60〜100ミリ厚の溌水性の高いロックウールを挟んでゆき、縦胴縁をKMブラケットにとりつけて通気層をとり、サイデングだけでなくタイル仕上げも可能というのが最大の特徴。 ただ、ロックウールの繊維方向は外壁や屋根面と同じ平行方向なので、抑えると引っ込む。
一方、アルセコなど場合は、ロックウールがそのまま下地となり、メッシュを入れて通気性のある左官仕上げに最大の特徴がある。 
このため、下地としての硬さが求められるので、ロックウールの繊維を外壁面に直行させる。
この直行させたロックウールのことをラメラボードという。 圧縮に対して非常に強いが、その製造上で、どうしても幅が400ミリ前後と限定されるために、施工性の面でやや手間がかかるという難点がある。

平易ラメラ.JPG

いままでは、ロックウールの外断熱としては、この2つの方法しか日本にはなかった。
そこへ、「第3の道」 として名乗りを上げてきたのが札幌の音熱環境。
同社の考え方を図面化したのが上図。
ともかく、充填断熱は何でも構わない。 構造体の外側に構造用合板などの面材を取付けて、土台と平行して墨を出し、ぐるりと高さ100ミリで140キロの硬いラメラボードを下の写真のスプレー接着剤で固定して行く。

指定のスプレー接着剤.JPG

そして、その上に高さ500ミリの80キロの壁と繊維方向が同じロックウールを、これまた接着剤で仮止めして行く。 そして、その上に100ミリのラメラと500ミリの平ボードと交互に隙間なく積み重ねてゆく。 開口部周辺は原則としてラメラ。
そして、上まで積み上がれば透湿・防水シートが施工されて、縦胴縁が施工される。

6×150.JPG

ただし、この縦胴縁に打たれるクギは6ミリΦで、長さ150ミリ以上のビスクギに限定。

7×210を斜打.JPG

そして、直下型の地震に対処するため、1間ごとの各階の壁の中央から上で2ヶ所、7ミリΦで、長さ210ミリのビスクギを45度に斜め打ちする。 このことによって上下動で15倍の強度が立証出来るとか。 また左右の揺れに対しても専門家に今月中に方向性を出してもらう予定になっているという。 
当然、付加断熱材の厚みとサイデングの重さにより使われるビスクギの長さが異なる。音熱環境では7ミリΦで、最長300ミリのビスクギを用意している。
T邸では75ミリと付加断熱厚が比較的薄く、軽量なサイデングのために、ビスクギの強度は過剰と言えるのかもしれないとのこと。

一昨日は、このラメラボードの取り付けや、縦胴縁から間柱へのビスクギの平打ちと斜め打ちが実演される予定だった。 ところがT邸のサイデングは横張りではなく縦張り。 さらに、ニチハはサイデングに関してはノウハウを持っており、金具を使うということで通気層の取り方が違うので、「ラメラ付加断熱の施工実演」 は中止になってしまった。

梁セイは300.JPG

しかし、私は木軸のFPの家は初めて見るので興味が深かった。
まず目についたのが梁セイの大きさ。大きな物では300ミリもあり、LVLも使われていたのにはびっくり。

内壁はダブル筋交.JPG

内壁にはダブルに筋交いが入っている。

床パネルは3×6.JPG

床パネルの大きさは3×6尺。

床パネルを切抜ホールダン.JPG

新しい木軸工法がそうであるように、折角の床合板が削られて、一体のプラットフォームではなくなっている。 柱は土台に固定され、ホールダン金物が取り付けられている。

ハンマーでパネルを打ち込む.JPG

問題は外壁パネル。
後付けの小さなパネルを嵌め込んで行くために、大工さんが大変に手古摺っていた。 パネルを削ったり、カケヤで叩いたりと忙しい。

ジョイントの目地.JPG

しかし、目地部分はテーピング処理がなされているので、気密性能はかなり良い。「C値は0.3cu/u以内に抑えて見せます」 と、工務店の現場責任者が断言していた。

ふかされるサッシ.JPG

サッシの取付部分は、付加断熱の厚さの分だけ木枠がフカされている。 この部分のヒートブリッジが、どこでも悩みのタネ。

この住宅には、一部小屋裏部分を急勾配にして、太陽温水器を採用するなど、いくつかの面で面白い工夫がなされていて勉強になる。
しかし、私の印象では、先に紹介したユウキ邸同様に、躯体工事の生産性が大変に低いことが気がかり。
私は、一条工務店の有力な対抗馬として、ニチハのFPが位置づけられるのではないかと期待していた。 だが、どうやらムリのよう。
つまり、金物工法を中心とした木軸工法の場合は、大胆な発想転換を行い、大型壁パネル方式を導入しない限り、一条工務店に追いつくことは出来ない。 やたらと軸にこだわっていると建て前までの生産性は高いが、その後の工事の生産性があまりにも低すぎる。 細かい仕事が多すぎ、どうしても大工手間がかかってしまう。 
このことを、もっと自覚して、早く目を覚まして転換して欲しい。

これが、阪神淡路大震災以降の、耐震性を考えている木軸工法全体に当てはまることではなかろうか。

posted by uno2013 at 16:57| Comment(1) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつも興味深い記事を拝見させていただいております。
このたび、極寒の道北で住宅を新築いたしました。
気密・断熱性能には相当こだわって家を建てましたが、鵜野さんのブログを大いに参考にさせていただきました。
おかげさまで、第3種換気でQ値0.944、C値0.22の家が完成しました。
ありがとうございました。住宅を新築するにあたってブログを作っていましたが、今までごく親しい人にしか公開していませんでした。完成に際し、しばらくの間パスワードなしで公開することにします。ご興味があればご覧ください。
UTLは、
http://koukimitukoudannetu.blog.fc2.com/
です。
Posted by 中本和樹 at 2013年11月10日 19:05
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