2013年10月25日

東大・弥生講堂でCLTの未来を考えるフォーラムが盛大に


昨日、東大農学部・弥生講堂において、「CLTの未来を考えるフォーラム」 が、盛大に開催された。
延べ4時間に及ぶ内容の詰まったもので、最初の2時間はオーストリア・グラーツ工科大のゲルハルト・シックホッファー教授の 「ヨーロッパにおけるCLTの経験」 という長い報告。
その後、有馬孝禮東大名誉教授がコーデネィターになり、パネリストとしてはヨーロッパでいくつかの建築実績のある法大・網野禎昭教授。 2007年にE・ディフェンスで行われた 「日伊7
階建てCLT耐震実験プロジェクト」 に立会ったベターリビングの岡部実試験研究役。
2011年から国産の杉材の1m幅のパネルから6m幅のパネルまでの実験を行った工学院大・河合直人教授。 それとCLTの生産で実績がある銘建工業社長で日本CLT協会の会長・中島浩一郎氏の錚々たるメンバーによるパネルディスカッションは、中身が濃かった。
その後に、2時間余の懇親会。

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講演.JPG

〈写真はシックホッファー教授と講演風景〉
しかし、シックホッファー教授の講演の内容をメモした肝心の資料が配られておらず、教授の早口の説明に対する同時通訳が聞き取りにくく、折角の講演の価値が半分以下になってしまったのは、大変にもったいなかった。
KLH社の動向をはじめ、ヨーロッパのCLTの動きに或る程度明るい者には、講師の言わんとしていることはおぼろげながら理解出来た。
しかし、CLTに対する予備知識が少ない者にとっては、苦痛の2時間であったろう。
それが証拠に、同教授に対する質疑は、大変に低属な内容のモノばかり‥‥。 つまり、生煮えの質問ばかりで、聞いていて嫌になってきた。 それだけに、ほとんどの参加者は、CLTがもたらす社会的な意義を正しく理解することは出来なかったろう。 そういった意味では、主催者の不手際は責められても仕方がない。
あれだったら、シックホッファー教授の話を1時間に縮めて、パネルディスカッションの時間を1時間延長すべきであった。

有馬.JPG

パネリスト.JPG

 〈コーディネーターの有馬先生とパネラーの各氏〉
コーディネーター役の有馬先生がいみじくも指摘した通り、「日本の林業学界はこの10年来、寄ると触ると出てくるのがCLTの話ばかり。 つまり、学会も林野庁も、CLTこそが日本の林業問題を解決してくれる唯一の方法であるかのように捉えられてきた‥‥」という点にこそ問題の本質があるという気がしてならない。
そして、網野先生が指摘していたように、「ヨーロッパの木質構造は、何もCLTだけに限定されているわけではなく、低層住宅では省エネという面から外壁にはCLTを避ける傾向が強い」 というのが現実ではなかろうか。
私が数年前にヨーロッパを訪ねた時、KLH社の低層のモデル棟を2つ見せてもらったが、正直言って一つも感動しなかった。
たしかに強度はあるが、断熱性能が低すぎる。 網野先生が言うようにプラス外断熱をするようでは、完全に価格面でも性能面でもやたらに高いものになる。
したがって、戸建ての注文住宅で、日本でCLTを採用したいと考えている住宅メーカーや地場ビルダーはゼロと言っても過言ではない。
日本の低層住宅で、CLTでわずかだが素晴らしい内容での実績を積んでいるのは、マテ―・ペーター氏の 「ピュアウッド」 しかない。

耐震性と防火性を強く求め、その上にQ値が1.0W以上の性能を求め、しかも2階の床の遮音性を求める消費者には、一条工務店の i-cube や i-smart をはじめとして、研究されたツーバイフォー住宅の方が はるかに低価格で内容の充実したモノが供給できているし、現に年間に1万棟も供給されている。
この現実を、学者先生も林野庁も直視していない。
杉材で針葉樹合板を開発し、杉材の2×4材、2×6材の乾燥材を開発し、Iビームを開発してゆくことが どれほど実需を生むことになるか。
そういった点では、諸先生も林野庁も盲目。
あるいは、割高の金物工法を根本的な改良を加えたものの普及を、本格的に考えないと、日本の山の貴重な資源は 一向に活用されない。
つまり戸建て住宅では、CLTは消費者にとって魅力が無さ過ぎる。 それと地場のビルダーにとっても食指が動かない。

つまり、CLTは戸建て需要に焦点を当ててはいけない。 アブハチとらずになるだけ。
私は、5年前からCLTのことを、「木質のPC版 (プレキャスト版)」 と呼んでいる。
この呼称が一番、消費者にもビルダーや住宅メーカーにも素直に受け入れてもらえる。
つまり、地震国日本では、いきなり高層のマンションなどに焦点を当たるのではなく、4〜5階建ての中層のアパート需要に焦点を当てるべき。
戦後の住宅事情を救ったのは、中層のプレキャスト版による公団住宅や公営住宅、あるいは社宅などの賃貸住宅だった。
この時、大活躍してくれたのが耐震性が強くて、防火性でも文句がなかったプレキャストのコンクリート版。
しかし、このプレキャストコンクリート版には2つの欠点があった。
1つは、断熱性能が極端に弱く、暖冷房費がかかること。
もう1つは、8〜10センチ程度の外断熱を施工しないと、結露を防げないこと。
ヨーロッパで、この数年間で爆発的にCLTが普及を見せ始めてきたのは、プレキャストコンクリート並の耐震性と、防火性を持ち、しかも比重が1/5と軽い。
その上、20センチ厚のCLTの外壁だと熱貫流率は0.51Wとなり、軽量骨材2種を用いた20センチ厚のコンクリート版の熱貫流率は1.56Wに過ぎない。 
つまり、CLTを用いるだけで、外壁の省エネ性能性能は3倍になり、寒冷地を除けば結露の問題もかなり防げる。 ただし、外壁の熱貫流率0.25以上を求める消費者にとっては、CLTだけでは物足りなく、断熱材を付加することになる。
したがって、鉄骨プレハブで満足している消費者以外は、戸別住宅ではCLTを選ぶことは考えにくいというのが現実。

したがって、地震国日本では、当面は5階建までの賃貸住宅や社宅需要などに的を絞るべきだと思う。
ヨーロッパで8階建や9階建が認められているのに、日本では5階と言うのは低すぎるという意見があろう。
しかし、ヨーロッパでは大型パネルと大型パネルとの結合には、主に長いスクリュークギに頼っている。 ホールダン金物を日本では実験用では使っているが、プレキャストコンクリート版に比べてパネルとパネルの緊結力が足りない。
ヨーロッパの金物やスクリュークギを持ってくるのではなく、新しい金物の開発に優れている日本では、開口部周りを含めて独自の金物の開発が求められているのではなかろうか。

そして、こうした賃貸住宅の場合は、エレベーター周りは外断熱のRC造にすべきであろう。
それと同時に、ドイツや北欧の住宅のように天井高が2メートル前後で良いから、全戸に地下貯蔵室をこれからは絶対条件として設けて行くべき。
そうすれば、津波や小規模の土砂崩れなどの被害だったら このCLT住宅は十分に守ってくれるはず。
国交省の住宅局は、学校建築を含めて戦後の賃貸住宅を一新し、半地下室のあるCLTの賃貸住宅や学校、保育園、シニア住宅などの建設に踏み切るべき。
このCLTの需要開発は、林野庁に任せているだけではダメ。 住宅局が主体性を発揮しないと、折角のバイオエネルギーも開発されずに終わる。

林野庁は、年内にCLTのJASを認定する予定と聞く。
しかし、いくらJISが決まっても、需要が見込めないと、求められている大規模なCLT工場が日本で稼働するだろうか。
銘建工業以外に、何社が本格的に名乗りを上げてくるのか。
私は、そのことをが一番に気になっている‥‥。




posted by uno2013 at 08:38| Comment(1) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
始めまして、このフォーラムには私も参加させて頂いておりました。
仰る通り、通訳の内容が本来の内容とまったく意味が通じないところが多く座念でした。
やはり業界用語ですとか業界のシステムを理解して翻訳することは難しいのでしょうね。
私も16年前にドイツとウィーンでCLTの加工工場をしっかり見させて頂き、HSBCADの3DでのCLT加工図データーに入力とその物件の上棟現場も拝見させて頂きました。今年にはウィーンにてCLTと大断面で建設された大型ショッピングモールも視察してまいりました。
又、CLTの製品を加工する機会メーカーとのお話も聞かせて頂く機会がありました。
そこでEUでの特にウィーンとドイツ、イタリアでのCLTがCAD、CAMシステムが成立していることも理解しております。
又,日本と違いCADメーカーも加工機械製造メーカーもコンピューターソフトのフォーマットをオープンにして共有しています。
どの機械をどのCADでも動かせるこの状態は現状の日本では成立していません。
つまり大断面と同じでCLTを製造する機械があっても、それを加工する機械がなくては精度が出せない、その機械を今から日本のメーカーが開発をしても5年はかかってしまう。
シックフォファー氏も言っていたようにS、RC、木造在来とのハイブリッと使用をも考えた場合、日本の在来プレカットCADメーカーでCLTの加工データーを作成することで大断面を含めた木造のハイブリッと加工と構造の許容応力度
N値も共有できるのではないかと考えました。

それで私はフォーラムで低次元と受け取られる質問をしました。内容は「日本ではプレカットシステムというCADCAMで加工納材するシステムが有るがEUではどの様になっていますか、又、今後日本のCADメーカーはどの様な対応と準備をするべきですか」との質問をしました。

しかし座念な事にまったく違った意味で通訳され、「大工のネットワーク化をしている日本でもそうすることが必要では」と言う答えが返ってきました。
これを通訳の能力を否定してもこれ以上深い話をしても周りのかたがたにはチンプンカンプンな話になると思い期待した返事とはまったく違いましたが質疑は止めました。

それとCLTの加工精度を質問された方もいらっしゃいましたが、あの方もCLTの板を開口ぶ接合部分の加工をした時に精度が出せるのかと言う質問だと思います。
機械でデジタル加工するのか、現状は銘建工業でもアナログ的な加工ですからどの様なシステムで加工してるのか全て知った上での質問だと思います。
なぜなら彼の会社はヨーロッパでの共有フォーマットのグループに唯一参加していないドイツのフンデガー社の日本総代理店だからです。
彼らはHSBCADでCLT加工する機械もデーター全て持っています。
又、彼らは18年ぐらい前からCLTに携わっています。
彼も私も現実の運用に向けたシステムとそれに必要な実行何を準備すべきかの現場サイドの質問かもしれません。

ちなみに今年のイタリアでは全てCLTで建築されたマクドナルドを見てきました。
施工した建設会社の方の説明も受けることができ少しではありましたが、理解してきました。

CLTの2階フロアーはたわみがあるのでコンクリートスラブを打っていること、1階は先行配管、内部、外部ともに軽鉄の縦胴縁、そこに配線、2F小屋はりく梁を入れ、広がりを抑えている、りく梁は日本と同じ蟻加工がされている、小屋のCLTは両サイド蟻加工もされていました。この使用でミラノ周辺の40店舗がCLTで建設されていました。

参加されていた方々の中には深く携わっていた方も質問の内容を抑えていた方々もいたのではないかと思うしだいです。

日本では今後、大型構造物での使用は増えてくると思いますが、まずはインフラと技術、CADCAMの整備の必要を感じています。
まだまだ細部は理解していない私でありますがなるべく細部まで理解して皆さんに説明できるように勤めたいと思っています。
今後とも知りえた正確な情報のみ許されればお知らせしたいと思います。
初めてコメントするのもかかわらず。長文、支離滅裂な文章をお許し下さい。
Posted by 参加者 at 2013年10月30日 23:42
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